カンディンスキー展

 

東京国立近代美術館で、2002年3月から開催されているカンディンスキー展へ、閉幕間際の週末に行ってきました。 地下鉄東西線竹橋駅を降りたときから、何人かの人たちが同じ方向へ歩き始めます。「1b出口だ」などとつぶやきながら。

カンディンスキーは、1866年に帝政ロシアのモスクワで生まれました。 1896年30歳で画家を志し、ドイツのミュンヘンへ出て、本格的に創作活動に入ります。 この頃の絵は具象画で、所謂カンディンスキーの画風ではありませんが、ほどなく具象画でありながら、彼らしい色使いが見え始めてきます。 1914年には第一次世界大戦勃発とともに、故国ロシアへ戻ることになります。 1914年までのこの時期は、彼の中期において最も充実した創作時期で、もう、すっかり抽象画に進化しています。 コンポジションという一連の作品を制作したのが、この時期にあたります。 10作におよぶその作品群の中でも傑作と言われるのが、「コンポジションY」と「コンポジションZ」です。 (クリックすると画像へリンクしています) 

コンポジションYは1913年の作品で国立エルミタージュ美術館蔵、コンポジションZも同年作でモスクワのトレチャコフ美術館蔵です。 展覧会では、この傑作2枚が並んで出展されていました。 大きさが2m×3mもある大作です。 特にZの方は、カンディンスキーの美術書や解説で、必ずと言っていいほど良くお目にかかる、本当に代表作と言ってもいい傑作。 見る側からすると、大きさに圧倒されるところもありますが、この大作をわずか4日間で書き上げたと言うのですから、さぞ精力的な人だったのでしょう。 

出品作品で、もう一つ印象に残ったのは、「モスクワT」という1916年の作品(トレチャコフ美術館蔵)です。 この絵は、まるで現代のイラストだと言っても通りそうな、眺めているだけで愉快になる絵です。 ミュンヘンで絵を学び、晩年はフランスで過ごした彼でしたが、故国のモスクワを描いた絵が何枚もあります。 同じくロシア生まれのシャガールの場合でも、ロシアの田舎の風景がたびたび登場するし、ロシア人というのは愛国心に富んだ国民なのかな。

この展覧会はロシア所蔵のものが中心なので、1920年代から晩年に至る頃の、ミロの絵に似たイメージの絵はありませんでした。 
カンディンスキーって、ミュンヘンへ出るまでに大学で法学と経済学を学び、大学講師の招聘があったにもかかわらず、それを断って絵の世界へ飛び込んだのだそうです。 たまに天は二物を与えるんですよね。 

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