You あなた

What I'd like to see with you (あなたと見たいもの)

「全然ダメ!」

彼女は、私の背中でそう言った。

「こんなもんじゃ、全然ダメなの! もっと、もっとよ!」

彼女は、再び私の背中でそう言った。

でも、私にはもう、これ以上をこなせるような体力は残っていない。
それだというのに、彼女はまだ言う。

「もっと! もっと速く!」

息は既に途切れ途切れとなっている。
頭は既に熱に満ちて、脳天から湯気が出るかと思うほどだった。

「この程度じゃダメなの! 風を、音を、光を超えるくらい速く、ペダルをこいで!」

この自転車からは、まるで悲鳴を上げるかのような音が響いていた。

彼女は、そんなに急いで何を見ようというのだろうか。

「いいから! とにかく急いで!」

彼女はその問いに何も答えを与えてくれなかった。

午前四時の町を、私は海に向かってひたすらペダルをこぎ続けた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」

肺が、痛い。
心は、既に限界を超えているかのように脈打っていた。

「あれを見て」

薄明かりの中、足元の砂を自然と見ることになっていた私の耳に、彼女の先ほどと違った声が響いた。

空元気を出して、彼女の示すほうへ頭を上げる。

そこには、地の果てから顔を出す太陽があった。
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