邂逅 1





               
六太はその時何が起こったのかわからなかった。

突然大地が轟き、六太を覆う空間が割けたのだ。
六太をとり囲んでいた女仙たちは慌てふためくばかりでその表情は
恐怖に震えていた。


六太はそれが自らが起した麒麟の鳴蝕だとは知るすべはなかった。
気づいた時には割けた大地から六太は外の世界へと飛ばされていたのだ。

やがて六太を纏っていた暖かい鋒山の大気が切り裂くように
冷たいものへとかわっていく。


眼下にはいつかみた懐かしい景色が広がっている。


「蓬莱(日本)?」

あの頃とかわらぬ蓬莱の地はかすかに戦火の匂いがして六太の胸に悲しい記憶
が去来する。

影に仕えていた女怪のヨクヒは姿を現すとまるで子を守る母親のようにその羽に
六太の小さな体を強くだきしめ、二人は緑の大地に吸い込まれるように地上へと
落ちていったのだった。








ガサガサと草を分ける音と共に賑やかな声が六太の耳に飛び込んできた。


「かごめ。お前の見間違いじゃねえのかあ〜?」

「確かにこの目で見たんだから。それに弥勒様も見ていたのよ。」

「ええ、確かに、あれは妖魔でした。」

「早く子供を助けてやらないと。犬夜叉、妖怪の匂い地面に染み付いてない?」

犬夜叉と呼ばれた少年は胡散臭そうに地面を嗅いでいた。

「だいたい〜妖怪が子供を襲ってたって、いうなら
今頃オレたちが来ても遅いんじゃねえ?きっと今頃はよう・・・」

「犬夜叉〜!!」

縁起でもないことを言おうとした犬夜叉をかごめは睨みつける。
犬夜叉がやばいと思ったときにはすでに時遅かった。

「おすわり!!」

盛大なおすわりをかごめからもらって犬夜叉の体は地に
吸い付くようにパンチを貰ったのである。


その様子を草むらから見ていた六太はなんだか可笑しくなって
ぷっ〜と噴出してしまった。



「誰だ!そこにいるのは!!」

悧角(六太の使令)と女怪のヨクヒが犬夜叉を威嚇するように六太の周りを固める。

『悧角 ヨクヒ出るな!!悪いやつらじゃない。』


使令いそう命じたが近づいてきた足音に六太は眩暈を覚えた。
なぜならその相手の体臭には怨念渦巻いた血の匂いが染み付いていたからだ。

そしてその姿を見た瞬間六太は不思議な感覚を覚えた。

銀の髪 血のように真っ赤な衣を纏った少年は人とも妖魔とも取れない気配を
発していたのだ。

だが、六太がその少年の姿を確認したのはそれまでだった。


血の匂いに酔った六太はそのまま気を失ってしまったのだ。






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