第十七話(S) 出発時刻

一月二十二日の日曜日。
私にはどうも遊園地に遊びに行くという印象よりも、Wデートであるという印象のほうが格段に大きい。
例えばみんなが誰とも付き合っていないだとか同性同士なら前者の印象があると思う。
でも今回はそうではない。
仁志君と美樹ちゃんは付き合っているとのこと。
それに、私は育人君とこうである以上……デートということになる。
たしかに告白したこともないし、告白されたこともないけども……。
なんだかそんなことを言わなくても自然にそんな風になっている。
言わずしてそうであるというのもどうも不思議な感じだと時々そう思うことがある。
ころで、集合の時間は八時半。
駅までは家から凡そ二十分ほど。
八時くらいに家を出れば間に合うと思いそのつもりで動く。
そしてそれまでに用意を済まし、早速家を出る。
そういえば今日も新聞を取りに行ったもののそのときには育人君に会っていない。
しばらく待ってみたものの出てくる気配も一向にない。
仕方がない、どうせ駅で会うのだから変わらないだろうと思い、家へ入ったけれども。
そして駅へついたときにはもう仁志君と美樹ちゃんが来ていた。
時計の指す時間は八時二十分を少し過ぎたところ。
待ち時間まで十分弱あるが、まだ育人君は来てはいないみたい。
「育人君はまだ?」
「そうみたいだけど、途中で会ってない?」
「いや、会ってたなら一緒に来てると思うし……」
そう言うと二人は少し驚いたみたい。
そして時は一分、二分と進んでいく。
でもまだ育人君は来る気配はない。
ついには、集合の時間にもなったもののまだ姿は見えない。
「育人、遅いなぁ……」
と、仁志君が言う。
「電車の出発時刻っていつ?」
「四十分過ぎなんだけど……だから昨日わざわざ念を押しておいたのに」
と、今度は美樹ちゃんが言う。
それから二、三分ほど。
さっきから、その姿を探していた仁志君が指を差して私達に叫ぶ。
「あれ、育人じゃないか?」
その差すほうにはたしかに育人君らしい人影が見える。
そして、三人で育人君のほうへ駆けていく。
「ごめん、寝過ごしちゃって……」
育人君の息が荒い。
朝見かけなかったのもそのせいか。
「だから、昨日ああやって八時半に駅集合だって念を押しただろ?」
「う、うん……」
「ともかくもうすぐ電車来るから急ぐぞ」
と、仁志君が育人君に言う。
「あっ、うん……」
そのときには電車の出発時刻まで四分と迫っていた。

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