ミロ展1918−1945

絵画の詩人ミロ誕生への軌跡

 

ピカソ、ダリと並んで20世紀のスペインを代表する画家、ジョアン・ミロの展覧会を世田谷美術館で観ました。 ウッキーは、シュールレアリズムの画家の中では、「無邪気」と表現されることがあるミロの画風が一番好きです。 ミロは1893年にスペインのバルセロナに生まれ、その後スペイン内戦や第二次世界大戦の暗い時代を通して自身の世界を模索し、大戦終結の頃には彼独特の記号化された表現にたどり着いていました。 彼の絵は、まるで幼児が描いたような人や月や星などがちりばめてあり、無条件にやすらぎを感じるところがあります。 深刻に思索を経て作品にするとか、絵画理論に基づいて制作するというタイプの画家ではなくて、まるで神の啓示のように電流を感じて描いたと言います。

世田谷美術館へ行くのは今回が2回目でしたが、東急用賀駅から美術館までしっかりと表示が出ていて、迷うことなくたどり着きました。 美術館の細やかな配慮に感謝したいと思います。

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今回の展覧会では、彼が作品を発表し始めた頃から様々な試行を重ねて、独特の画風を確立していくまでの、生涯の前半の作品が集められました。 

記憶に残った出展作品を2つ紹介します。 
一つ目は国内の美術館にある名作。 「ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子」 は1945年作で福岡市美術館収蔵の大作です。 ミロは、星や月などを記号化してちりばめた《星座》シリーズ(1940〜41年にかけて制作した23点)で名声を不動のものにしました。 この作品は、《星座》シリーズのすぐ後に制作された作品です。 マジョルカ島の大聖堂で聞いたオルガン演奏からインスピレーションを得たという作品。 いったい、どれが踊り子なのかさえ、よくわかりませんが、観ていると頭の中でオルガンが響いてきそうな気がします。 この無邪気さ、楽しさがいいなあ。 しかも専門的に見ると、色彩対比や形態配置が巧みに計算され尽くされた構図なのだそうです。 随分完成度が高い作品だと感じました。 

次に紹介したいのは「鳥の翼から落ちたひとしずくの露が蜘蛛の巣のかげに眠るロザリーの目を覚ます」という名前の作品。 上の絵でも長い名前だと思うのに、それに輪をかけて長ったらしい作品名です。 彼の絵にはこんな詩のようなタイトルがよくついています。 粗麻布のキャンバスに描かれた1939年作の油彩で、アイオワ大学美術館蔵の作品です。 まるでソフトクリームのコーンのような、ゴツゴツした生地が生きています。 時期的にはノルマンディの片田舎に疎開しているころに描かれました。 前述の《星座》シリーズの直前です。 画家って言うのは、世間が戦争だというのに、こういう絵を描ける感覚を持ち続けられるのだから、凄い人種だと思うなあ。

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