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GS美神 近くて遠い夢

 Report File.0007 「大逆転シナリオ その7 再計画編6」
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*注意)このお話はオリキャラが主体で既存のキャラは名称でしかでて来ません。
    それがお嫌な方は読まないことをお勧めします。
    また、随分前に投稿しました「大逆転シナリオ」シリーズを読まねば話の流れが掴みにくいと思われます。
    というか、忘れているに違いない。

−−忘れてしまった人たちの為のあらすじ−−

 苦しい立場に追い込まれていたアシュタロス配下の魔族たち、生き残りを掛けてある一つの計画を立てた。それは横島忠夫に時空消滅内服液を飲ませ主たるアシュタロスの計画頓挫を無かった事にしようという壮大なのかちんけなのか分からない計画をぶち上げた。

 その計画を実行するためには様々な障害を乗り越える必要があった。それを取り除くべく計画を立てていくが進むにつれ容易ではないと打ちのめされる魔族の面々であった。








「スカウトは落ち着いてからするとしてだ、良く考えると日本出身の魔族って聞いた事がないな」

 ふと疑問に思ったアンカー兄が言った。

「カァ、そう言えばそうだ」

 カークも長年、活動してきたが日本出身の魔族に会った事は無かった。

「まあ、それは日本が特殊な地でもあるからだな」

「特殊なのか?」

「ああ、だいたい日本では昔から人の手に負えない存在はどんな存在だろうが神として扱われていた。一応、注意しておくがここで言う神は俺達が一般に認識している神族の事じゃないぞ?」

 イルはニュアンスが違う事をその場にいるものに説明した。

「それは、魔族でも?」

「そう魔族でも。それ所か強力な怨霊でさえも神として祭ったくらいだからな。実際、それが切っ掛けで人・・怨霊が神に変じる事もあった」

「「本当か(ァ)!!」」

 通常では起きえない現象であった為、みな驚いた。神族から魔族に堕天する事はそれ程珍しくはない。そしてその逆は殆どない。高き所より低き所へ流れるのは簡単だが昇るのは困難という事である。別段、神族が高位で魔族が低位の存在だという訳ではない。そういう仕組みなのである。だから神は天におり、悪魔は地の底にいると説明されるのである。実際には別次元にあるのでその説明は正しくはない。

 ちなみに神族、魔族が公に争っていた大昔であれば堕天するのも珍しい事ではなかったが今は起き難くなっている。

 驚いているのは人の意思によって神になる事があるという所だ。

「この日本という地は特別な地なのさ。気付かないか? 本来なら日本古来の神が居ても良い筈なのにいない事に」

 イルは皆に疑問を投げかけた。投げかけられた者たちは考える。

「確かにそうだ。日本において有名な神界とのチャンネルでもあり拠点でもある妙神山の責任者は猿神、管理人は小竜姫。何れも中国の流れを汲むものだ。心眼のヒャクメとて仏教系だから中国の流れを汲むな・・」

「そうだ。確カァに居ない」

 土地神はいるようだがそんなマイナーな存在は世界にざらだ。生まれながらの神族、魔族だというものを彼らは思い当たらなかった。

「そう、何故か居ないんだ。神話がある以上、昔は居たのかもしれないがね。それにこの地の神は特殊だ。その性質は神族、魔族を兼ねていると言う事なんだ。それが原因で今は居ないのかもしれない」

「この地に居る妖カァいは神が変じたものというのを誰カァに聞いた事ある」

「まあ、ここではそれを論じるのが本題じゃないしそれはまたの機会にしようぜ」

 アンカー兄が目的とは別の方向へ行きそうなのを修正した。

「そうだな。私にとっては非常に興味深いことなんだが今はその時じゃない。話は戻るが美神令子除霊事務所の関係者だ。まず美神令子の母親である美神美智恵は除外だ」

 GSの中でも最も厄介な人物をいきなり除外するとイルは言った。

「大体、察しはつくがその理由は?」

 アンカー兄は話の流れで予測はついていたがあえて聞いた。

「先程のヨーロッパ方面が騒がしいとの事で美神美智恵に命令が下っている。今日あたりにヨーロッパ方面へ発つ予定だ」

「やはりそうか」

 アンカー兄は満足そうにうなずいた。GS最高は美神令子、GS最強は横島や伊達やと言われているが最も怖いのはと聞かれればこの場に居る全員は美神美智恵と答える。その者がこちらが何もせずとも去ってくれるというのである。これを喜ばずしてどうするかという心情であった。

