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“Let It Flow” By Dave Mason (Music CD) |
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| 行き着くところいぶし銀である点が最大の魅力... だからこそ肩肘張らず聴きたいものだ | |
| 新しい年になって早くも1ヵ月が経過した。そんな忙しない時こそレイドバック? 今日はデイヴ・メイスンの『流れるままに』をご紹介してみよう。 デイヴ・メイスンと聞いてもピンとこない人が多いと思う。しかしロックの歴史においてはそれなりの位置を占めるギタリストである。彼の名が燦然と輝いたのはトラフィックというバンドが登場した時であろう。トラフィックは若き天才ボーカリスト/キーボードプレイヤーとして話題を呼んだスティーヴ・ウインウッドがスペンサー・デイヴィス・グループを脱退後に結成したバンドで、そのギタリストに収まったのがデイヴ・メイスンである。デビュー作「ミスター・ファンタジー」が大ヒット(1967年)となり、デイヴを含むメンバーの一部がジミ・ヘンドリックスの名盤「エレクトリック・レディランド」の録音に参加するなど一時期は飛ぶ鳥を落とす勢いであった。 ところが翌年彼は第2作発表後にトラフィックを脱退、ソロアーチストとしての道を歩み始める。しかし気の毒なことにレコード会社との契約上のトラブルが発生し本格的な活躍は1973年あたりから。そんな彼の70年代の大きな特長は1975年リリースの「スプリット・ココナッツ」であろう。エリック・クラプトンが発表した作品集「461オーシャン・ブールバード」あたりから“レイドバック”ブームが巻き起こったが、これはまさにデイヴ風レイドバック作品であった。 そして今日ご紹介するのが1977年の『流れるままに』。基本的には“レイドバック”な雰囲気が漂うが3枚のシングルヒットを生み出したという意味で最も商業的に成功した作品集だと言える。冒頭は最初のシングルとなった「ハイな気分」。英国はウスターの出身なのだがアメリカのジミー・バフェットあたりを彷彿とさせるトロピカルで垢抜けた雰囲気が溢れる。残念ながらこの曲は全米89位止まりだったが続く「ウィ・ジャスト・ディスアグリー」はアコースティックギターをベースにさりげないストリングスと爽やかなコーラスで話題沸騰、これが12位とブレイク、ついに彼の名は一般の人達にも浸透?した。アコースティックのアルペジオと哀愁のメロディが印象的な「ミスティック・トラベラー」、ブルージーなギターから入りつつもイーグルスっぽく展開するバラード「スペンド・ユア・ライフ・ウィズ・ミー」となるほど売れるな!と思う仕上がりである。 しかしくにゃくにゃの音ばかり出している訳ではない。「テイキン・ザ・タイム・トゥ・ファインド」はファンキーなリズムギターに彼の特長である粘着質の引っ張るようなギターソロが絡む。全米45位まで上昇したアップテンポなタイトルトラック「流れるままに」はキャッチーなリフレイン(正確には作品集のタイトルは“Let It Flow”のみ。この曲のタイトルは“Let It Go, Let It Flow”)が耳に残る佳曲。デイヴの作品集には皆勤賞的に参加しているマイク・フィニガンのキーボードも利いている。またツインで奏でられるもう一本のギターはこちらも皆勤賞のジム・クリューガー。『流れるままに』は演奏も充実した作品集である。 女性コーラスとブラスで引き立つ「イッツ・オールライト」に続いては、CSN&Yのスティーヴン・スティルスとクラプトンなどのバックシンガーで有名なイヴォンヌ・エリマンがコーラスを担当する感動的な「めぐりゆく季節」。デイヴのボーカルも味わい深いがこうなるともはや全然英国的ではない...。そして作品集は「ユー・ジャスト・ハフ・トゥ・ウェイト・ナウ」を経てアーニー・ワッツのサックスも入るフュージョンチックな趣もある終曲「ホワット・ドゥ・ウィ・ガット・ヒア」で幕を閉じる。 何が凄い?と思われるギタリストだが行き着くところいぶし銀である点がデイヴ・メイスンの最大の魅力である。名前こそ表に出ないがローリング・ストーンズやデレク&ザ・ドミノスのセッションに加わったり、ジョージ・ハリスンやポール・マッカートニーと交流があったり、ある時期(1995年頃)にはフリートウッド・マックに加わるなどその活動もまさに“流れるままに”。そんな彼の音楽だからこそ肩肘張らず聴きたいものである。 | |