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GS美神 リターン?
Report File.0045 「人形帝国の逆襲 その3」
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くすくすくす
令子は人形達の笑いに不気味な圧迫感を感じ、神通棍を構えながらも後退さってしまった。
「そんな心配は要らないわ! だって…あなた達は私達の最初の人形になるんだもの!!」
令子のモガちゃん人形がさっと手を上げ振り下ろすと同時に、後に控えていた人形達がうぞぞぞとこれでもかといわんばかりに、令子達に飛び掛っていった。
「ちょ! ちょっとお〜っ!!」”うわわ!”
流石に神経の図太い令子もこの光景には鳥肌が立った。キヌもその光景には飛び上がらんばかりに驚いたが、手には治療を終えた横島が居たので直ぐに正気を取り戻し、横島を抱きしめて宙に退避すべく浮いた。
「くっ! こ、この、このこのこの!! 近寄るんじゃないわよ」
周りを囲まれ神通棍をぶんぶん振り回して飛び掛ってくるモガちゃん人形を迎撃する。その一撃一撃は強力で確実にモガちゃん人形にヒットする。
神通棍に当たったモガちゃん人形は胴が千切れ、頭が割れ、手足が飛んだ。これが生物であったならスプラッタ状態であっただろう。
”さあ、無駄な抵抗は止めなさい。殺したりはしないからいう事を聞きなさい。ただ、ちょっと魂を抜き出して閉じ込めるだけなんだから”
「な、何がちょっとよ! 人形なんかの思いどーりになるほど私は甘か無いわよっ!」
”あら? そうかしら。小さい頃の令子ちゃんはそれはそれは聞き分けの良い子だったのに…モガ悲しい…”
頬に手を当てて令子のモガちゃん人形が嘆いた。
「ああ、胸糞悪い! あの人形に魂を込めたのが私じゃなかったら…!!」
そう言ったやり取りをしている間も人形は休まずに令子に襲い掛かっていた。キヌは横島を抱きかかえて宙に居る為に令子だけに攻撃が集中していた。
”どこまで抵抗できるかしら?”
「くっ! 本体を…!! こいつらに魂を吹き込んだ私の人形を除霊しないと…!!」
このままだとジリ貧だと令子は焦った。横島が無事だったなら、戦力は二分されてまだ余裕があったかもしれないが、残念ながら横島は戦力外、その横島を守る為にキヌも戦力外である。なんだかんだ言っても原因である人形も横島の状態も自分のせいなので腹立たしい事この上なかった。
ぞわぞわぞわ
倒しても倒しても雲霞のごとく人形は現れ令子を包囲した。その人形の足元には同胞の残骸が散らばっている。人形ゆえかその事には何の感慨も覚えず、じりじりと令子を追い詰めていく。
”そろそろ、観念したら? じたばたするのも見苦しいと思うわ…”
声はすれどどこに居るのか分からなかった。迎撃に集中せざるをえなかった事もあって本体から目を離すことになり、気がつけば本体と同じような格好の人形だらけで聞こえてくる声も反響していてどこから聞こえてくるのか分からなくなっていた。
「う、うるさい!! それにしてもか…数が多すぎるっ…!」
”そろそろね…”
「くっ! こんな事になるんだったら、アヤちゃんの親から金をふんだくっときゃよかった〜っ!!」
この期に及んでくやしい〜という言葉が令子から飛び出し、まだまだ余裕が見えた。息切れもしていないし。
”アヤちゃん!? アヤちゃんを知っているの!?”
だがそんな令子の言葉に反応する者がいた。
「誰!?」
令子は辺りを見渡すが分からなかった。
「うーーん」
”良かった! 気が付いたんですね、横島さん”
ようやく、気絶していた横島が起きた。その事でキヌはどんな状況でも横島と一緒なら何とかなるかもしれないと思えたから少し気が楽になった。
「私達はアヤちゃんに頼まれて人形を取り戻しに来たのよ!!」
このままでは埒が明かないとこれを機に状況をこちら側に有利にすべく叫んだ。
”アヤちゃんが…!? アヤちゃんが私を待っているの…!?”
令子の叫びに先程の声の主が再び答えた。
「ん〜、何だ? このひんやりとしているのに柔らかく気持ちがいい感覚は?」
”確りしてください!”
下では令子が結構大変な事になっているというのに未だ横島は完全に復帰できていなかった…
「!! あなたアヤちゃんの人形ね!? どこ!?」
声の主が誰かはわかったが位置がわからなかった。
”ここよ!! 私はここ!! そして本体の人形は私のとなり!!”
「!!」
アヤのモガちゃん人形の位置をようやく令子は見つけた。そこには言葉どおり、この人形集団の本体を捕まえたアヤのモガちゃん人形が居た。
”お、おまえ、新入りの…!! 裏切るのか!?”
