悪魔の虜


 ぶーん…、と身体の中から羽音のような音がする。小刻みに振動するそれは体内と陰核とに密着し、たまらない刺激を邦枝に与え続けていた。もうどれくらいこの責苦に耐えているのだろう。
 ヒルダが少し出かけると言って席を立ってからだから、もう一時間以上になるはずだ。気を抜けば荒い息の中に声が混じってしまいそうで必死でこらえる。飲み切れなかった唾液が溢れて唇の端を伝い、邦枝はそっと指先で拭い取った。
 時折、思い出したように強弱を変えるローターから逃れようとしてか、それとももっと快楽を得ようとしてか自分でも解らないけれど、ついつい腰が前に迫り出してしまう。このままでは椅子から滑り落ちてしまうと、座り直そうとしたその時、まるでタイミングを見計らっていたかのようにローターの動きが今までにない強さへと切り替わった。
 邦枝はビクッと竦み上がる。そのせいで体内のローターを締め付け、さらにそのせいで陰核に奇妙な形をしたローターの先を押し当てることになった。ぱっと目の前が白み、堪えきれない刺激に全身ががくがくと震える。中腰に立ち上がった姿勢のまま硬直していたが、あっと思った時にはもう派手に愛液をまき散らしていた。
「ひっ、あぁっ、あっ、だめっ、だめぇ…っ……漏れちゃっ……やぁああっ」
 椅子の肘掛を握りしめたまま、邦枝は椅子に座ることもできずにぎゅうっと身を竦める。ローターを入れたままの淫裂から透明の体液がまるでくじらの潮吹きのように勢いよく吹き出していて、止めようとしても止められない。
「やだっ……だめだめだめぇっ……! だめぇえっ」
 それどころかどうにかその潮吹きを止めようと股間に力を入れるけれど、そのせいで淫具をさらに咥え込み、余計に激しく腰を振る結果になった。
 下着がぐっしょりと濡れ、膝丈のスカートも股間の部分から下の色が変わってしまっている。内腿を伝う滴がぽたぽたと床に水たまりを作り、邦枝はあまりの恥ずかしさに顔が爆発するのではないかと思った。
 ヒルダに連れられて入ったのはそれなりに有名なホテルの一室だ。今日は思い存分甘やかしてやろうと微笑まれ、見つめるヒルダの瞳に胸を疼かせていたのに、ヒルダは男鹿だか古市だかに携帯電話で呼び出されて部屋を出て行ってしまった。帰ってくるまでの間これで遊んでいろとローターを仕込み、愛撫にもならないふれあいだけで身体が昂ぶっていた邦枝を置いて行ったのだ。
 大人しくテレビを見ていた邦枝だったけれど、さすがにもう堪えきれない。
 はぁはぁと荒く息を乱しながら、おもらしをしたかのようにびしょ濡れの下着を脱ごうとした。まだローターが動いているから足を引き抜くその時にも感じてしまってなかなかうまくいかない。
 右足を抜き、次は左足をと思ったその時、微妙にローターの当たる角度がずれる。ローターの強弱が変わったわけでもないのに背筋を走り抜ける電流のような快楽に、びしゃっと飛沫が漏れる。
「ぁっ、あぁんっ」
 吹き出した熱いそれが自らの腕にかかり、すぐに冷えて行く。ぐっしょりと濡れた下着をどうにか脱ぎ捨て、邦枝は股に手を伸ばした。ぶるぶると激しく動く玩具に手をかけぐっと強く押し付けると、今まで以上の快楽が押し寄せる。
「あぁーっ、だめぇっ、だめぇ…っ! またいく、またいっちゃうぅうっ」
 ぐいぐいといつもヒルダがやるように奥へ奥へと抉るように押し付ける。目を閉じてヒルダにされているときのことを思い描きながら、床にひっくり返って両足を大きく広げた。膝を立て、M字になった腰を上下へ振り立てれば、ほう、いい恰好だな、とヒルダはいつもほくそ笑む。ぺろりと舌なめずりするヒルダのその艶めかしいことと言ったら、わずかに持ち上げられたその唇だけで邦枝は常より感じ入ることができた。
「あぁんっ、ヒ…ヒルダさ…っ、ヒルダさんっ……! いくっ、いっちゃうの…っ、またいっちゃうのぉっ!」
「ほう、それで何度目だ?」
