ファンタジー・絵本・神話

ゲド戦記シリーズは私の宝物のようなものです。
著者のアーシュラ・K・ル=グウィンのお父さんは有名な文化人類学者でお母さんは作家でもあります。
お父さんはインディアンの人たちの文化についても研究していて
その関係でアーシュラは幼い頃、少数インディアンの生き残りイシーから
ネイティブアメリカンの生き方考え方を肌で学んでいます。
このゲド戦記にもその体験は色濃く現れていて、アーシュラは西洋人であるにもかかわらず
この作品には、東洋の陰陽論や枯れの美学にも通じる深さがあります。
そういう物語を東洋人ではなく西洋人のアーシュラが書いたということに興味を感じます。

 主人公のペネロピーはお母さんの田舎にやってきます。
そこは古いお家。
ふとしたことで彼女はそこで16世紀繰り広げられていた
王位継承権にまつわる事件に巻きこまれます。
今と16世紀が交錯して
なんとも幻想的な不思議な世界に読んでいる私たちも
引き込まれます。
 読み終わったあと
切なさと美しさとやさしさとを感じる絵画のようなお話。
 大切な1冊にしたい本です。

カニグズバーグの作品は大好きですが
この800番への旅は特にお気に入りです。
母親が再婚し新婚旅行に行くあいだ
マクシミリアン少年は離婚した父親に預けられます。
 貧しい父親との生活に最初マクシミリアンは
不満でいっぱいですが、
さまざまな出会いと経験を通して
今までとは違った価値観を取り入れていきます。
 「ココロからホントにアリガトウと思うときにいう
特別のアリガトウがあれば良いのに・・・」
この部分は私が特に好きなところ
ちょっぴりタカピーなマクシミリアンが
感謝ということを知るところです。

これもカニグズバーグの作品です。
ジョコンダ夫人というのはあのモナリザのモデルといわれた人で、
物語はレオナルドダビンチが主人公です。
 この本には天才ダビンチではなく、
ひとりの人として悩んだり憂いたりするダビンチが描かれてあります。
この物語のもうひとりの主人公サライは
 ダビンチの事が書かれれてある他の本ではほとんど相手にされていませんが実再の人物です。
カニグズバーグは科学者でもあって調査が綿密で、
話の切り口が独創的で好きです。

孤児のアンナは夏休みに海辺の町にやってきます。
そこには不思議な館があって
その家に住んでいる
これまた不思議な女の子マーニーと出会い、
ふたりは友達になります。
 でもマーニーは実は・・・
それは読んでのお楽しみ!
もうそんなに子どもでもなく
かといって大人でもない、
中途半端で
なんとなく孤独でなんとなくセンチメンタルな10代の女の子のココロの動き。
イギリスの田舎町の風景。
そして、そんなモラトリアムな時間を終らせていく
アンナ。
ココロを思春期に帰らせてくれる一冊です。

←1は≪陰≫おはなしです。
ゲドは魔法学校でもずば抜けた能力を持っていました。
しかし奢りのため陰を呼び出してしまうのです。
 ≪陰≫は昔からさまざまな物語で語られてきた
深いテーマです。

2巻からゲドは援助者として活躍します      →
暗黒の地下迷宮で大巫女として育てられた
アルハが一少女テーナーとしての自分に目覚めていく
過程が描かれてあります。
2巻のテーマは≪自由≫人は自由になりたいと
言いながら自由を何よりも畏れるのです。

←大賢人となったゲドは、若いアレン王子とともに
死の国へ向かいます。
この物語のメロディとして表を流れるのはアレン王子の
ヒーロー物語ですが、底を流れる低音部分は
陰陽論だと思います。
正義=光=真の者、という単純なヒーローではなく
ここでは、真の者=光と陰を包括するの者、
として描かれています。
そこが他のヒーロー者と違うところです。

次の2巻はもう子どもの読み物の域を超えている
と思います。
←死の国での戦いで力を尽くすしたゲドは
いまやひとりの老いた老人です。
魔法の力をなくし老いた老人として暮らすゲドのところに
かつで暗黒の大巫女だったテーナーがやってきます。
テーナーはあのあとごく普通の主婦としての人生を選びました。
今やテーナーもだってもういいおばさんです。
かつてファンタジーの世界で活躍した二人は
今度は≪現実≫の世界で寄り添います。

故郷の島で静かにテーナーと養女テハヌーと暮らすゲド。→
この物語の主人公はテハヌーでしょう。
テハヌーは大きなやけどの跡をもつ虐げられた少女
でもその本当の姿は・・・
愛のさまざまなあり方を伴奏にこの物語で語られているのは
≪共存≫のテーマだと思います。
異質なもの同士が共に在るということは・・
これこそ自分自身は白人であり、かつてインディアンと暮らした
アーシュラの祈りに似た物語です。

 不思議なことに同じようなテーマの神話が
国を越え文化を越えて存在するのはなぜでしょう?
神話の中には私たちの心の原点があります。
 私たちの生活はずいぶんと西洋風になりました。
しかし、私たちの血の中に流れる≪日本人としてのココロ≫は
そう簡単にはかわらないのだと思います。
古事記と日本書紀を読み解きながら、
人の心の原点、日本人の心の原点に触れてみてください。

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