Una figlia adorata e padre adorato
駅を出て、微かに降る雪にあの日のことを思い出す。 街のカフェ、大都会の大学へ行った友達、一杯のコーヒー。 それはとても苦かった。 手に持つ傘を広げようと前に据えたとき、隣を男の人が傘もささずに雪の中へと駆けて行く。 一瞬だけ見えた横顔、そしてその後ろ姿。 きっと、いや多分。願わくは、絶対。 「お父さん!」 夜の駅前に響く声に止まる足。 怖くて前へ踏み出せずにいる私に、ゆっくりと再びその顔が見える。 「……芽実(めぐみ)?」 私の名前を紡ぐ声は、幼い頃と、あのカフェの時と、同じ。 「うん!」 駆ける。開こうとした傘を投げ打って、お父さんの元へと! 音を立ててその胸へ飛び込む。もう、大学生にもなったっていうのに。 やっと捉(つか)まえたその姿を、ぎゅっと、強く、強く抱きしめて。 |