ガラスに描く,光と彩りの2000年

 

ホームページを開設していると、見ず知らずの方からメールをいただいたり、知り合いの人に久々に会って「HP見てるよ」と声をかけられたり、思いがけず話の種になったりします。 それに今回は「ガラス展の招待券があるけれど、行かない?」なんて幸福が舞い込んできた。 感謝しつつ行ってきました。 サントリー美術館で開催されている「ガラスに描く 光と彩りの2000年」展です。

絵を描いたガラス片が、すでに紀元前8世紀頃のアッシリアの遺跡から出土していると言うのですから、彩色ガラス器の歴史は実に長いようです。 今回の展覧会は、紀元1世紀頃エジプトで出土した彩色ガラスから、現代のガラス作品に至るまでを広く紹介するものです。 

ガラスに絵を描く場合、大きく分けると、@ガラスの表面に描く A透明ガラスの裏側から描く B透明ガラスで絵をサンドイッチする と言う3つの手法があります。 表面から描いた作品で多く見かけられるのはエナメル彩色です。 これはガラス質顔料であるエナメルで絵を描いて、低温で焼き付けるやり方。 特に13〜15世紀にかけて、イスラムで盛んに用いられました。 その後ビザンチン、ヴェネツィア、スペイン、ボヘミア、ドイツなどへ伝わり、19世紀のアール・ヌーヴォー時代にもよく用いられました。 今回の出展作品の数では、エナメル彩色のものが一番多かったように思います。 他の手法では油彩や蒔絵(まきえ)などもあります。 

印象的だった作品をいくつか紹介しましょう。 エミール・ガレの「装飾扇 闘鶏」は、日本から多大な影響を受けた彼らしく、ガラスの扇に見事な鶏が描かれていました。 写真を紹介できなくて残念。 ガレ本人が「日本風の立体感ある七宝焼き」を再現したと語ったとか。 飛騨高山美術館収蔵の見事な作品です。 同じ美術館のもう一点は、フリードリッヒ・エンゲルマンという人の「クルム・ゴブレット」。 1835年作で、それはそれは繊細な細工のきれいな作品。 彩色とガラスの透明感の生かし方、色ガラスの使い方、重量感のある形状。 彩色だけでなく、どの部分を見ても凝った技法が施されていて、見所が多い華やかな作品です。 ドイツの「エナメル彩選帝候分フンペン」は、高さが31センチあまりもある大きなグラスです。 フンペンとは、ワインやビールを回し飲むための大型グラスで紋章、肖像、動物などが描かれたものが多いようです。 こちらは石川県立美術館収蔵の逸品です。

秋風の気配を感じるようになってきた8月下旬のひとときを、静かに楽しんできました。

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