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怪しい地名研究パートD
これまでに取り上げられた地名文字列の主成分法による因子分析

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著者:「1

因子分析法

これまで、アイヌ語地名に含まれる文字列「ナイ」「ヘツ」「へ」、都道府県の緯度・経度・札幌からの距離、あるいは縄文遺跡分布状況と相関の見られる地名文字列がどのようなものであるかを郵便番号表から探索、リストを作成し考察を加えてきた。その結果、多数の都道府県に偏在する地名文字列が明らかになった。

ここでは、これら地名文字列の47都道府県別のZIP出現率の相互の順位相関係数を元に多変量解析の一つである因子分析法による分析を行い、整理して、更なる地名分析を進めたい。

因子分析法は測定された特定の対象に対して得られた複数の変量間の相互の関連性から、これらの変量を「最も効率的に記述・或いは説明できる次元は何か」を求めようとする方法である。

例えば特定の集団に対して身長や体重或いは胸囲、指の長さ、等々の測定値を得たとしよう。個々の測定対象は「身長は何センチで体重は何キロ、胸囲は何センチ・・・・・・」というように記述できるが、身長も体重も胸囲も相互に相関しているので(すなわち押しなべて言えば身長の高い人ほど体重も胸囲も大きいといえるので)、「体の大きさ」という言う概念を用いて、「非常に体が大きい」とか「小さい」人とか言うほうが効率的であり、体の成長を支える栄養や性差などの要因と関連付けて考察を進めやすい。この場合「体の大きさ」が第一因子で、更に第一因子で説明できない部分を説明する次元を次々見出してゆく。ここで用いられた因子分析プログラムは「パソコン統計ハンドブックU多変量解析ハンドブック(田中豊など編:共立出版:1984)」のn88BASICによるソースコードをunoカルク用に移植したものである。

リストアップされた文字列は各都道府県の中期縄文遺跡分布の濃淡および緯度経度と相関する文字列群であり、これらの文字列に関する47都道府県出現率を用いて因子分析を行うことは循環論理に陥る可能性がある。すなわち因子分析を行うまでもなく、第一因子は「縄文-非縄文」、または縄文遺跡は東日本に偏るので「東日本―西日本」の次元であろう。

しかしながら、日本列島中緯度より東では南北に大きく折れ曲がり、東西日本の都道府県の経緯度は、西日本あるいは東日本内部の都道府県であまり差異がない。また縄文遺跡分布は東日本というより、関東地方に稠密な分布状況を示している。このようなことから、一度、これまでに得られた文字列の因子分析を行い、整理する必要があるように思う。文字列ごとの算出された次元の影響力(負荷量)や第2因子以降の因子との関係を考慮して地名文字列を考察することによって、新たな視点が見出されるのではないかと期待できる。

 

因子分析結果

各都道府県庁の緯度・経度・札幌からの距離・中期縄文遺跡数・中期縄文遺跡密度と出現率において0.4以上の順位相関値を示す文字列、およびパート@で取り上げた典型的なアイヌ語地名に含まれる「ナイ」「ヘツ」と語尾の「t」のとれた「へ」を含む地名の都道府県別ZIP出現率170変数の主成分法による因子分析結果を下に示す。

上段の図は抽出された第一因子を横軸、第2因子を縦軸にした2次元空間に文字列を図示したものであり、下段の表は第3因子までの各文字列の因子負荷領を示したものである(抽出は3因子まで)。なお表には変数名、各因子の因子負荷量の他、愛知、岐阜、福井県を境とする西日本、東日本における当該の文字列を含むZIP地名の実数と出現率、およびこれら東西日本の出現率の差異が偶然に生じる確率をカイ二乗検定で求めた値を示している。

 

当然の事とはいえ第一因子軸に沿って大きく2つの地名文字列群が認められ、右の象限には中期縄文遺跡ないしは東日本の都道府県に出現率の高い地名文字列がまとまり、反対の位置には遺跡数が極めて少ない西日本に色濃い「タニ」「イケ」「えびす」に含まれる「ヒス」などの地名文字列群が位置している。縄文後期、晩期では東日本の人口は減少し、西日本では晩期から弥生時代にかけて急速に増え、やがて弥生時代に移行していく(小山修三1984、中央公論社)ので、第一因子は中期縄文以前地名 vs 後期・晩期縄文以降地名の因子と考えられる。アイヌ語地名にしばしば含まれる「ナイ」や「ヘツ」または「へ」を含む地名はこの軸の中間的なあたりに位置しているのは興味深い。

縄文地名の色彩の強い地名はすでに指摘したように××沢のような「サワ」地名で、次に「ヌマ(沼)」「カネ(金)」「テ(手)」を含む地名であり、格段に高い縄文地名因子負荷量を示している。図中の「ヌマ」のそばの「カヌ」は鹿沼、赤沼などが具体的な地名であり、「沼」を含む地名である。これらの最も縄文的な地名は第2因子負荷量では0に近い値が示されている。

個々の文字列に対応する具体的な地名のリストは次をクリックするとダウンロードできる。(jomon.lzh, yayoi.lzh

第二因子については正方向に因子負荷量の高い文字列は縄文的地名では「蟹沢」「鬼沢」などの「ニサ」、「米沢」を代表的な地名とする「ヨネ」、「漆」と関係する「ウル」があり、負方向では関東地方太平洋沿岸の「利根」や「箱根」、「横須賀」などの「トネ」「スカ」「コネ」地名の因子負荷量が大きい。また中期縄文以降地名では、正方向で最も高い文字列は「タニ」「ケタ(竹田など)」、負の高い負荷量を示す地名では「本町(ほんちょう)」、「××番町」などの「ンチ」、「五明、小宮、小湊」などの「コミ」などがある。第二因子は具体的な地名の所在地や漢字の意味などから考えると内陸-沿岸、表日本-裏日本などの因子を想定したが、今のところ適切な次元名を思いつかない。

以後パートEでは中期縄文以前-後期・晩期縄文以降次元に沿って、パート@からパートDまでに触なかった地名に関する怪しい地名解釈を続け、できれば第二因の適切な命名に辿り着ければと思う。

 

 

 

 

変数番号

文字列

第一因子負荷量

第二因子負荷量

第三因子負荷量

地名例

東日本出現数

西日本出現数

東日本出現率(%)/68719

西日本出現率(%)/49674

東西日本出現比カイ二乗検定結果(p)

50

サワ

0.8547

0.1185

-0.0586

水沢、米沢、金沢など

4275

264

6.2212

0.3842

0.0000000000

96

ヌマ

0.8133

-0.0640

-0.0503

気仙沼、大沼、魚沼など

2019

43

2.9381

0.0626

0.0000000000

25

カヌ

0.7697

-0.0298

-0.1645

長沼、鹿沼、菅沼など

288

9

0.4191

0.0131

0.0000000000

3

0.6873

-0.1021

-0.0469

×沼、沼津、布引など

2743

424

3.9917

0.6170

0.0000000000

26

カネ

0.6779

0.1393

-0.3424

金沢、高根、兼久など

624

156

0.9081

0.2270

0.0000000000

161

ンテ

0.6755

-0.2755

-0.0031

××新田、弁天、運天

1195

209

1.7390

0.3041

0.0064860380

80

テヤ

0.6637

0.0795

0.3086

館山、立山、岩出山など

294

16

0.4278

0.0233

0.0000000000

2

0.6616

0.0264

0.1686

岩手、伊達、幸手など

6035

2185

8.7824

3.1797

0.0000000000

87

ナサ

0.6411

-0.0056

-0.0811

花咲、金沢、稲沢など

1148

36

1.6706

0.0524

0.0000000000

93

ニツ

0.6252

-0.3164

-0.0181

新田、日光、日進など

221

20

0.3216

0.0291

0.0000000000

29

キサ

0.6182

0.1814

0.0288

象潟、木更津、柿崎など

455

118

0.6621

0.1717

0.0000000000

57

スヌ

0.6056

-0.3038

-0.1902

水沼、蓮沼、清水沼

30

0

0.0437

0.0000

0.0000000000

4

0.6048

0.0008

-0.3050

×根、根室、金×など

3154

1244

4.5898

1.8103

0.0000000390

21

オヌ

0.6048

-0.1471

-0.0791

大沼、魚沼、大貫

647

7

0.9415

0.0102

0.0482743070

82

テン

0.5985

-0.2130

0.3201

新田、屯田、弁天など

1987

721

2.8916

1.0492

0.0000000000

146

テサ

0.5973

0.0317

-0.0641

上(下)手沢、館沢、袖沢など

298

189

0.4337

0.2750

0.1579582000

19

エモ

0.5848

0.0542

0.1364

×衛門(人名地名)、江守、栄森など

64

11

0.0931

0.0160

0.0000016580

65

ソリ

0.5846

0.3297

-0.1010

反町、反田、加曾利など

29

2

0.0422

0.0029

0.0001309260

22

オマ

0.5833

0.1417

-0.1774

大曲、大間、粟生間(あおま)など

211

42

0.3071

0.0611

0.0000000000

38

コア

0.5733

-0.1306

0.0575

小阿仁、小安在、小荒沢、小荒川、小赤松など

39

9

0.0568

0.0131

0.0011175080

64

ソヤ

0.5717

-0.1152

-0.0806

殆どが細谷、他 素山、曽山など

73

7

0.1062

0.0102

0.0000000020

30

キネ

0.5681

0.0320

-0.2184

関根、秋根、滝根など

37

11

0.0538

0.0160

0.0074939390

77

ツミ

0.5514

0.1730

0.1569

堤、渥美、安曇、×積など

332

170

0.4831

0.2474

0.0002302410

155

ワヌ

0.5492

-0.0410

0.0501

岩沼、河沼、上沼(かわぬま)

185

1

0.2692

0.0015

0.0000000000

5

0.5485

0.0154

0.0348

川、沢、岩、庭を含む地名など

20875

10337

30.3782

15.0429

0.0000000000

39

コス

0.5480

-0.1236

0.0579

小杉、横須賀、越川など

574

30

0.8353

0.0437

0.0000000040

8

アラ

0.5469

0.1928

-0.3658

荒、新を含む地名、嵐山など

714

229

1.0390

0.3333

0.0000000000

128

モカ

0.5443

0.2920

0.1177

下川、鴨川、最上など

455

203

0.6621

0.2954

0.0000000070

76

ツテ

0.5419

-0.0789

0.0249

幸手(さって)、仁手(にって)、三ツ寺など

67

8

0.0975

0.0116

0.0000000390

97

ネキ

0.5383

-0.1753

-0.0910

根岸、根木、 祢宜など

58

14

0.0844

0.0204

0.0001076900

86

トリ

0.5376

-0.1465

0.2354

緑、取、鳥を含む地名など

1204

648

1.7521

0.9430

0.0000000010

63

ソテ

0.5299

0.2952

-0.0747

袖ケ浦、袖山、外山(そでやま)など

70

4

0.1019

0.0058

0.0000000000

137

ヤナ

0.5294

0.2151

-0.0785

柳町、柳川、梁川など

615

361

0.8950

0.5253

0.0015732230

84

トサ

0.5281

0.1166

0.1114

戸沢、江戸崎、土佐など

100

279

0.1455

0.4060

0.0000000000

7

アス

0.5259

-0.2157

-0.0223

東(あずま)、明日香、足羽(あすわ)

292

69

0.4249

0.1004

0.0000000000

159

ンス

0.5251

0.1075

-0.1232

分水町、一本杉、天水町など

125

30

0.1819

0.0437

0.0000000120

118

マイ

0.5247

0.1069

0.1121

苫小牧、釜石、今市、米原など

506

327

0.7364

0.4759

0.1124654970

138

ヤモ

0.5206

-0.2076

0.4396

宮本、毘沙門、矢本など

66

49

0.0960

0.0713

0.8878497800

110

ヒナ

0.5167

-0.0654

-0.2743

比内、日向(ひなた)、海老名、朝比奈など

111

44

0.1615

0.0640

0.0006115580

142

ヨツ

0.5142

-0.0868

0.0428

四日市、四ツ屋、四街道など

175

320

0.2547

0.4657

0.0000000000

78

テコ

0.5042

0.1444

0.0140

表郷(おもてごう)、手子林、館古など

38

6

0.0553

0.0087

0.0001402040

91

ナラ

0.5003

0.0449

0.1050

奈良、楢山、習志野など

122

452

0.1775

0.6578

0.0000000000

72

チサ

0.4965

0.1137

-0.0615

土沢、小淵沢、土崎など

76

60

0.1106

0.0873

0.6099352540

120

マヌ

0.4955

-0.3269

-0.0123

天沼、釜沼、島貫など

13

1

0.0189

0.0015

0.0178273000

103

ノサ

0.4952

0.1451

0.0312

×の・ノ・之沢あるいは里、野沢、城崎など

333

275

0.4846

0.4002

0.1013801690

90

ナネ

0.4898

-0.1322

-0.0205

宇奈根、柳根(やなね)、七根、奈根

389

16

0.5661

0.0233

0.0000000000

105

ノワ

0.4893

-0.1510

-0.0348

箕輪、三ノ輪、宮脇(みやのわき)など

82

51

0.1193

0.0742

0.3980673960

157

ワム

0.4845

0.1938

0.2371

川向、沢向、岩室など

77

18

0.1121

0.0262

0.0000054430

81

テラ

0.4834

0.2019

0.4288

寺田、寺泊、首里汀良(しゅりてら)を除き全て寺を含む地名

492

345

0.7160

0.5021

0.6627022120

136

ヤチ

0.4823

0.2660

0.2394

×谷地、八千代、八街(やちまた)など

342

176

0.4977

0.2561

0.0002243580

166

ユク

0.4812

-0.4552

-0.0971

宿、×宿(しゅく)、祝津など

989

148

1.4392

0.2154

0.0001226600

23

カサ

0.4805

-0.1490

-0.0026

高砂、河西、×ケ沢、高崎など

1801

1331

2.6209

1.9369

0.5372741250

153

ロサ

0.4776

0.2213

-0.1927

弘前、黒沢、所沢など

465

43

0.6767

0.0626

0.0000000000

98

ネタ

0.4740

0.0415

0.1120

曽根田、金田、羽田など

86

43

0.1252

0.0626

0.0469746980

60

スワ

0.4725

-0.0604

-0.1581

諏訪を含む地名が殆ど、足羽(あすわ)、須原など

279

43

0.4060

0.0626

0.0000000000

10

イイ

0.4701

-0.0961

-0.1318

飯田、飯豊(いいて)、飯館など

492

267

0.7160

0.3886

0.0001456140

69

タテ

0.4696

0.3173

0.0006

函館、伊達、館山など

1724

175

2.5088

0.2547

0.0000000000

150

リヤ

0.4658

0.1052

0.1874

守谷、郡山、刈谷など

734

322

1.0681

0.4686

0.0000000000

12

イス

0.4654

-0.1319

0.0277

泉を含む地名、夷隅、伊豆など

1198

705

1.7434

1.0259

0.0000119490

48

サマ

0.4651

0.0389

-0.1679

座間、笠間、笠松、様似など

303

77

0.4409

0.1121

0.0000000000

134

モリ

0.4630

0.1508

0.3191

森を含む地名、盛岡、守山など

1515

507

2.2047

0.7378

0.0000000000

58

スマ

0.4627

-0.1287

-0.0229

多くは東(あずま)を含む地名、須磨、太秦など

199

315

0.2896

0.4584

0.0000000000

40

コタ

0.4612

0.0368

-0.0329

函館、児玉、小平など

536

187

0.7800

0.2721

0.0000000000

33

クヌ

0.4602

-0.0199

-0.2377

椚林、樟、椹沢、歴木、柊原(くぬぎ×)

29

5

0.0422

0.0073

0.0023118740

131

モヌ

0.4561

-0.2325

-0.1128

下沼、下沼田、下貫、友沼

10

1

0.0146

0.0015

0.0569572540

6

アオ

0.4553

-0.1123

0.0196

青を含む地名、粟生(あおう)、泥障作(あおつくり)など

685

236

0.9968

0.3434

0.0000000000

83

トア

0.4550

-0.0505

0.2804

土合(とあい)、渡合(とあい)、戸赤(とあか)など

36

10

0.0524

0.0146

0.0054425860

114

ヘヒ

0.4507

0.1767

0.2102

多くは蛇を含む地名、×部東、粕壁東

44

6

0.0640

0.0087

0.0000175670

28

カル

0.4477

0.2379

0.0695

遠軽、津軽、軽井沢、軽部など

593

109

0.8630

0.1586

0.0000000000

54

シワ

0.4459

-0.0838

0.2132

多くは柏を含む地名、志波姫、岸和田など

722

442

1.0507

0.6432

0.0055986130

73

ツカ

0.4455

-0.1190

0.2566

塚を含む地名、水街道(みづかいどう)、八束など

2168

1310

3.1550

1.9064

0.0000001890

149

リサ

0.4453

0.3775

-0.4110

栗沢、芹沢、有里、針崎、など

145

42

0.2110

0.0611

0.0000000640

99

ネツ

0.4451

0.0928

-0.2215

訓子府(けんねっぷ)、米塚(よねつか)、羽附(はねつく)など

67

12

0.0975

0.0175

0.0000014130

52

シセ

0.4426

-0.0077

0.0401

石関、石瀬などのほか明治生命ビル、東・西仙北など大量に含む」

122

31

0.1775

0.0451

0.0000000530

152

ルセ

0.4425

-0.1477

-0.0118

丸瀬、鳴瀬、古関など

100

5

0.1455

0.0073

0.0000000000

112

ヒル

0.4417

-0.2485

0.2324

蛭沢、昼根、比留田などのほか××ビルディング地名を大量に含む

810

121

1.1787

0.1761

0.0000000000

127

モオ

0.4406

-0.1986

-0.2319

下大久保のような「下(しも)」+「お」で始まる固有名詞の地名、真岡(もおか)など

197

71

0.2867

0.1033

0.0000002790

106

ハニ

0.4400

-0.0137

0.2683

土生、羽生、羽入(はにう)、埴科(はにしな)など

88

18

0.1281

0.0262

0.0000001850

145

ライ

0.4389

-0.2690

0.1629

荒井、白井、平井、大洗、宝来など

774

473

1.1264

0.6883

0.0037515420

74

ツサ

0.4379

-0.1673

-0.0963

発寒(ほっさむ)、松崎、睦沢(むつざわ)、松坂など

276

246

0.4016

0.3580

0.0165215500

37

ケム

0.4375

-0.0122

-0.1076

煙山、峠向、池向、助宗、竹村、小菅村、大宅向山

8

2

0.0116

0.0029

0.2771098410

117

ホリ

0.4358

-0.2215

0.1555

登別、赤堀、堀之内、

483

246

0.7029

0.3580

0.0000065260

94

ニラ

0.4346

-0.2156

-0.3109

仁良、韮崎、韮山、韮塚、韮の浜、韮川

71

0

0.1033

0.0000

0.0000000000

61

セキ

0.4328

0.1683

-0.0344

一関、関など関を含む地名、堰下、瀬木など

737

507

1.0725

0.7378

0.3868431460

53

シヌ

0.4326

-0.2216

-0.2123

芦沼、菱沼、押沼、牛沼、石貫、東布経(ぬのへ)など

26

7

0.0378

0.0102

0.0157128150

59

スレ

0.4322

0.1111

0.0104

崩、赤崩、砂崩、岩崩など、鈴連(すずれ)、粕礼(かすれい)

