アンジェ美術館展

ロココ絵画の華

 

angers.jpg (15852 バイト)梅雨の合間の晴れた週末に、千葉市美術館へ出かけてきました。目当ては「ロココ絵画の華」と副題がつけられた、「アンジェ美術館展」です。 JR千葉駅からフリーマーケットで賑わう歩行者天国を抜けて、15分くらいで美術館に着きました。 都会の美術館らしく、高層ビルの中にあり、1階にミュージアムショップ、7〜8階が展示室、11階に講演会場という配置です。 これからの美術館ってこんな感じなのかな。

今回の展示は、フランス南西部、ロワール河畔にあるアンジェという都市からやってきた、17〜19世紀のヨーロッパ美術品です。 フラゴナールに代表される18世紀フランスのロココ絵画、ワトー(ヴァトー)を中心とした「雅宴画(フェット・ギャラント)」、その後のアングルらの絵が中心でした。 この頃の絵は、軽薄なほど華やかでなまめかしく、優雅で生活感のない宮廷文化という雰囲気です。 この展覧会の絵は、ほとんどの絵にガラスがかけられていなくて、絵の具のひび割れた質感まで間近に見ることができました。 展示の中心になるロココは、ルイ15世(1715〜1774)の時代と重なる事から、ルイ15世様式と呼ばれることもあります。

印象的だった絵を紹介します。 1点目はフラゴナール(1732〜1806)のangers2.jpg (19950 バイト)「ケファロスとプロクリス」という作品。 この絵、妙に横に長い形ですが、これは馬車の装飾品として描かれたからだそうです。 ロココ美術には、このような装飾品的趣を持ったものがたくさんあります。 さて、絵はギリシャ神話に題材を取っています。 物語では、夫ケファロスの不倫を疑った妻プロクリスが、忍んで夫を追って森へ入りますが、その妻を鹿と間違えて夫が射てしまうのです。 妻の死の間際を描いた絵です。 この期に及んで、二人の視線は最後まで交差することがなく、暗示的です。 また、人物を中心にして、スポットライトを当てたように明暗を描き、肌を抜けるように白く浮かびあがっらせ、大変印象的な絵になっています。 ちょっと肉感的な肌の描写と、まるで羽毛布団の様にボリュームのあるひだに包まれた衣装。 ロココらしい絵です。 フラゴナールの絵は、何点かありましたが、ウッキーはこれが一番気に入りました。 フラゴナールの初期の傑作とされ、ピンクと青の使い方には師匠ブーシェの影響が残っていると言われています。

angers3.jpg (20225 バイト)次の1点は、ワトー(1684〜1721)の「待ち受けられる愛の宣言」という作品。 ワトーと言えば「シテール島の巡礼」(1717年ルーブル美術館蔵)が代表作です。 これら両方ともそうですが、当時の服装の人々が木陰で愉快に語り合ったり、踊りに興じている様を描いてあります。 このような絵を総称して、「雅宴画」と呼ばれています。 その端緒を開いたのが、このワトーです。 「待ち受けられる愛の宣言」は、気の小さい男が、なかなか愛を告白できずに、もじもじ下を向いている横で、その告白の時をじっと待っている若い女性が佇んでいる、という構図です。 人物像が全部右側に偏った珍しいバランスです。 左の絵は、ワトangers4.jpg (15018 バイト)ーの弟子に当たるパテールという画家の「水浴する女性たち」です。 ワトーの一派には珍しく、屋外の女性の裸体をモチーフにしています。 ロココの時期の絵には、なまめましいヌードの絵が多くありますが、ワトーは死の間際に、自分が描いたこのような絵を処分するように、弟子に依頼したそうで、ほとんど残っていません。

angers5.jpg (20217 バイト)最後の写真はルヌヴーという画家の「ニンフたちに魅入られるイラス」という作品。 1865年の作品で、大変きれいな見栄えのする作品でした。 同じ裸婦を描いていても、ロココの頃の絵と随分感じが違います。 

ウッキーが行った日、会場では、青山学院大講師の矢野陽子さんの講演会も開かれて、絵も話も存分に楽しんだ一日になりました。 まもなく、ワールドサッカーの終盤を迎えますが、にわかサッカーファンが浮かれているのを目にすると、どこか軽妙、快楽的なロココの時代に通じる様に思えました。    

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