あとがき The ghostly sweetheart

毎度お馴染みですが、あとがきは激しくグダグダした文章になっている気がします。
それでもよければ...

*0章
0章は、渡晴の告白編。
30KBの長い話ですが、短編小説の標準の長さらしいです。
僕としては、短編として書くには長すぎるという感覚しかないのですが;
ともかく、長い回想編です。
2人が付き合うことになった経緯、でしょうか。
ここで、もし渡晴が美久に告白をしなかったら、と考えてみると、恐らく彼は茉子と付き合っていた気がします。
彼女が渡晴のアパートに泊まるわけですが、茉子は誤魔化しているだけでしょう。
渡晴のアパートに来ることになった理由自体は、渡晴が言い出したことですけれども。
口実を作ったということだと思います。
確かに、故郷を懐かしむ気持ちもあるでしょうけど。

* 1章
1章は、美久の帰還編。
渡晴のうちには、突然帰ってきたことに対して戸惑いがありますが……。
当時の渡晴はそれこそ頼りなさげで、美久が心配になるのも仕方ないと思います。
コンビニ弁当って辺りが、ましてそれを引き立てますね。
自炊ができていないという状態は、かにも情けなく見せるものです……。
設定としては、当初茉子に霊が見えるものとする予定ではありませんでした。
本来の設定は、美久が渡晴にアドバイスして上手くことを運ばせるというもの。
ただ、それよりも"幽霊である"ということを生かせるような設定は……、ということです。
それによって、茉子は幽霊が見えるようになったわけで……。
聡司に見えていないというのは、彼がそれほど重要人物でないからです。
そんなに見える人が増えても仕方ないですしね。

* 2章
2章は、渡晴の心配編。
彼女がいつ自分の元からいなくなってしまうのか、ということに対してです。
再び彼女がいなくなった時に、自分はどうなってしまうのだろうかと、ただ思う。
最初の日は、彼女が公園に行っただけなのに渡晴はものすごく取り乱します。
駅までは結構距離があるはずなのに、それを寝間着姿で走っていくのです。
慌てすぎだと思うのですが……。
2日目は、渡晴にとって、幽霊としての彼女との付き合い方について考えてみる日です。
今後の彼女とのコミュニケーションに大きく影響してくる話ですが。
それも単なる美久の口実なんですけど……。
それから、外しては置けない、2人が一緒に昼食を摂っている理由も明かされます。
これは本編においては肝心要なのですが、字数的には少なめです。
内容は、0話やこの物語の終わりにも関わってくる内容ですが。

* 3章
3章は、茉子の回想編。
茉子が高校のときにどうしていたのか、誰を想っていたのか、についてです。
部活に熱心に励んでいたのは確かだけれども、誰を想っていたのかについては……。
結局どうであったのかという真意は、最終話である46話で語られます。
それまでは曖昧なままです。
美久も、そうだろうとおぼろげに思っているだけで、確実であるという根拠はありません。
ただ、仄かにそうであるという気配がしていて。
渡晴の側からしても、やっぱりあれは思い過ごしかと思われているわけですから。
強く自分をアピールしていこうというわけではなく、こうしていたいと思うだけ。
それ以上の想いがなかったから、高校の頃ずっとそのままだったわけで。
一線を越えることができなかったということです。

* 4章
4章は、美久の時間編。
折り返しを迎えた美久の現世にいられる期間ですが、ここからが本番のようなものです。
いままでは動向を伺っていただけというか、状況の把握というか。
目的を果たすのは、後半がメインです。
美久がいなくなった当時の話が、夢と渡晴の回想とで描かれてます。
この展開は悩んだのですが……、描写を減らして、うっすらと描いたつもりです。
あまり克明に書きたくなかったというか……。
それでも、ある程度の量はあるのですが。
詩のコーナーにあるあれは、このときの状況を書いたものです。
敢えていうならば、茉子からの視点、だと思いますが……。

