いますぐもっと







 目が合った瞬間、なんとなくそんな気はしていたのだと、狭い場所に押し込まれながら古市は思う。ぬるりと唇に触れる熱くぬめった感触に目を閉じ口を開けば、待ち構えていたかのように押し入ってくる舌からはさっきまで飲んでいたコーヒーの味がする。息継ぎもさせないくらいの激しさで、男鹿の舌は古市の口内を貪る。苦しくて思わず眉を寄せ、喉を鳴らしても男鹿は気付きやしない。いや、気付いていても引くつもりはないだけなのか。宥めるように背を撫でる手がシャツを捲り上げてアンダーシャツと肌との隙間に入り込む。
「んっ、う…んぁ、お、が……ちょ……いき…」
「あ? イキそうなんか?」
 もう? と首を傾げる男鹿の背をバシッと手で叩く。ついでに喉の奥へと伸ばされる舌をがちんと噛むと、イッテー、と男鹿の顔がようやく離れた。
「違う! 息が苦しい!」
 ぜぇはぁと荒い息を繰り返し、古市は胸元を押さえる。
 学校のトイレに連れ込まれてからキスばかり続けていたので、口から溢れた唾液でシャツがぐっしょりだ。深い息を繰り返す間、じっと強い眼差しをもって男鹿は、お預けをされた忠犬のように待ち構えている。
 ようやく息が整い、よし、と頷くと、もういいか、と更に念押しをした男鹿が再び唇を寄せる。
「ん、んっ。ちょっと…血の味……」
「ふるいちが…ん……さっき噛んだとこ」
「あーごめん……」
 悪かったな、と思って、差し込まれた男鹿の舌の他とはかすかに感触の違うところを舐めていると、男鹿がきもちいいと嬉しそうに目を細める。普段は犬のようなのに、そう言う表情をする今ばかりは猫のようだと思う。
 唾液を滴らせ、熱い息を溢れさせながら、男鹿の手がズボンを脱がしにかかる。ベルトを外し、ボタンを外し、ジッパーを下すその手は淀みない。古市もまた男鹿のベルトとボタンを外し、ジッパーを下す。パンツの中に手を突っ込んで兆しているものを握りしめ上下に扱いてやると、しなくていい、と男鹿に止められた。
 なんで、と目を丸くすると、もう突っ込める、と恥ずかしそうに男鹿が言う。確かに握りしめたそれは完全に勃起していて、キスだけでこうなるなんて古市は驚きだ。
「後ろ向けよ」
 強請るように男鹿にそう言われ、古市はぐるりと背中を向ける。
 学校のトイレの狭い個室で、薄っぺらい壁に額を押し当てる。少し腰を突き出せば、慣れた手つきの男鹿が愛撫を施す。指を突っ込み古市の気持ちのいい場所を探り、閉じた口を広げようと更に指を足し左右へ開く。ぱくりと開いた後口にひやりと空気が触れる。
 早く熱いものが欲しい、と古市は口に出しかけ慌てて閉じる。
 学校のトイレで何言ってんだ、と頬に血を上らせる。
 授業中だからと言って石矢魔クラスの連中が大人しくしているとも限らない。部屋ひとつ隔てただけのここにふらふらとやってくる確率はものすごく高い。
 それなのにこんなところで男鹿とセックスしようとしている。
 ベル坊をヒルダに預け、あの何もかも悟りきったような顔のヒルダに送り出された。夏目の顔は、何もかもお見通しだとにこやかに微笑んでいた。姫川はにやにやと、これからお前らが何するか解ってんだぜ、と言いたそうだったし、ヒルダと寧々の顔は揃って苦虫をかみつぶしたようなもので、家まで我慢できねーのかよ、と言わんばかりだった。
 そんなことを思い出していた時に、ひたりと熱いものを後口に押し当てられ、古市はごくりと喉を鳴らす。
「入れるぞ」
「んっ、んぅーっ」
 声が漏れないようにぎゅっと唇を噛みしめると、ずるずると押し入る男鹿の指が、ふるいちばか、と口に触れる。
「唇、切れる」
「あっ…んっ、だ、だって……っ、声っ……出ちゃうっ」
 ひんっと喉を鳴らした古市の口に、男鹿の指が突っ込まれた。噛むならこれ噛め、と言われて、はいそうですかと歯を立てられるわけもない。古市だって自分が傷つくより男鹿が傷つく方が嫌だ。
