スーラと新印象派展

清澄な光と色彩の世界

 

新印象派の展覧会を見に行きました。 美術館の入り口では、案内に木漏れ陽が当たって、ちょっといい予感。

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光を描こうとした印象派に続いて、スーラが築き上げた表現方法は、科学的裏付けのある色彩理論に基づいた点描でした。 1886年、最終回となった第8回印象派展に、スーラは2m×3mもある大作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」(シカゴ・アート・インスティチュート)を送り出し、劇的なデビューを果たしました。 展覧会では、実物大の写真が入り口近くに展示されていて、入場するものを圧倒します。 しかし、ウッキーはこのときには、まだ本当の点描画のすばらしさを十分に理解できていませんでした。 そのすばらしさを教えてくれたのは、「バ=ビュタンの砂浜、オンフルール」(1886年 トゥルーネ美術館 ベルギー)というスーラの作品でした。

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展覧会の代表作の一点で、展覧会のポスターの表紙もこの絵で飾られています。 しかし、この作品の美しさは到底この写真では表せません。 図録や美術全集の色とか感じが実物と違っていて、がっかりすることは、比較的良く経験することですが、この絵については、その落差が激しすぎます。 明るくきらめき海面ではじけるように踊る光線は、実物を間近に見なければ感じることはできないでしょう。 日差しは感じるけれど、暑さは伝わってこなくて、初夏のさわやかな海の様に思えました。

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さらにもう一点、「クールブォワの橋」(1886〜1887年 コートルード美術館ロンドン)も、点描のおもしろさを良く表現した逸品でした。 この絵は独特の雰囲気があります。 手塚治虫の漫画で「時間よ〜、止まれっ!」ていう感じのがありましたが、なんかそんな感じ。 遠くに揺らめく煙も、手前の人物もまるで陽炎のように、実体のない空虚な感じがします。

スーラはわずか31年4ヶ月で生涯を閉じます。 その後継者になったのはシニャックと、すでに大家であったピサロらです。 展覧会では彼らを含む、いわゆる新印象派の画家たちの作品が展示されていますが、スーラと他の画家の絵の印象はずいぶん差があるように思えました。 スーラの絵は「現実と別の点描の世界」、他の画家は「点描で描いた現実の世界」みたいな感じがしました。 写真はピサロの「エラニの春」(1886年 メンフィス・ブルックス美術館)という作品です。

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点描画の色彩は抜群にきれいではあるものの、動きのある題材に向かないし、膨大な労力を伴うなどの理由で、次第に後を継ぐ画家はいなくなっていきました。 スーラは秘密主義と評され、死後になるまで愛人や子供があることさえ知られなかったほど、寡黙な画家でしたが、一方では連日、図書館で光学理論の勉強をする、地道な努力家でもあったようです。

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