13

1

0.0189

0.0015

0.0178273000

95

ニワ

0.4306

0.1997

0.2482

恵庭、丹羽、浪速、真庭、接骨木(にわとこ)など

133

183

0.1935

0.2663

0.0000000090

156

ワフ

0.4300

0.1609

-0.0520

岩舟(船)、岩淵、川房、川渕、和深、土生(わぶ)など

271

15

0.3944

0.0218

0.0000000000

158

ワワ

0.4293

-0.4100

-0.0424

岩脇、川和、河和田、川匂(かわわ)など全て川、河、岩を含む地名

13

2

0.0189

0.0029

0.0471252690

68

タサ

0.4291

-0.0061

-0.2600

北沢、田沢、北里、田崎、大宰府など

240

101

0.3493

0.1470

0.0000037520

144

ヨモ

0.4286

0.3528

0.0467

蓬田、蓬沢など多くは蓬を含む地名、四方山、四方木

28

7

0.0407

0.0102

0.0084636050

115

ホソ

0.4278

0.2230

0.0528

細谷、細入、細見、細川など多くは細を含む地名

140

56

0.2037

0.0815

0.0001438910

51

シス

0.4240

0.0952

0.1149

静内、後静(しりしず)、雫石、酒々井(しずい)、静岡など

744

255

1.0827

0.3711

0.0000000000

41

コヌ

0.4217

-0.3813

0.1589

小沼、横沼、古怒田、五主(ごぬし)

11

2

0.0160

0.0029

0.0967674060

135

モン

0.4185

0.1964

0.2377

紋別、十文字、門前、相川五郎左衛門など

678

284

0.9867

0.4133

0.0000000000

35

クリ

0.4164

-0.3131

0.2638

栗沢、栗原、玉造、九十九里、御厨(みくりや)など

870

294

1.2661

0.4278

0.0000000000

14

イワ

0.4159

0.2124

-0.1672

岩手、岩出、磐井、岩船、岩国など

2546

960

3.7051

1.3970

0.0000000000

143

ヨネ

0.4151

0.4509

-0.2947

米沢、米田、米山、大多数が米を含む地名

240

44

0.3493

0.0640

0.0000000000

147

ラス

0.4139

-0.0508

0.3251

(からす)森、烏川、烏田、烏山、香良洲、無音(よはらす)など

73

48

0.1062

0.0699

0.6094633810

163

ンメ

0.4122

-0.0036

0.2747

神明を含む地名、本梅(ほんめい)、金明など

150

58

0.2183

0.0844

0.0000383640

13

イラ

0.4110

-0.2088

-0.3337

平館(たいらだて)、平(たいら)、×平、姶良など

574

230

0.8353

0.3347

0.0000000000

165

ハシ

0.4101

-0.1808

-0.0188

石橋、前橋、船橋など多数

2271

739

3.3049

1.0754

0.0000242670

164

ンヨ

0.4082

0.1732

0.1790

南陽、山陽、尾肝要(おかんよう)、剣吉(けんよし)、三女子(さんよし)

105

66

0.1528

0.0960

0.3724344070

66

タイ

0.4070

0.0058

0.2635

×台、平を含む地名、仙台、大和(だいわ)、大×など

3314

1904

4.8227

2.7708

0.0000000000

116

ホツ

0.4070

0.1828

0.2579

法華、堀田、発知(ほつち)、穂積など

97

29

0.1412

0.0422

0.0000162280

71

タヤ

0.4057

0.2301

0.4678

板柳、北山、田屋、和田山など

310

238

0.4511

0.3463

0.4844103810

121

ミオ

0.3991

-0.2528

0.2014

上(かみ)+「お」ではじまる固有名詞地名、富岡、神岡、泉大津など

557

231

0.8106

0.3362

0.0000000000

75

ツツ

0.3962

-0.3245

0.4354

寿都(すっつ)、堤を含む地名、富津(ふっつ)、摂津、筒を含む地名など

361

208

0.5253

0.3027

0.0088258720

17

ウル

0.3960

0.4128

-0.3380

忠類、漆を含む地名、宇留部、潤島など

70

22

0.1019

0.0320

0.0004497590

119

マス

0.3940

0.3326

-0.1856

増田、益田など増、益を含む地名、叺田(かむすだ)、升沢など

152

164

0.2212

0.2387

0.0003372610

125

モイ

0.3907

0.1200

-0.0194

留萌、百石(ももいし)、下(しも)+「い」で始まる固有名詞地名など

290

116

0.4220

0.1688

0.0000000440

56

スナ

0.3893

0.1770

-0.2168

砂川など砂を含む地名、瑞浪、静内など

307

70

0.4468

0.1019

0.0000000000

122

ミト

0.3886

-0.3178

0.2582

緑を含む地名、水戸、上(かみ)+固有地名、御津(みと)など

1946

874

2.8319

1.2719

0.0000000000

24

カナ

0.3880

0.1396

0.1067

神奈川、金沢、その他、金を含む地名、茜部(あかなべ)など

1218

292

1.7725

0.4249

0.0000000000

45

コワ

0.3811

-0.0828

0.0469

小和田、小渡など小(こ)+固有地名、強梨(こわなし)、横割など

39

9

0.0568

0.0131

0.0011175080

132

モヒ

0.3774

-0.1866

-0.1275

おおくは下(しも)+固有地名、上鴨東、下平、下東など

111

42

0.1615

0.0611

0.0002736810

124

メオ

0.3739

0.2587

0.1623

亀岡、亀尾、雨生沢(あめおざわ)、久米岡など

19

130

0.0276

0.1892

0.0000000000

111

ヒリ

0.3735

-0.1182

0.0960

美里(びり)、牛縊(うしくひり)本郷、蒜生(ひりう)、昆子(ひりこ)など

22

0

0.0320

0.0000

0.0000000000

108

ハリ

0.3704

-0.0970

0.3806

夕張、新治郡(にいばり)、名張、今治、針を含む地名など

451

364

0.6563

0.5297

0.1166924560

151

リン

0.3704

0.2147

0.3021

柏林台(はくりんだい)、五林(ごりん)、五厘沢、臨港など

75

38

0.1091

0.0553

0.0725648490

79

テサ

0.3696

0.4122

0.1233

館沢、両手沢、栗見出在家(くりみでざいけ)、手崎など

22

12

0.0320

0.0175

0.4308517940

139

ヤワ

0.3602

0.3299

0.1024

八幡、谷原(やわら)、和(やわら)、宮脇、八和田など

137

402

0.1994

0.5850

0.0000000000

126

モエ

0.3505

0.0698

0.0174

神恵内(かもえない)、もえぎ、下江、鴨江、巴など

52

14

0.0757

0.0204

0.0006342340

154

ロノ

0.3497

0.3023

0.2076

広野、黒野、室野、城の前、風呂ノ橋など

74

30

0.1077

0.0437

0.0067045720

130

モセ

0.3496

0.4052

0.1795

+「せ」で始まる固有地名、百瀬、妹背牛(モセウシ)、松崎面瀬(おもせ)など

69

8

0.1004

0.0116

0.0000000200

101

ネリ

0.3486

-0.3765

-0.1868

練牛、根利、練馬、舎人など

57

2

0.0829

0.0029

0.0000000040

100

ネヤ

0.3485

0.4422

0.2224

金山、米山、長根山、小船山、峰山、寝屋川など

102

186

0.1484

0.2707

0.0000000000

43

コマ

0.3465

-0.1081

0.1666

苫小牧、駒を含む地名、小松、巨摩など

1015

314

1.4771

0.4569

0.0000000000

162

ンホ

0.3440

0.3682

0.2699

仙北、三本木、千本松、新保、新堀など

585

113

0.8513

0.1644

0.0000000000

133

モヨ

0.3428

0.3142

-0.2747

下(しも)+「よ」ではじまる固有地名:下吉田など、茂寄(もより)、友寄

52

18

0.0757

0.0262

0.0058676180

55

スカ

0.3419

-0.4841

0.4118

春日を含む地名、須賀川、横須賀、明日香など

1037

679

1.5091

0.9881

0.0431789760

104

ノメ

0.3391

0.3841

0.2620

山目(やまのめ)、魚目(うおのめ)、「ノ」「の」「之」+目を含む地名など

142

38

0.2066

0.0553

0.0000000140

27

カヤ

0.3349

-0.2417

0.2333

茅部、若柳、熊谷、中谷、×ケ谷、岡山、和歌山など

1224

1307

1.7812

1.9020

0.0000000000

92

ニサ

0.3242

0.4626

0.0217

仁左平、仁佐瀬、蟹沢、鬼沢、仁沢など

23

109

0.0335

0.1586

0.0000000000

107

ハネ

0.3140

-0.2233

-0.1432

黒羽、赤羽、羽田、羽根、赤埴(あかはね)など

120

29

0.1746

0.0422

0.0000000260

47

サヒ

0.3100

-0.0173

0.1618

旭または朝日を含む地名、佐比内、朝比奈など

1219

268

1.7739

0.3900

0.0000000850

42

コネ

0.3041

-0.4381

0.0223

横根、箱根、小根本、彦根、鉾根、小音琴郷(こねごとごう)など

38

133

0.0553

0.1935

0.0000000000

140

ユサ

0.3032

0.3003

-0.0577

多くは湯沢、遊佐、湯崎、湯坂など

144

9

0.2096

0.0131

0.0000000000

20

オア

0.2902

-0.2667

-0.0648

大麻(おおあさ)、大芦、大洗、大網、大荒、大穴など

107

49

0.1557

0.0713

0.0075436740

85

トネ

0.2771

-0.5032

0.1310

利根、刀根、舎人など、クトネベツなど

176

6

0.2561

0.0087

0.0000000000

167

フシ

0.2747

-0.2329

0.0611

伏古、藤を含む地名、富士を含む地名、伏見など

1223

1014

1.7798

1.4756

0.0011165790

88

ナネ

0.2478

-0.6223

0.0636

柳根、宇奈根、七根町、奈根 東日本6ZIPのみ

6

0

0.0087

0.0000

0.0000000000

168

ナイ

0.0638

0.4106

0.2501

アイヌ語地名の×ナイ、柳井、三内、金井、船井、院内など

831

430

1.2093

0.6258

0.0000000130

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

70

タニ

-0.5863

0.3361

0.3550

多くは谷、渓を含む地名、八幡西(やはたにし)など

579

1398

0.8426

2.0344

0.0000000000

109

ヒス

-0.5041

-0.0194

0.5059

多様な漢字で表記される「えびす」を含む地名、内日角(うちひずみ)など

67

84

0.0975

0.1222

0.0006596080

148

リエ

-0.4860

-0.1459

0.3953

入江、堀江、有家(ありえ)、東江(あがりえ)など

24

62

0.0349

0.0902

0.0000000150

123

ムタ

-0.4804

-0.1401

-0.0879

大牟田、無田、六田、和無田など

1

217

0.0015

0.3158

0.0000000000

1

-0.4521

-0.0524

0.3638

京都、東京、中央、郷・荘などを含む漢字の音読漢語風地名、宇部、鵜飼など

20766

21832

30.2196

31.7709

0.0000000000

11

イケ

-0.4455

-0.1362

0.3690

殆どは池を含む地名、永源寺、在家など

632

678

0.9197

0.9867

0.0000000000

49

サレ

-0.4449

0.0443

0.0653

佐連(され)、小砂(こされ)、佐礼谷(されだに)、相去(あいされ)、佐々礼

0

7

0.0000

0.0102

0.0000000000

15

ウツ

-0.4334

0.2416

0.0370

宇都宮、上月、高津、江津、戸津、美しが丘など

390

264

0.5675

0.3842

0.4077655430

113

フリ

-0.4243

0.0215

0.1790

脊振、中振、角振、名振、アトサヌプリなど

15

30

0.0218

0.0437

0.0007820120

9

アリ

-0.4190

0.0936

-0.1066

有田、有明、有川、有馬、有家など多くは語頭に有を含む地名

96

350

0.1397

0.5093

0.0000000000

102

ノオ

-0.4027

-0.0168

0.0809

箕面、直方(のおかた)、西之表・日ノ岡など助詞「ノ」「の」を含む地名

62

190

0.0902

0.2765

0.0000000000

16

ウノ

-0.3997

-0.1629

0.2852

河野、鴻ノ巣・塔の森・郷ノ浦など「×の×」、宇野、鴻池など

255

342

0.3711

0.4977

0.0000000000

62

ソエ

-0.3990

0.2710

-0.0373

川沿、山添、浦添、川副、細江など

68

138

0.0990

0.2008

0.0000000000

31

クス

-0.3818

-0.2183

-0.0100

菊水、福住、葛・楠を含む地名、玖珠など

270

355

0.3929

0.5166

0.0000000000

34

クマ

-0.3796

0.0369

-0.0987

筑摩、千曲、佐久間、球磨、熊を含む地名、奥間など

423

1004

0.6156

1.4611

0.2202399970

160

ンチ

-0.3652

-0.2725

0.1698

別院町、本町(ほんちょう)、×番町、×軒町、新地、谷茶(たんちゃ)など

366

397

0.5326

0.5777

0.0000000160

36

ケタ

-0.3646

0.3396

0.3876

竹田、武田、池田、明田、気高(けだか)、畑台など

216

421

0.3143

0.6127

0.0000000000

32

クニ

-0.3604

0.2430

-0.0933

上ノ国、小国、三国、岩国、国見、国東、国富、国頭、六合(くに)など

320

483

0.4657

0.7029

0.0000000000

67

タケ

-0.3604

0.1648

-0.0419

武生、御嵩、武部、武雄、竹富、竹田、竹野、武田など

748

771

1.0885

1.1220

0.0000000000

141

ヨウ

-0.3524

0.0459

0.5107

×丁・町・条、京・城・丈・上・庄・陽などを含む地名、八日市など

7949

10658

11.5677

15.510

0.0000000000

46

サタ

-0.3448

0.2213

0.3542

佐田、貞光、佐多、麻田、浅田、友定、長田、国定など

74

184

0.1077

0.2678

0.0000000000

89

ナヘ

-0.3392

-0.0328

-0.0636

員弁(いなべ)、田辺、南部、神辺、川辺、真鍋など

162

696

0.2357

1.0128

0.0000000000

44

コミ

-0.3040

-0.2524

0.0162

五明(ごみょう)、小湊、五味、小宮、小峰、横道など

81

73

0.1179

0.1062

0.1708399900

169

-0.2893

0.0998

0.1395

川辺など×辺、延岡、別所、×部、戸田、平群、神戸、中標津(なかしべつ)など

4046

2976

5.8879

4.3308

0.4610217810

18

エミ

-0.2541

-0.1961

0.1608

江見、×江南(×えみなみ)、笛水など

19

25

0.0276

0.0364

0.0457691470

170

ヘツ

-0.2075

0.1304

0.3037

女満別のような「×別」地名、別府、別所、別院、中標津など

1417

264

2.0621

0.3842

0.2646706780

129

モス

-0.1497

0.0067

0.0194

百舌鳥、雲出(くもす)、下諏訪、下須、甘水(あもす)など

91

33

0.1324

0.0048

0.0005305330

 

「奈良県奈良市」の「ナラ」は縄文的地名である

「やまと」の「奈良」は関西にあり、だれでも「なら」のつく地名は西日本の代表的地名と思うかもしれない。確かに大きな広域地名の奈良市に含まれるZIPは全てカウントされるので、西日本と東日本の出現率ということで比較すると、明らかに西日本が多い。すなわち、574件の「ナラ」を含むZIP地名のうち372件が「奈良市××」によるものである。また奈良市北側に隣接する京都府八幡市には「上奈良××」という30余りの詳細欄に記載される地名が見られる。「倭」国は「やまと」=奈良=弥生と言うイメージがあり「奈良」は西日本を代表するにふさわしい地名のように思われる。

しかしながら、「ナラ」を含む地名の都道府県別分布状況を見ると、全国的に存在し、むしろ縄文遺跡分布県と相関する。すなわち第一因子すなわち縄文地名因子の因子負荷量は0.5003、またパートBの中では中期縄文遺跡密度と「ナラ」を含む地名出現率の間の0.4157の順位相関係数が示されている。もっとも、多くは漢字表記で樹木の「楢原」や「楢山」などに於ける「楢」を含む地名であるが。「奈良」で表される地名も北海道から東海、北陸地方にかけて東日本に広く認められる。「奈良」のつく地名は奈良県奈良市と上述の京都府八幡市上奈良を除くと、西日本で19件に過ぎないが、東日本では36件にも達する。

また、すべての「ナラ」を含む地名リストを見ると、出現がないのは、東日本では富山県のみであるが、西日本では和歌山県、島根県、高知、徳島、香川県、宮崎、佐賀、鹿児島、沖縄県で多数にのぼる。これらの様相は「トサ」地名が四国特有の地名に見えるが、むしろ縄文遺跡分布と相関することと似ている。「トサ」も「ナラ」も縄文時代からあった言葉であり、地名であろう。

「奈良」「楢」以外に「習志野(ならしの)市」と言う広域地名がある。これは明治天皇が命名するところの新しい地名であるようだ。しかし千葉県は「習志野」以外にも「奈良林」「北凪原(きたならはら)」など多様な表記をもつ「なら」ZIP地名が存する。

また福岡県には「奈良」でも「楢」でもない鞍手郡小竹町「南良津」があり「奈良」という大都市名の影響なしに、漢字が充てられたと思われる地名がある。また北海道に標津郡中標津町並美ケ丘、京都府に京都市右京区御室双岡町(ともに「ならびがおか」)がある。しかし郵便番号地名リストでは、大多数は「楢」または「奈良」で表記されている。地名リストでは「楢」はやや東日本に多いようである。

 

「奈良」は「楢」か?

