昔から、「遠くを見ると目に良い」とか、
「近くを見すぎると目に悪い」などと言いますが、
実際どうなのでしょうか。
「遠く」とは何メートル以上のことなのでしょう?
「近く」とは何メートル以下のことなのでしょう?
そんな事を考える方も多いでしょう。
眼球にとっての距離感というのは、
普段、私たちが生活する中で使っている距離感とは少し違います。
「光学」的な考え方を必要とします。
眼球はとても精密なレンズとして扱われるのです。
では、質問です。
眼球には何枚のレンズが備わっていますか?
実に難しい質問ですね。
答えは、私にも分かりません(笑)
大雑把に数えてみると、角膜、水晶体ぐらいに思えますが、
実際には、角膜の表面を潤す涙の膜もレンズの働きをしますし、
水晶体の中心にある水晶体核だって一つのレンズとして数えられます。
難しい話はここまでにしておいて、
ポイントだけ覚えて、生活に役立ててください。
眼球をレンズとして考える上で、屈折力というものがあります。
これは、眼球の状態を数字で表すための大切なものですので覚えてください。
眼球の屈折力は、58.64D〜70.57Dぐらいです。
"D"というのが屈折力の単位で、値が大きいほど屈折力は大きいことになります。
58.64Dというのが、調節を休んでいるとき、すなわち、遠くを見ているときで、
70.57Dというのが、極度の調節をしているとき、すなわち、近くを見ているときです。
この2つの屈折力の差を、眼球の調節力といいます。
調節力は加齢とともに低下していきます。
今回あげた数値の差は約12Dですが、これは10歳の子供の調節力ぐらいと同じです。
さて、この"D"という単位について説明しましょう。
"D"(ディオプトリと読む)は距離の逆数で表されます。
すなわち、
これを視覚的に見ると、次のようになります。
右にある眼球に近づけば近づくほどに目盛りが細かくふってあります。
これは、眼球に近いところでは調節力の変化が激しいことを意味します。
33cmの距離にある物を見ていて、8cmだけ近づけて見るのと、
1mの距離にある物を見ていて、50cm近づいていって見るのでは
必要な調節力は変わらないのです。
そこで、「遠くを見る」「近くを見る」について考えてみましょう。
遠くを見るのは、眼球の調節を休めてあげるためなので、
33cmの距離で作業をしている人は、1m以上遠くを見ましょう。
こうすることで2D以上の調節弛緩が行えます。
近くを見る場合は、たとえ1cmでも距離をとるように心掛けましょう。
これは、少しでも目にかかる負担を減らすためです。
12Dと11Dの差は1cmもない事を認識しておいてください。
どうです?
このぐらいなら、できそうですか?
これをやったから近視が治るとか、そういうものではないですが、
じかにマッサージなどをすることが出来ない眼は
上述したように、いたわってあげて下さい。