ウィンスロップ・コレクション

フォッグ美術館所蔵19世紀イギリス・フランス絵画

 

ウィンスロップコレクションは、ハーバード大学フォッグ美術館秘蔵のアングル、モロー、ロセッティ、ビアズリーら19世紀イギリス、フランス絵画を中心にしたコレクションです。 今まで寄贈者の意志により門外不出でしたが、建物の修復を機会にその一部が公開されたものです。

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秋晴れのさわやかな日で、上野公園は人で賑わっていました。 しかし、展覧会が開催されている国立西洋美術館の混み具合は、さほどでもありませんでした。 「ルノアール」とか「ゴッホ」のような小学生でも知っている画家の展覧会と比べれば、意外なほど少ない鑑賞者です。 

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さて、展覧会でウッキーは、ギュスターブ・モローの「出現」(1876年)に魅了されてしまいました。 血がしたたる首が空中に浮かんでいる、ショッキングな構図の印象は強烈です。 サロメは、舞の褒美にヨカナーン(聖書では洗礼者ヨハネ)の首を所望しました。 絵はヨカナーンの首が突如空中に現れ、サロメが指差して睨みつけている場面を描いています。 モローの同じ構図の絵は何枚かあって、その主要なものはルーブル美術館、パリのギュスターブ・モロー美術館にあるものと、この絵の3枚です。 この絵の中でモローはサロメを半裸体で描きました。 今でこそ舞台のサロメは妖艶なイメージですが、意外なことに、この頃までのサロメはすべて着衣で描かれていたのだそうです。 オスカー・ワイルドの戯曲を読んでみると、「月に照らされ不吉なほど白いサロメ」の登場から幕が開きます。 最後には殺されてしまうサロメの運命を思いやりながら絵を鑑賞すると、したたかというより、幼くて哀れな感じがしてくるから面白いものです。 

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次に紹介するのは、アングルの「奴隷のいるオダリスク」(1839〜40年)です。この絵も先入観なしにみれば、大変美しい絵だと思います。 しかし、19世紀当時ではスキャンダラスな絵だと酷評される恐れが十二分にありました。 事実、似たような構図のマネのオダリスクは、世間から批難轟々だったのですから。 その違いは何か? オダリスクは明らかに娼婦を描いていて、マネはそれを肯定し、社会に対して挑戦的な絵に仕上げました。 しかし、アングルの描いた女性は娼婦ではなく、イスラムの王の奴隷です。 絵の左にサルタンの帽子が描かれていて、奥には監視人がいるという情景から、イスラムの王の奴隷であることがわかります。 たったこれだけで、この絵は好奇の目の対象ではなく、イスラム風の女性を描いた芸術作品であるという位置付けになったというのですから、本当に驚きです。 何でも自由に鑑賞できる今の時代に感謝したいですね。

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