 必死でそれを押し出そうと舌を押し付けると、ははっ、と男鹿が笑う。なんだよと振り返る古市の頬にこめかみにキスをして男鹿がゆっくりと腰を動かし始めた。
「気持ちいーぞ、それ」
「あっ、あぁ…っ、ふっ……んんっ」
 ゆっくりと押しては引く男鹿の動きに、古市は身体中を震わせる。隣の個室と隔てる薄い壁についた手がかたかたと震える。ぎゅうっと握りしめ、頬を壁に押し付けて腰をもっと突き出した。
 ゆっくりとした焦らすような動きは気持ちいいけれど、今はもっと激しくしてほしい。だって早く終わらせて戻らないと、ベル坊が泣いたら大変だし、授業が終わってしまったら他の生徒がやってくるかもしれない。
 焦る古市の意図に気付いたらしく、男鹿の動きがせわしなくなる。
「あ、あーっ…っ、んっ、ああっ」
 尻を強い力で掴まれる。
「声デケーよ」
 ぺちんと軽く叩かれて思わずぎゅっと男鹿を迎え入れている後口をぎゅっと締め上げてしまう。
「あっ、だ、って……我慢できね…っ…んっ」
 後孔が男鹿の先走りに濡れ、ぐちゅぐちゅと粘着質な音を立てる。滑りが尚更良くなって気持ち良さが倍増する。びくびくと震えるペニスを自ら扱こうと手を伸ばすと、触んなよ、と男鹿に止められた。
「後ろだけでイケんだろ」
「いっ…いけるけど……っ、あ、あとが…っ、大変…っ」
「ちゃんと連れて帰ってやっから、後ろだけでイケって」
 おら、と前立腺に当たる部分をごりごりと擦られる。抉るような動きに思わず逃げを打った古市の手が壁を掻く。
「ひっ…いぃ…いいっ、それっ、ああっ、だ、め……っ、きもちい……っ…んぁっ」
 びくびくとのた打ち回るような動きを、男鹿が抱きすくめて戒める。がっちりと固定されて動けないそこに叩きつけるような抽挿に古市は首を振った。
「あぅっ、あ、い、いく……いっちゃ……おが、おが…いくっ」
「イッていーぞ…! おれも出そーだし…っ」
「な、なかっ……中に出し…んぁっ」
「あー? ダメか?」
「ちが…っ、中に出して…っ! お、おれのっ、きもちいーとこに…っ、かけて…ッ、いっ、ん、あぁああっ!」
 男鹿の動きが一層早く強くなり、古市はただただその動きに耐えるしかない。びくびくと震える中にぴたりと添う男鹿が、くそ気持ちいい、と呟きそれすらにも古市は感じ入る。
「だめ、いく……いくっ……んぅうううううっ」
 声が我慢できないと男鹿を振り返ると、男鹿の大きな手が口を塞いでくれた。苦しいけれど仕方ない、これで声が少しでも抑えられる。男鹿の手の上から自分の手を重ねた時、男鹿がぐっと今までよりも強く古市の気持ちいい場所に先端を押し付ける。あ、大きくなった、と思った瞬間熱い飛沫がそこにかけられ、古市はその熱に身体を竦める。より強く男鹿のペニスを感じ、古市は身体を竦ませ達した。
「ひっん、んーっ、んんっ」
 びゅっびゅっと数度に分けて吐き出した精液が壁にぶつかり滴り落ちる。拭かなきゃ…、と思う反面、はーはーと荒い息を繰り返すだけの古市は身動きが取れない。がっちりと男鹿に抱きしめられ、ふるいち、と熱を帯びた声に呼ばれ振り返る。
 れろっと口を舐められて、ああキスかと目を閉じ口を開く。
「んー……んっ、んぅ…」
 嵐のような熱をまだ身体に篭らせたまま、男鹿と繋がり、キスを交わす。無理にねじった首が痛いけれど、そんなものこの快楽の前では無意味だ。
 男鹿が古市の頬を舐め、こめかみに唇を押し当てる。古市の身体の中に入ったままのペニスがぴくりと震え、古市は思わず、ん、と喉を鳴らす。
 妙に静かになった一瞬後、男鹿が、もっかい、と呟く。古市はあまりに想像通りのおねだりに思わずぶはっと吹き出し、笑い声をあげていた。






春コミ留守場組が、春コミを羨ましがりながらなんやかんや期間限定で上げてたので私も便乗したエア春コミ。
一日でピクシブからは削除しましたがこちらに再掲載で。
タイトルが思い出せず適当なものをつけてみた。タイトルすら満足に覚えられない私のお脳よ…。
ちなみに横の個室にはキラーマシーン阿部がいたと言うどうでもいい設定です。役得だな、阿部!