植物図鑑に「ナラ」のイラストは載っていない。載っているのは「ミズナラ」と「コナラ」であり、ブナ科コナラ属のうち落葉性の樹木を一般に「ナラ」と呼ぶそうであるが、コナラ属全体をさすこともあり、その範囲はあまり明確でないようである。また「ナラ」に対応する「oak」の意味するところにも混乱が見られる。植物学を離れて定義すれば「楢」は「どんぐり」の「成る」木と定義したほうが手っ取り早いかもしれない。

「どんぐり」のなる「ナラ」は北海道から九州にいたるまでいたるところに生えている。そして「どんぐり」は縄文時代人の主要とまではいかないが、命を支えた重要な食料であったことが多くの歴史書に示されており、縄文人にとって「慣れ」親しんだ食料であっただろう。

中期縄文時代の人口は愛知・岐阜県までの東日本に偏在していたとはいえ、ゆっくりと内陸部を西に移動する人々の一部はすでには奈良県あたりまで達していただろう。「奈良」が「楢」と漢字で表記されていたら「奈良」地名解釈に頭を悩ますこともなかっただろう。「奈良」は東日本にいくらでもある「楢原」や「楢山」の「楢」に因んだ地名ということで納得していたかもしれない。「平城(なら)山」は「楢山」である。

漢字で地名が表記されなければいけない時代にもなると、食料のどんぐりはもう見向きもされなくなっていただろう。人口の多い立派な近代的な都である「なら」が、山に生える田舎くさい、忘れられた「楢」に因んだ地名だ等とだれも思いつかない時代になる。

日本地名ルーツ辞典では日本書紀の「草木踏み平(なら)すので、那羅山という」という記述を引いて、なだらかに続く平坦な緩急地を形容した地名であろうとしている。また「均(なら)す」や「並ぶ」という語を含む地名が奈良県に存在することも指摘している。さらに、古文献に記される「楢山」などは誤写、誤記された例としている。

「奈良が樹木の楢と関係があるのか」という議論は置くとして、この説明の中で、「均す」「並ぶ」「平(な)らす」などが同一の意味を含んでいるという指摘は興味深い。そうすると「慣れる」「習う」「倣う」も突拍子もない行動や反応が周囲の行動と並び目立たなくなる過程を示す言葉なので、語源を一にする家族語かもしれない。

さて、樹木の「楢」もこのような家族語から派生した言葉かもかもしれない。「楢」は日本国中どこにでも(均一に)生えている、縄文人なら昔から慣れ親しみ、調理法も完成した、いわば「熟れた(こなれた)」どんぐりが「成る」木であった。樹木名の「楢」と言う語ができて「成る」という語が生まれたのかもしれない。時間を経て、内部で十分こなれる過程を経て物事は「成る」あるいは「為る」。そして木の実が「成る」。

「奈良」はそんな難しい事とは関係なく「楢」が生えていたから「楢山」とか「楢坂」とか呼んだのであろう。そして漢字で地名を表記する必要が生じた時代、奈良時代に、当時の地名学者たちは「なら」の語義の本質にまで遡って「奈良」という地名表記を完成させたかもしれない。

住居や、墓や、道は人が踏み固め、土を均して出来上がる。土を踏み固める時には、音が「鳴る」。以上、綱渡りのような怪しい解釈である。

思い込みから、筆者は「湾」のように入り組んだ海岸線ではなく、なだらかに長く単調に続く海岸線を遠州灘とか熊野灘のように「灘」と呼ぶと誤解していた。しかし辞典をひくと、流れが強く航海が困難な海が正しい。(結果的には長い海岸線に面した海といえないことはないが)。幼児が「からだ」を「かだら」や「かだだ」というようにラ行はやや発音が難しい。「なら」が「なだ」と発音された時代や地域があったかもしれない、と思い「ナダ」と読む「灘」を含むZIP地名を抽出したところ、明らかに「ナラ」地名と対照的に、西日本に多く、206件中、東日本では石川県河北郡内灘町××という15ZIPのみであった。またZIP地名ではなく国土地理院2.5万分の1の地図検索ページで「灘」を入れて検索すると451件のうち茨城県鹿嶋市の鹿島灘以北の出現は全くない。中期縄文遺跡の希薄な四国や中国地方に多い。中期縄文遺跡分布と反対に極する「なだらか」や「灘(なだ)」や「雪崩(なだれ)」という語も、あながち「なら」とは無関係ではないように思う。

 

「アラ」は「ナラ」の反対語

「荒」「新」などで表記される「アラ」を含む地名文字列の第一因子負荷量は0.5469であり、これも縄文単語といえる。なお「新」「荒」以外の漢字で表記される「アラ」地名は極めて少ない。

下に「アラ」地名の都道府県別出現率の分布図を示す。また同時に「アラ」地名をのうち「新」「荒」表記の地名を別々にしてカウントした分布図も示す。

 

「アラ」地名は太平洋側では中期縄文遺跡密度の濃い関東地方から山岳部を通り日本列島を横断して日本海沿岸に抜け、裏日本の秋田、新潟県から福井県に至る沿岸県に濃い分布を示している。西日本では分布が薄く、特に「新」で表される「アラ」地名は西日本では徳島・福岡・沖縄県にしか存在しない。このような分布状況はパートAで示された「ネ」地名の分布と類似している。注目すべきことは「新」を含む地名が東日本から最も遠く離れた沖縄県で異常に高い出現率を示すことである。すなわち宜野湾市新城、石垣市新川、糸満市新垣、中頭郡中城村新垣、島尻郡具志頭村新城(あらぐすく)、島尻郡南風原町新川、宮古郡城辺町新城、宮古郡上野村新里、八重山郡竹富町新城である。東日本では「荒川」はありふれた地名であるが沖縄県でも2ケ所ある。「新城」は「あらぐすく」と読むが「新城」と漢字表記するZIP地名は本土では、70ZIPを含む愛知県新城(しんしろ)市を筆頭に合計111ZIPがある(多くはシンジョウと読む)。兼城、仲宗根、与那嶺などの「ネ(根?)」を含む縄文地名が西日本を跳び越して沖縄県に強く分布していることとよく似ている。中期縄文時代までには、本土から船によって縄文人が沖縄に達しており、何らかの生活を営んでいた痕跡だろう。

反対に「アラ」を含むZIP地名は先の奈良県、隣接の三重県、和歌山県では極めて出現が少ない。(「なら」も少ないが)

新酒は「荒々しい」が寝かすと「こなれて」角が取れる。「荒」と「新」は意味が異なるように見えるが、共通部分もかなり含まれているように思う。すなわち「新しい」ものは「荒々しい」。

時がたつと「新しい物、荒々しいものは、なれて、こなれて、尖りがなくなる、なだらかになる」つまり「凹凸が取れて均れる」。前項で考えた「なら(奈良、楢)」は、「notあら」、「否(いな)あら」ではないのか。ただし「notなら」の意味は、単に「古い」の意味ではない。そのような「あら」-「なら」の1セットが中期縄文時代にはあったのであろうか。「not吾(あ)」は、すなわち「汝(な)」であろうか?

新た、改める、洗う、表す、現れる、露わ、顕わ、は「あら」の「新」という側面から、荒い、粗い、争う、嵐、荒らすは「荒」の側面から生まれた言葉だろうか。「有る、在る」も新たに出現するところから存在が始まるので家族語であろうか。ただし「あたらしい」は「あらた」と似ているが最も重要な部分に「t」が含まれるので別家族かもしれない。あるいは「なら」のところで指摘したように、ラ行が変化して「なら」が「なだ」になったように、「あら」が「あだ」になる過程をへて「あたらし」が生じたのかもしれない。

 

「いずみ」も縄文的地名

1903件の「イス」を含むZIP地名がある。「イス」地名のうち1293件が「イスミ」を含むZIP地名であり、千葉県夷隅郡や鹿児島県出水(市および郡)などで表記される広域地名も存在するが、1041件が漢字表記欄に「泉」を含むZIPであった(たとえば泉、和泉、大泉、小泉)。「イズミ」以外の「イズ」地名では、伊豆、出雲、出石(いずし)などをすぐに思いつくであろう。しかし、ここでは最も出現の多い「いずみ」または「いすみ」と発音される3文字地名に限定して話を進めたい。

古都「奈良」の場合と同じように、大阪府南部沿岸地方を古くから「泉州」と呼び、この地域の地名には、しばしば「泉××」「和泉××」という形容詞がつくため、関西の住人であれば「泉」または「和泉」は西日本の典型的地名ぐらいに思っているかもしれない。しかし「イス」の第一因子、非中期縄文-中期縄文次元の因子負荷量は0.4654であり、新たに計算しなおした「イスミ」3文字列の都道府県別出現率と中期縄文遺跡分布密度の順位相関係数は0.4922で、「イスミ」は中期縄文(あるいはそれ以前の)地名といえる。下に「イスミ」の都道府県別出現率の分布状況を示す。(具体的な地名リストは最初の方に示したjomon.lzhをダウンロードして解凍して「イス.txt」を参照していただきたい)

大阪府以外、鹿児島・徳島・千葉県で高い出現率が示されているのは、前述のように出水、夷隅という広域地名のためである。なお夷隅は現在町村合併のため、ひらがなの「いすみ市」になっている。いずれも縄文海進を考慮すれば沿岸にあるといって良いだろう。鹿児島県には出水郡、出水市以外に、大口市平出水、枕崎市泉町、鹿児島市泉町があり。千葉県には夷隅郡の外に30余りの泉、和泉、小泉、今泉などがある。なお漢字で「夷」(どのような読みにかかわらず)を含むZIP地名は千葉県にしかなく「夷隅」の他に、同じ県に、安房郡千倉町 北朝夷(きたあさい)、南朝夷のみである。

また徳島県の「イズミ」は「あいずみ(藍住)町」という広域地名があるためだが、これは「藍園村」と「住吉村」の合成地名である。徳島県では、その他、小泉、大泉、泉谷の3件の「イスミ」地名がある。東京都には「泉ガーデンタワー」という各階に振り当てられたZIP46あるため、やや濃い色付けがなされている。これを除くと「和泉」や「泉」、「大泉」など20件で、出現率は0.6%強になる。石川県や山梨県と同程度である。

また沖縄県にも9000021那覇市泉崎、9050221国頭郡本部町伊豆味があるのが注目される。

東日本では「イスミ」地名の出現しない都道府県はないが、西日本では和歌山・島根・香川県で出現がない。また「アラ」が東日本の日本海側に濃い分布を示したのに対して、「イスミ」は岩手・福島県の色が濃いなど、太平洋側に多いように思われる。

 

「いずみ」の怪しい地名解釈

「いすみ」は千葉県「夷隅」の漢字が表す様に「夷(えびす)」の住んでいたところではないだろうか。

「住む」が「住み」と表現されるのも、これまでの「怪しい地名研究」の「とり(取り)」「ふり(振り)」などの項で指摘したように縄文的である。「澄む」や「清む」、「住む」「棲む」「隅」も家族語だと思う。これらには「静止した動きの乏しい状態」を含んでいる。昼間の活動が終わり、じっとして長い休息をとる場所、あるいは獲物を待ち受けてじっとしている事や場所が「巣」である。活動の場の「隅」に巣が在ることが多い。水の動きが止まると濁りが沈殿して水は「澄む」。しかし元々は、透明な状態が「澄む」ではなかったと思う。淀んで動きのない不透明な大気を「霞(かすみ)」というではないか。「霞」は澄んではない。「済んで」しまえば動きは止まる。これらは同音異義語ではない。漢字が入ってから分化が進んだ言葉と思われる。

それでは語頭の「い」とは何であろうか?「威丈高」「居丈高」という言葉が在る。「い」の丈の高さから、たとえば指図する。国語辞典で「威」は「他を恐れ敬わせる勢い」とでている、「居」一字の、わざわざの記述はないが、「在る」「居る」の「居」であろう。「存在感を示す丈からの指図」で意味が通る。また、接頭語として「斎=忌み清めた神聖なる意味」、そして「夷隅郡」の「夷」は「東方の未開人。蛮人。えびす」などが出ている。

「夷」の説明が正しいとすれば、夷隅郡が「夷」を嫌って「いすみ市」になったという心理があるかもしれない。しかし、もともとはそのような悪い意味で「夷隅」という漢字表記がなされたのかは疑問に思う。「夷」は「えびす」と読み「えびす」の付いた地名は縄文地名でないことがパートCで明らかになっている。また、多様な「えびす」の漢字表記があることが触れられた。「恵比寿」「戎」「蛭子」「胡」などの多様性は、漢字の正しい意味が広まるに従い、このような「未開の人々」という意味を避けるために随時選ばれた漢字表記かもしれない。

国語辞書の記述をすべて合体させると「い」は存在感のある、迫力の在る、野蛮な異邦人となる。慣れ親しんだ「奈良」や「京都」の人々とはやや違っている。

「神(かみ)」はアイヌ語の「カムイ」から生じたという説がある(片山龍峰:1995)。「カム(被る)+イ(居)」=神(かみ)。神・上が住むところが「いずみ」であったかもしれない。筆者は幼稚園、小学校低学年のころ、「高」、「赤」、「少な」などは「高が居る」「赤が居る」「すくが居る」のような意味と信じていたような、遠記憶がある。

大阪平野沿岸の泉州から東を見ると金剛生駒山系の山々が見え、東のほうに二上山(にじょうさん・ふたがみやま)という2峰性のランドマークにふさわしい山に視線がひきつけられる。日はその方角から上る。近いと思って自転車で目指した経験がある(途中であきらめたが)。二上山を越えた所が「奈良」である。沿岸と、山向こう、「和泉」と「奈良」は、近いといえば近いし、遠いといえば遠い。二上山をもっと北に辿ると「生駒山」がある(生駒のふもとは和泉ではなく当時の河内湾・河内潟の最も奥まった所http://agua.jpn.org/pre/pm.html)の「河内」であるが)。駒は「間(境界線)に接した(或いは含む)スペース」というように解したので、「い・こま」は「イ」の「緩衝地帯、国境線と」なる。生駒を越すと、奈良市がある。生駒を越して奈良に向かう道路は現在でも少ない。近いと言えば近いが、遠いと言えば遠い。二上山を南に山脈を辿れば「岩木山」ならぬ「岩湧山わわきさん)」がある。岩湧山に上れば、大阪平野を泉州・大阪湾を含めて一望できる。

「えびす」地名は下の表のように、ほぼ西日本に限られている。既に述べたように、東京都には「恵比寿ガーデンプレイス(×階)」という高層ビルがあり、さらにこの「恵比寿」は「エビスビール」の工場があったことによるもので、これは無視すべきである。奈良県から少し離れた京都府、大阪府、兵庫県、徳島県で多い。「えびす」や「えみし」は京都発の「新造語」ではないかと「ヒス」地名の中で考えた。すなわち、古語「漬ず(ひず)」と関係在るのではないかと考え、「漬ず」の名詞化したものが「ひし(菱)」であり、接頭語「え」がついたものと解釈した(パートC)。以後、「えひし」→「えみし」→最後に「えびす」という言葉ができたのではないかと怪しげな理屈を述べた。

また岐阜県は愛知県からすると野蛮なので岐阜県に「えびす」の地名が多いのであろうか。(表中%は頻度/全国「エヒス」綴りを含むZIP数)

 

「えびす」を含むZIP地名の都道府県別頻度

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  データ種類        頻度  パーセント(* =2.5%)

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[三重県    ]         1         .70%       

[京都府    ]        34       23.78%        ++++++++++

[兵庫県    ]         5        3.50%        +

[北海道    ]         1         .70%       

[和歌山県  ]         2        1.40%        +

[大分県    ]         3        2.10%        +

[大阪府    ]         8        5.59%        ++

[奈良県    ]         1         .70%       

[宮崎県    ]         1         .70%       

[富山県    ]         2        1.40%        +

[山口県    ]         6        4.20%        ++

[岐阜県    ]         5        3.50%        +

[島根県    ]         1         .70%       

[広島県    ]         3        2.10%        +

[徳島県    ]         6        4.20%        ++

[愛媛県    ]         3        2.10%        +

[愛知県    ]         2        1.40%        +

[新潟県    ]         4        2.80%        +

[東京都    ]        43       30.07%        ++++++++++++

[神奈川県  ]         1         .70%       

[福井県    ]         1         .70%       

[福岡県    ]         2        1.40%        +

[福島県    ]         1         .70%       

[長崎県    ]         2        1.40%        +

[静岡県    ]         1         .70%       

[香川県    ]         1         .70%       

[高知県    ]         1         .70%       

[鳥取県    ]         1         .70%       

[鹿児島県  ]         1         .70%       

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またアイヌ語地名にしばしば現れる「ナイ」「ベツ」を含む「柳井、院内、別府」があるところの山口、大分県でも「えびす」町が多いことが示されている。

中期縄文期では、やや毛色の変わった東国起源の人々が住むところが「いずみ」であり、それ以降、平安時代「えびす」という言葉が流行った時に、これらの人々が住む「えびす町」ができたのではないか。東日本では「えびす」は、とりわけ、毛色の変わった人々ではなく、見かけは普通の人々であり、「えびす」などと呼ぶ必要はない。

しかし、「イスミ」ほど多くはないが、「アスミ」「アツミ」(スとツとは濁れば区別が付かない)という地名が、ほぼ東日本にかぎって存在する。「イスミ」-「アスミ」。「ア」=「吾」とすると「吾住」-「夷(威)住」と対になるのではないか。「我(あ)」と「夷(い)」の間に「あいだ」がある。「田」は縄文時代からあった言葉ではないかと指摘した。「間(あいだ)」は「合(あい)田」である、といえば笑われるかもしれないが……田は山と海の間の沖積平野から始まった。当時は湿地帯が広がっていた。

中期縄文時代にも、やはり2種類の区別すべき人々が東日本で混在していたのかもしれない

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「アスミ」

北海道    常呂郡置戸町          安住

北海道    勇払郡穂別町          安住

千葉県    千葉市緑区            あすみが丘

新潟県    岩船郡関川村          安角

富山県    富山市                安住町

富山県    上新川郡大山町        明日美野

山梨県    富士吉田市            大明見

山梨県    富士吉田市            小明見

岡山県    小田郡矢掛町          浅海

以下は「アツミ」

山形県  西田川郡温海町    広域地名

長野県、 南安曇郡安曇村    広域地名

愛知県  渥美郡渥美町     広域地名

石川県    羽咋郡志賀町          安津見

兵庫県    宍粟郡一宮町          安積

兵庫県    宍粟郡一宮町          西安積

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東国の「夷(い)」といえば真っ先に思い浮かべるのは「アイヌ」であり、「いずみ」の「い」は「アイヌ」の「イ」でアイヌ系の人々ではなかったのか。漢字が入ってくる前から「い」と呼ばれる人々がおり、意味も音も似ている、ということで「い」に漢字の「夷」が充てられたのではあるまいか。奈良から山を越えた大阪平野は「蛮人」の「い」の人々の地域であった。東日本に多い「イワテ(濁音のデも含む)」を含む地名の南限として泉州に接する和歌山県の「岩出(いわで)」、高槻市に「5691102安満磐手(あまいわて)町」、があり大阪府より西には「いわて」がないことも注意を引く。

これまでの登場人物をまとめると、「わ」の人々、「ね」の人々、それから今、「い」の人々が西日本に登場する。

 

