Uma stazione

「今日は、ありがとう」
駅の改札口で、彼が私に声をかける。
「これからも宜しくお願いします」
「こちらこそ。宜しくお願いします」
あらん限りの笑顔でそう答える。
「それじゃあ、そろそろ時間だから。暗いから気をつけて」
「康隆さんも、ね」
「ああ、ありがとう。それじゃ、また。おやすみ」
「うん、また。おやすみなさい」
中へと入っていく彼の姿を惜しむように眺めて、その姿が視界の外へと消えるのを経て振り返る。
見えるのは少し古びた駅舎、継接ぎの舗装、場違いに高いマンション、いつものスーパー。
この光景も、しばらくすると日常ではなくなるのだと思うと淋しかった。
嬉しいだなんて嘘。
本当は、嬉しくて、淋しくて、悲しくて。
そして何よりその大きさが苦しかった。
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