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“Tubular Bells” By Mike Oldfield (Music CD) |
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| 総演奏時間48分58秒という畢生の大作... だがこの長さをだれずに聴かせる才能こそ恐るべし |
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| 私のレコード棚にはまだまだ未紹介の名盤が眠っている。今日ご紹介するのはいまだにプログレッシブ・ロックにおける歴史的名盤と言われ続けるマイク・オールドフィールドの『チューブラー・ベルズ』。 マイク・オールドフィールドというアーチストはある種とらえ所がない。いきなり名盤『チューブラー・ベルズ』を発表して神格化されてしまったためかもしれない。またそもそもどういう楽器を演奏する人かも曖昧だ。高校生の頃よく読んでいた雑誌(ミュージック・ライフ)の人気投票は楽器別になっていたが“マルチ・インストゥルメンタリスト”という枠があって彼はそこにエントリーされていた。 しかしもちろん突然現れた訳ではない。最初は共に幼い頃からピアノやギターを学んだ姉のサリーとサリアンジーというデュオを結成、1968年(15歳の時だ!)に作品集を1枚残しているが以降はセッション・ミュージシャンとして活動。一時期は英国のサイケデリックロッカー、ケヴィン・エアーズのバックバンドでベースを弾いていたことが確認されている。1972年、ヴァージン・レコードを創始したリチャード・ブランソンが彼の才能を見初め録音のために1年間スタジオを借り切ってくれた。そして誕生したのが1973年発表の『チューブラー・ベルズ』である。 この作品集、2曲しか収録されていない。演奏時間は「パート1」が25分37秒、「パート2」が23分21秒。ただしレコードの時代はA面とB面に分かれるのはどうしようもなかった。おそらく「チューブラー・ベルズ」という曲はCDの時代に生まれたら1曲48分58秒という畢生の大作となったに違いない。ではここでこの恐るべき曲を実況中継...。 出だしはあのあまりにも有名な主旋律。演奏開始50秒あたりからベースやソリッドなエレキギターのカッティング、1分40秒ぐらいからピアノが入る。3分ぐらいからはフルートのように聴こえるシンセサイザーが入り左右で鳴るツインのエレキギターのメロディに移っていく。4分過ぎからメロディが展開、アコースティックギターの印象深いメロディが弾かれる。5分20秒あたりからはさらに展開がみられ6分あたりではかなりロック的なアプローチに。7分45秒、主旋律を一度分解して組み立て直したような旋律がアコースティックな楽器で奏でられつつスペーシーな音の広がりを見せた後、バラード風の展開に。11分を越えたあたりからは日本人の琴線にも触れそうな哀愁のメロディが登場。13分30秒、再びロックなアプローチへ(途中激しいエレキギターのカッティングが聴ける)。一瞬鐘の音が鳴り響いた後でアコースティックギターを使ったトラッドな演奏も入るが17分あたりからはまた趣が変わりこの作品の副旋律といってもいいメロディが登場。終盤19分40秒以降はゲストであるボンゾ・ドッグ・バンドのヴィヴィアン・スタンシャルという人が順番に楽器の名前を言いその音が重なっていく。グランドピアノ、ベースギター、マンドリン... そして最後はもちろんチューブラー・ベルズ! 言い忘れていたがこれは楽器の名前である。様々な楽器が織りなす一大ハーモニーがいつしか女性のハーモニーコーラスになり最後はアコースティックギターの独奏で「パート1」が終了。 2400回もの多重録音を行った、と言われる作品である。なるほど、と思うがこの長さをだれずに聴かせる才能こそ恐るべしである。さて「パート2」はまたしても主旋律をバラして再構築したようなメロディから始まる(こうやって聴くとミニマル・ミュージックとも言える)。ある種爽やかなトラッドフォーク風の楽器構成と演奏は6分を越えたあらりから徐々に変化を見せ始め8分ぐらいになると印象的なエレキギターのトレモロ、女声コーラスが絡み、9分あたりにはティンパニ?が鳴り始めマイナー調に移行。11分45秒あたりにはロック調に転じ訳の分からない狼男みたいな声?が挿入される(ちょっとビートルズの「アイ・アム・ザ・ウォーラス」みたいな雰囲気)。13分30秒あたりからはロック・シンフォニーみたいな展開になるが16分30秒、突然一瞬のブレイクからメロトロンが鳴りだしプログレッシヴ・ロックのフォーマットに入る。21分45秒からは一転して明るいトラッド・ナンバー「セイラーズ・ホーンパイプ」で壮大な作品集は幕を閉じる。 もちろんこの曲の大幅編集盤が映画「エクソシスト」のテーマ曲に採用されたのは衆知の事実であろう。マイク・オールドフィールドはその後も「ハージェスト・リッジ」「オマドーン」等の同系列の大作作品を発表、評価を絶対的なものにした。一時期は重圧に負けて療養生活をしていた時もあったようだが、近年はライブにも力を入れ、女性ボーカルをフューチャーした普通のポップミュージック「ムーンライト・シャドー」をヨーロッパ全域でヒット(日本でも車か何かのCMで流れてた!)させる等多彩な活動を行っている。という訳で『チューブラー・ベルズ』は“やはり天才が作り出すものは一味違う”と変に納得してしまう凄い作品集である。 | |