泉州の或るアイヌ関連地名

和泉の国は和泉市を中心に堺市あたりから南の和歌山県境あたりまでの沿岸地域である。泉大津市、泉佐野市の広域地名だけでなく、「泉(和泉)××」が多数あり、大阪府の「イスミ」を含む地名の出現率をトップに押し上げている。筆者はこの地域に住んでおり、他とバランスを欠くが、やや冗舌にこの地域の地名を考えて見たい。

ひそかに、以前から、アイヌと関係すると思っていた、いくつかの地名が在る。

まず、「夷(い)」は「えびす」とも読むが、「えびす」町が泉州沿岸部に並んでいる。岸和田市と泉大津市に「戎町」がある。堺市には「戎島町」「戎之町東・西」がある。8箇所の「えびす」地名のうち5個が泉州にある。残りは「住吉大社」駅をはさんで、堺を北に超えた、延長線上、大阪市南部に「恵美須東・西」「戎本町」があり、「えびっさん」で有名な「今宮戎」という電車駅名もある。大阪府を超えた和歌山県和歌山市内に「北新戎ノ丁」があり、沿岸部とはいえないが和歌山市を流れる紀ノ川沿いに伊都郡かつらぎ町蛭子がある。

泉佐野海岸あたり(関西国際空港がある)から真北を見ると、兵庫県西宮や神戸が、大阪湾をはさんで対岸のようにはっきり見える。縄文時代には現代の大阪市内は河内湾であり生駒のふもとの道を迂回して、神戸に行くより船で行くほうが判りやすく手っ取り早い。今は大阪城のある上町台地を遠くに見ながら北上すると尼崎や西宮に着く。兵庫県西宮市には荒戎町、近くに西宮えびす神社がある。神戸市には須磨区戎町がある。徳島県も六箇所もの「えびす」地名があり、出現率は多いほうである。大阪湾沿岸は「えびす」が取囲んでいた。「えびす」とは「いずみ」の語頭が示す「い」の人々でなかろうか。

次に、「春木(はるき)」という地名が岸和田市北部の海岸沿いに在る。「春木競輪」のあるところであり、春木八幡山遺跡(山といっても砂丘のような高さ)という縄文から中世に至る複合遺跡が在る。「春木××」という複数のZIPを含む、やや大きい地域である。春木川という、綺麗な水とは言いがたい川が大阪湾に注いでいる。春木川の河口から見て、すぐ左が「春木××」と呼ばれている。そして右は「下野(しもの)町×丁目」である。アイヌ語で「左」は「はらき」、「右」は「しもん」というそうである。山田秀三(1986「アイヌ語地名を歩く:北海道新聞社」)は河口から見て岡志別川の左からの合流する川を「ハルキオカシベツ」右側から流れ入る川を「シモンオカシベツ」とよび、川の左右は、河口から見て区別するとしている。

ただし春木川に沿う下野町の山手側に共同墓地を挟んで「上野町」がある。「はらき」-「しもん」からの「下野町」ではなく、「上野町」に対応する町名ではないかとも思われ、行って見た。「上野町」は「下野町」や「春木×町」に比べて対称的ではない。狭く、古い民家の密集度が低く、最近建ったようなマンションが主で、元は空き地であったように見える。「上野町」は「下野町」に合わせて、後に生まれた地名のように思う。

春木八幡山遺跡に隣接して弥栄(やえい)神社が(「えい」部は語中の二(三?)重母音であり、なんと読むかわからなかった、「やえ・い」と区切るのか?。「年中行事をみると、当然1月に恵比須祭りがある。岸和田市戎町は弥栄神社のすぐ北側にあり。神社の浜側には春木大国町がある。春木の中にも「いずみ」がある。すなわち春木川に沿って「春木泉町」がある。

アイヌ語を思わせる地名が春木近辺にもう一つある。「磯上(いそのかみ)」である。競輪場の前の旧26号線の向かい、大阪市方面寄りにある町名である。

「いそ」はアイヌ語で「豊」の意味で、「いそ あん(在る)」は「豊である」と萱野茂のアイヌ語辞典にでている。単に海岸にある「磯」の上(かみ)とも理解できるが、北海道は下の表のように、最も「磯」地名の出現頻度、率の高い都道府県である。「磯」という言葉自身、アイヌ語から生じた言葉かも知れない。磯は沢山の食物を確保できる、豊の場所である。

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北海道    稚内市                宗谷村(富磯)

北海道    根室市                有磯町

北海道    恵庭市                戸磯

北海道    松前郡松前町          大磯

北海道    上磯郡上磯町          市ノ渡など57ZIP

北海道    爾志郡乙部町          花磯

北海道    久遠郡大成町          富磯

北海道    久遠郡大成町          長磯

北海道    島牧郡島牧村          栄磯

北海道    寿都郡寿都町          磯谷町

北海道    寿都郡寿都町          大磯町

北海道    磯谷郡蘭越町          相生など34ZIP

北海道    苫前郡羽幌町          天売(富磯)

北海道    虻田郡虻田町          大磯町

北海道    広尾郡広尾町          タニイソ

北海道    川上郡標茶町          磯分内××など12ZIP

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また、春木川を北に超えた、岸和田市の中核部には(旧26号線山側)には、アイヌ語の「ベツ(pet)」地名とどれほどの関係が有るかわからないが「別所町」、第一因子負荷量が0.8を超える超縄文的綴り文字「ヌマ」のみの地名「沼町(ぬまちょう)」がある。また「フシ」も地名研究パートBで縄文的であると論議されたが「フシ+イ」の「藤井町」もこのあたりにある。

「磯上町」の東に隣接して「吉井(よし・)町」があり、その隣は「中井(なか・)町」である。「い」は今議論している「い」である。「加守(かもり)町」がある。「モリ」を含む地名の中期縄文遺跡負量は0.4630で、立派な中期縄文地名である。さらに「荒木町」がある。「ナラ」「アラ」のところで指摘したように「アラ」地名の負荷量は0.5469で縄文地名である。「なら」に対立すると思われる文字列である。これらの地名がすべて隣接している。

ただ、春木八幡山遺跡からは晩期の縄文土器のかけらしか出ていないとのこと。残念である。岸和田市のすぐ南は貝塚市である。由来は縄文遺跡の貝塚ではないかといわれているが、その貝塚はどこに在るかは不明とのこと。古い町屋の下に中期縄文遺跡が眠っているかもしれない。

 

「曽根」の怪しい地名解釈。曽根もアイヌと関係があるかもしれない。

中期縄文遺跡分布と相関の高い地名に「根」を含む地名がある(第一因子の負荷量は0.64)。泉佐野市に「日根野」があり、春木の北泉大津市には「曽根」がある。

「そね」は全国にあり「根」地名の典型のように思われるが「ソネ」の都道府県別出現率の中期縄文遺跡密度との順位相関係数は0.2931で「ネ」全体の相関値に比べてかなり低い値が計算される。これは沖縄や、福岡、あるいは大阪府などといった関東・中部・北陸地方並みの出現県が存在するからである。したがって「そね」は典型的な「根」地名とはいいがたい。「そね」とはなんであろうか?

「ソリ」を含む地の第一因子負荷量は.5846で、すでに、「反り」の意味と解釈しうるということを指摘した。「反り」は平面から離反することである。日本語辞典の中には「そ」で始まる基本的な単語が他にもいくつも在る。「そむく」は説明の要はない。「戸から離れたところ」が「そと(外)」「そで」は「手から離れた所」であり、「そ」は「本体から離反している」事を表しているように思える。「染(そ)む」も本来の色から離反させることである。「熊襲」は「隈(周辺部)」にいる「背を向けた人」という説明もすんなり納得できる。「沿う」や「添う」も「近くに在る」という点では意味が共通するが、寄り添うのニュアンスが強いので、少し遠いような気がする。とはいえ、「山添村」などの「ソエ」地名はむしろ非縄文的地名であるところから(第一因子負荷量は-0.399)、中期縄文期以降、意味の変化が生じたもので、語源は同じとも思われる。

中期縄文時代以後、人口が極端に希薄な西日本への拡散は、「根」の人々の、巧みな、精力的な航海に負うころが多い。「根」のボートに同乗していた人々が途中下車した、すなわち、「根から離反した、背を向けた(単に「根」でないというのも含めて)」人々が住んだところが「そね」、すなわち「背(そ)根」ではないか。「そね」の人々は「根」の人々から離れ、再び民族的なアイデンティティーを取り戻す。「いずみ」は沖積平野に降り立った「イ」の人々ではなかったか。かれらが新しい作物「イ(夷、威、居=神)・ネ(根)=(稲)」を作り始める。「イ」とはもちろん「アイヌ」である。稲の苗は、広汎なネットワークを持つ「ね」の人々から手に入れたものであろう。

「根船団」は既に縄文時代には沖縄まで行っている。沖縄の「ネ」地名は、「仲宗根」の他に「与那嶺、赤嶺、稲嶺」など「嶺」の形をとる。「根」は山のふもとだが「嶺」は山の頂である。「ミ」は気高いことを意味する。単なる「ネ」と言わず「ミネ」と言う。「<ネ>とは違うよ」というような意思を感じてしまう。「イ」の誇りがそうさせたのかもしれない。沖縄にも泉崎、伊豆見という「イスミ」地名が在る。

それから「せ」と「そ」は違う。「せ」は「背」そのものであるが「そ(背)」は背を向けるので意味は相当違う。「伊勢(いせ)」は神の背中で「磯(いそ)」は神から背を向けられた「獲物」かもしれない。

なお「ソネ」地名の最も出現の多い都道府県は頻度では新潟県(30件、0.58%)である(しかし、縄県の郵便番号数自体少なく沖縄県の出現数は5であるが出現率で言うと0.67%で沖縄県が一位になる)。新潟県は日本一「イネ」が育てられている県である。

弥生時代に入ると、その他の「えびす」が大阪平野に続々と到来し、「藤井(ふじ)」や「新居浜(にはま)」や「桜井(さくら)」や「安威(あ)」など、地名にのみ、夥しい、意味の通り難い「い」を残して「アイヌ」の痕跡はかき消されていく。

 

「スワ」「アスワ」「ニワ」「アワ」「アヲ?」

「スワ」を含む地名出現率の縄文地名因子(第一因子)負荷量は.4725で、これも色濃い縄文的地名である。「スワ」は殆どが「諏訪」で表されるが、福井県には「足羽(あすわ)」というユニークな広域地名もある。「スワ」を含むZIPは全国に322件、三重県、滋賀県より西の西日本には43件のみであり、出現のない府県も7県に上る(東日本では石川県のみ出現がない)。最も多いのは、言うまでもなく長野県で「諏訪市」および「諏訪郡」という広域地名(計115件)のためである。勿論、長野県には他に、長野市や上田市などにも「諏訪」を含む地名が6ZIP在る。また東日本に入れた福井県の足羽(あすわ)郡は54ZIPからなる。この2県が飛びぬけて多く、下にこの2県(緑で塗っている)を除いた都道府県分布状況を示す。

先に触れた泉州地区南海沿線にも「諏訪ノ森」という駅名があり、長野県のみならず全国的な地名であるが、地名以外の「すわ」で思い当たる言葉はなく、「諏訪」地名の手がかりは霧の彼方にある。

しかし、「いずみ」の「すみ」が「住み」と解釈できるなら「すわ」の「す」は「巣」ではないだろうか。前項で、「巣」も「住み」も「活動の休止した状態」の意味を含んでいるという点で同語源ではないかと述べた。川の流れが淀んだところにできるのが「洲」である。現代では普通、動物の住むところを「巣」と呼ぶことが多いが、「す」は「住み」という言葉の土台になった言葉ではないか。

膨大な数の「わ」一文字を含むZIPがあり、「わ」を包含するZIP出現率は強く中期縄文遺跡分布と相関する。具体的には「沢(さ)」「川(か)」「河(か)」「岩(いわ)」で表記される地名であり、「わ」は中期縄文期以前は「コミュニティ」を表す言葉で、海外から「倭国」と呼ばれた所以ではないかとパートCで述べた。

とすると「すわ」は「住むところがある集落」という意味になる。「足羽(あすわ)」は「吾・諏訪」ではないか。

諏訪は長野・山梨・福島・埼玉県といった中緯度の山岳部に多いように見える。諏訪は「ね」や「い」の人々ではなく「わ」の人々の「巣」であろう。

なお話は前後するが、前項「イス」地名では、「イスミ」地名に限って考察を進め、静岡県の「伊豆(いず)」という広域地名に触れなかった。「伊豆」は「住み」という言葉ができる以前の「いすみ」かもしれない。

後ろに「わ」が付く言葉は「さわ」や「すわ」のみではない。四国の「阿波(あわ)」がすぐに思いつく。「わ」が村の意味だとすると「吾わ」=「私の村」と単純明快な解釈が可能である。しかし「阿波、粟、安房」などで表される「あわ」の都道府県別出現率は中期縄文遺跡分布とは相関しない。

ただ、青森などの「アオ」地名は中期縄文遺跡分布次元の因子負荷量は0.4553で「アオ」は中期縄文文字列である。青森の地名はごく新しい時代に命名された地名だとほぼ認められるが、青森県はその他の「あお」を含む地名も多く存在する。「青」は旧仮名遣いでは「アヲ」である。「ワ行」である。「阿波」地名解釈に少し近づくような気がする。

「ニワ」地名出現率の第一因子負荷量は0.4306で、これは縄文遺跡分布と偶然以上の相関性を示し、縄文文字列である。「に」は「土」であるなら「庭」は「土器を作る村」であろうか。埴輪(はにわ)とは土人形のコミュニティであろうか。

日本を「和・倭」と呼ぶ所以はこの辺りにあるのではないか。

 

「上(かみ)」と「下(しも)」

第一因子負荷量が正方向に高い地名文字列すなわち縄文地名文字列を見ると「モカ」「モヌ」「モオ」「モヒ」「モエ」「モヨ」の「モ×」文字列が多数見られる。該当する具体的な地名表示を見ると「下川(しもかわ)」「下大久保(しもおおくぼ)」などが圧倒的に多く、「下××」地名の出現率が中期縄文遺跡分布と相関するのではないかと予測させる。また同じように、「ミオ」「ミト」も第一因子次元の右側にあり、これは「下」の反対語の「かみ」の「み」+「おおくぼ」のようなケースによるものが多い。

そこで特定の地名に形容詞の「上」または「下」が付いた地名と思われる地名を抽出しなおし、県別分布を検討しなおした結果を示す。「シモ」「カミ」は2文字列であり既に相関係数は計算している。しかしながら「シモ」「カミ」の都道府県別出現率は遺跡数などとは意味の在る相関値を示してはいない。そこで次のような「シモ」「カミ」リストの再編集を行った。

まず「シモ」を含むZIP(5968件)を抽出して、そこから、更に仮名漢字表記欄に「下」という漢字を含むZIPを抽出した。これらの「下」を「しも」と読むリストを用いて都道府県別頻度集計を行った。「上」を含むリストの作成も同様の手続きを経て作成した。「下」地名については5368件、「上」地名に関しては9828件のうち7641件のZIPが抽出された。全て視察してチェックしたわけではないが、ほぼ100%に近い「上」を「カミ」、「下」を「シモ」と読む地名リストが得られた。

削除された「下」を含まない「シモ」地名では、橋本、串本、恵那郡加子母(かしも)、西門前(にしもんぜん)などであり、「上」含まない地名では「神」を含む地名、「加美」、「香美」「鏡」「相模原」「国頭」など広域地名含む地名であった。また「中宮(なかみや)」も該当する。しかし「神」を含む地名が最も多かった。

下に「下」「上」を含む都道府県別分布図と中期縄文遺跡関連の出現率の順位相関係数を示す。なお比較のため「上」「下」と同様の処理をして得られた「東(ヒカシ)」「西(ニシ)」地名出現率についての相関係数も示す。「ひがし」-「にし」も「かみ」-「しも」も、同名地域の位置関係を区別されるのに使われる。

 

 

 

 

都道府県別「上(かみ)」「下(しも)」+固有地名出現率と中期縄文遺跡数等の順位相関係数。()は無相関確率

 

遺跡密度

遺跡数

緯度

経度

「上(かみ)」

0.2032(0.17071)

0.3232(0.02669)

0.3898(0.00676)

0.3129(0.03224)

「下(しも)」

0.2556(0.08291)

0.2614(0.07592)

0.2448(0.09723)

0.2080(0.16062)

「東(ひがし)」

0.0426(0.77617)

0.0489(0.74411)

-0.0475(0.75120)

0.0084(0.95531)

「西(にし)」

0.0756(0.61352)

0.0844(0.57272)

-0.1178(0.93736)

-0.0368(0.80601)

 

パートCの中で「<東・西(ひがし・にし)>は紀伊半島から瀬戸内海東西方向への航海が活発化する中で生じた比較的新しい言葉ではないか」と述べた。これに呼応するように「ひがし」「にし」の都道府県別出現率は中期縄文遺跡分布と全くまったく無意味な相関値しか示していない。

これに対して所在地の位置関係を示す「かみ」「しも」出現率は、「上・下」以外の意味の紛らわしい「カミ・シモ」地名をリストから排除することによって、遺跡分布や、東西日本区分に関わる変数との有意な(有意な水準に近い)相関関係を示すに至っている。このことは「かみ・しも」は中期縄文時代以前から用いられていた言葉であることを強く示唆する。

 

「しもかわ」「かみかわ」

「しも」と「かみ」という語は相当古くからあった言葉と考えられる。「モカ」文字列の中期縄文因子負荷量の高さは、同じく東日本に偏在する「川」や「河」を含む文字列が連結することによって維持されていると考えられる。すなわち「し(下)・かわ(川、河)」である。「モカ」地名658件のうち110件が「シモカワ」によるもので、その他「モカミ(最上)」「シモカタ(下方)」「コロモカワ(衣川)」「カモカワ(加茂川、鴨川)」なども見られるが「シモカワ」が最も多い。

そこで「シモカワ」を含む地名を抽出し、都道府県別出現率を計算しなおして遺跡分布などとの順位相関係数を計算した。併せて「下」の反対語を含む「カミカワ」についても同様に相関係数を算出した。110件の「シモカワ」の大多数は、2件の「下瓦」を除いて、「下川」「下河」で表記される地名である(場合によっては「下川原」などもある)。また596件の「カミカワ」の殆どは「上川」「神川」であり「上瓦(かみがわら)」が3件「鏡川(カカミカワ)」が2件含まれる。

 

都道府県別「カミカワ」「シモカワ」地名出現率と中期縄文遺跡数等の順位相関係数。()は無相関確率

 

遺跡密度

遺跡数

緯度

経度

カミカワ

0.2472(0.09389)

0.3967(0.00577)

0.3801(0.00840)

0.3172(0.02982)

シモカワ

0.3401(0.01933)

0.4340(0.00231)

0.4263(0.00281)

0.4767(0.00071)

 

予測どおり、「上」または「下」の漢字1文字を抽出条件にした場合に比して、「しもかわ」や「かみかわ」を含む地名出現率の中期縄文遺跡分布に関わる格段に明瞭な順位相関係数が算出された。そして「シモカワ」の方が強い相関値を示している。

中期縄文時代には川筋にコミュニティ「かわ(輪?)」が存在し、「しもかわ」とか「かみかわ」と言って区別していたのだろう。

同じように「モヌ」地名(全国で11件にすぎないが)の高い第一因子負荷量は、「下」と中期縄文遺跡分布と強く相関する「沼」地名の連結によるものである。すなわち「下沼」によるところが大きい。

 

「かみ」と「しも」の怪しい語源解釈。「しも」の反対語は「かも」?!!

