恋する少年 5 ヴォルフラムのいなくなった部屋はやけに広く静かで有利は 落ち着かなかった。 もっともヴォルフラムがいたらいたで、それなりに気をつかうのだが。 有利はベッドに横になったが疲労感はあるのになかなか寝付くことが出来なかった。 「ようやく一人になったってのに何で寝付けねえんだよ。 ・・・てこういう時は羊が1匹・・羊が2匹・・・と」 100まで到達しても眠つことができず有利が寝るのを諦め ベッドから起き上がろうとしたその時だった。 突然なんの前触れもなく魔王の間の扉が開いたのだ。 今日はヴォルフラムもこないだろうと戸締りもちゃんとしてなかったことを 思い出し有利はあわててベッドから飛び起きた。 「ユーリ。」 扉の前に居たのは(いつもの)少女趣味なネグリジュを着たヴォルフラムだった。 しかも今日のネグリジュはやけに素材が薄いらしく 入り口の灯の薄明かりでもヴォルフラムの華奢な体がうっすらと 浮かび上がっていた。 「ヴォルフラム?!」 有利は心臓が口から飛び出そうなほどヴォルフラムの突然の 登場に驚いた。 「迷惑だったか?」 「いや、そんなことはないけど・・。」 そのままおずおずと魔王の間に入ってきたヴォルフラムは思いつめたように 表情に有利は嫌な予感がした。 「あの、ヴォルフラム早まったことはするなよ。 ほら、ヴォルフラムはオレなんかより顔もいいし、剣の腕だって立つから 女の子にもモテるんだし、またすぐ新しい恋がみつかるって。」 有利の慰めはヴォルフラムにとっては全くの逆効果だということを有利はわかっ てはいない。 そもそも有利は恋愛に対して全く経験というものがないので こういったことはからっきしだった。 「ユーリ、オレはお前しか愛せないんだ。」 言い募られて、有利はヴォルフラムから後ずさるように距離をとった。 「ヴォルフラム、わかったから少し落ち着けって。」 ヴォルフラムはゆっくりとその距離を縮めて、有利はもう後ろがない状況に 追いこまれ、このやばい状況に唾をごくりと飲み込んだ。 「有利、お前との結婚のことはもういい。だが、僕はお前との約束は絶対 守る。でなければお前への想いを証明できないからな。」 思いつめたヴォルフラムに有利は恐る恐る聞いた。 「オレとの約束って何?」 「それも忘れたのか?お前が今夜僕に夜伽にこいと言ったんだぞ!!」 「夜伽ってそれは・・・。」 有利はその言葉の意味をなんとなく知っていた。 でもこの場合知っていたくなかったというか理解したくなかったというか。 ヴォルフラムは至近距離で足を止めると、自分の服に手をかけた。 「ちょ、ヴォルフラム、待てって!!」 有利の言葉は無視されパサリと床にネグリジュが落ちた。 ヴォルフラムはその下は何も身に着けてはいなかった。 有利の胸の奥がざわざわとざわめいた。 同時に有利は急激に自分の中から湧き上がってくるものがあることに 気づいた。 この感覚を有利はよく知っていた。もう一人のオレが体をのっとろうとしてる感覚。 『ヤバイ!!」 また勝手に出てこられて、勝手なことをされるわけにはいかなくて 有利は必死に抵抗を試みたが湧き上がってくる力の中に溺れるように 有利の思考は飲み込まれていく。 完全に飲み込まれる前に有利は自分の声であってそうでない声を聞いた。 「案ずるな。」と。 6話へ ブログに連載していたこともあってお話が短めです。 6話も修羅場かな〜(笑) |