続・BOY&GIRL

13






     
アキラに会えるという希望とともに
戻れなかったらどうしようという悲観もある。

本の少しの間ならこの状況を楽観視することも出来た。
だからもう一人のヒカルに「考えよう」と言えたのだ。
だが入れ替わってすでに10日が経ってる。
その間に接触は少なかったいえアキラとも会っていた。
そしてあれからヒカルとリンクすることも出来ないでいる。

考えたってどうしようもないことなのはわかっていても
勝手に気持ちは廻った。
だから逆に納得いくまで考えるのをやめなかった。


もし、ずっとこのまま戻れなかったらオレはどうなるのだろう。

ひょっとしたらこっちの世界が本物で今までの女の姿が
仮初めなんじゃないのか。急に今までの自分の存在があやふやな
ものになったような気がした。

もし別の世界でなく一つの世界に男のヒカルと女のヒカル
の二人が存在したのなら。
いろいろな過程を考えて立ち止まった。

もしオレとヒカルが同じ世界に存在したならアキラはどちらを
選んだだろうか?女のオレ、それともあいつ?

そう考えたときオレはあまりにも自信のない自分に気付いた。
アキラと並んで生きていくのはあいつの方がふさわしいんじゃないのか。

そんな風に思った自分自身が情けなくなった。
「オレだって負けてなんかいない。」
「オレがこんな考えだから男のヒカルと入れ違ったんじゃねえか?」


目を閉じ,それでもこの世界から逃げるように手で視界を遮った。
わからなかった。
向こうのヒカルが言った通りオレにだって問題がある。

「アキラ・・・・。」

求めるように腕をのばした。
いつも傍にあった腕に縋り付こうとしてまたしても自分の弱さに
首を振った。

それでもアキラを求める自分がいた。

『ヒカル…。』

耳元に残る熱い声を思い出し体が震えた。


こっちに来る前の晩嫉妬したアキラは帰宅するなりヒカルをベッドに縫い付け
腕を縛った。

「嫌だ。嫌だ。」

手足をばたつかせ泣き叫んだ。怖かった。

けれどそれだけじゃない感覚もあった。強く求められることにヒカルは悦びも
感じてた。だからあんなアキラをますます煽るように反抗的な
態度を取ったんだと思う。

それが今とても醜く感じてる。
オレはアキラに媚びようとしてたんじゃないか?


きっと男のあいつはそんなことはしない。
性別は関係ないと思っても現実は立場は違う。
いっそこのままでいた方がいいかもしれない・・・。

そう思った瞬間これまでのオレをアキラを否定してしまったような
気がした。





わからない。


ぎゅっと抱き寄せられたアキラの腕を思い出しオレは空を抱いた。


目が覚めたらこのまま元の自分に戻っていたらいいのに・・・。
ただひたすらに今会いたかった。

目を閉じるとそこに焦がれたアキラがいた。



オレは夢の中でアキラに抱かれた。







オレが目を覚ましたのは衝撃が下半身に走ったからだった。
初めての感覚だった。

気もちいいとかそんな生半可なものじゃなかった。
それはホンの一瞬ではあったけど。

ガバっと起き上がったオレは唖然とした。

「これって、・・・。」

まるでおねしょをしてしまった
ような。一瞬の快楽の後に残ったのは気持ち悪さと後ろめたさだった。


特有の匂いに気付いてオレは顔をしかめた。
たぶん生理的なものだと自分に言い聞かせた。
それでも昨夜の自分の邪な
感情が引き起こしたものだと理解できた。

親の目を盗むように風呂に入って盛大に溜息をついた。
そして頭を冷やすように冷たいシャワーを浴びせた。


「・・・たくお前の男の体ってどうなってんだよ。」


自分の所業なのに悪態と溜息が出てそして恥ずかしさで顔が
真っ赤になった。

ひょっとしたらあいつも女の体になって振り回されるかもしれない
な。

それを想像するとなんとなく可笑しくなった。

きっとあいつも今頃試行錯誤しながらこっちに戻ろうとして
る。
そんな気がした。

「いつまでもくよくよしていられねえよな?」

だったらやってやろうじゃねえか。行動してもみないのにハナから
悩んでいた自分がバカらしくなった。

そうだ。ダメだったらその時考えればいい。
オレは一人じゃねえんだから。


そう、別の世界に生きていてもオレたちは繋がってる。

          

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12話からの繋がりがどうもいかん感じになってしまいました。   
しかもヒカルが悶々と考えてるだけのような・・・。
次は男の子ヒカル(外面は女の子)のお話の予定です。

  


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