まず「しも」から。橋や箸は単に端にあるという意味のみならず、「端(は)にある一定の役割を果たす構造物(し)ではないか」と、東日本に多い「橋」を含む地名解釈のところで述べた。すなわち「し」とは「一定の役割を果たすもの」である。「足・脚(あし)」は「吾を支える重要な構造物である」

「も」は何であろうか?「喪」「藻」「模」など漢字変換キーをたたくと様々な「も」が出てくる。「も」一字も立派な日本語単語である。

「も」一字を入力してリストされない「も」があるのに気づいた(少なくとも私のパソコンでは)。「川面」の「面」である。「も」の原意は「面」ではないのか。すなわち一定の広がりを持つ平かな領域である。

たくさんの「も」を含む単語の意味の共通部を挙げることができる。「藻」は水中の植物で蓮や葦のように水面に飛び出す植物ではない。水上から見ると一面に広がっている。「喪」の期間は静かにしている。凹凸が大きいほど「面」とは言いがたい。短くない「喪」中は歌舞音曲、争いごとは避けて、平かに過ごさねばならぬ。「雲(くも)」は空という上面に広がっている、「友・供」の「と」は「戸」とすると、「とも」は同じような「ドア」が並んだ集落の広がりがイメージできる。集落には「友」や「供」が住んでいる。「巴江(ともえ)」という地名はすぐ後にのべるように、縄文遺跡分布と相関する、古くからそのような集落が存在したことを心強く思う。

「おもて」という言葉も「広い(お)面(も)の方(手)」という意味で理解できることは後の項で触れる。

「しも」は「し」があるところの「も(面)」であろうか。「籠に乗る人、担ぐ人、そのまたわらじを作る人という言葉がある」ということを元首相秘書が語っていた。この場合「人」が「し」で「も」は選挙区である。パソコンシステムは「し」のみならず「も」によって稼動している。

CPUはマザーボード上の「メモリ」や「チップセット」といった「電」のみならず、筐体の外の、キーボードやモニタ、モデムによってやっと役割を果たしている。これらは「し(子)」である。これらの機器類を置く場所も必要である。電子基板、机、机を置く床面が必要である。これらは「面(も)」である。ノートパソコンなら小さい「も」ですむが「し」を増やすと、もっと大きい「も(面)」が必要になってくる。この「面」は多くの場合、下にある。

なお「電子素子」の「子」も音読みで「し」であり中国語と音も意味も一致しているので「し」は中国語であるが、「はし」は中国語とはとても思えない。偶然の一致と思いたい。

 

多くの人たちは「傘」「笠」「噛む」「髪」「被る」「神」などの言葉を挙げて、これら語頭の「か」が「上部」「上方(じょうほう)」という意味ではないかと指摘している。この指摘は正しいように思う。それなら「しも」が下面とすると、上面は「かも」ではないかと思うが、日常生活では「かも」とは言わない。しかし地名には多くの「かも」地名がある。

「かも」といえば水鳥の「鴨」しか思い浮かばないが「しもかわ」に対立するところの、少なくない「かもがわ」が見られる。われわれが直ぐに連想するところの、「鴨」が沢山いる「鴨川」以外に「鴨」という字を憚って漢字が充てられたと思える「加茂川」も見られる。また「川」が取れた「かも」地名は「賀茂」「加茂」「蒲生(がもう)」などが、全国いたるところに認められる。「かも」が使われなくなり、本来の意味が忘れられたためか、多様な漢字表記が見られる。ただ「カモカワ」の遺跡分布との相関値は殆どゼロに近い、しかも僅かではあるが「負」の値を示している(遺跡密度と-0.1126、遺跡数とは-0.1155)。

また、鳥の「鴨」は「藻」のように上の方に一面に飛ぶので「かも」といわれたのかもしれない。また海原の空に遠くから見ると目のような鳥山を作るので「カモメ(鴎)」かもしれない。

全国の「かもがわ」地名

680133

ソラチ*クリサワ

カモカワ

北海道

空知郡栗沢町

加茂川

3630024

オケカワ

カモカワ

埼玉県

桶川市

鴨川

2992864

カモカワ

アマツラ

千葉県

鴨川市

天面など71ZIP

9370861

ウオツ

カモカワ

富山県

魚津市

鴨川町

9280308

フケシ*ヤナキタ

カモカワ

石川県

鳳至郡柳田村

鴨川

9188057

フクイ

カモカワラ

福井県

福井市

加茂河原

9188054

フクイ

カモカワラ

福井県

福井市

加茂河原町

5050044

ミノカモ

カモカワ

岐阜県

美濃加茂市

加茂川町

4110034

ミシマ

カモカワ

静岡県

三島市

加茂川町

4380086

イワタ

カモカワ

静岡県

磐田市

加茂川町

4442213

トヨタ

カモカワ

愛知県

豊田市

加茂川町

5201133

タカシマ*タカシマ

カモカワタイラ

滋賀県

高島郡高島町

鴨川平

6038817

キヨウトシキタ

ニシカモカワカミ

京都府

京都市北区

西賀茂川上町

6008133

キヨウトシシモキヨウ

イナリチヨウ(シチシヨウトオリカモカワスシニシイル、シチシヨウトオリキヤマチヒカシイル

)                                    京都府

京都市下京区

稲荷町(七条通加茂川筋西入、七条通木屋町東入)

6128484

キヨウトシフシミ

ハツカシカモカワ

京都府

京都市伏見区

羽束師鴨川町

6731401

カトウ*ヤシロ

カミカモカワ

兵庫県

加東郡社町

上鴨川

6731403

カトウ*ヤシロ

シモカモカワ

兵庫県

加東郡社町

下鴨川

6820923

クラヨシ

カモカワ

鳥取県

倉吉市

鴨川町

7092672

ミツ*カモカワ

アワイタニ

岡山県

御津郡加茂川町

粟井谷など31ZIP

7918004

マツヤマ

カモカワ

愛媛県

松山市

鴨川

7871101

ナカムラ

オクカモカワ

高知県

中村市

奥鴨川

7871102

ナカムラ

クチカモカワ

高知県

中村市

口鴨川

8570313

キタマツウラ*ササ

カモカワメン

長崎県

北松浦郡佐々町

鴨川免

8730023

キツキ

カモカワ

大分県

杵築市

鴨川

 

「かみ(上・神)」

しかしながら、日常語では、「しも」の反対語は「かも」ではなく「かみ」である。このあたりの事情はどのようなものであろうか。

上下関係といえば、単なる物理的な上下というより、人が生活を営むかぎり、人の上下関係が有ったほうが何かと便利だと、縄文時代以前から、人々は身にしみて感じていたと思う。複数のグループ(人でもよい)が互いに譲らない場合、最終的には戦争になる。あらかじめ「敬うもの」と「従うものを」決めておけばこのような諍いを回避できる。

縄文時代西日本への人口の移動は「わ」や「い」の人々を乗せた「ね」の人々によってなされていた。海上では「ね」の人が「敬われる人」であろう。航海は恙無く継続される。しかし上陸した場合はこの立場は逆転する。「ね」の人々も十分それをわきまえており、特に上陸地にいる先人には敬意をもって指示にしたがう。関東地方に上陸した人々は瞬く間に日本列島を横断して日本海側にまで濃い縄文遺跡分布を残す。価値観を含む上下関係は、物理的な意味での上下よりも必要なものであり、それを表す言葉が必要になってくる。

アイヌ語には「カムイ」という語があり、日本語には「神」がある。語の形が似ているので、この言葉の歴史を辿れば共通の源にたどり着くかもしれない。どちらも我々の上にあり敬うものである。「神」も「カムイ」もいろんな種類があるということも両者は共通である。時と場合によって、いろんな神・カムイを敬い、とりあえず神に逆らってはいけないと思っている。いろんな「神」を持ってきたというのが知恵。臨機応変に「従うもの」を取り替えられる。

 

日本語の「かみ」は「上部」=「か」と「実・御・身」=「み」が組み合わされたものと感じている。縄文遺跡分布と相関する「みどり(緑)」地名は「木の実」の「実」を取ることと関係在るのではないかと以前に愚考した。「実」は最後に結実し、食料になる貴重な宝物である。魚の「身」を食べるために魚を捕まえる。身分という言葉が在るように、人の実質は「身」である。「根」は麓だが「嶺」は見上げる気高き頂である。すなわち「み」は上のほうに在る尊敬すべき実体ということになる。時と場合によっていろんな「かみ」に従うことは便利なことである。

「かみ(上)」は「神」の観念から流用された言葉と思う。人は誰も尊敬されたいと思う心をもっている。自ら「かみ」を名乗ることもあるかもしれない。

単なる位置関係を指す「かも」と言う言葉より「かみ」を使うほうが、複雑化する社会にとって、守備範囲が広く、役に立つ。

「かみ」という言葉は東日本で生じた流行語的な要素を持つ言葉だったかもしれない。流行り言葉は、強い影響力を持ち、新規に「かみ」の付く地名を生じさせたのみならず、「かも」地名をことごとく「かみ」に変化させてしまうほどの影響力を持ったかもしれない。

先に、漢字で「上」と書く地名分布を得るため、「相模」や「鏡」等とともに、「神」と書いて「かみ」とよむ地名を排除する手続きをとった。しかし「神」が「上」から移行した言葉とすると「神」を「かみ」と読む地名の都道府県別分布も確かめておく必要がある。

下の図は「かみ」と読み「神」と漢字表記される郵便番号地名の都道府県別出現率の分布である。

 

「かみ」と読み「神」と漢字表記される郵便番号地名の都道府県別出現率の分布

 

「神」地名の都道府県出現率と中期縄文遺跡分布との順位相関係数は、遺跡密度とでは0.3006p=0.0400)、遺跡数とでは0.3720(p=0.0010)で「上」地名よりも明瞭な相関関係を示している。「上」も「神」も中期縄文時代には区別なく使われる傾向があったのだろう。

遺跡数分布は遺跡密度より北の都道府県でも濃密な分布状況を示す指標であり「神」の観念は関東・中部地方というより北海道や東北地方起源の可能性を暗示している。「上」の相関係数も同様である。

なお「カムイ」を含む地名は、北海道旭川市に神居町××および神居×条と斜里郡清里町神威のみで、北海道以外には一件の「カムイ」を含む地名はない。

 

「モエ」

「モカ」文字列以外、「モエ」地名も中期縄文語因子において高い因子負荷量を示す。下に「モエ」を含む全てのZIPを示す。表を見ただけで「モエ」地名が東日本に多いことがわかる。そして「モエ」地名を構成する具体的な地名は「モカ」地名の「下川」の場合と同じように、「江」の前に「下」が付いた「下江」が最も多く、次に「ともえ(友江、巴)」が多い。また「鴨江」という地名も静岡県に存在する。「かみ」「しも」が縄文的文字列であることを反映すると同時に、その後に続く「江」も縄文時代より存在した言葉であるように見える。

また、主として、北海道に、現代の我々には、木の芽が「萌える」の意味と受け取ってしまう「萌(もえ)」や「もえぎ」の地名が少なからず認める。

パートCの縄文遺跡分布と反比例する文字列で「リエ」を取り上げ、該当する具体的地名として「堀江」と「入江」が多量に含まれるので、<「リエ」地名の負の相関は西日本の「江」地名の出現に負うところが大きい>というタイトルを付したが、これは撤回する必要がある。その本文で検討したように「堀江」「入江」の分布状況と中期縄文遺跡分布は、方向こそ「負」であるが、意味のある相関値しか算出されていず、「リエ」地名の縄文遺跡分布との「負」相関は西日本の、極めて限られた都府県に出現する「餘江(あまりえ)」「東江(あがりえ)」「橋本尻江」などの「江」地名と「香里園」「千里園」などの雑多な「リエ」を含む地名の総合的な貢献に帰すると思われる。また同じところで「江」を含み「え」と読む地名の分布と遺跡分布の相関も検討し、弱いが有意な負の相関値を見出しているが、これも同じところで指摘したように、縄文分布県ないしは東日本には、海のない都道府県が西日本に比べて多いことを反映したに過ぎないだけかとも思われる。更に中期縄文時代以降の西日本への進出は、主として船に頼ったため、沿岸部に偏って縄文地名が残された結果によるものとも考えられる。

 

全国の「モエ」地名

「しもえ」

 

 

 

 

 

994402

シヤリ*キヨサト

シモエトヒ

北海道

斜里郡清里町

下江鳶

240073

キタカミ

シモエツリコ

岩手県

北上市

下江釣子

9660042

キタカタ

シモエ

福島県

喜多方市

下江

9750044

ハラマチ

シモエネイ

福島県

原町市

下江井

3110126

ナカ*ナカ

シモエト

茨城県

那珂郡那珂町

下江戸

3080851

シモタテ

シモエツレ

茨城県

下館市

下江連

3700333

ニツタ*ニツタ

シモエタ

群馬県

新田郡新田町

下江田

3700703

オウラ*メイワ

シモエクロ

群馬県

邑楽郡明和町

下江黒

2430806

アツキ

シモエチ

神奈川県

厚木市

下依知

9592809

キタカンハラ*クロカワ

シモエハタ

新潟県

北蒲原郡黒川村

下江端

4300825

ハママツ

シモエ

静岡県

浜松市

下江町

4210218

シタ*オオイカワ

シモエトメ

静岡県

志太郡大井川町

下江留

4840965

イヌヤマ

シモエノキシマ

愛知県

犬山市

下榎島

5090203

カニ

シモエト

岐阜県

可児市

下恵土

9188036

フクイ

シンシモエモリ

福井県

福井市

新下江守町

9188037

フクイ

シモエモリ

福井県

福井市

下江守町

9188173

フクイ

シモエシリ

福井県

福井市

下江尻町

5291174

イヌカミ*トヨサト

シモエタ

滋賀県

犬上郡豊郷町

下枝

6894526

ヒノ*ヒノ

シモエノキ

鳥取県

日野郡日野町

下榎

8720481

ウサ*インナイ

シモエラ

大分県

宇佐郡院内町

下恵良

8620943

クマモト

エスマチシモエツ

熊本県

熊本市

画図町下江津

「しもえび」

 

 

 

 

 

9421425

ヒカシクヒキ*マツノヤマ

シモエヒイケ

新潟県

東頸城郡松之山町

下鰕池

5121203

ヨツカイチ

シモエヒ

三重県

四日市市

下海老町

「ともえ」

 

 

 

 

 

683158

ソラチ*クリサワ

マンシトモエ

北海道

空知郡栗沢町

万字巴町

992373

アハシリ*メマンヘツ

トモエサワ

北海道

網走郡女満別町

巴沢

9971123

ツルオカ

トモエ

山形県

鶴岡市

友江町

9971122

ツルオカ

トモエ

山形県

鶴岡市

友江

3260805

アシカカ

トモエ

栃木県

足利市

巴町

3760021

キリユウ

トモエ

群馬県

桐生市

巴町

2530056

チカサキ

トモエ

神奈川県

茅ヶ崎市

共恵

9260021

ナナオ

トモエ

石川県

七尾市

巴町

9120016

オオノ

トモエ

福井県

大野市

友江

5030955

オオカキ

トモエ

岐阜県

大垣市

友江

4200843

シスオカ

トモエ

静岡県

静岡市

巴町

4240829

シスオカ

シミストモエ

静岡県

静岡市

清水巴町

4210126

シスオカ

モチムネトモエ

静岡県

静岡市

用宗巴町

4442224

トヨタ

トモエ

愛知県

豊田市

巴町

6730443

ミキ

ヘツシヨチヨウトモエ

兵庫県

三木市

別所町巴

6048312

キヨウトシナカキヨウ

カミトモエ

京都府

京都市中京区

上巴町

6040863

キヨウトシナカキヨウ

トモエ

京都府

京都市中京区

巴町

8710928

チクシヨウ*タイヘイ

ニシトモエタ

福岡県

築上郡大平村

西友枝

「かもえ」

 

 

 

 

 

450303

フルウ*カモエナイ

サンナイ

北海道

古宇郡神恵内村

珊内村

450301

フルウ*カモエナイ

カモエナイ

北海道

古宇郡神恵内村

神恵内村

450302

フルウ*カモエナイ

アカイシ

北海道

古宇郡神恵内村

赤石村

4328067

ハママツ

ニシカモエ

静岡県

浜松市

西鴨江町

4328023

ハママツ

カモエ

静岡県

浜松市

鴨江

4328024

ハママツ

カモエ

静岡県

浜松市

鴨江町

「こもえ」

 

 

 

 

 

6770021

ニシワキ

コモエ

兵庫県

西脇市

蒲江

「もえ」

 

 

 

 

 

500066

ムロラン

ホロモエ

北海道

室蘭市

幌萌町

861752

メナシ*ラウス

ホロモエチヨウ(ソノタ)

北海道

目梨郡羅臼町

幌萌町(その他)

861844

メナシ*ラウス

ホロモエチヨウ(40-1623ハンチ)

北海道

目梨郡羅臼町

幌萌町(40−1、623番地)

670058

エヘツ

モエキノチユウオウ

北海道

江別市

萌えぎ野中央

670057

エヘツ

モエキノヒカシ

北海道

江別市

萌えぎ野東

670059

エヘツ

モエキノニシ

北海道

江別市

萌えぎ野西

591274

トマコマイ

モエキ

北海道

苫小牧市

もえぎ町

681101

イシカリ*シンシノツ

モエテ

北海道

石狩郡新篠津村

萌出

3001606

キタソウマ*トネ

モエキノタイ

茨城県

北相馬郡利根町

もえぎ野台

2270044

ヨコハマシアオハ

モエキノ

神奈川県

横浜市青葉区

もえぎ野

9500842

ニイカタ

モエキノ

新潟県

新潟市

もえぎ野

5150087

マツサカ

モエキ

三重県

松阪市

萌木町

 

 

 

 

 

 

「その他」

 

 

 

 

 

