ひかる茜雲


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部屋に戻ると緒方は飯も取らずヒカルを待っていた。

「すみません、遅くなりました!」

「構わん、それで佐為の所はどうだった?」

「勉強になったし、すごく楽しかった・・・それにオレもっともっと打ちたい」

緒方は眩しそうにヒカルを見つめた。

それからヒカルは自分が全く子供たちに勝てなかったことやアキラの
話、そして和谷や、佐為の道場では一番年長の伊角の話をした。

興奮醒めきぬヒカルの話を緒方はただ笑って聞いていた。



ヒカルは緒方に一局所望されるだろうと思ったが対局せぬまま
帳を下ろすことになった。
緒方の床の準備を終え、外に出ようとすると緒方に肩を掴まれた。

「どこに行くつもりだ?」

「どこってその・・・、御簾の外で待機を・・・」

声がどもってしまったのは仕方がない。緒方と寝る事を期待しては
いけないのだとヒカルは心の中で自身に叱咤した。

「オレと一緒に床につけばいい」

「それは・・・」

ヒカルが返事に困ると緒方は笑った。

「そういえば昨夜は一人で寝たのか?」

「昨夜は佐為と一緒でした」

佐為は親元を離れたヒカルが寂しいのではないかと気を利かせてくれた
のかもしれなかった。
佐為と布団を並べて夜中まで話をした。
緒方の事、アキラや道場の子供たちのこと、そしてお城碁の話。

まだまだいろんな話がしたかったのにいつの間にかヒカルは寝
てしまっていた。

ヒカルは佐為と知り合ってまだ間がなかったが、すぐに打ち解けた。
佐為は強いし、近寄りがたい美しさもあったが、内面は妙に子供っぽい
所もあって、ヒカルにとって師匠というよりも友達に近い存在になった。

そんなヒカルに緒方はなぜか不機嫌に顔をしかめた。

「佐為とまさか同じ床で寝たのか?」

「違う。布団を並べてそれで・・・」

慌ててヒカルは首を振った。

「まったく油断も隙もないな、まあ、あいつがお前をどうかするなんて
思ってはいないが・・・。」

緒方はヒカルの腕を掴むと布団に導いた。

ヒカルは諦めと同時に今晩も一緒に寝ることを許された事にどこかほっと
もしていた。


袴を落とし灯を落として、おずおずと緒方の横に入ると
背後から抱きしめられる。
初めは緊張したこの腕も今では心地よくヒカルを睡眠へと誘う。

そうしてヒカルが眠りに落ちようとした時、緒方の腕が
着物の中に伸びてきた。
はじめはヒカルの睡魔を邪魔するものではなかったが
それは次第にエスカレートしていき、ヒカルの着物の裾を割った。

寝相の悪いヒカルを諌めているのかと思ったが、そうではないようだった。

「あ、あの緒方様」

「しっ、声をだすな」

緒方の腕に急に力がこもり、息が耳にかかる。
裾を割った緒方の指の先にヒカルは信じられない思いで身をよじった。

「なっ・・・・」

何を?と言うつもりだったが、声を出すなと言われた事を思い出
し言葉を息を呑む。

その腕から逃れることはできなかった。
緒方は背後からヒカルをしっかりと羽交い絞めするように抱きしめていた。
ヒカルは訳がわからないままぎゅっと体を丸め込んだ。

そんなヒカルに緒方は背後で笑った気がした。

ヒカルの丸めこんだ足に挟まれた腕を緒方は無理に抜かずに足を
太腿を優しく撫で始めた。
そうするとヒカルはくすぐられたように体が震え、力が抜けていくようだった。

何をされるかわからない恐怖にも似た感覚と、体の中から湧き上がって
くるどうしようもない快楽が入り混じる。
ヒカルは思わず吐息を洩らした。

「ああっ」

その瞬間を見計らっていたように、ヒカルの力を失った肢体に
緒方の指が中心へと伸びた。

「どうしてこんな事・・・」

「声を出すな・・と言ったろう・・・が、オレもお前に一つだけ聞きたい。
こんな事をしたのは初めてか?」

こんな事が今のヒカルにはよくわからなかった。
ヒカルが思考を廻らす間にも緒方は手を休めなかった。
もう力を入れることが出来なかった。

「お・・・願いです、後生です」

「自分で、ここをこんな風に慰めたこともないのか?」

ヒカルはそれに反射的に首を振った。

「そうかっ」

緒方はただ満足そうに笑った。

「かわいい反応だ」

もう勘弁してくれとヒカルは頭を何度も振ったが緒方は許してはくれな
かった。



いつその行為が終わったのかもわからないまま、ヒカルは
いつの間にか緒方の腕の中で眠りに落ちていた。


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ここの所1話が短くて申し訳ないです。
オブラート包んだのかどうか、自分でもよくわからなくなりました(苦笑)
しかし・・このお話のヒカルは12歳なんだよなあ。いいのかこんな事して・・・・。今更・・・っか(苦)





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