鳳凰三山縦走

 百名山、鳳凰三山をめざしプチ旅に出た。早朝の新幹線で、駅弁とビール、駅弁とはちょっとずつ、たくさんのおかずが入っていて、ビールのおつまみに最高、旅気分が盛り上がった。今回のこだわりは、静岡から身延線の特急富士川に乗ること、ローカル線に走る3両編成の特急列車に乘りたかった。身延線は小学生の頃に母親の出身地、富士宮、芝川の親戚に遊びに行って、川で泳いだリ、山の上の親戚の家までハイキング並みに歩いたりしたこと、親戚の家では豚を飼っていたこと、ある親戚の家の横を身延線が走っていたことなどの断片的な記憶が残っている懐かしいところだった。身延線に入ると、微かな記憶にあるような川が見えたり、山際の家の横を列車が通るなど少し興奮した。富士山が車窓から見えるかなと思っていたが、こちらはみることができなかった。

 甲府には昼前に着いた。駅のすぐ横の甲府城跡まで行ってみる。残念ながら建造物は明治の廃城令で取り壊されてしまって、石垣だけの城跡だが、甲府盆地を見渡すことができた。晴れていれば、富士山や南アルプスがきれいにみえるらしいが雲の中だった。駅の周りには適当な食事をするところがなく、改札の中のスタンドそばが早くて美味しそうだったので入場券を買って入り直して、冷たい蕎麦を食べた。

 腹ごしらえができ、12時の広河原行のバスで、南アルプス芦安村に向かった。平日だったが、そこそこのお客さんがいた。自分ひとりだけが芦安で途中下車した。旅の目的のひとつに、南アルプス市芦安山岳館があった。バス停から少し登ったところに、きれいで現代的な建物の芦安山岳館があった。偶然、山岳カメラマンの「平賀淳写真展 キロク キオク」が開催されていた。よく知らない方だったが、野口健のエベレスト清掃登山などに同行していた登山家で、最近、カナダの氷河でクレパスに落ちて、若くして亡くなった追悼展だった。マナスルに野口健と何度かトライして敗退した映像記録などもみられた。山岳館は思っていたより広く、幅広い展示物があり、南アルプスの開発の歴史などを知ることができた。

 そこから、下山してきた登山者で満員の甲府行のバスに乗り、少し下った芦安温泉で下車し、バス停の前の岩園館に前泊した。鳳凰三山の縦走が、今回の目的なのだが、どう登っても、体力が落ちてきた自分には夜行12日ではきつく思われたので、温泉旅館で、美味しい料理と露天風呂を堪能してから山に入ることにしたのだった。建物は少々古いが、大きな温泉旅館で、露天風呂も広く、景色もいい、源泉かけ流しで熱めの露天風呂とかなりぬるい露天風呂のふたつがあり、ゆっくりと交互に入り、満喫した。料理も山の中の割には丁寧に作られた感じのお料理で美味しかった。特に、岩魚の塩焼きは絶品だった。

 朝、平日なので甲府からの早朝のバスがなかったので、6時30分にタクシーを予約していた。5時過ぎに起き、まだ空は暗かった。内湯で朝風呂を楽しむ、それからカップのカレーメシで朝食、これは短時間で出来てしっかり飯感があって山でも使える。630分前には旅館の玄関でタクシーを待つがなかなか来ない、630分を過ぎても来ないので、旅館のご主人が電話してくれたら、「向かってます」とのこと、20分くらい遅れて、ようやく来たが、なんと相乗り、山ではよくあること、ここも運転手不足なのか、夜行バスのお客を乗せて、芦安駐車場まで向かう途中で、相乗りになった。女性の運転手さんは「おくれてすいません。その分、サービスします」と言ってくれた。芦屋駐車場で先客を降ろし、清算、そこからメータを倒し、夜叉神峠登山口まで、時間はかからないが、本来あら4000円を超えるところを2000円にしてくれた。20分遅れて、2,000円助かったので、よしとしよう。