883225

カワカミ*テシカカ

モエリヘツ

北海道

川上郡弟子屈町

最栄利別

892773

ヒロオ*ヒロオ

モエケシ

北海道

広尾郡広尾町

モエケシ

270111

ミヤコ

オモエ

岩手県

宮古市

重茂

6038073

キヨウトシキタ

カミカモエホシカカキウチ

京都府

京都市北区

上賀茂烏帽子ケ垣内町

7090613

オカヤマ

モモエツキ

岡山県

岡山市

百枝月

8797152

オオノ*ミエ

モモエタ

大分県

大野郡三重町

百枝

 

むしろ、「モエ」分布を見ると「江」は、縄文時代より用いられていた言葉である可能性がある。

「川」の場合と同じように「江」の前に「下(しも)」ないしは「上(かみ)」のついた「下江(しもえ)」「上江(かみえ)」を含む地名をリストアップしたのが下の表である。見てわかるように、西日本では、「上江」も「下江」の出現率はゼロに近い。縄文色の強いと思われる「かみ」{しも」が「江」とセットで使われているので、「江」もまた中期縄文時代以前からあった言葉のように思われる。

 

「かみえ」と読む「上江」地名

 

 

 

 

 

0670064

エヘツ

カミエヘツ

北海道

江別市

上江別

0670061

エヘツ

カミエヘツヒカシ

北海道

江別市

上江別東町

0670063

エヘツ

カミエヘツニシ

北海道

江別市

上江別西町

0670062

エヘツ

カミエヘツミナミ

北海道

江別市

上江別南町

0240071

キタカミ

カミエツリコ

岩手県

北上市

上江釣子

9660043

キタカタ

カミエ

福島県

喜多方市

上江

3214536

ハカ*ニノミヤ

カミエツラ

栃木県

芳賀郡二宮町

上江連

3700342

ニツタ*ニツタ

カミエタ

群馬県

新田郡新田町

上江田

3700702

オウラ*メイワ

カミエクロ

群馬県

邑楽郡明和町

上江黒

3600234

オオサト*メヌマ

カミエフクロ

埼玉県

大里郡妻沼町

上江袋

9592081

キタカンハラ*スイハラ

カミエハタ

新潟県

北蒲原郡水原町

上江端

9188174

フクイ

カミエシリ

福井県

福井市

上江尻町

「しもえ」と読む「下江」地名

 

 

 

 

 

6038147

キヨウトシキタ

カミコリヨウカミエ

京都府

京都市北区

上御霊上江町

0240073

キタカミ

シモエツリコ

岩手県

北上市

下江釣子

9750044

ハラマチ

シモエネイ

福島県

原町市

下江井

9660042

キタカタ

シモエ

福島県

喜多方市

下江

3080851

シモタテ

シモエツレ

茨城県

下館市

下江連

3110126

ナカ*ナカ

シモエト

茨城県

那珂郡那珂町

下江戸

3700333

ニツタ*ニツタ

シモエタ

群馬県

新田郡新田町

下江田

3700703

オウラ*メイワ

シモエクロ

群馬県

邑楽郡明和町

下江黒

9592809

キタカンハラ*クロカワ

シモエハタ

新潟県

北蒲原郡黒川村

下江端

9188173

フクイ

シモエシリ

福井県

福井市

下江尻町

9188037

フクイ

シモエモリ

福井県

福井市

下江守町

9188036

フクイ

シンシモエモリ

福井県

福井市

新下江守町

4300825

ハママツ

シモエ

静岡県

浜松市

下江町

4210218

シタ*オオイカワ

シモエトメ

静岡県

志太郡大井川町

下江留

8620943

クマモト

エスマチシモエツ

熊本県

熊本市

画図町下江津

 

「巴」は「友江」

江は海のみならず湖の入り組んだところを指すと同時に川そのものを指す言葉である。このようなところには古くから集落ができたのであろう。「入江」地名の解釈の中で「江」は「家」につながるのではないかと怪しい解釈を述べた。上記の「江」に示される地名は地図で確認すると殆どは海岸線近くに在ることが判る(海進や堆積についての考慮を含めて)。

「ともえ」地名を構成する「巴」を含む地名の多くは、海岸にはないが、殆ど全て川沿いの、しかも他の川との合流点付近にある。「巴」を辞書で引くと、四方八方から水が流入して渦巻いている様子と説明している。地名の「巴」は漢字の意味と少なからず合致する。河川が合流するか否かは別にして、川沿いの広い湿地帯の端のやや高いところにあった集落が「ともえ」であったのではないか。「江」が海の「入り江」の意味という解釈があり、このイメージを避けるため「巴」が使用されたのではないか。元来、「友江」も「巴」も意味は同じでなかったか。

さて「とも・え」の「とも」とは何であろうか。「とさ」の「と」も、「やまと」の「と」も、「さと」の「と」も「やど」の「と」も「入り口」ではないかと既に考えた。「と」は「door」である。そして「も」は「しも」のところで述べた「面」(も)」である。「とも」とは、一定の範囲(も)、家々の入り口が立ち並ぶ集落ではなかったか。集落の人々は「友」であり「共」「伴」「朋」である。「鞆(とも)」という意味のわかりがたい漢字を含んだ地名もかなりある。西日本に多く、漢字が使われる時代には「とも」の原意は忘れられていたのだろう。「鞆」は弓を引くときに左手首につけた丸い皮製の道具とgooの辞書に載っていた。弓術の友であろうか。

 

「萌え」

「モエ」を含む地名の中に「萌」、または漢字で書けば「萌」と書くのが適当と思われる、ひらがなの「もえ」を含むZIP地名が、北海道を中心に全部で12ZIP認められる。三重県を除いて「モエ」地名はすべて東日本で、「萌」地名は中期縄文遺跡分布の相関に寄与している。

しかし、北海道室蘭市幌萌町、同じく北海道目梨郡羅臼町の幌萌町以外は、地図で見ると、道路区画が整然としており、新しく住宅地が開発されたところと思われ、新しく作られた地名のように見える。

とはいえ、まったく無闇に新興地名がつけられたかというとそうでもない可能性がある。読み方は問わないとして検索すると、全国に85件の「萌」を含むZIPがある。北海道以外は、青森県に上北郡東北町萌出道ノ上(下)、前述の三重県、大分県に各1件あるのみである。

このうち、78件は「萌」を「もい」と読む、「留萌市」と郡部の「留萌郡」という広域域地名に含まれるZIPである。なお、「モエ」地名リストに示した「幌萌町」「もえぎ野」などは「留萌」内には無い。

北海道以外に見られない「留萌」という広域地名があり、その他にも「萌」地名が沢山あるので、「萌」または、漢字で表すとすると「萌」になると思われる「もえ」を含む地名は、北海道特有の地名のように見える。

「留萌」はアイヌ語地名として解釈されている。るもいねっとの中で<アイヌ語の「ルル・モ・オッ・ぺツ」(潮が静かに流れ来る川)または「ルル・パ・モイ」(海の上手の湾)から。一般的には「ルル・モ・オッ・ぺツ(ルルモッペ)」が定説。古くは「つるをつへ」「留萠(るるもえ)」と呼ばれていた>と載っている。他を調べても、多分これが定説だろうと思う。「ル」は「流域」「溶ける」、「ルル」は汁、流域、海の潮などとアイヌ語辞典に載っており、「も」は「静かな」、で「オッ」は辞書で引いても判らなかった(アイヌ語の知識が乏しいので引き方がわからなかったことや、どこを見てよいか判らなかったためと思うが)。あるいは「モイ」は「水の渦巻き」と出ていたが、これが「湾」を意味するのかわからない。前半分の「るるも」が「るもい」の「るも」に対応するのはわかるが、何故「オツベツ」や「パ・モイ」が「い」になるのか納得できない。

ただし「日本地名ルーツ辞典(高嶋弘志)」で引くと、<明治2松浦武四郎は、郡名選定で「留萌(るもえ)」「留持(るもつ)」の二案を挙げて「留萌」の表記が決定した>となっているので、元は「るもい」は「るもえ」といっていたようである。東北地方の人々が「え」を「い」としか発音できないので「るもい」になったとしている。

とすると、「留萌」も「もえ」を含む地名となる。

「留萌市」は「留萌川」の河口の入り江にあり、室蘭市の幌萌町や、目梨郡羅臼町幌萌町は、深い入り江といえないが堆積が進む前は正に「江」と呼ばれるにふさわしい場所に在る。苫小牧市「もえぎ町」も海岸のごく近くにある。

江別市の「萌えぎ野」は石狩湾から石狩川に沿って30kmほど内陸に入ったところにあり、地図で見たところ新興地名のように思える。しかし、石狩川、夕張川、千歳川の合流点にあり、石狩川河畔にある。本州の「巴」と名づけられる地形に良く似た環境である。以上のように、北海道の「萌」地名が、ことごとく「下江」などの「江」の付く土地と類似している。

アイヌ語の「る」は水に関係あり、日本語も「汁」や「うる」地名のところでのべたように「漆」「潤う」など、「る」は何か水分と関係有りそうであり、「留萌」は日本語で解釈できるかもしれない。

 

「百(もも)」は「面々(もも)」

「モエ」地名リストを見てみると岡山県に「百枝月(ももえづき)」、大分県に「百枝(ももえだ)」がある。「も(面)」は「点が集まった広い領域」であるとすると「面(も)」がさらに「面(も)」のように集まった領域が「面々(もも)」ということになり、「百」を「もも」と言うのは理にかなっている。

 

「モヨ」

「下(しも)」に特定の固有名詞がきて、縄文遺跡分布と相関関係を示す地名には、他に「下米沢」や「下吉田」といった「モヨ」を含む地名がある。

下に、「しも」続く部分を元に整理した「モヨ」地名リストを示す。

全国の下+「ヨ×」地名

下米×

 

 

 

 

 

200003

モリオカ

シモヨナイ

岩手県

盛岡市

下米内

9696185

キタアイツ*キタアイツ

シモヨネツカ

福島県

北会津郡北会津村

下米塚

9420153

ナカクヒキ*クヒキ

シモヨネオカシンテン

新潟県

中頸城郡頸城村

下米岡新田

9440144

ナカクヒキ*イタクラ

シモヨネサワ

新潟県

中頸城郡板倉町

下米沢

5050015

ミノカモ

シモヨネタチヨウイマ

岐阜県

美濃加茂市

下米田町今

5050017

ミノカモ

シモヨネタチヨウコヤマ

岐阜県

美濃加茂市

下米田町小山

5050019

ミノカモ

シモヨネタチヨウタメオカ

岐阜県

美濃加茂市

下米田町為岡

5050018

ミノカモ

シモヨネタチヨウニシワキ

岐阜県

美濃加茂市

下米田町西脇

5050013

ミノカモ

シモヨネタチヨウノフトモ

岐阜県

美濃加茂市

下米田町信友

5050014

ミノカモ

シモヨネタチヨウノリミツ

岐阜県

美濃加茂市

下米田町則光

5050011

ミノカモ

シモヨネタチヨウヒカシトチイ

岐阜県

美濃加茂市

下米田町東栃井

5050012

ミノカモ

シモヨネタチヨウヤマモト

岐阜県

美濃加茂市

下米田町山本

6820601

クラヨシ

シモヨナツミ

鳥取県

倉吉市

下米積

下横×

 

 

 

 

 

3050075

ツクハ

シモヨコハ

茨城県

つくば市

下横場

3212113

ウツノミヤ

シモヨコクラ

栃木県

宇都宮市

下横倉町

3210124

ウツノミヤ

シモヨコタ

栃木県

宇都宮市

下横田町

3220054

カヌマ

シモヨコ

栃木県

鹿沼市

下横町

3700837

タカサキ

シモヨコ

群馬県

高崎市

下横町

3550313

ヒキ*オカワ

シモヨコタ

埼玉県

比企郡小川町

下横田

2891314

サンフ*ナルトウ

シモヨコシ

千葉県

山武郡成東町

下横地

9520025

サト

シモヨコヤマ

新潟県

佐渡市

下横山

4160943

フシ

シモヨコワリ

静岡県

富士市

下横割

4440522

ハス*キラ

シモヨコスカ

愛知県

幡豆郡吉良町

下横須賀

6028373

キヨウトシカミキヨウ

シモヨコ

京都府

京都市上京区

下横町

6120007

キヨウトシフシミ

フカクサシモヨコナワ

京都府

京都市伏見区

深草下横縄町

6930046

イスモ

シモヨコ

島根県

出雲市

下横町

6991822

ニタ*ヨコタ

シモヨコタ

島根県

仁多郡横田町

下横田

7080807

ツヤマ

シモヨコノ

岡山県

津山市

下横野

8341104

ヤメ*シヨウヨウ

シモヨコヤマ

福岡県

八女郡上陽町

下横山

8614621

カミマシキ*コウサ

シモヨコタ

熊本県

上益城郡甲佐町

下横田

下吉×

 

 

 

 

 

392312

カミキタ*ロクノヘ

シモヨシタ

青森県

上北郡六戸町

下吉田

130107

ヒラカ*ヒラカ

シモヨシタ

秋田県

平鹿郡平鹿町

下吉田

130403

ヒラカ*タイユウ

シモヨシタ

秋田県

平鹿郡大雄村

下吉田

9660405

ヤマ*キタシオハラ

シモヨシ

福島県

耶麻郡北塩原村

下吉

3230106

カワチ*ミナミカワチ

シモヨシタ

栃木県

河内郡南河内町

下吉田

3691503

チチフ*ヨシタ

シモヨシタ

埼玉県

秩父郡吉田町

下吉田

3400126

サツテ

シモヨシハ

埼玉県

幸手市

下吉羽

3113406

ヒカシイハラキ*オカワ

シモヨシカケ

茨城県

東茨城郡小川町

下吉影

4030004

フシヨシタ

シモヨシタ

山梨県

富士吉田市

下吉田

9420231

シヨウエツ

シモヨシノ

新潟県

上越市

下吉野

9420146

ナカクヒキ*クヒキ

シモヨシシンテン

新潟県

中頸城郡頸城村

下吉新田

9392611

ネイ*フチユウ

シモヨシカワ

富山県

婦負郡婦中町

下吉川

9391543

ヒカシトナミ*フクノ

シモヨシエ

富山県

東礪波郡福野町

下吉江

9202342

イシカワ*トリコエ

シモヨシタニ

石川県

石川郡鳥越村

下吉谷

9102207

アスワ*ミヤマ

シモヨシヤマ

福井県

足羽郡美山町

下吉山

9191528

オニユウ*カミナカ

シモヨシタ

福井県

遠敷郡上中町

下吉田

5090311

カモ*カワヘ

シモヨシタ

岐阜県

加茂郡川辺町

下吉田

4411621

ミナミシタラ*ホウライ

シモヨシタ

愛知県

南設楽郡鳳来町

下吉田

6010744

キタクワタ*ミヤマ

シモヨシタ

京都府

北桑田郡美山町

下吉田

6920044

ヤスキ

シモヨシタ

島根県

安来市

下吉田町

7650021

センツウシ

シモヨシタ

香川県

善通寺市

下吉田町

8000203

キタキユウシユウシコクラミナミ

シモヨシタ

福岡県

北九州市小倉南区

下吉田

8610526

ヤマカ

シモヨシタ

熊本県

山鹿市

下吉田

その他の「下よ××」

 

 

 

 

 

 

892637

ヒロオ*ヒロオ

モヨリ

北海道

広尾郡広尾町

茂寄

892638

ヒロオ*ヒロオ

モヨリミナミ

北海道

広尾郡広尾町

茂寄南

393147

カミキタ*ノヘシ

シモヨタカワ

青森県

上北郡野辺地町

下与田川

9811223

ナトリ

シモヨウテン

宮城県

名取市

下余田

9880361

モトヨシ*モトヨシ

シモヨウカイ

宮城県

本吉郡本吉町

下要害

192342

センホク*キヨウワ

シモヨトカワ

秋田県

仙北郡協和町

下淀川

9701151

イワキ

ヨシママチシモヨシマ

福島県

いわき市

好間町下好間

9638207

イシカワ*ヒラタ

シモヨモキタ

福島県

石川郡平田村

下蓬田

1970831

アキルノ

シモヨツキ

東京都

あきる野市

下代継

9430135

シヨウエツ

シモヨツヤ

新潟県

上越市

下四ツ屋

9200946

カナサワ

ラ、ワ、アナカケ、アナフチカケ、ネ、コウ、ヨシシマ、シモヨシシマカ

石川県

金沢市

ラ、ワ、穴欠、穴淵欠、子、庚、葭島、下葭島欠)

9120095

オオノ

シモヨウロ

福井県

大野市

下丁

5290521

イカ*ヨコ

シモヨコ

滋賀県

伊香郡余呉町

下余呉

6711261

ヒメシ

ヨヘクシモヨヘ

兵庫県

姫路市

余部区下余部

6620956

ニシノミヤ

シモヨシハラ

兵庫県

西宮市

下葭原町

6820031

クラヨシ

シモヨト

鳥取県

倉吉市

下余戸

9010411

シマシリ*コチンタ

トモヨセ

沖縄県

島尻郡東風平町

友寄

 

表を見てわかるように70ZIPのうち75%が「下」の後に「米」または「横」または「吉」の付く地名である。そこで「横浜」や「米沢」や「吉田」のような「米・横・吉」を含み、かつ「よこ・よね・よし」と読む地名を全国ZIPリストから抽出しなおして、都道府県別中期縄文遺跡分布との相関関係を検討した。この中で「米沢」や「米田」などの「米」を「よね」と読む漢字の含まれる地名のみが中期縄文遺跡分布と有意な相関値をしめした。「横」地名は無相関、「吉」を含む地名はむしろ「負」の相関値が算出されている(有意なものではないが)。

冒頭の因子分析結果を示す図表にも「ヨネ」を含む地名の第一因子負荷量が高いことが示されており、「モヨ」地名の縄文遺跡分布の相関は東日本に「米(よね)」がつく地名が多いことと、その他の「下(しも)よ××」地名の偏在に負うものといえよう。「よ××」の部分は「寄・四・余・与」等で表記される地名が含まれる。これらの地名の多くは、漢字の意味するところが理解できないどころか読み方すら判らない。

なお、「モヨ」リストでは、「米田」や「吉田」といった「田」を含む地名が目立つが、「田」地名の都道府県別出現率は、稲作が西日本から広がったと常識的には考えられているにもかかわらず、縄文遺跡分布と正の相関を示す事がパートCで指摘されている。

 

全国「米×」「横×」「吉×」地名都道府県別出現率と中期縄文遺跡分布の順位相関

 

遺跡密度

遺跡数

「米×」地名出現率

0.3422p=0.01855

0.4485

(p=0.00157)

「横×」地名出現率

0.1023

(p=0.49382)

0.0679

(p=0.65019)

「吉×」地名

-0.1913

(p=0.19771)

-0.2599

(p=0.07769)

 

