体温調節機能の活用

11/6/5

この夏はエアコンの設定温度を上げましょう。
と、いきなり言われても
その設定温度に体が適応できなければ、体調不良の原因になりかねませんよね。
そこで、人の体が持つ体温調節機能について知っておけば、
この夏をうまく乗り越えられるかもしれませんよ。

ヒトの体は、環境温度が大きく変動しても体内温度(核心温度)を約37℃に維持します。
この体内温度(核心温度)を容易に維持することができる環境温度の範囲を
中間温度域といい、裸体で27℃〜31℃といわれています。
この中間温度域を超える環境では、皮膚血管が拡張して皮膚血流を増加させたり、
発汗により、熱が体の表面から、より容易に失われるようになります。
逆に、この中間温度域を下回る環境では、体が熱を産生する速度を増大させたり、
皮膚血管を収縮させ、体の表面からの熱が失われる速度を減少させるのです。

ヒトは通常、衣服を身に着けていることから、
中間温度域よりも少し低い温度かもしれませんが、
夏場でも体が熱を産生する速度を増大させている可能性がありそうですね。

平均的なヒトは、1日当たり1700〜1800kcalの熱を産生しています。
このうち、60%が放射、15〜20%が空気への伝道と対流、
そして残りが水分の蒸発により失われていきます。
蒸発による熱損失は1日あたり約340kcalですが、
激しい筋活動の時には1時間に570〜1140kcalにもなります。
これは、消費されたエネルギーが大きいほど
蒸発による熱損失も大きくなることを示しています。
参考までに、下表に
さまざまな肉体的活動に従事する成人男性におけるおよそのエネルギー消費
を示します。

活動 エネルギー消費量
[kcal/min]
睡眠 1.1
座位 1.5
立位 2.5
遅い歩き(毎時3.2km) 2.8
速い歩き(毎時6.4km) 5.2
サイクリング(毎時16km) 6.2
ジョギング(毎時9.6km) 10.2
ジョギング(毎時14.5km) 13.8
水泳(速いクロール) 12.5
クロスカントリースキー 14.8

体を動かした直後は体内の発熱量が多くなります。
これに伴い、汗の量が増え熱損失が大きくなります。
この間、通常時よりも暑さを感じますが、
体を動かすのをやめると通常時の発熱量にもどるため、
しばらくすると体温が奪われていくことになります。
これが続くと今度は体が熱の放出を抑制し、
体温を上げようとし始めてしまうのです。
暑い夏に体温を上げようとする。
こういったおかしな状況を招いてしまうのです。

このような現象を避けるためには、
体を動かした直後はエアコンの設定温度を下げるのではなく、
体の持つ本来の放熱機能にまかせておくことが重要です。
多くの人が集まる場所であれば、一時的に室温が上がってしまいますが、
室温が上がれば、今度はエアコンが設定温度に近づけるために働いてくれます。
この数分間程度の我慢で体温調節機能を正しく使えるのです。

もちろん汗の量が増えたときは、水分補給を忘れないでくださいね。





参考文献

Gillian Pocock 『オックスフォード・生理学』 丸善





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