 すっかり夜が明け、明るくなった急な斜面をジクザクに登っていった。積雪のためか、下草がなく、遠くまでよく見える森林の中を進む、広葉樹の明るい森だ、道も幅広い、昔の峠道なのだろうか?1時間かからずに、夜叉神峠に出れるかと思ったが、結構時間がかかった。きょうのコースタイムは6時間40分だった、コースタイム通りに歩けても休憩時間入れると、8時間くらいになりそうで、基本的にはずっと上りで、標高差は1400M、そこそこの時間になりそうな感じだった。

夜叉神峠小屋からは、視界がいい、北岳、白峰三山が見えていた。そこからは、緩い尾根道を登っていく、視界はあまりなく、針葉樹林の中をすすむ、杖立峠まで順調に登る、暗い針葉樹林の中の峠で視界はまったくなかった。そこから、さらに苺平までは登りが続く、そこまで行くと、辻山は登らずに、山腹をトラバースから下り気味に進むと南御室小屋にでた。尾根上の山と山の間少し開けたところた。金曜日だったが、テントがいくつも張ってあった。水も小屋の前まで引かれていた。キャンプするには、いいところだが、次の日の行程を考えると先に進みたい、あと1時間半の頑張りだ、小屋の裏は少し急登だったが、また、緩やかな登りになった。灌木帯に入り、少し岩の露出が多くなり、砂払に出た、倒れかけた?ようにみえる巨岩があった。そこからは薬師岳小屋まで近かった。少しだけ下った尾根上のくぼ地のようなところに小屋はあった。樹木に囲まれ視界はなかったが、ログハウスのようなたたずまいの美しい山小屋だった。

天気はどん天、山頂まで10分ほどだったが、もう動きたくない、1325分到着、6時間40分のコーズタイムのところを休憩入れて、7時間30分で着けた。自分的にはまずまずの時間だと思った。受付を済ませ、小屋の前のベンチで、予定通りにカップやきそばを作って、小屋で買ったロングカンでひとりで乾杯、行動食をあてに、持参してきたシングルモルトウィスキーをストレートでちびちび楽しむ、単独行で京都から来た人と百名山談議で盛り上がる。後は夕飯まで昼寝。

小屋番はまだ若い方はひとりでしていた、お客は15名ほど、水は天水の小屋で、夕食はパックおでん、キャベツサラダにウィンナーなど、それでも小屋で飯を出してもらえてありがたい、今回は自炊も考えたが、60を過ぎて体力が低下しているなかで軽量化を優先した。その分、余裕をもって歩けてよかった。

朝食は6時から、日の出は520分だった、頂上まで10分くらいだったのでヘッドランで日の出を見に薬師岳頂上にむかった。夜明け前の濃紺の空が広がっていた。この日の出前の30分は大好きな時間だ、少し登ると灌木帯を抜け、森林限界となり、濃紺の空に、富士山のシルエットがみえた、頂上にはヘッドランがちらちらしている。日の出を待っているのだろう。自分もなんとか日の出前に頂上についた、いい天気だ、富士山、反対側には観音ヶ岳のピークがすぐ近くに、遠くには北岳、間ノ岳がみえる、まだ日があたっていない、空はどんどんと色を変える、濃紺から青に、赤紫に、ついに、光の筋が天空に伸び、その光の源が見えだした。山々に日があたりはじめ、赤い色に染まる。ほんの30分にも足らない光のドラマだ。