「米(よね)」の怪しい語源解釈

「米」と書いて「よね」と読む地名は中期縄文時代遺跡分布と相関する。274ZIPからなる「よね」とよむ「米」を含むリストの中で、山形県米沢市は115ZIPを含む広域地名である。その他、福島県耶麻郡塩川町米沢町、茨城県水戸市米沢町のほか、新潟県に2件、群馬、千葉、新潟、富山、長野に各1件あり、これに対して、西日本では岡山県と山口県、広島県に各1件見られるのみである。リストの中で広域地名は米沢市以外、もう一箇所、宮城県に登米郡米山町があり、29ZIPを含んでいる。米山町はフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』1889年、西野村と中津山村によって「米山村」が誕生したとあるが、「米山」の由来は不明である

「下」のつかない「よね(米)」リストで最も多いのは「米田」であり、次に目立つのは「米山」である。その他、米岡、米島など雑多な「よね(米)」地名がある。3100847茨城県水戸市「米(よね)」という「米」のみの地名も在る。「米子」と書いて「よねこ」という地名も在る(9570225新潟県北蒲原郡紫雲寺町)。

漢字で「米」が充てられており、米沢市や登米郡米山町を地図を見ると、豊かに水が流れる山に囲まれた平野部があり、そこには田んぼの印が広く記されている。他の「よね」地名も似たようなところに在ることが多く、しかも「米田」が多数含まれるので、真っ先に、漢字があらわすとおりの「こめ」に因んだ地名と考えるべきかもしれない。

しかし、「よね」地名は中期縄文遺跡分布と相関する地名である。中期縄文時代に、米が、しかも東日本に、地名として残るほどに作られていたであろうか。また、国土地理院の検索ページに「米山」を入れると、米にはまったく関係のない、正に山の名前としての「よねやま」が出てくる。真っ先に「米(こめ)」説は否定されなければならない。

 

「ヨツ」と「ヨモ」

それでは「よね」とは何であろうか。まず「ね」は今まで何回も出てきた「根」であると思う。「根」は植物の根であり、海洋航海に優れた「ね」の人々であり、かつ、その人々の定住地も「根」と呼ばれたのであろう

問題は「よ」の部分である。中期縄文遺跡分布と0.4以上の相関を示す「よ」で始まる文字列が他に2つある。「ヨツ」と「ヨモ」である。「ヨツ」は「四日市(ヨツカイチ)」という明らかに縄文時代と無関係な地名が全国的に存在し、出現量も多いが、これは「ヨツ」地名出現率と遺跡相関については何の貢献もしていない。

これを除くと、「よつや」が多く、「よついし」、「よつつじ」もある。ユニークな千葉県の「四街道市」は広域地名である。これらは全て、数字の「4」の意味と解釈でき、漢字の「四」が使われて表記されている。

「ヨモ」を含む具体的な地名はそれほど多くは無く(35ZIP)、殆どが「よもぎざわ」「よもぎだ」など漢字の「蓬」で表される地名である。

「蓬」以外は、四方木が2箇所、四方寄、四方山が1箇所ある。

数詞「四」の「よ」と蓬の「よ」には共通点がある。

「四方山話」という言葉が在る。「も」は「かも」「しも」のところで記した「面(も)」であるとすると、「よも」は「或る物を東西南北の四方から取囲む垂直面」となる。「或るもの」を取囲む面は「或るものの」「横(よこ)」にある。大昔の人々は周囲を4つの面で捉えていたのではないか。前後左右面である。「よ」の意味は「周辺」「周囲」ということになる。春先には「蓬」の若葉は見る見るうちに周辺に広がり、周囲を埋め尽くす。蓬は野菜であり、薬効を認め、信じていた重要な植物であったであろう。

地名を漢字に置き換える時点で、原っぱが樹木に覆われてしまっていた場所の「よもぎ」と呼ばれていた所では「四方木」という漢字が充てられたのかも知れない。

「ひ、ふ、み、よ・・・・」という日本語数詞の「よ」は、縄文人の、このような周辺の観念から生じた言葉ではないか。なお、地名に含まれる「4」を「よん」という言い方はやや東日本に多いようである(「ヨン」地名出現率は遺跡数と0.3948、遺跡密度とは0.2805)。「よんちょう(四丁)」「よんじょう(四条)」などである。京都では「しじょう」である。また「いち、にい、さん」と数えておきながら、なぜ「し」といわずに「よん」というのであろうか。日本語数詞「四」に対するこだわりが感じられる。

「よね」は、すなわち「周辺の根」すなわち「横根」「隣村」あたりの意味であろうか。「よねざわ」には、更に「わ」の人々が集落を意味する「さわ」が末尾についているので「<根>の人々に近い人々の住む沢」という意味かも知れない。多数の河川が流れ込み、湿地帯であったところは、後に水田になり、稲が作られ、今では稲作地帯になっている。「よね」は「米」の漢字で表されるようになる。湿地帯の脇のやや高いとこに居をかまえ、入植した「<根>に近い人々」の賜である。

 

「よ」の単語家族

「よ」が「水平方面の中でも近い周辺」であるとすれば「他所(よそ)」は「周辺部の背(そ)」と解釈できる。「寄る」「呼ぶ」は周辺部からの移動の意味を含んでいる。「よこ」の「こ」は、パートBで、多数の中期縄文遺跡分布と相関する「こ」の付いた地名の解釈の中で触れたように「密接した」あるいは「含まれる」という意味の接頭語とすると、「よこ」は位置関係を更に明確化した言葉として考えられる。すなわち「こはま」という地名は「浜を含むところ」であるが、「よこはま」は「横に浜があるところ」で意味はそれほど変わらない。「よこ」に対して「たて」(多くは<館>または<立>で表される)という言葉は東日本に偏在しており、「たて」「よこ」の言葉は既に縄文中期より存在していたのではないかとも指摘した。付言すれば、場所を表す代名詞の「ここ」や「あそこ」「そこ」の「こ」はこの「こ」から産まれた言葉として理解できる。

「避(よ)ける」や「除(よ)ける」も、イノシシをかわした体の横を通りすぎたり、獲った獲物の中から横に選(よ)り分けているイメージを想像してしまう。「よ」と同根の言葉ではないのか。「夜(よ)」「世(よ)」「代(よ)」も一字である。「夜」は昼の「横」にあり、この世(代)は我々の周辺にあるどころか包み込んでしまっている。「詠む」「読む」は声を出して己が心を横に伝えることである。連想が過ぎるかもしれない。

 

「モオ」

「モオ」を含む地名の都道府県別出現率の第一因子負荷量は0.4406であり、前項「モヨ」より高い値が示されている。「モオ」地名のリストを見ると他の「モ×」地名と同じように、「下」+「お」で始まる地名が殆どである。具体的には「下大田」など「下」の後ろに「大」または「太」がくる地名、「小(お)」が来る地名、「岡」または「丘」がくる地名が極めて多い。

但し栃木県「真岡市」(もおか)は例外で、「下」がつかないだけでなく、「モオ」地名のうち唯一の広域地名である。63ZIPを含む。「も」が先述のように「面(も)」の意味とすると、岡が一面に広がった市でああろうか。

そこで、「下」のつかない「おか、おお、お」と読む「岡または丘、大、小、尾」という漢字一文字を含むZIP地名を別々に抽出して都道府県別出現率を計算した。そしてカタカナ文字列の場合と同じように遺跡分布との相関を求めた。下に具体的な「モオ」地名を種類別にしめすと同時に相関表を示す。

 

「も」+「大」または「太」

 

 

 

 

 

0391559

サンノヘ*コノヘ

シモオオ

青森県

三戸郡五戸町

下大町

0200051

モリオカ

シモオオタ

岩手県

盛岡市

下太田

0210806

イチノセキ

シモオオツキコウシ

岩手県

一関市

下大槻街

0294387

イサワ*コロモカワ

シモオオモリ

岩手県

胆沢郡衣川村

下大森

9872368

クリハラ*イチハサマ

シモオオト

宮城県

栗原郡一迫町

下大土

9750041

ハラマチ

シモオオタ

福島県

原町市

下太田

9634112

タムラ*オオコエ

シモオオコエ

福島県

田村郡大越町

下大越

9700102

イワキ

タイラシモオオコエ

福島県

いわき市

平下大越

3111131

ミト

シモオオノ

茨城県

水戸市

下大野町

3130002

ヒタチオオタ

シモオオカト

茨城県

常陸太田市

下大門町

3004222

ツクハ

シモオオシマ

茨城県

つくば市

下大島

3192107

ナカ*ウリツラ

シモオオカ

茨城県

那珂郡瓜連町

下大賀

3111402

カシマ*アサヒ

シモオオタ

茨城県

鹿島郡旭村

下太田

3001424

イナシキ*シントネ

シモオオタ

茨城県

稲敷郡新利根町

下太田

3000131

ニイハリ*カスミカウラ

シモオオツツミ

茨城県

新治郡霞ケ浦町

下大堤

3060204

サシマ*ソウワ

シモオオノ

茨城県

猿島郡総和町

下大野

3220103

カヌマ

シモオオクホ

栃木県

鹿沼市

下大久保

3292124

ヤイタ

シモオオタ

栃木県

矢板市

下太田

3214543

ハカ*ニノミヤ

シモオオソ

栃木県

芳賀郡二宮町

下大曽

3214211

ハカ*マシコ

シモオオハ

栃木県

芳賀郡益子町

下大羽

3292815

ナス*シオハラ

シモオオヌキ

栃木県

那須郡塩原町

下大貫

3792152

マエハシ

シモオオシマ

群馬県

前橋市

下大島町

3792102

マエハシ

シモオオヤ

群馬県

前橋市

下大屋町

3700886

タカサキ

シモオオシマ

群馬県

高崎市

下大島町

3700034

タカサキ

シモオオルイ

群馬県

高崎市

下大類町

3750052

フシオカ

シモオオツカ

群馬県

藤岡市

下大塚

3380825

サイタマシサクラ

シモオオクホ

埼玉県

さいたま市桜区

下大久保

3440036

カスカヘ

シモオオマシシンテン

埼玉県

春日部市

下大増新田

3501221

ヒタカ

シモオオヤサワ

埼玉県

日高市

下大谷沢

3500144

ヒキ*カワシマ

シモオオヤシキ

埼玉県

比企郡川島町

下大屋敷

3490203

ミナミサイタマ*シラオカ

シモオオサキ

埼玉県

南埼玉郡白岡町

下大崎

2670052

チハシミトリ

シモオオワタ

千葉県

千葉市緑区

下大和田町

2994123

モハラ

シモオオタ

千葉県

茂原市

下太田

2891517

サンフ*マツオ

シモオオクラ

千葉県

山武郡松尾町

下大蔵

2980202

イスミ*オオタキ

シモオオタキ

千葉県

夷隅郡大多喜町

下大多喜

2500208

オタワラ

シモオオイ

神奈川県

小田原市

下大井

2570004

ハタノ

シモオオツキ

神奈川県

秦野市

下大槻

9518052

ニイカタ

シモオオカワマエトオリ

新潟県

新潟市

下大川前通

9450103

カシワサキ

シモオオシンテン

新潟県

柏崎市

下大新田

9591344

カモ

シモオオタニ

新潟県

加茂市

下大谷

9580043

ムラカミ

イワフネシモオオ

新潟県

村上市

岩船下大町

9591245

ツハメ

シモオオタ

新潟県

燕市

下太田

9503308

トヨサカ

シモオオヤチ

新潟県

豊栄市

下大谷内

9591743

ナカカンハラ*ムラマツ

シモオオカンハラ

新潟県

中蒲原郡村松町

下大蒲原

9550168

ミナミカンハラ*シタタ

シモオオウラ

新潟県

南蒲原郡下田村

下大浦

9496613

ミナミウオヌマ*ムイカ

シモオオツキ

新潟県

南魚沼郡六日町

下大月

9593943

イワフネ*サンホク

シモオオクラ

新潟県

岩船郡山北町

下大蔵

9593933

イワフネ*サンホク

シモオオトリ

新潟県

岩船郡山北町

下大鳥

9360811

ナメリカワ

シモオオウラ

富山県

滑川市

下大浦

9392251

カミニイカワ*オオサワノ

シモオオクホ

富山県

上新川郡大沢野町

下大久保

9392251

カミニイカワ*オオサワノ

シモオオクホシン

富山県

上新川郡大沢野町

下大久保新町

9301335

カミニイカワ*オオヤマ

シモオオウラ

富山県

上新川郡大山町

下大浦

9150881

タケフ

シモオオタ

福井県

武生市

下太田町

9120215

オオノ*イスミ

シモオオノ

福井県

大野郡和泉村

下大納

4093605

ニシヤツシロ*イチカワタイモン

シモオオトリイ

山梨県

西八代郡市川大門町

下大鳥居

5008039

キフ

シモオオクワ

岐阜県

岐阜市

下大桑町

5008066

キフ

シモオオタ

岐阜県

岐阜市

下太田町

5030205

アンハチ*ワノウチ

シモオオクレ

岐阜県

安八郡輪之内町

下大榑

5030206

アンハチ*ワノウチ

シモオオクレシンテン

岐阜県

安八郡輪之内町

下大榑新田

5080304

エナ*ツケチ

シモオコセ

岐阜県

恵那郡付知町

下大起

5011512

モトス

ネオシモオオス

岐阜県

本巣市

根尾下大須

4380052

イワタ

シモオオノコウ

静岡県

磐田市

下大之郷

4968048

アマ*ハチカイ

シモオオマキ

愛知県

海部郡八開村

下大牧

5131123

ススカ

シモオオクホ

三重県

鈴鹿市

下大久保町

6038037

キヨウトシキタ

カミカモオオヤナキ

京都府

京都市北区

上賀茂大柳町

6038828

キヨウトシキタ

ニシカモオオクリ

京都府

京都市北区

西賀茂大栗町

6038813

キヨウトシキタ

ニシカモオオトクチ

京都府

京都市北区

西賀茂大道口町

6038844

キヨウトシキタ

ニシカモオオフケ

京都府

京都市北区

西賀茂大深町

6068314

キヨウトシサキヨウ

ヨシタシモオオシ

京都府

京都市左京区

吉田下大路町

6048025

キヨウトシナカキヨウ

シモオオサカ

京都府

京都市中京区

下大阪町

6200912

フクチヤマ

シモオオチ

京都府

福知山市

下大内

6220451

フナイ*ミスホ

シモオオクホ

京都府

船井郡瑞穂町

下大久保

6638004

ニシノミヤ

シモオオイチヒカシ

兵庫県

西宮市

下大市東町

6638005

ニシノミヤ

シモオオイチニシ

兵庫県

西宮市

下大市西町

6751336

オノ

シモオオヘ

兵庫県

小野市

下大部町

6711201

ヒメシ

カツハラクシモオオタ

兵庫県

姫路市

勝原区下太田

6820837

クラヨシ

シモオオエ

鳥取県

倉吉市

下大江

6892314

トウハク*トウハク

シモオオエ

鳥取県

東伯郡東伯町

下大江

7160212

カワカミ*カワカミ

シモオオタケ

岡山県

川上郡川上町

下大竹

7070066

アイタ*ミマサカ

シモオオタニ

岡山県

英田郡美作町

下大谷

7500312

トヨウラ*キクカワ

シモオオノ

山口県

豊浦郡菊川町

下大野

7740047

アナン

シモオオノ

徳島県

阿南市

下大野町

7981302

キタウワ*ヒロミ

シモオオノ

愛媛県

北宇和郡広見町

下大野

8160952

オオノシヨウ

シモオオリ

福岡県

大野城市

下大利

8090004

ナカマ

シモオオクマ

福岡県

中間市

下大隈

8160951

オオノシヨウ

シモオオリタンチ

福岡県

大野城市

下大利団地

8540096

イサハヤ

シモオオワタノ

長崎県

諫早市

下大渡野町

8530011

フクエ

シモオオツ

長崎県

福江市

下大津町

8695174

ヤツシロ

フタミシモオオノ

熊本県

八代市

二見下大野町

8990342

イスミ

シモオオカワウチ

鹿児島県

出水市

下大川内

「も」+「小」

 

 

 

 

 

9793115

イワキ

オカワマチシモオカワ

福島県

いわき市

小川町下小川

9620714

スカカワ

シモオヤマタ

福島県

須賀川市

下小山田

9600808

タテ*リヨウセン

シモオクニ

福島県

伊達郡霊山町

下小国

3192402

ナカ*オカワ

シモオセ

茨城県

那珂郡緒川村

下小瀬

3002433

ツクハ*ヤワラ

シモオメ

茨城県

筑波郡谷和原村

下小目

2870021

サワラ

シモオノ

千葉県

佐原市

下小野

2890338

カトリ*オミカワ

シモオカワ

千葉県

香取郡小見川町

下小川

2970138

チヨウセイ*チヨウナン

シモオノタ

千葉県

長生郡長南町

下小野田

3702623

カンラ*シモニタ

シモオサカ

群馬県

甘楽郡下仁田町

下小坂

3500812

カワコエ

シモオサカ

埼玉県

川越市

下小坂

3500102

ヒキ*カワシマ

シモオミノ

埼玉県

比企郡川島町

下小見野

3680101

チチフ*オカノ

シモオカノ

埼玉県

秩父郡小鹿野町

下小鹿野

1940202

マチタ

シモオヤマタ

東京都

町田市

下小山田町

9493232

ナカクヒキ*カキサキ

シモオノ

新潟県

中頸城郡柿崎町

下小野

9493406

ナカクヒキ*ヨシカワ

シモオサワ

新潟県

中頸城郡吉川町

下小沢

4040025

エンサン

シモオタワラ

山梨県

塩山市

下小田原

3840303

ミナミサク*ウスタ

シモオタキリ

長野県

南佐久郡臼田町

下小田切

4250057

ヤイツ

シモオタ

静岡県

焼津市

下小田

4250056

ヤイツ

シモオタナカ

静岡県

焼津市

下小田中町

4150323

カモ*ミナミイス

シモオノ

静岡県

賀茂郡南伊豆町

下小野

4850036

コマキ

シモオハリテンシン

愛知県

小牧市

下小針天神

4850051

コマキ

シモオハリナカシマ

愛知県

小牧市

下小針中島

4800144

ニワ*オオクチ

シモオクチ

愛知県

丹羽郡大口町

下小口

5180612

ナハリ

シモオハタ

三重県

名張市

下小波田

5201223

タカシマ*アトカワ

シモオカワ

滋賀県

高島郡安曇川町

下小川

6028075

キヨウトシカミキヨウ

シモオカワ

京都府

京都市上京区

下小川町

6200982

フクチヤマ

シモオタ

京都府

福知山市

下小田

6670005

ヤフ*ヨウカ

シモオタ

兵庫県

養父郡八鹿町

下小田

6920323

ノキ*ハクタ

シモオタケ

島根県

能義郡伯太町

下小竹

7391103

アキタカタ

コウタチヨウシモオハラ

広島県

安芸高田市

甲田町下小原

7530212

ヤマクチ

シモオサハ

山口県

山口市

下小鯖

6511352

コウヘシキタ

ハタチヨウシモオナタ

兵庫県

神戸市北区

八多町下小名田

6692133

ササヤマ

コンタチヨウシモオノハラ

兵庫県

篠山市

今田町下小野原

6693305

ヒカミ*カイハラ

シモオクラ

兵庫県

氷上郡柏原町

下小倉

7593204

アフ*タマカワ

シモオカワ

山口県

阿武郡田万川町

下小川

8490505

キシマ*コウホク

シモオタ

佐賀県

杵島郡江北町

下小田

7813722

トサ*オオカワ

シモオミナカワ

高知県

土佐郡大川村

下小南川

8931604

キモツキ*クシラ

シモオハル

鹿児島県

肝属郡串良町

下小原

8650018

タマナ

シモオタ

熊本県

玉名市

下小田

「も」+「岡」または「丘」

 

