季節が木々を彩る時
item3
When the season paints the

*さいとまっぷ

*読み物

*写 真

*ぶろぐ

*りんく

*携帯さいと

<課 題3>
テーマ:悲しむ人
200字原稿×5枚

「一粒の言葉が目に滲みる」

人 物
尾上玲奈
(22)新米看護士
杉原早知
(35)先輩看護士
古西毅
(67)患者
古西弘子
(62)古西の妻

 

◎病院・病棟の廊下(真夜中)
   電気が消された真っ暗な廊下。
   病室の引き戸はすべて閉まり、廊下は誰の姿もなく、
   静まり返っている。
   その廊下の奥から明かりが見える。
   病室の一室から明かりが漏れている。
   その個室だけ電気がつけられ、引き戸の小窓か

   明かりと共に二人の看護士の姿が見える。

◎同・病室の中(真夜中)
   尾上玲奈
(22)が先輩看護士の杉原早知(35)と共に
   ベッドに横たわる古西毅
(67)の体を拭いている。
杉原
よし。次は背中拭こうか。尾上さん、古西さんの体支えてくれる?
 その間に私が
背中拭くから
玲奈
・・・はい」
   玲奈の表情はどこか暗く強ばっている。
   玲奈、古西の肩の下に右手を入れ、左手で古西の腰を持ち、
   抱き起こすようにして古西の体を右に向かせる。
杉原「声掛け忘れずに。いきなり動かしたら、古西さんが
 ビックリするでしょ」
玲奈「・・はい。すいません」
   玲奈、支えている古西の顔を見る。
   古西は目を閉じたまま、何の反応も見せない。

◎同・外来ロビー(真夜中)
   真っ暗なロビー。
   公衆電話で話す古西弘子
(62)
弘子「・・・・それじゃあ 
よろしくね」
   弘子、受話器を置いて小さく
息を漏らす
   
歩き出す弘子。

◎同・病室の中(真夜中)
   ドアを
ノックする音
杉原「はい」
   弘子が病室に入ってくる。その目は赤い。
弘子「よろしいですか?」
杉原「はい、今終りましたから」
   ベッド脇で古西を見つめている玲奈。
   古西は新品の浴衣に着替え
胸の上に手を組んで
   横になっている。
   弘子、玲奈の横に来て古西に呼びかける。
弘子「まあ 、すっかり綺麗にしてもろて。良かったね」
   弘子は古西の手に自分の手を重ねる。
弘子「・・・・お父さん、よう頑張ったね。ほんまによう頑張った」
   それを見た玲奈は咄嗟に上を見上げ
天井を見つめるが、
   すぐに古西に背を向けて顔を伏せる。
   杉原、玲奈の様子に気付く。
杉原「尾上さん、ここはいいから、これらの道具を片付けてきてくれる?」
玲奈「・・・・・はい・・」
   玲奈、顔を伏せて汗を拭うような仕草をしながら
   道具をまとめて抱え、病室から
出て行く。

◎同・ナースステーション(真夜中)
   ナースステーションの奥のパーテーションに隠れ、
   玲奈が必死に声を殺して肩を震わせている。
   杉原が戻って来て、椅子に座って一息付く。
杉原「奥さんの話によれば、もうじき親族の方が来るらしいよ。
 明け方には葬儀業者が」
玲奈「・・・・・」
   杉原、立ち上がって玲奈の元にやって来る。
杉原「ほらっ!しっかりせな!初めて受けもった患者さんやろ?
 見送るところまで仕事やで。そんな顔でどうするの?
 それで古西さんを送り出すの?」
   
首を振る玲奈。
杉原「そんな顔してたら、古西さんにまた先輩に怒られたんかって
 笑われる

   玲奈、笑い出
しながらも増々涙が溢れる。

<作者の言い
 今回テーマは「悲しみ」。今回程いろんな話が浮かんで書く事が楽なのは初めてですね〜。人生の中でどれほど悲しみを味わってることか!(苦笑(^_^;)
 話は作り物であっても、人物の感情はリアルでありたいと思っていて、私の場合、登場人物の感情を描く時は現実にあったことが多いです。それは自分であったり、友人であったり、家族であったり、自分が見たり聞いたり経験したりしたことが大きく反映されてます。それは無意識にそうなってたりする時もありますし、意図的にそうしたりとか。
 主人公・玲奈がある言葉で涙を流すところは、私の若い頃の経験(^_^;>じっと堪えて「大丈夫。大丈夫」って明るく振る舞ってたら、友人の何気ない気遣いのひと言で涙がボロボロ出てきたことが(笑)あらゆる経験も無駄じゃないんですね〜(ちょっと意味が違うぞc=(^_^ :)