タバコと地球温暖化

07/11/11

タイトルだけを読むと驚いてしまうかもしれない。
タバコと地球温暖化には関係があるのか?
と、思ってしまいそうなタイトルである。
タバコを吸っていると地球温暖化になる、
という話ではないので御安心を。

では、この2つはどういう関係があるのか?
この二つの問題を同じ世界で考えると
日本社会の微妙な問題が浮き上がってくるのだ。

まず、タバコについて考えてみよう。

タバコが引き起こす問題といえば、
肺がんをはじめとする呼吸器疾患を引き起こすことである。
吸っている本人が病気になるので自業自得だ!
では済まされない問題がある。
タバコから立ち上る煙、副流煙の問題である。
喫煙者本人はタバコを吸うことで精神的な安定を得られるかもしれない。
その代償に健康を失っても仕方ないと考える人もいるだろう。
しかし、副流煙を吸わされる人はどうだろうか。
吸いたくも無い煙を吸わされてしまうのである。
ましてや副流煙が原因で健康を害してはたまったもんじゃない。
ここには当事者(喫煙者)のみが利益を得て、
周囲の人(受動喫煙者)が損害を受けるという構図がある。

喫煙者に、「タバコを吸っていると肺ガンになるリスクが高まる」と言うと
「タバコを吸っていても肺がんにならない人もいる」という答えが返ってくる。
しかし、そう言っている人が肺ガンにならないとは限らないし、
副流煙を吸わされた人が肺ガンにならないとも言えないのである。
肺ガンになるまでには時間がかかる。
それゆえに原因がタバコであるとは断定しにくいが、
肺ガン患者の90%以上は喫煙者であると言われている。
肺ガンになったとき「長年タバコを吸ってきたからか…」と思っても手遅れである。
ここには結果が出るまでに時間がかかり、
結果が出てからでは手遅れであるという問題が存在する。

では、地球温暖化について考えてみよう。

地球温暖化が引き起こす問題といえば、
海面の上昇、異常気象の多発などいろいろある。
その地球温暖化の主因とされているのが二酸化炭素排出量の増加である。
二酸化炭素は化石燃料の消費などにより大気中に排出される。
人間は化石燃料の消費により文明の利器を使い、その恩恵を受けるのである。
つまり便利な生活には、二酸化炭素の排出が付き物なのである。
しかし、海面の上昇で住む所を追われた人間はどうだろうか?
便利な生活を送ってきたのだろうか?
二酸化炭素を大量に排出してきたのだろうか?
そうとは限らないだろう。
ここにも当事者(二酸化炭素大量排出者)のみが利益を得て、
周囲の人が損害を受けるという構図がある。

二酸化炭素排出量の増加が地球温暖化を招いているわけではないし、
地球温暖化だって異常気象を引き起こすとは断言できない。
そう言う人間だって存在する。
しかし、二酸化炭素が温室効果ガスであること、
産業革命以降、大気中の二酸化炭素濃度が上昇して、
それに追随するように世界の平均気温が上昇しているのは事実である。
数十年後に異常気象の多発が人命を脅かす事態になるかもしれない。
そうなってからでは二酸化炭素排出量を削減しようなんて言ってられないのである。
ここにも結果が出るまでに時間がかかり、
結果が出てからでは手遅れであるという問題が存在する。

つまり、この2つの問題は非常に似ているのである。

最後に、この2つの問題の違いについて考えてみよう。
それは日本社会での扱いの差である。

世界ではタバコの対する厳しい規制がかけられているが、
日本政府は未だに規制をかけていないのが実情である。
一方で、地球温暖化防止に対してはかなり大きな事を言っている。
これは、地球温暖化防止に欠かせない省エネ技術が関係している。
日本の省エネ技術は世界で高い評価を受けていて、
日本の省エネ製品を世界に売り込むためのチャンスなのである。
つまり、タバコに規制をかけるのは経済的にマイナスだが、
地球温暖化防止を訴えるのは、経済的にプラスと判断しているのである。
もしも、二酸化炭素排出量削減が経済発展の足かせになるならば、
日本はアメリカと同じように二酸化炭素排出量削減に反対するだろう。
現に炭素税導入について、経済界は
「世界での競争力低下を招く」と言って反対しているのだから。
さすが、おぉ金の国ジパング。。

タバコの規制に失敗してしまった日本が、
今後、二酸化炭素の排出規制に失敗する可能性は大きい。
つまり、政府は当てにならない。
だからこそ個々人が頑張るしかないのです!!





参考文献

宮本順伯 『タバコ副流煙の恐怖』 中央公論事業出版  p.18





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