雪の中
「うわあ……」 彼女のあげた一声はそれだった。 「雪が、こんなに高いよ……」 「すごいだろ?」 「うん、すごいすごい!」 そう言って彼女はきゃっきゃとはしゃいでいる。 道の両脇に巨大な壁となって積み上げられた雪は、朝日を浴びてキラキラと輝いていた。 「ねえねえ、写真撮って!」 私の服の裾を引っ張って言う。 「ああ分かった、分かった。だからそんなに引っ張るなって」 持ってきた三脚を立てて、カメラを置く。 タイマーをセットし、二人して雪の壁の前に立った。 私が彼女の頭の上に軽く手を乗せると、彼女は笑って私を見た。 もうこれで彼女に会えるのも最後なのかと思うと、この笑顔こそ写真に収めておきたかった。 パシャッ。そういってシャッターと、私と彼女の縁が切れた。 |