暗闇の中で 8





               
夜はらんを抱きあげたまま空と直が監禁されていた部屋へと戻った。

「よるぅ?」

「心配するな。もうあいつはいねえよ。ただ朝が来るまでここにいるだけだ。」


夜は自分があけた壁の穴から部屋へと入るとらんをベットに下ろし自分は
らんのすぐ傍に腰掛けた。

潮騒の音が高い格子窓から聞こえていた。

「夜ここどこかの島だよね?」

「ああ。しかも無人島ってやつだ。あいつらここでやりたい放題やってたみてえだな。」

夜は先ほど目覚めたばかりだというのにすべてわかっているようだった。

「らんそれより体は大丈夫か?もうなんともねえか?」

「うん。ごめんね。」

言葉少なくらんが頷くと夜はらんの髪を優しくなでた。

「腹減ってんだろ?」


夜は耳元でそうつぶやくとらんの頬にチュッとやさしいキスを降らせた。
らんは体中が火照るように熱くなるのをかんじて下を向いた。
サキュバスの空腹というのはつもりはそういうことなのだ。

「どうした?らん。空を誘った時は大胆だったくせによ。」

「だってあの時は・・。」

とにかく空腹が原因で目覚めたばかりで状況がわかってなかったのだ。
それに・・・。

「僕 ・・・はじめてなんだよ。」

小声でらんが訴えると夜は笑った。

「ふ〜ん。サキュバスのくせにこういうことには不慣れってか。」

夜がらんの服に手をかけるとらんは抵抗するように上着を抑えた。

「夜だめだよ。」

「なんで・・?」

不機嫌になった夜にらんは困ったように目線をさまよわせた。

「だって僕お腹すいてんだよ。夜の精気まで吸ってしまうよ。」

「なんだ。らんはそんな事心配してたのか?」

夜は笑いながららんの小さな抵抗をよそに楽しそうにらんの体に口付けていく。

「あん!!よる。ダメ・・ダメだって。」

ダメだと言いながらも夜の与えてくれる快楽に酔いらんは無意識に
サキュバス本来の甘い誘惑を放ちそれは夜を包み込んでいった。

なるほど・・・と夜は思う。

たったそれだけの事で精神、肉体すべてが欲望の渦へと吸い込まれそうだった。
普通の人間ならこの時点でもう理性を失っているだろう。あの時の空のように。


これは覚悟しておいたほうがいいかもな?

そう思っている間にも夜の下半身はらんを貫きたい欲望にかられて疼きだし我慢も限界に
なっていた。

夜はらんの着ていた衣類を剥ぎすてると
らんの腰を高く持ち上げ欲望に駆られたそれをらんに押しつけた。

「よ・・よるぅ〜あああっ!!」

まるで夜を向かえ入れるようにするりと入った入り口とは裏腹にらんの中はとろとろに溶けてしまいそうなほど熱く、内壁はそれ自身が意思をもった生き物のように夜に絡みついた。

「うううう・・」

さすがの夜もこれにはうめき声を上げた。

「夜・・・ああああ!!すごいのよる・・よる 比べものにならないの。」

「それは聞き捨てならねえな。誰と比べもんにならねえって?」

らんの漏らした言葉尻を捕まえて夜は鬼畜な笑みを浮かべてらんを激しく揺さぶった。

「よ・・る・・そんなにしちゃだめ・ダメだって」

人間の精気などとは比べものにならない夜の精気が大量にらんの体内に流れ込み
らんは耐えきれず顔を大きく横に振った。

「ほら、言ってみろよ。オレと今日するのが初めてじゃなかったのかよ?」

「よる ・・違うの・・許して。」

らんは涙を流しながら許しを請うように夜にしがみついた。

「何が違うって?」

言わないと許してもらえないと思ったのからんはようやく口をあけた。

「空とナオがやってる時に・・・ホンのちょっと表に出たの・・・それだけなの。」

激しい攻めに喘ぎながら許しを請うらんを夜が許す気になったのは
らんの相手が『人間』である自分だとわかったからだ。

「ホントにそれだけなのか?」

らんがこくこく頷いたのを見て夜は満足して己の力を解放した。
その瞬間らんの体は電流が走ったように戦慄いた。

「ああっああああ・・・夜が・・よるがいっぱい入ってくる!!」

「ああすげえぜ・・らん!!!」

らんにすべてを持っていかれそうになって夜はそれをやり過ごそうとしたが制御できない。
まとわりついた壁はまるで夜のすべてを吸い取るように収縮し、急激にのぼりつめようとする
欲望を抑える事はできなかった。

「よる・・ダメ・・僕・・もう・・・」

「あああああああ らん!!」

夜の激しい叫び声とともにらんは意識を飛ばしていた。









そのまま眠ってしまったらんの表情は満たされていて夜は安心して立ち上がった。


日の出まではまだ数時間あった。
日の出までにまだどうしても夜にはやらなければいけないことがあったのだ。


夜は導かれるように地下へ地下へと降りていった。
その最階下で夜は2匹の獣が折り重なるように抱き合っているのを見た。


獣・・・と言っても人の目には【人間】にしか映らないだろうが夜にははっきりと
二人が人界のものではないことがわかった。




「学 ガクしっかりしろ!!」

まだあどけなさの残る少年はかなり衰弱しているようだった。

「芥・・さっきのあのいやな音は?」

夜は険しい表情をした。先ほど相沢を倒すために夜が放った音が
この衰弱した少年にも影響を与えたらしい。

「心配するな。もう学をお前を傷つけるものはいない。」

青年はそう言ったが少年は表情を固くしたままだった。

「教授死んだのか・・?」

ポツリとそういった少年を青年はなんともいえぬ表情で抱き寄せた。

「これでよかったんだ。」

「芥はホントにそう思ってるのか?だって教授は・・。」

「それ以上いうな!!」

芥が大きな声を上げたので学の体がびくっと震えた。

それだけでも耐えられない程に少年は衰弱していたのだろう。
ぐったりとした学を芥は慌てて抱き寄せた。

「すまない。学・・・・・もう狼に戻れ」

青年がそう言ったのは人間の姿よりも獣の姿の方が肉体的にも精神的にも
キズを癒す能力が勝っているためだ。だがこれだけ衰弱した少年には
気の問題程度にもならぬかもしれなかった。

それを知ってか少年は首を横に振った。

「今度変化したらオレ戻れねえかもしれねえ。だから芥、このままでいさせてくれよ。」


少年はまるで自分の死期を悟っているようにそういうと青年の胸の中で眠るように目を閉じた。
そんな少年を青年はぎゅっと抱きしめて頬を寄せた。



「・・もうすぐ出来上がるんだ。だから待っていてくれ・・・・・・。」



青年の遠吠えのような泣き声を背にして夜はその場から立ち去ったのだった。






9話