バイエルンでオペラを観る
ジュリアス・シーザー(Giulio Cesare in Egitto)

出張でドイツのミュンヘンへ行くことになりました。 3日間の国際会議に出席して発表と情報収集というメニュー。 会議開催前夜にミュンヘンへ入り、会議終了翌日の午前中には帰国という強行スケジュールで、決して余裕のある行程ではありませんが、合間を縫って帰国前夜にオペラを観にいくことにしました。 

日時を決めてしまうと、その日にオペラがあるかどうかとか、演目は何かなどは全くの運任せです。 そして旅行代理店からの連絡をみて唸ってしまいました。 「Giulio Cesare in Egitto」 何これ? サッパリわからん。 それでも、これしかないから、とりあえず旅行社にチケットの手配を依頼しました。 オペラも長い間見てないし、知識もおぼろげになってしまっています。 ところが、記憶ってのは不思議なもので、1時間くらいしたら、突然、「ひょっとして、エジプトのシーザーとかいうのがなかったっけなあ」と頭に浮かびました。 インターネットで検索してみると、確かに「ジュリアス・シーザー」または「エジプトのジュリアス・シーザー」イタリア読みでは「ジュリオ・チェザーレ」というオペラをヘンデルが作曲していることがわかりました。

そして、当日の夕方、ミュンヘンの中心地マリエン広場近くで、ドイツ名物のソーセージを挟んだパンをコーラで流し込んで、バイエルン州立歌劇場へ向かいました。 やっぱりミュンヘンへ来たらオペラを観なけりゃ。 ドイツでは自治体の財政援助で公演が支えられていて、そのおかげで小さな地方都市でさえ質の高いオペラを楽しむことができます。 それでも、やっぱりバイエルン歌劇場は別格。

            表紙へ戻る

opera.jpg (18585 バイト) giulio4.jpg (18626 バイト) oper2002.jpg (11958 バイト)

(写真は、左から歌劇場外観、チケット、当日のパンフレットです。)

開演は比較的遅くて19時。 2回の休憩を挟んで4時間もかかるという長大作品です。 さて、ウッキーの席はオケピットから2列目のど真ん中。 身を乗り出せば指揮者にもさわれそうな位置です。 ウッキーは時間に余裕をもって歌劇場へ入り、20分位前には、もう席を着いていました。 しばらくして隣の席に着いたのは、驚いたことに小柄な日本人女性でした。 尋ねてみると、ミュンヘン在住10年になるという、滅法オペラに詳しい女性でした。 その人のおかげで、舞台演出の裏話や劇場の支配人の話に至るまで、普通では知ることができない情報を耳にすることができました。 彼女、翌日は休暇をとってベルリンまでオペラを聴きに行くというほど、かなりのオペラ狂の様でした。 

さて、肝心のオペラの方は何とも斬新な演出で、クレオパトラが出てくる時代設定なのに、衣装はパジャマの様なものだったり、グリーンベレーをかぶった迷彩服の兵士姿だったり。

第一幕ではピラミッドの代わりに、10m以上もある恐竜が舞台中央で我がもの顔に居座っています。 この巨大な恐竜、幕の最後にゆっくりと倒れて、轟音とともに舞台にめり込んでしまいます。 さらに第二幕では巨大なバッタが舞台袖にぶら下がっていたり、第三幕では鮫が口を開けていたかと思うと、空中ブランコは出てくるし、ロケットが空を飛ぶ。 次々に登場する奇抜な演出に目を見張っているうちに、それこそあっと言う間に4時間が過ぎてしまいました。 

指揮者はアイバー・ボルトン(Ivor Bolton)。 日本ではあまり知られていないけれど、バロックから古典派にかけての定番指揮者で、軽快なテンポを重んじた指揮をします。 隣席の女性によると、ミュンヘンで好評を博して後、世界的な名声を得たのだそうです。 主役のシーザーはアン・マレイ(Ann Murray)という女性歌手。 ヘンデルのオペラを中心に活躍している、アイリッシュの名メゾ・ソプラノです。 シーザー役を女性が歌っていて、そのほかに何人かのカストラートも出てくるという変った歌劇でした。 日本を発つ前に、予習しようと思ってCDを探したけれど、手に入らなかった。 いきなり初めてのオペラを観ると、筋もさっぱりわからなくて退屈するものですが、これに限っては全く飽きることなく最後まで見入ってしまいました。 やっぱり、いいものはいい。

        表紙へ戻る

      バイエルン州立歌劇場のHPへ

おまけ・・・・20年前のペールギュント(2002年2月18日追記)

初めてここを訪れたときのプログラムとチケットが、確か今でもあるはずだと思って探して見たら、ちゃんと出てきました。 どうやら3階の立ち席だったようです。 12マルクだから、今なら700円くらい。 いくら20年前で立ち席であったにしても、日本に比べたら安いなあ。 演目は「ペールギュント」、人形の家で有名なイプセン原作で、作曲はヴェルナー・エック(Werner Egk)というドイツ人です。 残念ながら、どんなオペラだったのか、どんな曲と演出だったのか全く記憶にありません。 だって、曲も作曲家も知らないで聴いたのだから、無理もないですよね。 エックって作曲家は今でも知らないもの。 指揮者はサヴァリッシュ(Wolfgang Sawallisch)だったようです。 さすがにこの人は知っていますが、歌手も全然知らない人ばかりでした。 

oper1982.jpg (18933 バイト) oper1982-2.jpg (9993 バイト)

これを機会に、エックという作曲家について調べてみたら、1901年ドイツ生まれの作曲家で、1983年に亡くなっています。 と言うことは、ウッキーがこのオペラを観た翌年に亡くなっているんだ。 ペールギュントは1938年に作曲されています。 昨年は生誕100年と言うことで、ドイツ国内では記念のコンサートが催されたり、ドイツのオーケストラが海外へ出かけたときに、彼の曲を演奏曲目に取り入れたりしたようです。 しかし、母国ドイツはともかく、一般的にはそんなにポピュラーな作曲家ではないみたいだなあ。

さて、少しずつ当時の記憶がよみがえってきて、それをたどってみると、確かこの時はミュンヘンに朝着いて、その日のコンサートチケットを手に入れようとしたんだ。 それで、ホテルで入手できないかと聞いたら、たまたまフロント近くにいた男性客が、「難しいだろうけれど、とにかく劇場へ行って見ろ」と言う。 それで、劇場へ行って券がないかどうか聞こうとしている時に、40歳くらいのドイツ人女性が近寄ってきて、チケットを買わないかと声をかけられた。 何でも、2人で行こうと2枚買ったけれど、都合が悪くなって1枚余ったから、それを買ってくれと言うのでした。 いくらか安くしてくれたのかどうか記憶にありませんが、結局それを買って、その女性と立って観たのでした。 立ち席で決していい席ではなかったけれど、コートをクロークにあずけたり、いろいろ世話を焼いてくれて、助かったことを懐かしく思い出しました。   

         表紙へ戻る