「美神美智恵は怖いんだな」

「我等が主アシュタロス様もそう思ったから、早急に排除にかかった訳だからな」

「確カァにあの逆転号への対応をカァんがえれば頷ける」

 この場に居る者は皆、人を格下と思うものは居なかった。寧ろ、神族等よりも脅威と判断していた。それもそのはずだ、主たるアシュタロスは神族ではなく人に敗れたのだから。

「美神美智恵の次女である美神ひのめについても除外だ。今は赤ん坊だからな脅威ではない。それに美神美智恵が仕事の間、夫に任せるみたいだからな」

 イルは美神ひのめの潜在能力は長女たる美神令子を凌いでいると見ていたが、今現在は障害にはならないと捨て置いた。第一、美神美智恵の夫の公彦は南米の奥地で研究しているし、計画がうまくいくのなら気にする必要も無いのである。気にしなければならないとしたら計画が失敗した後であろう。

「となると本当の意味での美神令子除霊事務所の面々か」

 所詮、美神美智恵、ひのめは美神令子除霊事務所としては部外者である。

「まあ、最も我々の目標である横島忠夫の身近に居るもの達なんだな」

「今カァいの作戦では最も考えて置カァないといけない」

「そこで私はこんなものを作った」

 そう言ってイルはバァンと壁に紙を魔力で貼り付けた。そこには美神令子除霊事務所メンバー相関図と題された内容が描かれていた。その中心には本来なら事務所の所長である美神令子が書かれるはずだが横島忠夫が書かれていた。美神令子がそれを見れば必ず抗議の声を上げるだろう。

 この場の面々はその相関図を見た。

・美神令子から見た事務所メンバーへの感情
  横島忠夫・・・・使い勝手の良い丁稚。ストレス解消用のサンドバッグ。
  氷室キヌ・・・・かわいい妹分。ネコ?
  犬塚シロ・・・・飼い犬。丁稚その2。
  妖狐のタマモ・・ペット?妹分?ネコ?

・氷室キヌから見た事務所メンバーへの感情
  美神令子・・・・憧れ。
  横島忠夫・・・・大好き。
  犬塚シロ・・・・かわいい妹分。
  妖狐のタマモ・・かわいい妹分。

・犬塚シロから見た事務所メンバーへの感情
  美神令子・・・・群れのリーダー。
  氷室キヌ・・・・やさしいお姉さん。
  横島忠夫・・・・師匠。淡い恋心。
  妖狐のタマモ・・ケンカ友達。

・妖狐のタマモから見た事務所メンバーへの感情
  美神令子・・・・家主。
  横島忠夫・・・・一応、恩人。
  氷室キヌ・・・・事務所で一番怒らせちゃダメな人。
  犬塚シロ・・・・ケンカ友達。

・横島忠夫から見た事務所メンバーへの感情
  美神令子・・・・雇い主。何れ俺のもの。
  氷室キヌ・・・・自分にはもったいないええ娘。
  犬塚シロ・・・・弟子。
  妖狐のタマモ・・妹分。

「・・・なあ、ネコってなんだ?」

 アンカー兄はどう考えても自分の知っているものとは違うと感じたから聞いた。

「どっかで聞いた事があるんだな」

「それは美神令子除霊事務所メンバーがモデルとされる小説から導き出されたものだ」

 そう言って参考となった小説を机の上に置いた。そこには「聖美女神宮寺シリーズ」と銘打たれたものが6冊程あった。

「それによると美神令子と氷室キヌは妖しい関係にあるようだ。それに加えて最新刊では新たに登場した妖孤がそれに加わったと匂わせるような記述があった。著者の安奈みらという者は取材も結構しっかりとやっているようだし信憑性は高いということで加えておいた」

