屋久島縦走(2011年5月5日)

5月3日(火)梅田20:00−夜行バス鹿児島行き−

5月4日(水)鹿児島・天文館7:35−タクシー−折田汽船フェリー8:30発−屋久島12:30着−レンタカーで島内1周観光し−安房:旅館泊鶴屋17:30

5月5日(木)タクシーで5:00出発−淀川登山口6:10−宮之浦岳11:35−新高塚小屋14:20

5月6日(金)新高塚小屋6:35−縄文杉7:45−大杉歩道入口10:40−楠川歩道入口11:40−辻岩(峠)13:00−臼谷雲水峡14:45−バスを乗り継ぎ−宮之浦の民宿:やくしま家へ

5月7日(土)ブルーウォータ―カヤック屋久島のツアーでシーカヤック

58日(日)路線バスで屋久島空港へ 12:20JAC2450便−伊丹空港13:40  

 結婚25周年を記念し、夫婦で旅行することを計画していた。当初は、韓国あたりと思っていたが、北朝鮮のミサイル発射などもあり、妻は「屋久島行ってみたい。縄文杉や『もののけ姫』のモデルになった森もあるし・・」と、このひと言に「それなら屋久島で決定だ」と、即決定、百名山アタッカーの自分としては、宮之浦岳登頂の絶好のチャンスとも思ったことが大きな理由だった。

 計画は、半年前から交通経路、ルート、宿泊先などを研究した。これが旅の楽しみの大きな要素だ。その結果、経費を抑え、旅を楽しむ企画として、@大阪から鹿児島へは夜行バス(12000円)を利用し、タクシーでフェリー(3,300円)に乗り継ぎ、豪華個室(13000円追加)で船旅を楽しむ、A宮之浦岳、縄文杉、臼谷雲水峡の縦走、Bシーカヤック&スノーケリング、C屋久島の料理、D帰りは大阪直行便を早割り(25,600)でという企画が完成した。

 さて、旅は順調にスタートしたのだが、雲行きがおかしくなったのは、豪華個室におさまり、窓の外を見るとしぶきかと思ったら雨が降りはじめた。予報は夜からとなっていたのに、楽しみにしていた船から「海に浮かぶ屋久島」は霧の中の入港でみることができなかった。上陸し、レンタカーを借りたものの雨が早くも本降り、しかたなくおみやげやにより、先におみやげをゲット、縦走後に泊る民宿に着替えなどを預け、うみがめの産卵の浜『永田のいなか浜』と『うみがめ館』を見学する。そのあとは車から降りる気がせず、西部林道を野生のさるやしかを横目でみながら走り抜け、大川の滝で写真をとっただけで安房の宿にチェックイン、予定を大幅に削除した島内観光となった。それでも、鶴屋は地魚の刺身や飛び魚のから揚げ、かめの手そっくりの貝など屋久島ならではの料理を堪能する。

 いよいよ明日から宮之浦縦走だが、天気予報は「朝方は強雨」の予報、縦走をあきらめ、「沈殿」し、明後日に日帰りアタックも考えて、妻に提案したが、「縄文杉はみられないのか」と追及され、「そうなる」と答えると、「雨でも行こう」と力強い言葉に、勇気を得たが、それでも登山は慎重さも大事、出発をおそくし、雨が強ければ淀川小屋泊も視野にいれ、タクシー会社に出発時間の変更の電話をすると「予約がいっぱいで変更できません、キャンセルですか」と聞かれ、「それなら、そのままでお願いします」となった。結局、予定通り朝5時にタクシーに迎えにきてもらう、幸いにも雨は降っていなかったが、林道を登っていくにしたがって、しとしと雨に、登山口で本降りとなっていた。仕方ないので雨の中を出発する。予報では午後は回復のはずだった、しかし、雨はそれほど強くないもののやまない、順調に1時間で淀川小屋に到着、ここで泊るには早いので、先に進む、ということは新高塚小屋まで行くということだった。腹が決まると足はよくすすむ、雨で足元も悪かったが徐々にペースも上がり、山は素人の妻に、今回に合わせてゴアテックスの雨具と登山靴を新調していたが、その威力が十二分に発揮され、霧雨と風の吹く宮之浦岳にはコースタイムより早い6時間半で着いてしまった。(景色を楽しむことも、休憩もあまりできなかったためもあり)それでも百名山をひとつゲットできたことは自分にとってはこの旅の最大の目的は達成したのだった。