 幻聴でないヒルダの声が頭上から降り、邦枝はハッと目を見開く。逆さまになった視界の中、ヒルダのむっちりとした白い足と黒いゴスロリメイド服、その向こうにそびえるような胸があり、さらにその向こうに面白そうに目を細めているヒルダの顔があった。
「い、いつ帰って……」
「たった今だ。ドアを開けたらすごい声がしたものでな。誰も廊下を通っていなくて残念だったな。誰かいれば貴様のその無様な姿を見せてやったものを」
 にぃと持ち上げられる唇が、それで、と形作る。
「次で何度目だ? この淫乱が。私が出かけていた一時間足らずの間に何度いったのだ?」
 うん、と首を傾げたヒルダがかつかつとヒールを鳴らしながら邦枝の横を回り込む。M字に開いた足の間に膝をつき、髪に隠れていない方の目が大きく見開かれた。
「随分と派手に漏らしたものだな。びしょびしょではないか」
「あっ、やだやだ見ないでっ」
 慌てて閉じようとする邦枝の膝を押さえ、ヒルダは強引に割り開かせる。露わになった股間はぐっしょりと濡れ突き刺さる玩具がまだぶーんと動いている。
「ハッ、このように尻を振り回して何が嫌なものか」
「あんっ、やぁっ、あぁんっ」
「さぁ早く言わぬか。次で何度目だ?」
「さ、三度目…っ、三度目ぇっ」
「では、さっさとイッてしまえ」
 ヒルダの手が玩具にかかり、ぐいっと奥へ押し込む。ついでとばかりに陰核を殊更むき出しにするように指が添えらえ、邦枝はカッと目を見開いた。
「いやぁああっ、あぁっ、いくぅううっ」
 ばさばさと振り乱される黒い髪に対照的な白い肌が映える。快楽に上気した白い肌は段々と桜色に染まり、己が刀技名を体現しているようだ。
「あ、くぅっ、ひっあぁああああーっ」
 ヒルダの指がぐいぐいと痛いくらいに陰核を刺激する。ローターの振動もあるのだから尚更強い刺激となって邦枝の身体の中を電流が駆け抜け、あっと気付いた時にはとんでもない嬌声とともにまた愛液を飛沫上げていた。
「はっ……これはまた、貴様三度目であろう? 良くこれだけため込んでおけるものだな」
「いやぁぁっ、やだっ、やめてぇっ、ああんっ、ぐりぐりしないでぇっ」
 びしゃびしゃと辺りにまき散らされる飛沫をおかしそうに見おろし、ヒルダは戯れに玩具で淫裂を抉る。その度にびゅっびゅっと吹き出す愛液に、ヒルダはますます目を輝かせる。
「どれだけ出るか試してみるか」
「やっ、そんな、出ない……も、もう出ない…あぁっ」
 ぶいーんと激しく動き出したローターは先ほどのではマックスの激しさではなかったようだ。更に激しく抉る動きに、邦枝は床の上でのた打ち回る。だめだめと大声で喚きながらも、その実腰はもっともっとと動いているのだから身体は正直だ。
「あはぁっ……はぁああんっ、いや、いっちゃ……またいっちゃうぅう…っ、くっぁああっ」
「ほう、また吹いたか」
 先ほどよりも微量ではあるが、確かにびゅっびゅっと吹き出した愛液にヒルダは満足そうだ。激しく動く玩具をそのままにすっと立ち上がると、身悶えながら見上げる邦枝だの前で黒いゴスロリメイド服を脱ぎ捨てる。恥ずかしげもなく一糸まとわぬ姿となったヒルダの美しい肢体が、ゆったりと椅子に腰を下す。
「さぁ来い、邦枝」
 ヒルダは長い足を大きく左右へ開き、金色の陰毛に隠されている部分を自らの指で露わにした。そこは邦枝の痴態のせいか潤んでいるように見え、邦枝はごくりと喉を鳴らす。
「うまくできたら、褒美にキスをしてやろう」
 さぁ、と微笑むヒルダに促され、邦枝は身を起こす。胎内で轟く玩具に息を乱しながら四つん這いでヒルダの足元にすり寄る。見下ろす悪魔の眼差しにまた蜜が溢れるのを感じながら、邦枝はそっと舌を伸ばした。



おっぱいとおっぱいの戯れは素晴らしい。
ヒル邦好きなんです。邦枝は若干(?)M入ってますが、私の好みです。
ヒルダにおいしく調教されてしまってちょうだいね。うふふ。