ある朝、いーちゃんの携帯が鳴った。
 (いーちゃんの携帯の着メロ『電話だよ〜、電話だよ〜・・・はよ出んかい!』)
 まだこれなのね〜

 いーちゃん 「もちもち」
 あーちゃん 「いーちゃん? 起きてた?」
 いーちゃん 「いーちゃん、デート中。キャハハ」
 あーちゃん 「また夢見てるの?」
 いーちゃん 「いーちゃん、ほろ酔い中。キャハハ」
 あーちゃん 「こら〜っ、起きろ〜」
 いーちゃん 「いーちゃん、入浴中。キャ〜」
 『プー、プー、プー』
 あーちゃん 「あの調子じゃ、まだ起きそうにないね」
 と、あーちゃんの携帯が鳴った。
 あーちゃん 「いーちゃんからだ。もしもし」
 いーちゃん 「あーちゃん、どうちぃよ〜」
 あーちゃん 「どうしたの?」
 いーちゃん 「おぼれた〜」
 あーちゃん 「お風呂で?」
 いーちゃん 「おふろじゃなくて、すいそうで〜」
 あーちゃん 「水槽??」
 いーちゃん 「すいそうで、たいやきが〜」
 『プー、プー、プー』
 あーちゃん 「こっちは緊急事態だっていうのに」
 と、またあーちゃんの携帯が鳴った。
 あーちゃん 「もしもし、今度は何がおぼれたの?」
 いーちゃん 「こい」
 あーちゃん 「鯉? 水槽で?」
 いーちゃん 「こいはすいそうでおぼれないのだ〜」
 あーちゃん 「じゃあ、池?」
 いーちゃん 「わたちぃは、いけでおぼれないのだ〜」
 あーちゃん 「私?? ってどういうこと?」
 いーちゃん 「みじゅがないのに、いーちゃん、おぼれてま〜しゅ」
 あーちゃん 「いーちゃん! 今すぐ私んちまで泳いで来なさい!」
 いーちゃん 「おぼれてるのに、およげましぇ〜ん」
 あーちゃん 「緊急事態なの! 今すぐ来てちょーだい!」
 いーちゃん 「ん? ん?? 緊急事態?? 何?何?」
 あーちゃん 「やっとお目覚め? そう、とにかくすぐ来て!」
 いーちゃん 「わかった〜」
 いーちゃんは緊急事態が気になりつつ、
 支度をしてあーちゃんちに向かった。