日が昇るのを見終えて小屋に戻った、朝食も、ご飯に、鮭に、みそ汁、ありがたくいただく、きょうも行程が長いので、しっかり朝食を食べてから、スタートすることにした。予定より早く、630分に小屋を出発した。きょうのコースタイムも、6時間40分、ほとんど下り、それが問題、ついこないだまでは、コースタイムの3分の2くらいで歩けたのだが、最近は膝が痛く、筋力も落ちたのか、コースタイムでは歩けない。長い1日になりそうだ。薬師岳山頂から観音ヶ岳山頂は、さほどの下りも、登りもなく、すぐに着いた。三山の最高峰2840m、南アルプスの前衛峰と思っていたが、立派な南アルプスの北端の縦走路だった。そこからは激下りだ、なかなか歩きづらい、鳳凰小屋に下る分岐点を過ぎると、登りになった、地蔵岳にむかい、赤抜沢ノ頭2750mまで登り返しが続く、意外と時間がかかった。そこから下りだけになる、地蔵岳のコルにはお地蔵さんがたくさん並んでいた。子宝を願い1個持って帰り、子宝に恵まれたらお礼に2個奉納するらしい、歴史を感じる山だ、地蔵岳のオベリスクの巨岩はかっこいい、天辺まで登れないので、コルから下山することにした。急な砂ガレた道で、歩きにくい。ペースがみるみる落ちる、鳳凰小屋まで遠く感じた。小屋前はすごい人でごった返していた。連休初日で入山してきた人がたくさんいた。水場があり、たっぷりと水を飲んで、少し腹ごしらえをした。

そこからはひたすら下山、ドンドコ沢を3時間50分のコースタイムだった。急な荒れた道が続く、ペースが落ちる一方で、50分歩かずに休憩も入れた。登ってくる人が切れ目ない、よくこんな急な荒れた道を5時間もかけて登るなと感心する。途中で滝見をできるところがあったが、「しんどい」のと先を考え、滝下までは行かずに眺めるだけにした。急な下りが長く長く続き、やっと沢ぞいの少し平坦な道になったと思ったら長い、歩いても歩いてもなかなか距離が出ない、かなり疲れ果てて、薬師岳小屋から8時間10分かかって、青木鉱泉に辿り着いた。膝痛、筋力低下は深刻で、厳しい登山はもうできない体になったのかと思った。

青木鉱泉は古い建物で、シャワーも壊れていたが、いい風呂だった。缶ビールも売っていたので、風呂上りの1杯をバスが来るまで堪能した。

ここで電波が入ったので、帰りのルートを確認したら、なんと中央線が信号トラブルで一部の特急が運休でダイヤが乱れているとのこと、きょう中に、帰阪できるのか心配になったが、列車が遅れているということは、ぎりぎり乗れない松本行に乗れるかもと期待する。林道を走るマイクバスに揺られながら時計とにらめっこ、バスはわずか数分だけ早く韮崎駅に到着した。駅に着くとダイヤが乱れ、大混乱、いつ、どの列車来るかわらないという対応だった。ところが、なんとうまいことに、乗れないはずの松本行が15分遅れで到着した、次は塩尻駅で名古屋行の特急しなのに乗り換え時間は時刻表では20分、ここから遅れずに進めば、ギリギリ乗れるかも、ここでも時計をみながら塩尻駅に、ここでもうまいこと3分前に塩尻駅に着き、乗れないはずの特急しなのに飛び乗れた、下山で時間がかかり、バス待ちで2時間、大阪には深夜に到着の予定が、1時間以上も早く、帰ることができた。朝のタクシー、帰りの中央線、遅れたことがラッキーにつながった楽しい旅だった。

914日(木)大日―静岡-特急富士川―甲府10:35 12:05-南アルプス市芦安山岳館13:00 15:0015:04 岩園館

915日(金)岩園館-6:40タクシーー夜叉神峠登山口 6:54夜叉神峠 8:15-杖立峠9:45-苺平 11:40-南御室小屋12:25-薬師岳小屋 13:25

916日(土)薬師岳小屋-薬師岳5:20日の出-薬師岳小屋630-薬師岳640-観音岳7:10-アカヌケ沢の頭8:20-地蔵岳8:40-鳳凰小屋9:20-五色の滝10:10-南精進ノ滝12:35-青木鉱泉14:40 15:00 韮崎駅-塩尻ー名古屋―大阪


 

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