If ・・・(もしも)6章 
   トライアングル6



カーテンからのぞく朝光を学は眩しそうに腕で遮断した。
今日は久しぶりの晴天らしい。
寮の廊下からは体育系の連中の声も微かに聞こえてる。

ここの所雨続きで朝練がなかったから土曜日でも練習するのだろう。

2人で寝るには窮屈すぎるシングルベッドで学はう〜んと背を伸ばした。
上半身を起こすと廉は丸まるように薄いシーツに包まった。
そんな廉の姿に学は眩暈すら感じた。

廉の寝顔はまるで天使のようだった。
乱れた髪とシーツから覗く細い素足、穏やかな寝顔、
眠っていると廉は普段よりもずっと幼くてまるで少女のようだった。

「ホント廉って綺麗だよな、」

そしてその廉を昨夜学は・・・。

「へへっ」

昨夜の事を頭の中で巻き戻した学は幸せに浸ってでろ〜んと
鼻を下をのばした。

そしてその後ちょっと困ったように顔をしかめて小さくため息をついた。
ダレも見ていないからいいものの学は一人で百面相やってるようだった。


「オレって昨夜したのにまた欲情してる。って仕方ねえか。思春期だし。」

言い訳みたいな事を言いながら視線の、体のやり場に困って学は
小さいため息をついた。

こんな綺麗な廉に欲情しちまうなんて、オレってやっぱヘンなのか?

学は大きく頭を横に振るとベッドから起き上がった。
このままだと寝ている廉を襲ってしまいそうだった。

ここが高等寮なら間違いなくシャワー室に飛び込むところだがここは
中等寮だ。
学は仕方なく罪悪感を覚えながらトイレに飛び込んだ。

コトを済ませて少し落ち着いた学が部屋に戻ると廉はすでに起きていて
着替えの最中だった。

学の顔を見るなり頬を染めた廉に学は今しがたの自己嫌悪のようなものを
感じて頬を染めて下をむいた。


廉はもそもそと着替えの続きを始めたので、学はぎこちなく廉から視線を
逸らした。



「学、寮の方は?」

「義広がたぶんうまく誤魔化してくれたと思う・・」

「誤魔化すってまさか初めから、そういうつもりだった!!」

「違うって、」

廉が血相を変えたので学は慌てて首を振った。

「昨夜はさ、廉と、とにかく腹割って話さなきゃならねえ って思ったんだ。
それで駄目だったら諦めようって、・・・だから、そんなじゃねえんだ。
・・・ってオレ言い訳みてえでうまく言えない。」

廉はそれでもまだ納得はしていないようだった。

「七海先生に外泊許可とってない?」

「家帰るわけじゃねえからな。」

学園は寮生活だが、週末は自宅に帰ることも許されていた。
その場合は宿直の先生の許可がいるし、それなりの手続きもあった。

「けどオレ昨日寮を抜け出すとき、
七海先生にばったり会っちまったんだよな。」

「それじゃあ先生知ってるんじゃ?」

「けど、七海先生相当慌ててたみてえだったし。
青も一緒だったから何かあったのかもしれねえ。
あの様子じゃオレの事なんか眼中に入ってなかったな。」

「でも・・・、」

学は寂しそうに笑った。

「廉、オレそんなに邪魔か?」

「うっ、」

言葉を詰まらせた廉に学はカラカラと笑った。

「オレばっかなのか、廉と一緒に居たいって思うのは、」

「・・・そうじゃないけど、」

少女のように頬を染めた廉に学は心の中で「かわいい」
と思った。廉は言葉より表情の方がよほど正直だ。

「だったらまた来週末ここにきてもいいか?」

「来週は駄目、翌週期末テストだろ」

「へっ?そうだっけ」

「そうだよ。もうしっかりしてよ。学、」

廉に指摘されるまで試験の事など忘れていた学は
あははっと頭を掻いた。

「じゃあ試験が終わったらなら構わねえよな、」

「・・・・、」

返事に困る廉に学は近づくとそっと抱き寄せ髪にキスを落とした。

「いつまでも名残惜しいけどオレ帰るな。けど廉の顔みたくなったら
またくっから。」





学が部屋を出て行くと廉は力が抜けたようにパタンとベッドに腰を落とした
ほっとしたのか、寂しいのかよくわからず傍にあったワニッコ(ぬいぐるみ)を
抱きしめた。
そして微かに残る学の匂いをぎゅっとその胸に抱きしめて。



                                                           

                                              
                                           6章 忍びよる影1