〜体温と身体の関係〜



水の中で人間の体温はどうなるのでしょう
水というのは空気と比べるとはるかに熱を伝えやすい性質を持ています。このため人間の体からは空気中にいる時の25倍の勢いで熱が奪われていきます。水温が30℃だからと言っても、人間の体温と比べれば7℃も低いわけですから、どんどん熱が奪われてしまうことには変わりありません。体が冷えて死に至るプロセスは図1〜図6のようになっています。

図1 人間の体は常に表面から熱を奪われているが暖かい血液を循環させることで体温が下がらないように調整されている。
図2
水中では体の熱は空気中の25倍の勢いで奪われ、体温は急激に下がり始める。このため、体は皮膚の近くの血の流れを少なくして、体の奥の方に熱をためようとする。
図3 体の奥まで冷えてくると「ふるえ」が起こって熱を出し、体温の低下を防ごうとする。「ふるえ」は体温が35度の時がピークで、それ以下になると反対に弱くなってくる。
図4 体温が33度になると体の方は敗北宣言、次第に意識が混濁したり、代謝機能がおかしくなってくる。この辺で救助されれば助かるのだが、時間が経てば経つほど体温は下がり、危ない状態になってくる。
図5 体温が28度まで下がると意識がなくなって昏睡状態に陥る。ここで波にもまれてうつぶせになったらもうおしまい。もちろん助けを呼ぶこともできない。
図6 体温が25度まで下がると、体のいろいろな機能が停止してあの世行きとなる。人体実験の結果でもそうなっているらしいが、そんな人体実験をしたんだろうか。本当ならそっちの方が恐ろしい。

まとめ

もし、海の上でトラブって流されたら、風に奪われる熱よりも水に奪われる熱の方が大きいので、どんなに寒くても、とにかくボードの上に乗って水中に体を沈めないことです。あとはじっと助けを待つしかありません。寒いからといってむやみに体を動かすのは逆効果です。
ある調査によると、水温が25度以上のときにはじっとしているよりも体を動かした方が体温の低下は少ないのですが、それ以下になるとじっとしている方が体温の低下は維持できるそうです。
一緒に海に行って友達の姿が見えなくなったら、とにかく早めに助けを呼びましょう。生存時間4〜5時間の内の1時間を「どうしたんだろうね」という雑談でつぶしてしまうのは、それこそ友達を見殺しにするようなものです。
とにかくこれもライフジャケットを着けていての話。せめて、ものすごく寒い日やオフショアの時にはかっこ悪くてもライフジャケットを付けたほうが絶対いいです。


冬の日本近海の生存可能時間
(ライフジャケットを着けて浮いていても、日本近海では半日以上生き延びることは難しい)

冬の日本近海において軽装にライフジャケットで海に転落したときの海水温と生存期間の関係を計算する式まであるのがわかりました。この式に日本の近海の海水温をあてはめて計算してみると、本州の近海では半日以上生きるのも困難なのです。沖縄の近海でもせいぜい1日。北の方では数時間しか生きられません。
ウインドの場合はドライスーツを着ているので熱が奪われるスピードは多少は遅いですがその差はびびたるものです。ましてウインドはダイビングと比べて孤独な漂流になりやすいので精神的にはもっと過酷な状態になりやすいといえるでしょう。
海岸近くの海水は沖の海水よりも気温の影響を受けやすく冷たいので、この生存時間はさらに縮まるとみていいでしょう。



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