青空のむこう

    表紙へ戻る    

aozora.jpg (19254 バイト)

 求龍堂 アレックス・シアラーノ著 金原瑞人訳  1200円

人間は死んだらどうなっちゃうんだろう? この物語は、交通事故で突然亡くなってしまった少年ハリーが、死者の世界から現世に降りて、自分がいなくなった後の人々の生活を眺めたりする話です。 

仏教では「輪廻(りんね)」と言って、死後何度でも生まれ変わってくることになっていますが、この物語でも同じような死後の世界観が描かれています。 物語の中では「生者の世界」と「死者の世界」、「彼方の青い世界」の3つが出てきます。 人は死んでしまうと「死者の世界」へ昇り、それから「青空のむこうの世界」へ歩いて行って、そこで再生されて生まれ変わるというシステム。 これを「リサイクル」と表現する部分が冒頭にあって、妙に現実味があります。 私たち人間も、リサイクル資源のひとつかな?

死者の世界の入り口には受付があり、パソコンに不慣れな職員が、ぶつぶつ不満をこぼしながら、生者の世界からやってきた人々(要するに死者です)の登録業務に精を出しています。 その前には、死んだばかりの人達が行列を作って、順番を待っています。 なんだか変に現実と交錯した妙な世界。
でも、この本はあの世のガイドブックではありません。 ハリーは事故の直前に姉のエギーと口げんかをしていました。 そのとき最後に交わした言葉が心に引っかかっていて、どうしても素直に「死者の世界」から「彼方の青い世界」へ行くことができません。 それで、禁止されているのを承知で、一度だけ生者の世界へ舞い戻ってきます。 ハリーは自分のいない学校での友達の様子や両親、姉の様子を眺めることになります。 「学校の僕の机には花がいっぱい飾ってあるだろう」「僕が抜けたサッカーチームは勝てるはずがない」「家族は毎日悲しみにくれているはずだ」と思って会いに行った人々の様子にがっかりしたり、驚いたり、現世へ帰りたいと思ったりします。 自分が居なくなっても、何事もなかったかのように流れ続ける時間がある一方で、人々の心の中で確かに生き続ける自分にも遭遇します。 生きているときには想像もしなかった人の思いにも触れます。 そして、一番気がかりだった姉エギーとも筆談ができて・・・・。

この本、最近ベストセラーにもあがってきました。 子供でも読みやすいお話です。 

 

   表紙へ戻る