コロー、ミレー バルビゾンの巨匠たち展

 

パリの東南約60kmにあるフォンテーヌブローの森。 その北西に位置するバルビゾンは、人口千人あまりの小さな村です。 ここに1830〜40年代にかけて、テオドール・ルソーやコロー、ミレーら若い画家たちが集まり、美しい自然、森と共に生きる動物や農民の姿を、ありのままに描き出していました。 この自然主義的な風景画を描くグループは、後年バルビゾン派と呼ばれるようになります。 その中心となったミレー、コロー、ルソー、ドービニー、トロワイヨン、ディアズ、デュプレたちは「バルビゾンの七星」と呼ばれています。

損保ジャパン東郷青児美術館(旧名称「安田火災東郷青児美術館」)で開催されたこの展覧会は、バルビゾン派のコレクションとしては、その内容、数ともに国内最大級といわれる、姫路在住の実業家・中村武夫氏のプライベートコレクションから、31作家の103点が出品されました。 バルビゾン村の静寂には遠く及ばないでしょうが、地上42階にある喧噪を離れた美術館で、静かなひとときを過ごしてきました。

個人蔵のコレクションなので、馴染みのある絵はありませんが、例えばミレーを取り上げれば、「種を蒔く人」のリトグラフや「落ち穂拾い」のエッチング、「畑からの帰り」を描いた油絵の秀作など、ミレーらしい絵のオンパレード。 どの作品も粒ぞろいで、コレクションの質の高さを実感しました。

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印象に残ったのは、コローの「鳥の巣を捕る子供たち」(1872〜73年頃)。 静かな水面と明るい空を背景に、豊かで鬱蒼とした森に遊ぶ子供たちが描かれています。 亡くなる数年前の作品です。 この絵に大変よく似た構図の「モルトフォンテーヌの思い出」という絵がルーブル美術館にあって、代表作のひとつと言われていますが、それに劣らず落ち着いた情景的な名画だと思います。

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次はシャルル=エミール・ジャックという画家の「羊飼いの女と羊の群」(写真左)と言う作品です。 この人は羊の絵をたくさん描いて「羊のラファエロ」とまで呼ばれた画家で、この展覧会にも何点か出品されていました。 少しミレーに似た雰囲気があって、羊の表情が微笑ましい作品でした。
そして、最後はルイ=ガブリエル=ウジェーヌ・イザベイという画家の「愛の手紙」(1853年 写真右)です。 一口にバルビゾン派と言っても、その画風はバラエティーに富んでいて、この作品もミレーやコローの絵と比べると随分差があります。 ふっくらした量感溢れるドレスに身を包んで、届けられた手紙に読み耽っている少女達の様子は、むしろロココのような雰囲気です。 実は、この絵だけ他の絵とかけ離れたイメージだったので、強烈に印象に残ったのです。
作品を見終わって外出ると、小雨で高層ビル群が霞んで見えました。

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