「で、結局ネコってなんだ?」

「よく分からんが受けはそう呼ぶんだそうだ。それ以上の意味は無いらしい」

 イルも明確な答えを知らないのか首を傾けていった。

「カァ、妖しいってみカァみ令子はそうなのカァ?」

 カークはなんとなく意味がわかっているのか疑問点を聞いた。

「うむ、それについては美神令子のライバルである小笠原エミの発言からも伺える所がある。まず間違いない」

 イルは確信を込めてそう言った。ここに新たなる誤解が生じていた。美神令子本人が居れば力いっぱい否定しその場に居るものを制裁しているだろう。だが否定するものはこの場に居なかったので美神令子はそうなのだと確定されたのであった。

「こうしてみると結構、深いつながりがあるな」

「そうだ。そしてこれが横島忠夫好感表だ!」

 再びイルはバァンと壁に紙を魔力で貼り付けた。

「あんまり今回には関係ないんじゃないか?」

 アンカー兄が首を捻りながら言った。

「そんな事はない。相手は霊能者だ。霊能に目覚めていない者でも身近に感じている者の危険を人間は察知する事が多々あるのを知っているだろう。日本では確か虫の知らせだったか? まあ、だから特に霊能者はそういう所は鋭い」

 イルは拳を握り締め言った。

「嫌に張り切っているんだな・・」

「カァ、同意する。まああれを作るデータ取りが大変だったようだカァらな」

 カークもアンカー兄弟も口々に感想を述べながらもイルの張り出した表を見た。

横島忠夫から見ての好感度

氷室キヌ―――――――――98(好意)――好い娘。おキヌちゃんでいくのも良いかも。
美神令子―――――――――85(憧れ)――無理目の女。何れは俺のものに。
美神美智恵――――――――58(畏怖)――さすが美神さんのおかん。油断したら使い倒される。
美神ひのめ――――――――92(好意)――発火能力さえなければかわいい赤ん坊。美神さんのように成らないように祈ろう。
犬塚シロ―――――――――84(好意)――慕ってくれるのは嬉しいが無茶な散歩は勘弁。
妖狐のタマモ―――――――62(友達)――世間にひねてる奴。黙っていればかわいい。
伊達雪之丞――――――――74(友達)――喧嘩っ早いがいい奴。話していると結構、腐れ縁。
ピエトロ・ド・ブラドー――72(友達)――美形なのを鼻にかけているが弁当を恵んでくれるいい奴。でも時折、視線を感じるのは気のせい?
タイガー寅吉―――――――70(友達)――ピートの弁当争奪のライバル。似てる境遇にいる仲間。
学校妖怪の愛子――――――81(好意)――青春マニア。でも、授業なんかで分からん事を教えてくれる。
花戸小鳩―――――――――93(好意)――好い娘。おキヌちゃんに次ぐ癒し系。高校生なのに胸が・・何食って大きくなったんだ?
福の神のびん―――――――64(友達)――俺にも運を!!
唐巣和宏―――――――――71(尊敬)――同じ美神家の迷惑を被る仲間。自分も苦しいのに時折飯を奢ってくれるやさしい人。
六道冥子―――――――――66(好意)――かわいいけど余り近付かない方が吉。式神さえ居なければ・・・
小笠原エミ――――――――61(好意)――何でピートなんだ!?美神さんに並ぶナイスバディなねえちゃん。
ドクター・カオス―――――60(友達)――頼りになるのか、ならんのか分からんはた迷惑なじいさん。
マリア――――――――――71(好意)――アンドロイドとは思えん。しかし、アンドロイドか・・惜しい・・惜しいな・・
西条輝彦―――――――――19(天敵)――全てにおいて気に食わない。何時かぎゃふんとやっちゃる。美神さん絡みでなければ良い奴かもしれない。
魔鈴めぐみ――――――――91(好意)――飯を時たまタダで食わしてくれる良い人。
鬼道政樹―――――――――75(尊敬)――師匠として尊敬。
小竜姫――――――――――99(崇拝)――俺を最初に見込んでくれた女神様。
ヒャクメ―――――――――83(好意)――面白い奴。以外にガードが低いからセクハラしやすい。
パピリオ―――――――――89(好意)――わがままだがかわいい妹分
ワルキューレ―――――――78(好意)――ちょっと苦手。ナイスバディなんだがな・・
ジーク――――――――――61(友達)――人格が時折変わるが基本的に素直で良い奴。
ベスパ――――――――――67(好意)――ルシオラの直接の敵とも言えるけど憎みきれない、ルシオラの妹だし・・
ルシオラ――――――――100(愛)―――何か方法があるはずだ!俺はお前を絶対、取り戻す。