 新高塚小屋までも道はあまりよくなかったが順調に進み、午後220分には予定を大幅に早めての到着となった。終始、雨の中で、8時間もよく頑張った。これなら小屋に入れると思ったが、ゴールデンウィークの屋久島は甘くなかった。なぜか、すでに小屋は人であふれ(沈の人が多かったのか)、詰めてくれる雰囲気さえない、覚悟はしていたが、持参のテントを張った。デッキの上のいいサイトをぎりぎりで確保できたのは救いだった。雨も予測して着替えを持ってきていたので、全部、乾いたものに着替えたらほっとすることができた。ワインで乾杯し、そのままレトルトの夕飯を取り、早めの就寝となった。

 3日目、またもや雨である、早く寝たので、それほど早く出発する必要がなかったが、早く起きたので630分過ぎの出発となった。(実はもう少し早くでる準備がすすんでいたのだが、トイレに15分以上も並んだために遅れた。トイレはなんと1つしかないのだ、ちょうど3基を建設中でもあったが、オーバーユースの問題はここでも深刻だ)

 雨の中を高塚小屋まで下り、雨だったので、休憩もせず、縄文杉まで下る、雨の中に、ひっそりと、そして、巨大な縄文杉をみた。そのあまりのでかさ、高さ、生命のいきづく感じに感動した。多くの屋久杉は幹が太いが、その比ではなく、また、強風のために高さがない屋久杉も多い中で、縄文杉はそうではなかった。老木を想像していたが、葉は高々と茂り、多くの寄生した木々を抱え、それらも含め、新緑に輝いていた。そこから伝わる躍動感に、生命の尊さを感じた。同じく新高塚小屋から来た登山者で10数名ほどが写真を撮り始めていたが、広いデッキにはまだ余裕を感じていた。30分ほどいたが、先もあるので、さらに、下っていく、すると荒川登山口から登っていた最初の登山者とすれちがう、2人、3人目、5人くらいのパーティー、すれちがいに待たされる時間がだんだん増える、山でこんなにたくさんの人が次から次と連なって登ってくるのはみたことがない、ウィルソン株の前は、記念写真を撮る人で埋まっていた、幸い大集団が出発したので、株の中に入ってみる、「ハート」型の切り株かと思ったら、違うひし形にしか見えない、うろうろしていると株の中でしゃがみこんでいたカップルが「ここからならハートに見えますよ」と教えてくれた。そこで2人は愛を語り合っていたようだったが、少し譲ってもらってワンショット、なんとか写真もとれて株の外にでるとさらに大団体が登ってくる、すでに、株前はザックすら降ろすところがないくらいなのに、出発しようにも登山道が渋滞で出られない、小屋から一緒に下ってきたパーティーが強引に下りはじめたので、それについていった。ここからトロッコ道の大杉歩道入口に出るまで、すれちがいに待たされたためにコースタイムの2倍以上の時間がかかってしまった。もう入場制限しないと無理な感じだった。

 その遅れを取り返すために休憩もせずに、雨の中を黙々と「楠川わかれ」まで歩いた、妻に、「雨だし、このまま荒川口に下るか?」と聞けば、「もののけの森は?」と、「せっかく遠くからきたのに見ずに帰れない」という彼女のたくましさに恐れ入った。女性はたくましい、雨で川と化した辻峠までの登り返しは、緑の濃い美しい森でなければ辛いだけの道だったが、そこにあったのはまさしく「もののけの森」や「コダマ」(木の精霊)をインスピュレーションさせたと思われる素晴らしい光景が続いた。自分は、辻岩までの間の景色が気にいった。辻岩には、雨宿りにきたインストラクターに連れられたツアー客で込み合っていたが、大きな岩下に、雨宿りできるスペースを確保、2日間で行動中、はじめてコーヒーを沸かすことがきた。

 そこから辻峠はすぐだった。太鼓岩は雨なのであきらめ、臼谷小屋、バス停をめざした。こちらの谷は、少し明るく、屋久杉などの巨木、苔の素晴らしい景色が続いたが、観光客も多く、道も整備されていたのが少し興ざめの感だった。2日間の雨の山行が、よかったと思える瞬間があった。苔にたくさんの水滴がつき、それが輝いていた。その美しいすがたは雨の中の森でしか出会うことができないなら、2日間、16時間を越える雨の登山も悔やむものではなく、よかったとも思える瞬間でもあった。

