このコーナーは、ごくマニアックな、ご同業のかた以外、たぶん、何の役にもたちません。
また、設備の構成、名称、考え方など某国関西地域におけるもので他の地域では異なる場合がありますのでご注意ください。
保護リレー | |
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運動会の時やるやつ、バトン持って、走って、次の人に渡すやつ、 じゃない!
一般(?)には保護継電器と呼ばれているものです。
なに? よけいに判らなくなった?
しかた無いですね。 この仕事に就いてから、ン十年(途中でブランクが十年ほどあったけど・・・)、未だに家族にさえ理解して貰えないんですから。
リレーってのは、雷とか台風とかで送電線なんかに事故がおきたとき、一般の方に被害が及ばないように、そして設備を壊さないようにするため、すぐに電気を止めるための設備で、まあ、電車でいったら非常ブレーキみたいなものです。
電気は普通、発電所で原子力発電所、火力発電所、水力発電所などでつくられています。
これらの発電所から消費地まで送電線で電力を送っています。
余談ですが、関西における発電量は、原子力が6割( 59.2%)、火力3割(29.6%)、水力1割(11.2%)程の比率(関西電力2001年度発電電力量構成比)となっており、ベースは原子力発電で支えられています。この送電線は発電所から消費地まで膨大な電力を送るため、275〜500KVという非常に高い電圧で送られています。
(昔、流行った「君の瞳は1万ボルト」の50倍!)そしてこの500KVの送電線を大きな変電所(一次変電所)で結んで基幹となる系統を構成し、各発電所から電力を集めて各地域に電力を送っています。
高電圧とする事が必要な理由は、同じ太さの電線でも電圧の二乗倍の電力が送れるからです。
しかしこんな高い電圧の電気を一般の家庭に引き込む事はできませんから、77〜154Kv程度に降圧して大工場や二次変電所(配電用変電所)でというところに送電しています。
二次変電所(配電用変電所)では更に22〜33KVに降圧して工場やビルに送電し、また6.6KVに落として電柱に乗せ各地域へ電力を供給してします。(配電線という)
各家庭へは、電柱の上にある柱上変圧器で更に100〜200Vに降圧して引き込んでいます。
送電線は一般に次のように分類されています。
一般的な名称 | 電圧階級 | 中性点接地方式 |
超高圧送電線 | 187〜500KV (東京電力では1000KV !!) | 直接接地系統 |
一般送電線 | 22〜154KV | 抵抗接地系統 |
新架空配電線 | 22KV | 高抵抗接地系統 |
配電線 | 6.6KV | 非接地系統 |
ここで「中性点接地方式」というのは聞き慣れない言葉だと思いますが、送電線の保護リレーにとって非常に大きな意味を持つものです。
(マニアックな職業の方以外は、以下を読み飛ばしてください。)
一般家庭に引き込まれている電気は、単相100Vあるいは単相三線式200Vがほとんどだと思いますが、送電線や配電線では三相交流が使われています。
三相交流で電圧を変換するための変圧器の接続方法は、大きく分けて Y接続(普通はYの字を逆さまにしてスター接続と読ませるのですが、辞書に無いのでY接続と表記します)と、Δ(デルタ)接続の二通りとなります。
(V接続やスコット接続はΔ接続の一種と考えます。)
Y(スター)接続は、中性点(N相)を有します。
超高圧送電線ではこの中性点を直接に接地(直接接地系統)し、
一般送電線では100〜200Ω程度の抵抗器を介して接地(抵抗接地系統・・・次の高抵抗接地系に対して低抵抗接地系統ともいう)し、
新架空配電線では500Ω程度の抵抗を介して接地するので高抵抗接地系と呼びます。
また、Δ接続は一般の配電線(発電器を接続する変圧器にも適用されている)に適用され、中性点が無いので接地しません(できません)。
中性点の接地抵抗は小さいほど1線地絡故障時の健全相電圧上昇が少ないため絶縁面で有利であり(碍子連が短くてよい)、超高圧送電系統では直接接地が適用されますが、地絡故障時の電流が非常に大きい(数万A以上・・・短絡事故電流と同程度)ため、高速に事故除去(電気を切る)必要があります。
一方、中性点抵抗値が大きければ1線地絡故障の健全相の電圧が√3倍となる(過渡振動が生じると更に上昇する)事を考慮した絶縁設計が必要となりますが、故障電流(地絡電流)は小さい(数百A程度)ので災害面、設備保護面、通信線などへの誘導障害面などに有利なため、一般送電線や新架空配電線に適用されています。
また、変圧器をΔ接続とした場合は中性点接地が無いため非接地となり(・・・実際には計器用変圧器を設置しているため、非常に大きな抵抗で接地されている)、1線地絡時の電位上昇は√3倍となります(過渡振動が生じ易く、更に高くなる場合もある)が、元々電圧が低いので絶縁面での問題は少なく、故障電流が他の方式と比べて遙かに小さい(数A〜数十A程度)ため、災害面、機器被害面、更に同じ電柱に敷設されている通信線への誘導障害面でも有利であり、一般配電線に適用されています。
短絡保護については直接接地の超高圧送電線でも非接地の一般配電線でも原理的には変わりませんが(当然ながら事故除去時間や求められる信頼性などは全く違います)、地絡保護は全く異なります。
中性点抵抗値 | 1線地絡時の健全相電位上昇 | 絶縁 | 故障電流 | 人的被害機器被害 | 通信線への誘導 | 適用 |
直接接地 | 小さい | 有利 | 数万A以上 | 不利 | 不利 | 超高圧送電線 |
低抵抗接地 | √3倍 | 数百A程度 | 有利 | 有利 | 一般送電線 | |
高抵抗接地 | √3倍 | 不利 | 数十A | 有利 | 有利 | 新架空配電線 |
非接地 | √3倍(条件によっては更に高く・・・) | 不利 | 数A〜数十A | 有利 | 有利 | 一般配電線 |
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