One pair under the umbrella
「……お父さん」 それは、ちゃんと届くことが分かって言うのには、久しぶりすぎる言葉。 「うん?」 「元気に、してた?」 同じ傘、すぐ傍歩くその姿に、記憶の中の面影をうっすらと照らし合わせる。 何も知らなかった頃じゃない。今ならちゃんとその姿を焼きつけることができる。 「ああ。この通り、な」 「そう……。よかった」 何気ない会話。でも、それだけでもほっとする。 「……今は、大学生か?」 「うん。○○大」 「じゃあ、下宿なのか?」 「そう。もう、外へ出たくなったから」 「そうか。近いし、お父さんのところにだったら、いつでも頼っておいで」 きっと、お父さんはもっと会いたいんだ。今まで、会えなかった代わりに。 |