この曲はすべて英語詞だけど、曲だけで情景が浮かんでくる。歌詞通り嵐で荒れ狂う海や、嵐のように暗い闇のような出来事。過去の暗い記憶。どれだけ後悔してもそれを運命と受け止めるしかない苦悩。英語だからこそ日本人の私は何も考えないで情景を浮かべることができる。 詞の内容は、愛する人を失って荒れ狂う海を彷徨う物語を描かれている。ワーグナーによるオペラ「さまよえるオランダ人」THE CAPE OF STORMS(喜望峰の伝説)が元になっている。 「君は気付かない罪の色 それは嵐のように重ねたような闇」 最初の文節がすごく印象に残る。最初は表情を色で例え、次は「君」への自分の感情を味で例える。すべてが過去の出来事で、「君」を愛しく感じながらも、もう叶う事のないことに苦悩を覚えてる。その感情が嵐のようで、嵐を重ねたような闇のようにどんよりしていて、見えない影を追いかけ思い求め続ける幽霊が浮かんでくる。ちなみにPVの撮影現場はロンドンのセブンシスターズ。真っ直ぐ立ってられないくらい風が凄く荒れ狂っている風景。まさにCAPE OF STORMSで曲に実にマッチしているものとなった。 この曲自体はROENTGEN発売時、つまり2年前にすでにリリースされたわけだが、昨年HYDEがアダム役として出演した「下弦の月〜Last Quarter〜」劇中に登場する「Last Quarter」という曲として起用されている。アダムはイーヴルアイというバンドのヴォーカルで、イギリスと日本のハーフという設定。当時、日本人の恋人さやかとイギリスで幸せな生活を送っていた。未完成だった「Last Quarter」は愛する彼女のピアノを入れるはずだったが、彼女が病に侵され叶わぬ夢となり、愛にあふれた歌は「鎮魂歌」となってしまう。アダムは悲しみに耐えられなくなり自分で命を絶つ。「自殺」とは最も許されぬ罪で、永遠に天国に行くことはできない。彼はあの世でさえ彼女の元へ行くことはできなかった。しかし、19年に一度一週間だけ訪れる「ラストクォーター」の時期だけこの世に降りることが許され、アダムはかつて日本でさやかの住んでいた洋館で、さやかの生まれ変わりである美月を待つ。あの世に連れて行こうとするが、それは間違いでもう一度がんばろうとしている美月を送り出す。そして再びあの世でさやかの幻覚を見るも、手を伸ばそうとすると消えてしまう。最後の最後まで恋人に逢うことはできないアダム。 そういうストーリーに実にマッチングした楽曲「THE CAPE OF STORM」。劇中の最後にはこの訳詞がエンドロールとして流れた。 君は気づかない罪の色 闇の中でさやかの幻覚を追い続ける。悲しみのあまり自ら命を絶った罪さえ最初は気づかず、その結果あの世でもこの世でもない世界の果てに囚われたまま身動きができない。 何処へ行けばいいのか? どこを探してもさやかの影は見つからない。どれだけ叫んでも届かない。この岬に叫んでもかき消される。もはやどこへ向かっているのかもわからない。 映画のラストに真っ暗闇な舟が一双ポツリと浮かび、さやかとアダムが映し出される。「生まれ変わったら絶対私を見つけてね」とさやかはにっこり笑ってアダムに言う。手を伸ばそうとするとオールを海に落としてしまい、取ろうとするもオールは流されていく。はっと気づくと目の前にいたはずのさやかはいない。自ら自分の命を絶ったアダムに生まれ変わることはできない。永遠に許されない罪。映像、楽曲、映画がすべてどこかでひとつにつながっている。いくつも伏線があるこの作品は聴けば聴くほど味が出てくる。 貴方は知りすぎた罪の味 |