有元利夫展

光と色・思い出を運ぶ人 −38歳で夭折した天才画家−

 

最近、たびたび足を運んでいる、京都駅ビルの「美術館 えき KYOTO」で有元利夫展を観てきました。 ウッキーは解説書や批評を読むのはあまり好きではなく、自分で観て、楽しければそれでいいという、わがままな姿勢だから、知らない画家がいっぱいあります。 だからこそ、自分にとって未知の秀逸な作品や画家を知ったときの喜びは、一層格別です。 今回が、まさにそうでした。

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有元利夫は、1946年岡山県津山市生まれ。 東京芸大デザイン科を出た後、第24回安井賞を受賞するなど、注目されつつ活躍している最中の1985年2月に、38歳で早世した画家です。 ウッキーは有元の名前も知らなかったし、展覧会も時間が空いたから立ち寄っただけで、どうしても行きたいと思って訪れたわけでもなかったのです。 「若くして天に召された天才芸術家」なんて、よくある安っぽいキャッチフレーズだと思い込んでいたのです。

ところが、会場に入って数枚の絵を見ただけで、自分の先入観が大間違いだったと気がつきました。 有元は学生時代に、旅先のポンペイで観たフレスコ画に大きな影響を受け、さらに日本の仏画にも感化されたそうです。 作品のイメージをどう表現していいのでしょうか。 確かに、壁画のようなヨーロッパ調の雰囲気があります。 古い宗教画のようであったり、そうかと思うとシュールな感じの絵があり、日本画のように花びらが舞っているものもある。 それらが違和感がなくて、見事に纏め上げられ、調和していると思います。 有元の「才能のきらめき」を肌で感じた展覧会だったというのが、一番素直な感想です。

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絵を掲載できませんので、会場で求めた絵葉書とチラシを集合写真にしました。 いくつかの絵は、絵葉書のギャラリーにリンクしているので、小さい画像ですが紹介します。 

チラシの表紙を飾っているのは「」(1979年)という作品。 タイルの上に描いたような質感の絵です。 写真ではよく表現できませんが、ピンク色はすごく温か味があって、印象的な色でした。
花吹」(1975年)という作品は、絵の具が古い壁画のようにかすれています。 描いた後で、わざと擦って落とすのでしょうか。 時計が描かれていて、奇妙な違和感がありますが、ちょっと宗教色っぽい絵です。
望郷」(1978年)も壁画のような感じに仕上げられています。 構図はシュールなイメージがします。 上りかけている階段の向こうには、懐かしい故郷が見えるかもしれない、なんて思いが込められているのかな。

ウッキーは、割とたくさんの美術展へ行くけれど、今回のように「もうけた」ような気持ちがするものは、そんなにたびたびあるものではありません。 ラッキー! 

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