「こうして見ると横島忠夫って奴は基本的には人を嫌うって事はないんだな」

 カーク兄は感心して頷いた。

「思ったより美神令子は低いんだな」

 カーク弟が意外そうに呟いた。

「カァ、生カァつを補助してくれる人物は好カァん度がたカァい」

 じっと見ていたカークが自分の分析した感想を言った。

「まあ、これは私がデータを収集して分析した結果だからな。本当にそうかは本人にしか分からんさ」

 イルは皆に注意を即するがそういう割には自信たっぷりの態度であった。

「その割には具体的な内容のような気がするが」

 イルの謙遜ともいえる言葉をまともに捉えてカーク兄が言った。

「その辺は多少、寝ている時に本人にバレ無いように夢を介して心を走査したのさ。その時、多少厄介な存在を感知したがね」

 イルが貼ってある表の自信となる根拠を説明し、その時に気になった事を報告する。

「厄介な存在?」

「良くは分からなかったが横島忠夫の精神の中で眠っていた。接触するとまずいような気がしたんで避けたがね」

 イルもその存在に多少、不安を感じ調べたが結局、分からずじまいだった。

「計画には支障ないのか?」

「知る限りでは大して影響はないと思われる。夢の中でもその存在については触れることがなかった所を見ると横島もその存在を知らないのだろう」

 そう言いながらもイルは不確定要素として考えねばならないと思い始めていた。

「夢の中はどうだったんだ?」

「さすが煩悩魔人とか言われるだけのことはあったよ。まさにハーレムだった」

 イルはその情景を思い出して笑った。

「成る程、この表を見る限りどう見てもルシオラだけで収まりそうにもないからな」

 カーク兄は表を見ながらここまであからさまに気が多いのは人間としては珍しいなと呟いた。

「まあその辺は人間より神族・魔族は寛容だからな」

 元々、神族、魔族には夫婦という概念は様々な形態があり一夫一妻、もあれば一夫多妻、多夫一妻、多夫多妻もありえるのだ。

「もうひとつの表なんだな」


横島忠夫を見た好感度

氷室キヌ――――――――100(愛)―――横島さんがルシオラさんが好きでもやっぱり好き。
美神令子――――――――100(好意)――私が横島クンをス、スキ?冗談じゃないわ!
美神美智恵――――――――80(負目)――令子の横島君への扱いは酷すぎ。このまま続くなら改善しなくては逃げられてしまう。
美神ひのめ―――――――100(好意)――好き。(赤ん坊のため、好きか嫌いかのどちらかのようだ。成長するに従いランク分けされるだろう)
犬塚シロ――――――――100(尊敬)――先生はすごいでござる。
妖狐のタマモ―――――――77(友達)――まあ、一応助けてもらった恩人だから。
伊達雪之丞――――――――84(友達)――俺の最大のライバルにして超えなければならない壁。
ピエトロ・ド・ブラドー――88(友達)――目に付く所もあるけどありのままの自分と接してくれる友達。
タイガー寅吉―――――――81(友達)――初めての友達じゃけん大事じゃー。
学校妖怪の愛子――――――98(好意)――やっぱり横島君がすきなのかも。きゃ、青春よね!
花戸小鳩――――――――100(好意)――横島さんはやさしいですから。
福の神のびん―――――――90(友達)――小鳩を頼むでー、ほんま。
唐巣和宏―――――――――85(尊敬)――横島君すまない。私が師匠として未熟だったばかりに・・・。
六道冥子―――――――――80(好意)――私を〜怖がらない良いひと〜。令子ちゃんの〜助手〜。だけど〜また〜手伝って〜ほしいわ〜。