同胞の裏切りに令子のモガちゃん人形は動揺した。その影響か統制の取れていた人形軍団が乱れた。
”アヤちゃんは私を大切にしてくれたわ! ここよ!! 早く…!!”
アヤのモガちゃん人形は暴れ、拘束から逃れようとしている令子のモガちゃん人形を必死に抑えていた。
「あれ、おキヌちゃん? な、何で俺、おキヌちゃんに抱きしめられて…ああっ!!」
”あ、暴れないで…”
やっぱり下ではかなり緊迫した状況だというのに上ではそんな事、お構いなしであった。
「……(アヤちゃん…ごめん…約束守れなさそう…)」
令子はスッとこういった類の妖物専用の吸引札を取り出した。悪霊用とは違って少し使い勝手がわるいが幸い、その問題はアヤのモガちゃん人形が解消していてくれた。
”ああ、は、早くっ!!”
「塵は塵に!! 土は土に!!」
すなわち、効力を表す文言が長いのだ。
”あっ!!”
「人形は人形に戻、「うぉ!」ふぎゃっ!」
もう直ぐという時に運悪く令子の上に横島が降ってきた。これには堪らず令子は横島ともども倒れた。
”きゃっ!”
その光景に驚き、アヤのモガちゃん人形は力を緩めてしまい、本体である令子のモガちゃん人形を逃した。
”今だっ!! 美神令子たちを拘束しろっ!”
「いたた…このマヌケッ!! 何てことするの千載一遇のチャンスが!!」
ガシガシ
最悪のタイミングでつぶされた令子は直ぐに立ち上がり、腹いせに横島を蹴りだした。
「おおうっ! すんまへん!! 堪忍や!! 不可抗力なんやっ! ってこんな事してる場合じゃないっスよ!!」
自分が全面的に悪いので仕方なく蹴られながらも、人形達にまさに襲い掛かられようとする状態を令子に警告した。
「そうなったんはアンタのせいだろうがっ!! それさえなきゃさっきので片付いてたのに!!」
令子は怒鳴ったがよくよく考えると、横島が気絶した原因は令子にもあるわけで回りまわって自分の所に帰ってきたのである。因果応報というべきだろう。
”かかれっ!!”
「ひぃーーーーっ!!」「うそぉーーーっ!!」
今までとは比べ物にならない数が二人に襲い掛かった。
「来るな! 来るな、来るな、来るなっ!」「くっ! このこのっ!」
横島、令子共に自分の得物を振るって近づけないようにするが、だめだった。
「くそーーっ!! どうせ襲い掛かってくるんやったらかわいい姉ちゃんがいいんやーーっ!!」
「アホかーーーっ!!」
雲霞のごとく群がるように二人に人形は覆いかぶさっていった。
”ああっ!! よ、横島さん、美神さん…”
そんな二人をどうする事もできずにキヌは見ているだけしかできなかった。神弓は横島を応急手当するときに手放して回収できていなかったのだ。そうしている間に二人は人形に埋もれてしまった。
”ふふ、ふっ、ははっ、はっ、はっはーっ!! 遂に…遂にやりました。私達、人形帝国の人間に対する逆襲の第一歩が、ここにっ!!”
令子のモガちゃん人形が勝ち誇る。
”””””人形帝国ばんざーーいっ!! モガちゃん人形、ばんざーーいっ!!”””””
”””””人形帝国ばんざーーいっ!! モガちゃん人形、ばんざーーいっ!!”””””
”””””人形帝国ばんざーーいっ!! モガちゃん人形、ばんざーーいっ!!”””””
そしてそれに追従するように幾多のモガちゃん人形が騒ぎ出した。令子のモガちゃん人形の足元にはアヤのモガちゃん人形が踏みつけにされていた。
げしっ!
”うぐっ!”
持ち主を髣髴とさせる蹴りでアヤのモガちゃん人形を蹴り飛ばす。アヤのモガちゃん人形はごろごろと転がった。壊れてはいないようだがダメージを受けているのか動けないようだ。
”さあ、同胞達よ!! 記念すべき人間人形第一号を作成しようではないかっ!!”
”””””おおおっ!!!”””””
モガちゃん人形達はいっせいに手を上げた。数が多いだけに見ている分には壮観である。
”ど、どうしましょう!?”
もっともキヌの場合は当事者であるからそんな悠長な感想などない。どうすればいいか、わからずオロオロしていた。山となっていたものから、それを構成していたモガちゃん人形が波を引くように次々と離れていく。
”よ、横島さん!?”
