【からとんが提唱する5つのアドバイス】


マジックは万能ではない!

コミュニケーションとして貴重なツールだ!
と、言いながら矛盾したことを提唱しています。
海外の方々にマジックを披露しても出会った経験はないのですが、日本の方、特にプライドが高そうな人によく見られる 傾向があります。
それは「マジックが嫌い!」ということです。

特にこう主張する人々は、見せられたマジックのタネを見破れない場合、演者に対してひどい対抗心、猜疑心を持ちます。
「どうだ!お前にはこのマジックのタネがわからないだろう!オレはすごいんだ!」
と観客に対して、演者が挑戦的な横柄な態度でマジックを演じていたのならわかります。
しかし、たいていのマジシャンは演出上でわざと失敗して裏をかくということはしても、相手より優位に立ちたいがため にマジックをしているわけではないでしょう。(勘違いして優越感に浸っている演者もたまに見ますが)
困ったことに観客は、マジック=パズルという図式でマジックを見てしまいがちになります。

それが顕著に現れるのが、マジック嫌いという人々です。
「子供だましだ。くだらない」と罵る人もいます。

どう対処すればいいのでしょうか。
その人の前では『演じない』というのがベターな回答かと思います。
「嫌い」とはっきり公言するぐらいですから、あなたの顔見知りの可能性が高いですよね。
その周囲でマジックをする場合、その対象の人を疎外する状況を作らないことを充分に考慮しなければなりません。

アドバイスとしては、敵対するよりはどうすれば面白いと感じてもらえるかを考えることをお勧めします。
これはある意味、すごく難しい問題ですが、常に回避するよりは気分的にも楽でしょうし、そうすることで本屋ビデオで は絶対身につかない、魅せるマジシャンとしての実力向上にもつながります。

仮にあなたが演じて、相手が不快に感じた場合、二度とあなたのマジックを見ようとは思わないでしょうから、安易な行動は避けましょう。

マジックをすれば、みんな楽しんでくれる
この思い込みは、演じる側の勝手な考えですし、かなり危険な要素を含んだ観念であることを気に留めておいてください。

T・P・Oの把握が大切です。




事前の準備を大切に!

マジックを趣味や特技としていると、何かのイベントで「何かやってよ」と要望されるときがあります。
いつ」「どこで」「どれぐらいの人数相手に」「どんなイベント」かなど、 事前に詳細情報があれば、演目の選択や手順の構成を考えることができます。

自分のレパートリーでも、「これは○○○の時に使える」「この年齢層にはこういう演出に変えよう」と区 分け、分類しておくと、対応もしやすいでしょうし、そういう風に依頼されることがたまにとはいえある場合には、 そのシチュエーションに応じて演じられるものを取得しておくのもいいでしょう。

逆に「即興で何かやってよ」と言われ、困ったことはないですか?
とりあえずなにかやろうとして、あたふたとしてしまい、結局は「つまらない」と酷評された上に、場をし
らけさせてしまったりと、誰も喜ばない状況を生み出します。


スライディーニというイタリアのプロマジシャンがいました。
彼はパーティに呼ばれると、自分の服装内にはもちろん、事前に会場のあちこちにトリックを仕込んでおきます。
「見て!こんなマジックができんねん!」
とは絶対言わず、リクエストされたときだけ、その場に応じたマジックを披露していたそうです。
そんなことは当然、見ている側は知りませんから、どんなリクエストにも答えるスライディーニを見て、まるで魔 法使いでも見ているような気分になったことでしょう。

いきなり古本屋で知り合いと出会い、そこで前述のような苦い経験をしたわたしは、出歩くときにはポケットにコイ ン1枚は必ず入れておき、車にもカードを3〜5枚入れておくようにしています。

どんなシュチエーションにも対応できるマジック。
マジシャンはみんなそれを望んでいますし、またそれに近づけるように裏でこっそりと準備してるものなんです。




レパートリーは浅く広くよりも、深く狭く!

マジックを始めたころは、マジックと名のつくものはなんでもかんでも飛びつき、ひたすらトリックやタネの秘密を追い求めていました。
ひとつでもレパートリーを増やす!
ひとつでもプロマジシャンに近づく!
ひとつでも・・・。

トリックや種を多く知り、レパートリーを増やしていくことが、マジシャンとしての一種のステイタスのように思っていました。

いろいろな文献やマジシャンと話す機会が増えてきたことで、ターニングポイントが訪れました。
大げさな表現になってしまいましたが、それははっきりとしたタイミングというものはありませんでした。
いつのころからか次第に『量より質』を取るスタイルを選択するようになったのは間違いありません。

これについては、その人のスタイルがあるでしょうから、他のスタイルを非難はしません。

わたしは、失敗する可能性を1%でも減らせられるように、演目を限定してでもレパートリーを熟練、充実させることが大事だと考えています。


自分のレパートリーは、いつでも完璧に演じてみせることができる
このスタイルですね。




定期的に練習すること!

見た目に難しそうな演目や技法でも、やってみると意外に簡単にできてしまったということがあります。
「簡単♪簡単♪」
と、そこで止まっていませんか?

一生懸命、連日練習をして、やっと身につけたマジック。
「もう、いつでもできるから♪」
と、そこで止まっていませんか?

どんな優れた名刀だって、手入れをしなければ錆付いてしまいます。

人前で演じる演じないは別にして、レパートリーである以上は定期的に復習しておきましょう!




いい演者である前に、いい観客であれ!

マジックを見る機会があったとします。
あなたはどういう視点で見ていますか?

「そこでその技法使うか。次はどういう手順で進めんのやろ。あ〜、そのミスディレクションはいただけんなあ」という演者側?

「すごい!なんでそうなんのか、わっからんなあ」という観客側?

これは人それぞれだと思います。
意識してるわけではないのですが、わたしは後者のスタイルです。
最初の2〜3の手順を見ただけで、クライマックスまでわかってしまったこともあります。
自分で演じているものさえあります。
でも周囲の観客と一緒に、現象が起きるたびに驚きながら演技を見て、見終わったら拍手しています。
ただ「なんでそうなんの?タネ教えてよ」とは口にはしませんが(笑)

難しいことは言いません。
不思議な時間を一緒に楽しめばいいんです


そのマジシャンの演技が終わってから、演出方法や技法、手順の研究に入ります。
これでそのマジックを2倍楽しめますし、どういう視線でお客さんが見ているのかということを身をもって体験できます。


もし、あなたが演者の視線で見ているとしましょう。
間違っても「あれ、こういう仕掛けになっていて、最後にカードの裏の色が赤に変わんねんで」などと、サーストンの3原則を破るような行為をしてはいけません!
演じているマジシャンを侮辱する、そしてモラルに反した最大の罪です。


演じるときは演じる側、見るときは見る側という切り替えを、わたしはお勧めしています。







さあ次に進みましょっか!