知的障害は以前、知恵遅れ、精神遅滞、精神薄弱といった言葉で言い表されていました。現在では知的障害に統一され、一般的にも、また法律の中でも知的障害が使用されるようになりました。
 

医学的理解


知的障害の診断


知的障害者の行動
医学的理解
≪定義≫
知的能力の発達が遅れている状態
≪総患者数≫
55万人(平成25年度末 療育手帳保持者)
≪原因≫
乳幼児から現れる知的能力の発達遅延です。その後の学習や社会適応に障害があります。出生前、出生時、出生後のさまざまな原因でおこります。
≪症状≫
症状の程度により、4段階(最重度、重度、中等度、軽度)に分けられます。
≪診断≫
知的能力の程度は標準知能テストなどで診断します。
≪治療≫
個別的に教育プログラムを立案し実行することと家族の援助とカウンセリング特に必要です。
≪病後の経過≫
個人差が大きいのですが、生涯にわたってのサポートが必要です。
知的障害の診断
 知的障害の診断は、知的能力と適応行動の両面から行われます。知的能力は主に知能テストを中心とした諸検査によって測定されます。適応行動は、環境に適応し社会生活を営むために必要な行動のことです。ここで知っておきたいことは、知能テストの結果と適応行動に示される社会生活能力とは必ずしも対応するとは限らないこと、環境的あるいは情緒的な要因などで知能テストの得点は影響を受けることがあるということです。つまり、IQが高かければ(低ければ)社会生活能力は高い(低い)とはいえないこと、また社会生活能力はいうまでもなくIQも必ずしも不変のものではないということです。
 また、障害の程度を示すための分類(軽度、重度など)についても、軽度だから援助は少なくてもよい、あるいは重度だから援助は難しいと考えがちですが、それは一概に言うことはできません。たとえば、ことばによる会話がある程度できる場合、障害の程度は比較的軽いと判断されることがあります。しかし、そのような人でも自分の考えや感情を伝えることや他者を理解する上での大きな困難さに出会い、解決できずに困ってしまうことが多いようです。ことばによる会話の能力は高ければ、生活する環境は広がりやすくなりますが、それにつれてその困難さはより多様で複雑になります。その困難さの軽減や解消は、その人にとっては決して軽い問題ではないのです。
知的障害者の行動
 知的障害者の行動を取り上げるなかで、多動、常同(無意味な同じ運動を機械的に長くくり返し続ける)、自閉という言葉をよく耳にします。
 多動は幼少期によくみられ、思春期になるとむしろ寡動に移行していくようです。いずれにしても多動傾向にあると、落ち着きがなく、注意集中が困難になり、目的をもった行動を行おうとしないことが問題になるようです。この多動傾向の原因は種々あるようですが、大切なことは本人が生活していくなかでの一表現としての行動様式であり、決して固定的にとらえられるものではないということです。つまり問題の解決を本人のみに求めるのではなく、生活環境を改善していくことも重要な問題解決の方法です。たとえば落ち着きがなく、注意集中が困難な場合、視覚的な刺激、聴覚的な刺激の少ない環境を設定すると、落ち着きて課題に集中できるなど、劇的に問題解決に至る場合があります。同様に常同、自閉も考えられると思われます。
 このように考えると、問題の本質は知的障害者をとりまく周囲の人々のなかに隠されているのではないでしょうか。 

長寿社会開発センター 発行 ホームヘルパー養成研修テキストより抜粋

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