ウェディング狂奏曲 3



※3話より突然空の視点になっています(苦笑)



朝一の教会は空気がヒヤリとしていつにも増して厳粛なかんじがした。


まだ朝も早えから、教会には誰もいないだろうと思ってたのに
オレが教会の中に入ると先客がいた。

『藤守・・?』
窓からもれるやさしい朝の光がスポットライトのように藤守を照らして、
藤守は一番前の最前列でお祈りするみてえに膝まづいてた。

その横顔がすげえ綺麗だったんだ。
ずっとこうやって藤守のこと見ていてえぐらい。


けど・・・なんかそこには立ち入れねえものがあったんだ。

きっと今日の藤守には複雑な想いがあるんだと思う。
藤守にとってらんは唯一の肉親だし、あんなに仲のよかったらんが
結婚しちまうんだもんな。


オレは名残惜しさがあったけど、そのまま退出しようと後ずさった時。

「ガタゴチャン」

こんな時に限って段差で蹴躓いてすげえみっともねえ
音をたててしまったんだ。
それで藤守がオレに気づいちまったんだ。


「羽柴・・?!っていつからそこにいたの。」

「う〜っつ、今きたばっかだけど・・。」

う〜オレはすげえ恥ずかしくなってどうしよかって思ったけど、それは
藤守の方も同じだったみてえだ。

お互い気まずくなってそれ以上会話が続かなかった。

といってもオレと藤守は恋人同士だからそんな気兼ねすることねえんだけど
・・・・場所が場所だからか。
それともあいつらが結婚なんてするからか、
とにかく今日はなんかいつもとは違ってたんだ。


「藤守、らんは一緒じゃねえのか?」

「らんは控え室。少しの間一人になりたいんだって。」

「そっか。」

「羽柴の方は?夜はどうしたの?」

「夜も着替えや準備があるらしくてよ。オレも追い出された。」

「一緒だね。」


そこでまた会話が途絶えた。

藤守に近づいてみてわかったけど藤守は真っ赤な長いロングの
コートを羽織ってた。ぱっと見た目にはワンピースを着てる
ように見えるんだ。

女に間違えられのが嫌で普段はそんな服は絶対着ねえから
ちょっと珍しい気もしたけど、それがすげえ似合ってるんだ。
そんなことを考えてると藤守が露骨に顔をしかめた。

「何じろじろみてるんだよ。」

「いや、その服よく似合うなって思ってさ。」

「バカ羽柴・・これはらんが自分だけ女装するのは恥ずかしいって
言うから着ただけなんだからねっ!!」

藤守は顔中真っ赤にしながら言い訳をしてる。
まあ実際藤守の言うとおりなのかもしれねえけど・・。

「それってじゃあ女ものなのか?」

「違うっ。女装なんて絶対嫌だって言ったら、この服で妥協することになっ
たんだ。」

ますます真っ赤にして弁解する藤守に笑いそうになるのをオレは必死でこらえた。
だってそんなことをしたら『バカ羽柴・・!!』って殴られるの目に見えてるからな。



「それより藤守そろそろあいつら覗きにいってみねえ?」

オレが声を掛けると藤守は慌てて時計を見た。

「うん、そうだね。そろそろ参列者も来る時間だよね。」

「おう。久しぶりに会う連中もいるから楽しみだよな。」

「そうそう、らんがね。すきしょキャラ全員に招待状を送ったっていってたよ。」
もし書き忘れがあったら作者のせいだって。」

「作者?なんだよ、それ??」

オレは首をかしげたが藤守は笑うだけでそれ以上は何も応えてくれなかった。

「ほら羽柴急いでよ。」

オレと藤守が慌てて教会を出た後、入れ替わるように奏司さんが教会に入ったのを
オレたちは知らなかった。





オレと藤守は控え室の前で分れた。ってのもオレがらんの着替え
なんか不幸にも覗いちまったら夜に半殺しにされかねえねえからだ。
けどオレが夜の控え室に入る前に藤守が慌てて走ってきたんだ。

そりゃ何事があったのかってぐらいの勢いで。

「どうしたんだ?藤守、」

「羽柴・・あの・・。」

藤守はオレの服の裾をひっぱったまま下を向いた。
ほんのり顔も赤いような・・な・・まさかこんな所でオレを誘ってるって
わけじゃねえよな?
なんて事を考えてたら藤守が微かに口を開いた。

「・・・らんの控え室に夜がいるみたいなんだ。」

「ええっ?夜が・・・。」

オレはあんまし考えたくなかったけど、それだけで藤守がいいてえ
ことがわかったような気がした。

オレと藤守が部屋の前まで行くと薄い扉の向こうの2人の会話が
微かに聞こえた。



『夜・・・もっと・・うえ・・。』

「ふ〜ん、だったら・・・。」

「ヤ・・だよ。そんなにしたら・・僕・・。」

「けど、今・・とかねえと辛えだろ・・・。」

「夜だめだって・・・扉開い・・るのに・・。」

「誰も、んな所までこねえって。」



途切れ途切れに聞こえるあいつらの声って・・・やっぱり??

あいつら、マジで式の前にあんなことやこんなことを・・・。
ウェディング姿のらんを襲ってる夜の図を想像してオレは夜ならやりかね
ねえって思ったけど・・・。

一瞬迷ったオレは取っ手を掴んだ。ここまできて収拾がつかねし。
それにあいつらのHなんて何度も遭遇して見慣れてる。
半分ヤケっぱちだった。

オレは扉の取手を掴むと思い切り扉をあけてやった。
けど夜とらんは別に『あんなことやこんなこと』をしてたわけじゃ
なかったんだ。

ただ夜がらんのドレスを調えていただけ・・・?


オレと藤守が口をパクパクしてると夜がニヤリと笑った。

「たく、空と直はなにやってんだ。んな所で・・。」

それにらんも応戦する。

「そうだよ。ナオがなかなか戻って来てくれないから僕困ってたんだよ。」

オレはそれでようやくらんの状態を理解した。らんはドレスを
来ている最中で背中のファースナーがうまくあげらなかったみてえなんだ。

おまけに胸のあたりが不自然な膨らみ方をしてる。
たぶんそれを夜が直してたんだろうな。

まあ、確かに男がドレス着るわけだから
何かつめとかねえとずり落ちてくるかもしれねえし・・。

オレが感心して見てると夜がオレをにらみつけてきた。
口には出さねえけど、オレがらんをじろじろ見てたのが気にくわねんだ。
全くいつまでたってもガキなんだから・・。


「空てめえ今なに考えた?」

「へっ?別に・・。」

夜に凄まれてオレは笑って誤魔化した。
大体体が別々の設定だってのにオレの考えてる事がわかるなんて
変じゃねえ?

「んじゃ、オレ退散するな。」

ため息交じりにそういうと夜もほぼオレと同時に立ち上がった。

「オレもいったん部屋戻るわ。直、あとは頼んだぜ。」

夜と一緒に出てくるはずじゃなかったんだけど・・・
なんて考えてたらいきなり夜に腕を掴まれた。

「空ちょっと話がある。顔かしな。」

「へいへい。」

                                              

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あとがき

また変なところで次回にお持ち越しになってしまいすみません;
なんだか書いていて『ツインズ』を思い出しました。ツインズって言うのは
空夜、ナオらんがそれぞれ双子だったらいうパラレルでして・・・(苦笑い)
まあツインズのその後として読んでもらってもいいです(笑)

全キャラ登場を予告するような文面を作中に書いてますが(苦笑い)これは
未定です。つうかゆかりちゃんとか杏樹くんとかは出てきません(笑)
メインキャラも難しい限りですががんばってみます。