* 5章
5章は、美久の告白編。
茉子に対する、ここへ戻ってきた目的を述べるということです。
もちろん、それは困惑を誘うのですが、仕方ないといえばそれまでか……。
その前に、美久がいなくなった当時の話が、美久の回想で描かれてます。
美久側の話ですが、詩に直接繋がってくるポイントです。
既に幽体離脱していて、幽霊としての姿があったわけですが……。
一方茉子に対しての告白は、のちの展開に繋がる状況へと向かうきっかけになります。
謎の手紙と、彼女の温かみに秘められた思い。
謎のメモ帳と、彼女の屋上での秘められた考え。
起承転結で言うならば、転にあたると思うのですが……。
あと正直、カレーは飽き飽きしていると思います……。

* 6章
6章は、茉子の理想編。
こうありたいと思っていたものと少し様子が違うようですが……。
だからこそ、このときの彼女の心境は、実に複雑であったはずです。
その溜まった思いのやり場が、美久の身勝手さだったわけですが。
美久も、確信犯的なところがあるのですが、そうでもしなければと思っているのでしょう。
一方、渡晴の部屋へと駆け込んだ茉子の涙は、色んなことを抱えてです。
報われない自分の気持ちと、それを想ってくれているであろう美久と、気づかない渡晴と。
美久が知っているからこそ茉子に"渡晴と..."と頼んだことは、茉子もわかっているでしょう。
でも、それが逆に裏目に出てしまっていることを、気持ちとしての当てどころがなかった。
半ば、八つ当たりのようであり、しかし理に適っているようでもあります。

* 7章
7章は、渡晴の進歩編。
美久からの心の離別とでも言うべきでしょうか。
真の意味で彼女から別れるということを意味します。
そのときを目の前にしての自らの誕生日。
そこで向かえるものは、例の謎のメモ帳。
その中身やいかに……、と。
やはり美久が望み案ずるのは、以後の渡晴の無事です。
だからこそ戻ってきたその理由を、今後も消化できるように。
渡晴はそれを知っているのか、知っていないのか……。

* 8章
8章は、茉子の告白編。
実は今までに2回告白しようとしている場面があるのですが、共に失敗に終わっています。
3度目の正直というやつで、茉子としてはやっとのことです。
一体茉子がいつから渡晴のことを想っていたのかは不明ですが、長いことには相違ないでしょう。
ところで、渡晴がああして決断した理由は何か。
高校のときのことを、再び回想しているのですが、わかるでしょうか?
渡晴は、茉子のことが好きではないわけではなくて、ただ別れを恐れていたのです。
"茉子といたい"という気持ちは、"美久と付き合いたい"という気持ちとは、似て非なるものです。
それは、深さではなくて、長さを追い求めるもの……。
渡晴の決断は、その恐れを捨てると共に、長くいられるという自信でもあったのでしょう。

* 9章
9章は、3人の結末編。
"美久は今、天国でどうしているんだ"という問いに答えはありませんが……。
ちなみに題名の"Contemplation"とは"思い入れ"という意味です。
それは、各々が各々に向けて寄せる感情です。
愛情でもあり、惜情でもあり、哀情でもあります。
色んな想いをこめて、最終話の題名としてあります。
さて、美久からの手紙ですが、ここにも美久の告白があります。
渡晴にしてみれば意外な新事実ですが、茉子にしてみれば衝撃の新事実でしょう。
あの状態を見られていたことなんて、予想だにしなかったわけですから。
もういないものとして、気を遣うことも、気にすることもなかったのに、と。
しかし、おあいこですので、あまり怒ることもできないわけです。
(元々、茉子自身がそれほど怒るようなことがないというのもありますが……)
それから、茉子の告白もあります。
いままで釈然としなかった、いままでの茉子の感情です。
この経緯があってこそ、成り立つ所以があるわけで……。

* 全体
幾つか、消費し切れていない伏線が残っている気がするのですが……。
それから、謎が謎のまま終わってしまっていることもあります。
例えば、美久が茉子に渡晴の前で好きな人がどうと尋ねたときのこと。
あの時、最初に茉子の元へ行った美久は、彼女に何を言ったのか。
僕の中にそれなりの答えを用意してありますが、ここは想像にお任せします。
あと、茉子編が書きたいという衝動に駆られているのです。
でも、なんだか書いたら負けのような気がしてなりません。
それがわからないからこそ、意味があるような気がするのです。
機会があれば、部分的には書く可能性があるかもしれませんが……。
ともかく、無事に終われてよかったと思います。

2006/01/15 

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