『碁遊記』〜第一話〜腹が減ったら戦は出来ぬ?〜
温暖な場所から熱帯に近い場所への長旅は、肉体的にも精神的にも異常に追い込んでしまう。
「なあ・・まだ着かないのか。天竺に。」
「それよりも喉がもうもたねぇ・・どうするべ。」
と熱いのにも関わらず重ね着をして、更に状況を悪化させているヒカル三蔵が一番に弱音を吐く。
そしてそれにつられるように、水分補給を訴える和谷悟空がここぞとばかり愚痴る。
行く先々で暴飲暴食した挙句、お金が尽きて野宿ばかりでまいっていたからだった。
しかし彼らは食べるの専門で、必要最小限しか食さない残り2名にまでとばっちりは来た。
「何で俺までこうならなぁあかんねん。ほんまむかつくわ。」
「喋ると余計疲れるから止めた方がいいよ。悟浄・・」
関西弁を独学でマスタ−した社悟浄は、烈火のように怒る。
そのまだまだ余力が有り余る彼を恨めしそうに、伊角八戒は疲労を称えながら馬に揺られていた。
そして10分後・・
「ヒカル三蔵。牛魔王のイケメン王子アキラ様が求愛に来たぞ。どうだ嬉しいだろう。」
何所からとも無くやって来たアキラ王子が、国際問題すれすれの言葉を吐きながら華麗に参上した。
でも4人とも相手をしていられる状態ではない。
というかアキラは無視されて4人は目的地に、惰性で向かっていた。
それを気に入らないアキラ王子は
「どうした何時もの威勢は・・情けないぞ!!」
余計な一言がアキラ王子の浪費に繋がった。
「俺を惚れさせたかったらまずは食事を奢れ!それから100歩譲って考えてやる。」
急な思い人の提案で舞い上がっているアキラ王子。
しかし・・
(これで4日分の空腹にピリオドが打たれる。)
まさにあくどい4人はアキラ王子の恋心を逆手に取り、好手に変えた。
哀れアキラ王子・・。
「いいだろう。今日は君たちを僕の城へ招待し 夕食をご馳走しよう。旅の疲れもあるだろうし晩は泊まっていけばいい。それでいいな。」
アキラとてそれ程鈍感ではない。ヒカルの考えぐらいお見通しだ。
食事とベット代はその身で払ってもらおうとひそかに目論む。
「いいのか?」
「もちろんだ。」
「だけどさ〜俺もう一歩もうごけねえ。」
これは和谷のたくらみ。
そういえばアキラが何とかしてくれるんじゃないかと踏んだのだ。
ヒカルの余計な荷物(和谷)にチラッと目を移したアキラは本当は和谷以下二人を捨て置いて行きたかったが、ヒカルの機嫌を損ねてしまうかもしれないと思うと考え直した。
「だらしないね。君たちは妖怪なんだろう。それとも碁ばかり打って体力をなくしたのか。しかたがないな。自家用ヘリを手配しよう。」
ヘリを手配と聞いて伊角と社が顔を見合わせた。
もう歩かなくていいのだと思うと途端に4人の精気がよみがえった。
そんな4人の様子をなにげに観察しながら、アキラは背広?の内ポケットから携帯電話を取り出した。
「・・・ああ僕だ ヘリを2機頼む。場所は・・・発信機の場所を目印に来てくれ・・・」
「発信機をいつも持ち歩いてるのか。」
「ほんま 金持ちのすることはわからへんな。」
伊角と社の会話にアキラは心中であざ笑う。
発信機は自分が持ち歩いているわけではない。
ヒカルにつけているのだ。
でなければこの広大な大地をのこのこ偶然を装って颯爽と登場する事など無理ではないか。
すぐ様アキラが待機させていたヘリが大きな音をたてて舞い降りてきた。
「さあ、ヒカル おいで。」
アキラは1台のヘリにヒカルだけを誘った。
「待てよ。和谷と伊角と社は?」
「もう1台ヘリはある。そっちに乗ればいいだろう。」
「でもこっちは俺とアキラとで 向こうは三人に馬まで乗るなんて変だろ?」
それに和谷が参戦する。
「そうだ!!大体お前ヒカルに何かたくらんでねえ。」
さすがにヒカルの第一妖怪?である。察しはいい。
だが、今のアキラにはこの三人を操る要素はいくらでもあった。
「和谷くん。あついのだろう。伊角くん社くん 喉が渇いたんじゃないのか?ヘリの中はクーラー完備で 飲み物はいくらでもある。好きなだけくつろぐといい。」
アキラの言葉に馬までが そそくさと ヘリへと走り出す。
「おいちょっと待てよ。」
一人取り残されたヒカルは慌てる。
「さあ 進藤 ヒカル 僕と一緒にヘリに乗るんだ。」
僕の恋心を逆手に取ろうとした罪 その身にかえて償ってもらうよ。
「ちぇっ」
・・・あいつらおれだけ置いていきやがって。
小さくしたうちしたヒカル。
だがヒカルだってもうへとへとなのだ。
自分の貞操?に危機感を募らせながらも飢えと喉の渇きにはもうとても絶えられそうになかった。
「わかった 乗るよ。」
ヒカルはアキラに伴われてかくしてヘリに乗り込んだ。
さて ヒカルは貞操を守れるのか??
2話目へ
1話で前半が流斗さん(現 芹沢リオナさん) 後半緋色で構成されています。
文体が変わるので一目瞭然だと思うのですが・・・。
このお話は2004年頃に書いたと思うのですが。はっきりした記録が残ってなくて(汗;)
少なくともアキヒカ三銃士よりも前です。
企画をやってるときは妄想が泉の宝庫で(笑)楽しくて楽しくて。
今思い出しても楽しかったな〜と思い出します。