小笠原エミ――――――――60(好意)――令子にはもったいない助手。多少のセクハラなら大目に見るからタイガーと変わってほしい。
ドクター・カオス―――――72(友達)――小僧もやるようになったもんだ。
マリア――――――――――99(好意)――横島さん、スキ。
西条輝彦―――――――――38(怨敵)――令子ちゃん以外とくっついてくれるなら問題ない。さあ、横島君、誰がいいんだ?便宜を図ってやるぞ!
魔鈴めぐみ――――――――94(好意)――おいしそうに料理を食べてくれるのがいいですね。でも食べるのも困るぐらいなんて美神さんは何を考えているのかしら。
鬼道政樹―――――――――80(弟子)――色々と問題もあるけど頭のキレは良いし、要領もええから上達早い。
小竜姫――――――――――99(好意)――横島さんも節度のある態度であればいいんですけど。
ヒャクメ―――――――――93(好意)――スケベだけどやさしいのね〜。
パピリオ―――――――――95(好意)――ポチ、ルシオラちゃんの為にがんばるでちゅ。
ワルキューレ―――――――94(好意)――何時の間にやら戦士に成長していたな。まだ頼りないところはあるが。
ジーク――――――――――81(友達)――横島さんは人間なのに凄いです。
ベスパ――――――――――70(好意)――アシュタロス様の願いを叶えてくれたのにどうして憎める?・・わからない自分の気持ちが・・
ルシオラ――――――――100(愛)―――コメント不可能。おそらく「私の全て」だろう。

「これもなんか具体的だな?」

「まあ、なんだ蛇の道はって奴でね。横島忠夫について調べまわっているゴシップ好きの神族、魔族がいるのさ」

 イルはニヤリと笑った。

「カァ、それにしても凄いな女の殆どが好意的」

 実際、70以上あれば、付き合ってもいいかなというレベル以上だから驚きである。

「その気になれば選り取りみどりだな」

「でも、抜きん出てるのは氷室キヌなんだな」

 多分、ルシオラと愛情が同レベルに高まってるんじゃないかと予想させるものがあった。

「まあ、確かにな質が他の者と違うからな。第一、滑ったとはいえ本人に明確に意思を伝えていたようだからな」

 横島忠夫にしても心情的にルシオラを除けば氷室キヌは一番近い位置にあるのである。位置だけで言うと小竜姫が近いかもしれないが別の意味で彼女は横島忠夫の特別な存在となっていた。

「今回の場合は「横島忠夫を見た好感度」表が重要だな」

 アンカー兄は表をじぃと睨んで言った。

「というカァ「横島忠夫カァら見ての好カァん度」表は必要ない」

 カークはバサバサと翼をはためかせて言った。

「せっかく作ったんだ。発表したって良いじゃないか」

 イルらしくなくいじけて言った。

「「「似合わん」」」

「ほっとけ!!」

 自分以外のそう突っ込みにイルは一層落ち込んだ。

「まあ、機嫌直せよ」

「カァ、苦労して作ったのはわカァる」

「話を進めるんだな」

 いじけたイルを立ち直らせるべく皆が声を掛けた。

「・・・そうだな。何時までもいじけているわけにはいかない」

 イルはスクっと立ち上がった。

「あの表から見ると横島忠夫の危機に気付きそうなのは氷室キヌ、美神令子、美神ひのめ、犬塚シロだな」

「やはり、美神ひのめを除けば美神令子除霊事務所のメンバーばかりだな。後何人かは該当しそうだが、身近な人といった感じで誰がとまで特定は出来ないレベルだろう。それに計画に沿っていけば動けなくなるからやはり警戒しないといけないのは美神令子除霊事務所のメンバーだな」

