<人 物> 木戸陽平(22)大学生 室和也(22)サークル仲間 老婦
◎大学のキャンパス内 駅に向かって歩いている木戸陽平(22) 後ろからスーツ姿の室和也(22)が走ってくる。 室「陽平!」 木戸、振り返って軽く手を挙げる。室がやってくると 木戸と室、並んで歩き出す。 木戸「これから面接か?」 室「いいや、合同説明会。ちっとも内定決まらないから、 もう、手当たり次第受けよう、と思ってさ。陽平の方は どう、就活は?」 木戸「明日、最終面接なんだ」 室「どこの会社?」 木戸「三星商社」 室「三星商社って言えば、一流商社じゃん。すげ〜な」 木戸「まだ受かったわけじゃないから」 室「でも、その顔だと自信あるんだろ?」 木戸、何も言わずに微笑む。
◎アパート・木戸の部屋(朝) 8畳程度の部屋。狭いながらも整然と片付けられている。 本棚には「SPI問題集」「絶対内定エントリーシート」 「面接術」など就職活動本が並んでいる。 壁にはクリーニングされたスーツが掛けられている ベッドで木戸が寝ている。木戸が寝返りをうつと、 その拍子にベッドボードから目覚まし時計が落ちてくる。 木戸、徐に時計を手に取って見る。 時計の針は四時半を指している。 木戸、再び寝ようとするが、もう一度時計を確認する。 時計の秒針は全く動いていない。 木戸「冗談だろ!?」 木戸、飛び起きて充電器に置いてる携帯電話を手に取る。 携帯のディスプレイは七時四十二分の表示。 木戸「マジかよ!?」 木戸、慌てて着替える。
◎同・自転車置き場(朝) 木戸、走ってくる。鞄を自転車の籠に放り込み、 自転車の鍵を外して乗る。違和感を覚える木戸。 自転車タイヤがパンクしている。 木戸「こんな時に!!」
◎住宅街(朝) 鞄を抱えて全力疾走する木戸。
◎私鉄の駅・前(朝) 通勤ラッシュで沢山の人が駅に流れ込んでいる。 木戸、人の流れに割り込むように走り抜けて行く。
◎同・切符売り場(朝) 切符の自動販売機の列に並ぶ木戸。 木戸の前にいた老婦が販売機の前で鞄から眼鏡を出して 掛けると、今度は販売機の表示を見つめて迷っている。 木戸、落ち着かない様子で腕時計と老婦を交互に見ている。
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