the strong and ephemeral |
ゾロ。 三本刀の、海賊狩り。 未来形の、大剣豪。 現在進行形の、借金王。 あんたが死んだら、あんたの血を吸い込んだその土を抉り取って、海の見える場所に、木の苗を植えてあげるわ。 ロビンとも話していたの。 あの人、あんたを気に入ってたから。 白い花を咲かせる木がいい。 そう言ったら、そうね、って淋しそうに笑ってた。 知ってた? ゾロ。 未来形の、大剣豪。 ロビンもあんたに惚れてたの。 十も上の女だから、立場くらいはわきまえているんだって。あんたの夢に、女は邪魔になるだけだって、ロビン、言ってたの。 ロビンは我慢したわ。 あんたに好きって言う事を。 でもあたしは我慢できなかった。 知ってほしかったのよ、あたしがここにいるってことを。 あんたの側に、いるってことを。 今は愛だの恋だの言ってる場合じゃないんだなんて、容赦なく言っちゃってくれてからに。あの瞬間、あんたあたしから逃れられなくなったのよ。あの瞬間、あんたあたしに借りを作ったの。あたしが受けた心的ストレスと言っちゃあ、そりゃもう十億ベリーにも値するわ。だから、あんたに、十億ベリー、貸しておくわよ。ちゃんと返しなさい。約束は守るんでしょう。 ゾロ。 あんたには、白い花がきっとよく似合う。 一年に一度、花を咲かせる木。 放っておいても、あんたの血を吸っているんだから、きっとしぶとく育つでしょう。 きっとしぶとく、毎年、綺麗な花を咲かせるでしょう。 白い花が咲くたびに、きっとあたし達、あんたに会いにくるわ。 それか、ねぇ、いっそ。 ここにひとつ家を建てて、あたし達、ここに住んでしまいましょうか。 大剣豪になりそこねた海賊王の右腕の男、ここに眠る。 なんて、よくありがちな文句でも書いてあげるわ。 大剣豪に憧れる馬鹿な剣士が、ひょっとしたらお墓参りにくるかもしれないわね。あんたって、意外と人気があったみたいだから。 どうせだったら、参拝料でも取ろうかしら。 十億ベリー、そうやって返してくれてもいいわ。 だけど、やめる。 あんたはきっと、ゆっくり眠りたいだろうから。 あれだけ甲板で昼寝してて、まだこれ以上眠らせる気なのって、ロビンがさっき呆れてたけど、あんたの寝てる姿を見るのは、結構好きなの。 幸せそうに眠る顔。 大きく開いた口。 目覚めた瞬間に遭遇する事が、どんなにか楽しみだったか、あんた、知ってる? 寝ぼけ眼でこっちを見て、目を擦るの。絶対右手で目を擦るの。 無防備で、無邪気な仕草。 信頼してるって言われてるみたいだった。 一年に一度。 白い花が咲く頃に、会いにくるわ。 グランドラインのどんな気候も、あたしは操ってみせる。 どんなところにいても、あいつら全員連れてきてあげる。 知っているでしょう? あたしは魔女なの。 天候すらも操るの。 だから、ゾロ。 約束は、守るから。 だから、ゾロ。 約束してちょうだい。 白い花が咲く頃まで、あたし達が生き抜けるように、見つめていて。 そして、護っていて。 約束よ。 |