 びしょ濡れのまま臨時バスに飛び乗ることができ、宮之浦でバスを乗り継ぎ、深川の民宿・やくしま家に到着し、シャワーを浴び、預けていた荷物ですべて着替えるとすっきりした。夕食は、やくしま家で「きょう、久しぶりに水揚げされた首折りさばですよ」と出された刺身のうまいこと、これは美味、カンパチのかまの塩焼き、飛び魚のすり身にニラをすりまぜたつみれ揚げなどをおいしくいただきました。焼酎は、三岳2合600円とみやげものやより安くいただけ、つい飲みすぎてしまいました。奥さんの手料理、ご主人のサービスともにグットな宿です。別棟の海の見えるバルコニー付きのコテージ風の部屋で2食付7,300円は超お買い得感のあるところでした。

 4日目、やっと雨がふっていません。早朝から起きて、庭でテントなどを水洗いし、物干しに広げさせてもらいました。ブルーウォータ―カヤック屋久島の車で迎えにきてもらい、出発、薄日も差してきてカヌー日和に、永田港でカヌーを下ろし、簡単な操作説明、10ぶりくらいのカヌーで少し緊張する。実際に漕ぎ始めるとだんだんと感がもどってくる。港から出ると少しうねりもでる。永田の前浜にかかるとさっそくうみがめがすーとカヌーの下を通過する。本当に泳いでいるうみがめに会うことができるんだ。何回も遭遇し、浅いところを通過するときは手で水をかいているところまでよくみえた。大感動だった。永田川の河口付近では、うねりがきつく、少し船酔い状態になり、しんどくなるが、はじめてカヌーに乗るに妻を不安させたらあかんと思い、言わずにひたすら漕ぐ、いなか浜の前までくるとなんとかめが海上で手を振ったようにしぐさがみえた、次は、頭までだした。インストラクターは、見にいきましょう。すばやくカヌーを操作し、そこではうみがめの交尾がみられたとか、実は船酔いのために、そちらに行く元気がなく、みることができなかった。目的の「四つ瀬」の浜が見えているが、なかなか着かない(後で聞いたが風と潮の影響でかなり押しもどしがきつかったために)、それでも12時前には、無事、上陸することができた。

 四つ瀬の浜では、イケメンインストラクターの2人がタープを張って、コーヒーを沸かしてくれるサービス付き、お弁当を食べた、食後は、ウェットスーツ、足ひれ、スノーケリングのセットを貸してもらえ、妻ははじめの体験だったが、手をひっぱってあげるとなんとか岩場を離れて、キビナゴの大群や黄色のストライプの入った魚、そして、珊瑚をみることができた。浜に戻ると、少し離れたところからインストラクターが呼んでいるので行ってみるとうみがめが産卵のために上陸した足跡、そして、産卵のために掘った穴を3つもみることができた。貝や珊瑚のかけら拾い、インストラクターがオカヤドカリをつかまえてきたので、それを写真に撮るなど充実のランチタイムを過ごすことができた。

 午後2時半過ぎまでゆっくりした後、来た海を帰っていった。帰りは風も、潮もなく、妻のパドリングもうまくなったのか、楽にすすむ、前浜の前では再びうみがめとも遭遇できた。無事、永田の港に戻り、帰りに「大浦の湯」に立ち寄った、そこは地元の方の湯治場、海に潜った後にからだをあたためるために昔からの「温泉」(冷泉だったが、いまは温泉の成分はなくなったらしい)で、コンクリートの小さな建物だが、そのロケーションは最高で、まどから入り江がみえ、いいかぜが入ってくる。最後は、宿まで送ってくれるというツアーは、充実の内容だった。海上での記念写真もCDに焼いてくれるというサービスまでついていた。船酔い止めの薬をイケメンインストラクターのお二人に感謝したい。

 夜は、四季亭(ときてい)で、屋久島最後の夜を愉しむ、地元の方も食べに、飲みに来るような食堂&居酒屋で、店員の雰囲気もよく、味も屋久島料理を楽しむことができた。

 5日目は、帰るのみとなるが奥さんから飛び魚つみれあげの作り方を教えてもらっう。ご主人には、車で宮之浦まで送ってもらった。2泊だけだったが親切にしてもらえたいい宿だった。おみやげを買い、飛行場の食堂で飛び魚のから揚げと鹿刺しで乾杯し、屋久島空港からプロペラジェットで、一路、大阪まで1時間ちょっとのフライトだった。

 宮之浦登頂だけに終わらない充実の百名山の旅だった。できればうみがめの産卵や苔の観察などをゆっくりとしたい、そして、晴れた宮之浦にもう一度登りたいと思った。


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