そこにはロープでこれでもかといわんばかりにロープでぐるぐる巻きにされた横島と令子が転がっていた。
「「むー! むー! むーーーっ!」」
ご丁寧に猿轡までされているので何を言っているのかわからなかった。もっとも態度と顔の表情から罵詈雑言を言っているのだろうと想像は付く。
”まさか、美神令子ちゃんにこうして会うことができるとは思いもよらなかった…まさに感無量…”
”おめでとうございます”
”そう…あの日から始まった苦難の日々が…今をもって報いられるのよっ!!”
パチパチパチ
”よかったです””やりました””これから始まるのですね栄光の日々が!”
”というわけで”
「むーーっ! むう、むーーっ!!」
縛られて転がされている令子は、必死に何かを言おうと口を動かすが、いかんせん口が塞がれている為、呻いている様にしか聞こえなかった。そしてその声は令子のモガちゃん人形にとって聞き心地のよい音楽であった。
”美神令子ちゃん…いえ美神令子!! 汝、我らが国の礎となるのよ!!”
「むがーーーl!! ぷはっ! 何勝手な事ほざいてんのよ!! 私があんたなんかの思い通りにさせるわけないでしょ!!」
恐るべき事に手足が自由にならない状態で令子は猿轡をはずし(破壊?)、喋りだした。
”おーほほほっ! 負け犬の遠吠えね。そんな状態でどうしようっていうのかしら? あなたの仲間の幽霊を当てにしているんだったら無駄よ。あの幽霊じゃ、私達が確保した神弓なしでなにもする事はできないわ。それにあの様子じゃねぇ…おーほほほっ!”
令子の言葉に負け惜しみの想いを感じて、令子のモガちゃん人形は悦に入った。
”豆粒ぐらいの大きさでも痛い〜っ!!”
キヌは宙に浮いているのでモガちゃん人形に直接襲われてはいないが石を投げられ鬼が追われるように右往左往していた。
「ひぃっ!」
こちらもどうやって猿轡をはずしたのかわからない横島が悲鳴を上げ顔を引きつらせた。令子の表情を見たからである。小さい子供が見れば絶対トラウマになる事間違いない。
”なっ!?”
ゴゴゴーと津波のような激しく恐ろしい圧迫感が令子より発せられ流石に令子のモガちゃん人形もびっくりして腰を引いてしまった。
「くぅ、(この縄さえなければ…直ぐにでも極楽へ送ってやるというのに…)」
”そ、そうよ。美神令子は今は無力。何と言ってもそのロープは霊力封じが備わっているもの”
「ぬぬぬぬっ、お〜の〜れ〜〜」
顔を真っ赤にして力を入れるが令子のモガちゃん人形の言う通り、びくともしなかった。
”ふふ、ようやくあなたに捨てられた私の復讐を始める事ができるのね”
「す、捨てた〜? 私があんたを!?」
先ほどまでの怒りもどこへやら、令子のモガちゃん人形が語る言葉に覚えがないと令子は叫んだ。今回の事件で令子のモガちゃん人形が首謀者だとわかった時、何時の間にか無くしていたと思っていただけにショックはでかい。
”そう、前日までは何時までも友達でいようねって言っていたのに…”
「そ、そんな覚えないわ」
”あなたは幼い時、母親と良く一緒に旅をしていたでしょ? その時の事よ…”
「そんな・・・覚えてない」
思い起こしてみるが何分小さな時のこと、しっかりと覚えていなどいなかった。大体、自分がその頃逃亡生活をしていたなど始めて聞いた。
”あの頃、あなたは何かの理由であちこちを転々と移動してたわ。多分誰かに追われていたのね・・・だって、私を捨てたのはその誰かに襲われた時だったのだもの”
「………」
”あなた達、親子が襲われたのは川の近くだったわ。あなたはその襲われた時、私を手放した…そのまま私は川へ…その後、ずっと令子ちゃんが迎えに来てくれると思って流されないように石にしがみついていたわ。でも、一時間経っても、一日経っても、一週間経っても必死にしがみついていたのに、迎えを待っていたのに来なかった。そして、とうとう力尽きて川を流されることになった。私はそれから色々と思い知ったの。それで人形だけの国を作ろうと思った。幸い令子ちゃんの人並みはずれた霊力で私は強い力を持つことができたわ。後は苦労があったけど遣り甲斐のある事だったから…”
「私が悪かったってわけ…?」
”さあ、どうなのかしら? 今更っていう気もするけど。しいて言えば折角の機会だからって事かな?”
「何か、納得いくようで、納得いかなーーいっ!!」
”じゃ、そういう事で”
「わーーーーっ!!!」
連載始まって以来の令子の大ピンチ?(あれっ?2度目だったかな?)に待て次回!!
(つづく)
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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。