印象派と近代絵画の巨匠たち展

 

18年ぶりの阪神タイガース優勝に沸く、大阪へ出かけました。 大丸ミュージアム・心斎橋で開催された展覧会は、東京富士美術館の所蔵作品より、19世紀から20世紀の絵画を紹介するものです。

東京富士美術館は八王子市にあって、古代ローマの彫刻やルネサンス期の大型絵画をはじめ、質の高い作品を所有しています。 壮大な規模のすばらしい美術館であるにもかかわらず、知名度やガイドブックでの扱いが目立たないのは、設立団体が宗教色(S学会)を帯びているからでしょうか。 展覧会ではバルビゾン派、印象派からウォーホールらのポップアートにいたるまで、幅広い作品を楽しむことができました。 

展覧会で記憶に残ったのは、印象派の作品数点でした。
はじめに紹介するのはルノワールの作品で、「赤い服の女」(1892年頃)。 

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ルノワールは女性を描くのを好みましたが、その画風には大きな変遷があります。 1870年代後半は、いわゆる印象派の時代。 それから1880年代に入ると、色彩の効果だけで描こうとする絵に行き詰まり、明確な輪郭線で描こうとしました。 これは「古典の時代」などと呼ばれていて、「大水浴」(1887年 フィラデルフィア美術館)の様な絵を描きました。 ところが、1890年代になると、また元の画風に戻ります。 赤い服の女はこの頃の絵で、彼の持ち味である柔らかいタッチと明るい色使いが、さらに円熟味を増して見事に復活しています。 ウッキーは正直なところ、ルノワールはさほど好きではありませんが、今回の展覧会の中では、この絵が一番良かったと思います。

次に紹介するのは、同じく印象派のモネの作品2点です。 モネといえば、睡蓮の連作が有名ですが、それらは、フランス内陸部のジヴェルニーに移り住んでから、そこの庭を描いたもので、1899年以降の円熟期に制作されました。 ジヴェルニーへ転宅する前後の、1880年代前半には、大西洋岸ノルマンディーの海岸を題材にして、たくさんの絵を描いています。 

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左の作品は、「海辺の船」(1881年)という作品です。 この時期のモネは、妻カミーユの死やドガとの対立がありましたが、私生活の暗さを振り払うかのような、明るい青い空が印象的です。

右の絵は、「プールビィルの断崖」(1882年)という作品。 青々とした空、海岸、切り立った断崖。 おそらく、まばゆいばかりの明るさに満ちた、光景だったのでしょう。 あふれる光の世界、モネらしい絵です。 1880年代前半に、モネは400点以上の風景画を描いていて、その3分の1以上がノルマンディー沿岸の絵だそうです。

東京富士美術館を訪れたのは、もう3年も前。 また行きたいし、お勧めしたい美術館のひとつです。

会期 2003年9月3日〜9月16日   会場 大丸ミュージアム・心斎橋(大阪)

 

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