 『ピンポ〜ン』
 あーちゃん 「あっ、いーちゃんだ。今開けるね〜」
 いーちゃん 「おはよう!」
 あーちゃん 「おはよう! 来てもらってゴメンね」
 いーちゃん 「そう! 緊急事態って何よ」
 あーちゃん 「実はファイルが開けなくなって、仕事の資料が作れないのよ」
 いーちゃん 「な〜んだ、パソコンか〜」
 あーちゃん 「なんだって何よ。明日までに資料作らないといけないんだから、緊急事態よ!」
 いーちゃん 「私はてっきり・・・てるくんが・・・」
 てるくん   「ん? 私がどうしたって?」
 いーちゃん 「あっ、どうも! あの〜 その〜 あれれ? キャハハ」
 てるくん   「ハハハ。相変わらずだね〜」
        「それより、私もパソコンよくわからないんで、ちょっと見てやってくれない?」
 いーちゃん 「わっかりました〜」
        「どれどれ」
 いーちゃんはパソコンをいじりだした。
 いーちゃん 「とりあえず、ファイル開いてみるね」
        「おっと、ここで止まるのかぁ」
 『カチャカチャカチャカチャカチャ』
 てるくん   「うわっ! ママから聞いてたけど、すごいな〜」
 いーちゃん 「どうも」
 『カチャカチャカチャカチャカチャ、ポン』
 いーちゃん 「これでもう1回開いてみるね」
 ファイルは無事開いた。
 あーちゃん 「へ〜、開いた! 不思議なのよね〜」
 いーちゃん 「なにが?」
 あーちゃん 「いっつも『すっとぼけ』のいーちゃんが、こんなこと出来るんだから」
 いーちゃん 「『すっとぼけ』ってどういう意味よ〜」
 あーちゃん 「だって、おぼれてるし・・・」
 いーちゃん 「キャハハ。あれはたいやき食べてたら水槽に落っこしたって夢よ!」
 あーちゃん 「こい。こいのほうよ」
 いーちゃん 「キャハハ。あれは・・・」
 あーちゃん 「そう、どうなのよ。れんさんとは」
 いーちゃん 「一度ハンカチのお礼に食事したって言ったでしょ」
        「会ったのは、それだけ」
 あーちゃん 「それだけ?」
 いーちゃん 「商社マンで忙しいのよ」
        「それでもメールはくれるよ!」
 あーちゃん 「へ〜、そうなんだ」
 いーちゃん 「『そうなんだ』には載ってないけどね〜」
 あーちゃん 「・・・」
 てるくん  「いーちゃん、悪いんだけど、こっちも見てくれない?」
 いーちゃん 「なんでしょう?」
 てるくん   「実はオーディオの配置変えして、配線元通りにしたはずなのに音が・・・」
 いーちゃん 「ちょっと見せて。どれどれ」
 てるくん   「わかる?」
 いーちゃん 「うん! そりゃ音鳴らないよ。スピーカーの線刺さってないじゃん! キャハハ」
 てるくん   「・・・そ、そっか〜・・・」
 あーちゃん 「いーちゃん、あんまりてるくんイジメないでくれる?」
 いーちゃん 「ん? 救世主の天才いーちゃんが直してあげたのに・・・もう、お邪魔虫?」
 あーちゃん 「そんなこと言ってないでしょ」
 いーちゃん 「いいのいいの、お邪魔虫は退散しますって」
 あーちゃん 「ちょっと、お茶でも飲んでいってよ!」
 いーちゃん 「今日はデートなの。だから帰るね」
 あーちゃん 「えっ、うそ〜、それならそれで早く言ってよ!」
 いーちゃん 「うっそぴょ〜ん。実は同僚とお買い物なの」
 あーちゃん 「な〜んだ。じゃあ早く帰りなっ」
 いーちゃん 「帰りな って何よ!」
 あーちゃん 「遅刻はよくないでしょ」
 いーちゃん 「おっと、この前も怒られたんだった」
        「じゃあ、帰るね」
 あーちゃん 「ありがとう! 助かったわ」
 いーちゃん 「いいってことよ!」

 いーちゃんが帰った後、
 てるくん   「ほんと、いーちゃんって不思議だよね」
 あーちゃん 「何が?」
 てるくん   「とても機械に強そうには見えないのに、あっという間に直すんだから」
 あーちゃん 「私も最初はビックリした」
        「パソコン触ってるときのいーちゃんは、いーちゃんじゃないのよ」
        「で、そういう仕事をするのかと思ったら、保母さんやし」
 てるくん   「でも、いーちゃんらしいね」
 あーちゃん 「そうね。そう思う」

 実はいーちゃんのお父さんはエンジニア。
 いーちゃんも一時は興味を持って、色々教えてもらってた。
 でも、いーちゃんの小さいころからの夢が、
 保母さんになることだったとは誰も知らない。
 小学校の文集にも
 『ゆめは、ケーキやさんで、いっぱいたべる』
 と、そのときの欲をそのまま書いてたようだ。
 これはこれで、いーちゃんらしいのかも。

 昔の記憶に、こんな言葉があった。
 『夢を語ると消えてしまう』
 『夢を胸にしまってると』
 『どんどん膨らみ』
 『いずれ、道を切り開く力に変わる』
 と。


 (さいごに)
 今回はいーちゃんの隠れた才能と夢のお話でした。
 てるくんも登場しましたが、別人いーちゃんは、いかがだったでしょう?
 最後の記憶の部分は、ある人の昔の詩の言葉です。
 その人は、誰なんでしょうね。
 ハハハハッ
 誰じゃ? 俺じゃ!(笑

 この物語はフィクションである。