 やはり、中核が何かと言う事を再認識した一同である。

「美神令子除霊事務所のメンバーであるなら容易い。何故か分かるか?」

 イルはニヤリと笑った。

「・・美神令子除霊事務所は美神令子の独裁だからな。そして、美神令子を動かすのは簡単だ。片手間に考えても出来る。何せ金が行動基準だからな」

 アンカー兄はあのがめつさは自分から見ても見苦しいものだと半ばあきれていた。

「カァね・・いわば黄金は悪魔の金属ともいえるカァらな」

「そうだな、黄金は人の欲を呼び覚まし堕落させる。あの美神令子には相応しいかもな」

 カークの意見に賛成とアンカー兄は頷いた。

 魔族にそんな事を言われている事を美神令子が知ればどう思うであろうか。怒るのか、凹むのか、それとも・・・

「基本の骨子は横島を単独でしかも近場で除霊させること。その他のメンバーは遠くで除霊させることだ。出来れば海外が望ましい」

 イルは美神令子除霊事務所への方策の基本方針をあげた。それは最初に実行しようとした時と変わらなかった。実行の障害となるのは近しい者であるから、その者達を横島より遠ざけるか排除する事が基本である。今回はそれを大規模にしただけなのだ。

「横島を単独で行動させるのは難しいと思うんだな」

「弟よ、そうでもないぞ。少し工夫すれば大丈夫だ」

「兄貴、どういう事なんだな」

 アンカー弟は驚き、自分では考えつかない事を考えついた兄を尊敬の眼差しで見る。

「ここ最近の観察データより分かる。ここ最近、横島は何度か単独で除霊を行っているが、その時は決まってある事が起きている」

 イルはうんうんと頷いた。カークははあ、成る程、確かにそうだなとカーク兄が言わんとする事に気がついたようだった。

「何なんだな?」

 アンカー弟はこの場で気が付いていないのが自分だけと言うのがちょっぴり情けなくはあったが素直に聞く事にした。

「美神令子の女としての嫉妬だ。もちろん、本人は気が付かず、むかついているからと言うだろうがな。まあ、美神令子がむかつくと言う事はその場に氷室キヌや犬塚シロがいれば同じ状態になる。横島は理不尽と思うだろうが」

 あれは少しは同情できるとアンカー兄は言った。

「女の嫉妬は魔族にとっては付け入る隙となるのが普通だが、いかんせんあの事務所の女性陣は心が幼すぎる」

 残念だとイルは溜息をついた。古今東西、女の嫉妬は魔族にとり魂を得る恰好のシチュエーションなのだ。特に美神令子除霊事務所の女性達の魂の輝きは格別である。

「本当に残念・・」

 カークもイルに同意した。横島の周りにいる女性は一筋縄では行かない。一般人の花戸小鳩でさえも福の神の加護を得ているのだから。

「そういう事でな同時期に行うしかない依頼を3つ用意する。一つは全く女っ気の無い仕事、後は言わずもがな。そしてどれも美神令子が断りがたい魅力的な報酬額で美神令子達レベルなら問題なく解決できるというものをだ。表向きはな?そして、依頼人は魅力的な女性にして横島にそれとなく好意を示してやれば後は自ずと割り振りが決まるだろうさ」

 イルはデータが示しているとニヤリと笑った。他の者も頷いた。

「計画期間は7日間。これで決まる。これでうまくいかなきゃこの計画は破棄して次の行動に移ろう」

 イルは高らかに宣言した。

「では、この計カァくを祈って」

 何時の間にやら用意していたブラッディ・ルージュと言われる魔界産の酒を皆に配っていた。その酒が入ったグラスを一同は一斉に掲げた後、一気に飲み干した。

ガシャン!

 飲んだグラスを床に叩きつけ、皆は見詰め合った。その瞳には絶対に成功させると言う意思が宿り、妖しい輝きを見せていた。

「では、第二次大逆転計画を発動する事をここに宣言する」

「「「おうっ!!」」」

「手始めは?」

「それは・・・」




 いよいよ本格的に動き始めた魔族たち。果たして計画の行方はいかに。


<続く>

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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。






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