 

 

 

 

3080826

シモタテ

シモオカサキ

茨城県

下館市

下岡崎

3291104

カワチ*カワチ

シモオカモト

栃木県

河内郡河内町

下岡本

3294312

シモツカ*イワフネ

シモオカ

栃木県

下都賀郡岩舟町

下岡

3214356

モオカ

オオヌマ

栃木県

真岡市

大沼など63ZIP

3900313

マツモト

オカタシモオカタ

長野県

松本市

岡田下岡田

5060052

タカヤマ

シモオカモト

岐阜県

高山市

下岡本町

5010621

イヒ*イヒカワ

シモオカシマ

岐阜県

揖斐郡揖斐川町

下岡島

4380046

イワタ

シモオカタ

静岡県

磐田市

下岡田

5211102

ヒコネ

シモオカヘ

滋賀県

彦根市

下岡部町

6038082

キヨウトシキタ

カミカモオカモトクチ

京都府

京都市北区

上賀茂岡本口町

6038081

キヨウトシキタ

カミカモオカモト

京都府

京都市北区

上賀茂岡本町

6170843

ナカオカキヨウ

トモオカ

京都府

長岡京市

友岡

6293102

タケノ*アミノ

シモオカ

京都府

竹野郡網野町

下岡

6696413

キノサキ*カスミ

シモオカ

兵庫県

城崎郡香住町

下岡

6696415

キノサキ*カスミ

ニシシモオカ

兵庫県

城崎郡香住町

西下岡

7860304

ハタ*タイシヨウ

シモオカ

高知県

幡多郡大正町

下岡

7500317

トヨウラ*キクカワ

シモオカエタ

山口県

豊浦郡菊川町

下岡枝

8140112

フクオカシシヨウナン

トモオカ

福岡県

福岡市城南区

友丘

その他

 

 

 

 

 

800342

カトウ*オトフケ

シモオトフケ

北海道

河東郡音更町

下音更

801285

カトウ*シホロ

シモオリヘ

北海道

河東郡士幌町

下居辺

882331

カワカミ*シヘチヤ

シモオソツヘツ

北海道

川上郡標茶町

下オソツベツ

240058

キタカミ

シモオニヤナキ

岩手県

北上市

下鬼柳

9814212

カミ*カミ

シモオイノツカ

宮城県

加美郡加美町

下狼塚

9872114

クリハラ*タカシミス

シモオリキ

宮城県

栗原郡高清水町

下折木

9861335

モノウ*オカツ

シモオカツ

宮城県

桃生郡雄勝町

下雄勝

9940052

テントウ

シモオキノト

山形県

天童市

下荻野戸

9990145

ヒカシオキタマ*カワニシ

シモオクタ

山形県

東置賜郡川西町

下奥田

9920583

ナンヨウ

シモオキ

山形県

南陽市

下荻

9793202

イワキ

カワマエマチシモオケウリ

福島県

いわき市

川前町下桶売

3710011

マエハシ

シモオキ

群馬県

前橋市

下沖町

3702138

タノ*ヨシイ

シモオクタイラ

群馬県

多野郡吉井町

下奥平

2940021

タテヤマ

ヤモオキ

千葉県

館山市

山荻

1610033

シンシユク

シモオチアイ

東京都

新宿区

下落合

1920154

ハチオウシ

シモオンカタ

東京都

八王子市

下恩方町

2570026

ハタノ

シモオチアイ

神奈川県

秦野市

下落合

2430203

アツキ

シモオキノ

神奈川県

厚木市

下荻野

2591121

イセハラ

シモオチアイ

神奈川県

伊勢原市

下落合

9460085

キタウオヌマ*ユノタニ

シモオリタテ

新潟県

北魚沼郡湯之谷村

下折立

9420535

ヒカシクヒキ*ヤスツカ

モオキタイラ

新潟県

東頸城郡安塚町

真荻平

3380002

サイタマシチユウオウ

シモオチアイ

埼玉県

さいたま市中央区

下落合

3500848

カワコエ

シモオイフクロ

埼玉県

川越市

下老袋

3610037

キヨウタ

シモオシ

埼玉県

行田市

下忍

3550075

ヒカシマツヤマ

シモオオトリ

埼玉県

東松山市

下青鳥

3550041

ヒカシマツヤマ

シモオシタリ

埼玉県

東松山市

下押垂

3501332

サヤマ

シモオクトミ

埼玉県

狭山市

下奥富

3650035

コウノス

シモオイネツカ

埼玉県

鴻巣市

下生出塚

3690113

キタアタチ*フキアケ

シモオシ

埼玉県

北足立郡吹上町

下忍

3600123

オオサト*オオサト

シモオンタ

埼玉県

大里郡大里町

下恩田

9300817

トヤマ

シモオクイ

富山県

富山市

下奥井

9350053

ヒミ

モオ

富山県

氷見市

万尾

9390121

ニシトナミ*フクオカ

シモオイコ

富山県

西礪波郡福岡町

下老子

9200904

カナサワ

シモオウミ

石川県

金沢市

下近江町

9201323

カナサワ

シモオシハラ

石川県

金沢市

下鴛原町

4001102

コウフ

シモオヒナ

山梨県

甲府市

下帯那町

4040043

エンサン

シモオソ

山梨県

塩山市

下於曽

4040203

ヒカシヤマナシ*ミトミ

シモオキハラ

山梨県

東山梨郡三富村

下荻原

4311424

イナサ*ミツカヒ

シモオナ

静岡県

引佐郡三ケ日町

下尾奈

4901422

アマ*シユウシヤマ

シモオシハキ

愛知県

海部郡十四山村

下押萩

4702356

チタ*タケトヨ

シモオコシ

愛知県

知多郡武豊町

下起

5180606

ナハリ

コモオ

三重県

名張市

薦生

6038038

キヨウトシキタ

カミカモオトホセ

京都府

京都市北区

上賀茂音保瀬町

6291103

フナイ*ワチ

シモオトミ

京都府

船井郡和知町

下乙見

5680082

イハラキ

シモオトワ

大阪府

茨木市

下音羽

6794138

タツノ

ホンタチヨウシモオキ

兵庫県

龍野市

誉田町下沖

6660146

カワニシ

イモオ

兵庫県

川西市

芋生

6752414

カサイ

モオタニ

兵庫県

加西市

馬渡谷町

6660223

カワヘ*イナカワ

コモオ

兵庫県

川辺郡猪名川町

木間生

5195604

ヒカシムロ*キタヤマ

シモオイ

和歌山県

東牟婁郡北山村

下尾井

7816442

アキ*キタカワ

ノトモオツ

高知県

安芸郡北川村

野友乙

7850624

タカオカ*ユスハラ

シモオリワタリ

高知県

高岡郡檮原町

下折渡

8080105

キタキユウシユウシワカマツ

カモオタ

福岡県

北九州市若松区

鴨生田

8200206

カホ*イナツキ

カモオ

福岡県

嘉穂郡稲築町

鴨生

8400544

サカ*フシ

シモオオセ

佐賀県

佐賀郡富士町

下合瀬

8550075

シマハラ

シモオリハシ

長崎県

島原市

下折橋町

8693173

ウト

シモオウタ

熊本県

宇土市

下網田町

8690212

タマナ*タイメイ

シモオキノス

熊本県

玉名郡岱明町

下沖洲

8790302

ウサ

シモオトメ

大分県

宇佐市

下乙女

 

全国の「岡、丘、大、小、尾(ただし、おか、おか、おお、お、お、と読む)」

を含む地名の都道府県別出現率と中期縄文遺跡分布の順位相関係数

下段は当該の相関値が無相関の確率

 

遺跡密度

遺跡数

岡(おか)

0.28660.050806575

0.33040.023315246

丘(おか)

0.30450.037430517

0.26580.070949272

+

0.35950.013070787

0.37420.009564197

大(おお)

-0.17680.234504917

-0.19920.179475779

小(お)

0.26110.076277906

0.20920.158169756

尾(お)

-0.04420.767990432

-0.09410.529254746

+

0.19320.193208842

0.09880.193208842

 

上の相関表を見ると、「岡」または「丘」を含む地名の出現率は、明らかに中期縄文遺跡分布と「正」の相関を示している。また「大」や「尾」を含む地名とは無相関。「小(お)」を含む地名の相関値が偶然によるものとすると、817%の確率でしか生じない程度の相関値が示されている。「モオ」文字列の縄文遺跡分布との有意な相関は、「下」とともに、「岡」や「丘」、そして、寄与度は低いが「小」とかいて「お」とよむ地名と合わさって維持されている。

 

「小(お)と大(おお)」

「おか(をか)」は小さい山であり、これ以上分割できない単語と思われるが、先の「かみ」のところで「か」一字の意味が「上からかぶさるもの」の意味と解釈できるものとした。「か」一字が意味を有するとすれば、「おか」の「か」も「かみ」の「か」も同じ言葉と考えることができるのではないか。すなわち、「おか」は「お」と「か」から成り立っているのではないか。

山の頂は上にある。「か」が「上から被さる高まり」であり、「お」は地名や苗字によく見られる「小田」や「小谷(おたに)」の「小(お)」ではないのか。漢字の「小(お)」の意味は「小さい」である。「おか」は「小さい」+「上(かみ)=やま」で国語辞書の意味と正に一致する。

しかし筆者は「お」の意味が「小さい」の意とするのは誤解であると感じている。「小田」や「小谷(おたに)」は「小さい田」や「小さい谷」ではないと思う。

第一に「小」を「お」と読むのは、ほぼ地名や苗字に限られている。意味を明確に認識した上で使用する固有名詞以外の語においては「お」を「小さい」という意味で使っていると思われる語は見当たらない。固有名詞の場合は意味を考える必要などない。

小さい田は既にどこかで触れたように「佐(狭)田」ではないか。「小谷」と書いて「たに」と読んだり「だに」と読んだりして統一されていない。確信して、意味のわからなくなった「お」地名に「小」を充てたと思えない。

第二に、「千千に乱れる」「津々浦々」など、語を重ねて意味を強調するという語法が広く行われている。「大(おお)きい」は「お」を重ねて産まれた言葉と思われる。しかし、小さいという意味の「お(小)」を重ねると、ますます小さくなってしまう。「泉大津」は土佐日記では「おづ」と書かれていたそうだが、100年後の文献では「大津(おおつ)」と表記されていたそうである(大津神社HP)。「おおつ」とは「おづ」が時間を経てますます小さくなった意味の地名とは思えない。

地名の「小」で表される「お」は「小」の意味ではないと思う。逆に「小さくない」という意味を含んだ言葉だと思う。「小さくない」ものが重なってこそ「おおきい」という意味が適切なものとなる。「丘」や「岡」は「小さい山」ではなく、「小さくない山」ではないか(とはいっても大きいと形容するには少し足りない程の)。

それでは「小さくないもの」とは何であろうか。「お」一字で意味の通る単語が日本語に複数存在する。「尾」「緒」「御」である。

「緒」は紐であり、端緒である。紐を引っ張れば先についた大きなものを引っ張り出せる。「頭と尾はくれてやれ」というが、頭と尾で立派な料理が出来上がる。尻尾を捕まえて引っ張り出すと獲物を手に入れることができる。「尾」「緒」も「小さくはない」。「お箸」「お皿」など日用雑器にまで「御」を付けて「皿も箸も小さなものではない」と自戒し、大切にあつかう。これらの単語の共通点は「決して小さいものではない」の意味を含むところにある。

「岡・丘」とは、背後に山々が連なり、深い山々に分け入る端緒となる、あるいは山岳地帯の末端にある、すなわち尾部にある。「岡」は「尾(緒)」と形容すべき、重要な(小さくない)山である。

尻にある「小さくないもの」は「尾」であるが、上半身に被さる「小さくないもの」は「かみの方のお」「かお(顔)」である。なお「しっぽ」は「尻尾」と書くが、この「尾」は「お」ではないと思う。「穂」と関係する「ぽ」であると思う。

「尾」から「緒」という言葉がが生じる。そしてこの具体的事物を表す名詞から「小さくないもの」の「お」が使われ、最後に「御」や「大(おお)」が生まれたのではないか。

ただし、「岡」「丘」以外の「お」が付く言葉の縄文遺跡分布との相関は明確でない。「お」の付く地名は日本全国を覆い尽くしてしまっていている。

 

それでは、「小さい」事はなんと言うのであろうか。小さいことは「こ」である。「コア」「コマ」「コタ」「コワ」という「コ」を含んだ文字列分布が中期縄文遺跡分布と相関している。これらの「コ」は「密接した」あるいは場合によっては「包含した」という接頭語ではないかとパートBで考察した。「子」は「親」に密接している。子は親より小さい。へばりついたものは、へばりつかれた物より小さいのが普通。「こ」から「子」そして「小(こ)×」という漢字の書き方が生じたのであろう。

 

「モヒ」

「モヒ」を含む地名の都道府県別出現率の第一因子負荷量は0.3774であり、それほど高くはないが、やはり無視できない程度の値であり縄文的地名である。漢字で表記された「モヒ」地名の一覧(下の表)を眺めると、他の「モ×」の例と同様に「下(しも)」のあとに「平」がくる「下平」や「下平井」などの地名が圧倒的に多い。そのほか「広」「弘」が続く地名、「下日向」などの「日」が付く地名、「下東」のように「東」が来る地名が多い。また極めて少数であるが「下」代わりに「芋」がつく富山県「芋平」、京都では「上賀茂備後田町」のような「かも」のあとに「ひ」がつく地名が集中している。しかし、圧倒的に多いのは「下(しも)」+「ひ××」である。

「上(かみ)と下(しも)」のところで指摘したように、「しも」という言葉は中期縄文的色彩の強い言葉であるので「モヒ」文字列の縄文因子負荷量の多さは「下」の部分に負うところが大きいことが先ず指摘できる。

次に「下」のあとに「平」や「広」が続く地名のリストを眺めると、中期縄文遺跡分布の多い東日本に偏っている。下にこのような「平」や「広」を含む地名の都道府県別出現率と、同じく都道府県別の中期縄文遺跡分布関連指標との相関値を示す。表には「平」や「広」を含む地名が遺跡分布指標と高い有意性を有する相関値が示され、一方、これ以外の「モヒ」を含む地名との相関値は取るに足らない値しか示していない。また「下平(広)」地名は関東地方に濃い分布を示すところの中期縄文遺跡密度ともっとも高い相関値を示している点も興味深い。

「ひら」や「ひろ」も縄文単語であろうか。両単語が合わさって「モヒ」包含地名の中期縄文因子負荷量をたかめているのであろうか。

 

「下」あとに「平・広・弘」が付く地名の都道府県別出現率と、中期縄文遺跡分布・緯度・経度との順位相関係数

()内は当該の相関値が無相関である確率。5%水準より小さい場合は色塗り。

 

中期縄文遺跡密度

中期縄文遺跡数

緯度

経度

下平×(注1

0.3910(0.00657778)

0.3554(0.014225713)

0.2706(0.060399393)

0.3295(0.02371717)

下広(弘)×

0.3063(0.036263169)

0.2601(0.077451332)

0.1696(0.254415621)

0.2143(0.148045125)

+平×・広×・弘×、芋平、茂平(注2

0.4384(0.002054375)

0.3762(0.009156364)

0.2761(0.06030256)

0.3332(0.022101166)

上記以外の「モヒ」を含むZIP

0.1785(0.229963916)

0.2020(0.173312814)

0.1563(0.294109145)

0.0404(0.787452312)

(注1)富山県、岡山県の芋平、茂平は含まない。(注2)富山県、岡山県の芋平、茂平を含む

 

「モヒ」から「平」を含む地名の分析

下平

 

 

 

 

 

0370064

コシヨカワラ

シモヒライ

青森県

五所川原市

下平井町

9990212

ヒカシオキタマ*カワニシ

シモヒラヤナキ

山形県

東置賜郡川西町

下平柳

9870445

トメ*ミナミカタ

シモヒラカイ

宮城県

登米郡南方町

下平貝

9708003

イワキ

タイラシモヒラクホ

福島県

いわき市

平下平窪

9708004

イワキ

タイラシモヒラクホナカシマ

福島県

いわき市

平下平窪中島町

9708005

イワキ

タイラシモヒラクホフルカワ

福島県

いわき市

平下平窪古川町

9708006

イワキ

タイラシモヒラクホヤマトウチ

福島県

いわき市

平下平窪山土内町

3050813

ツクハ

シモヒラツカ

茨城県

つくば市

下平塚

3080066

シモタテ

シモヒラツカ

茨城県

下館市

下平塚

3002333

ツクハ*イナ

シモヒラヤナキ

茨城県

筑波郡伊奈町

下平柳

2591125

イセハラ

シモヒラマ

神奈川県

伊勢原市

下平間

2120053

カワサキシサイワイ

シモヒラマ

神奈川県

川崎市幸区

下平間

3210903

ウツノミヤ

シモヒライテ

栃木県

宇都宮市

下平出町

3850003

サク

シモヒラオ

長野県

佐久市

下平尾

4060027

ヒカシヤツシロ*イサワ

シモヒライ

山梨県

東八代郡石和町

下平井

4313802

イワタ*タツヤマ

シモヒラヤマ

静岡県

磐田郡龍山村

下平山

4371514

オカサ*オカサ

シモヒラカワ

静岡県

小笠郡小笠町

下平川

9301267

カミニイカワ*オオヤマ

イモヒラ

富山県

上新川郡大山町

芋平

9440343

アライ

シモヒラマル

新潟県

新井市

下平丸

9150855

タケフ

シモヒラフキ

福井県

武生市

下平吹町

5110418

イナヘ

ホクセイチヨウシモヒラ

三重県

いなべ市

北勢町下平

6010732

キタクワタ*ミヤマ

シモヒラヤ

京都府

北桑田郡美山町

下平屋

6008172

キヨウトシシモキヨウ

シモヒラノ

京都府

京都市下京区

下平野町

7140062

カサオカ

モヒラ

岡山県

笠岡市

茂平

7140064

カサオカ

ニシモヒラ

岡山県

笠岡市

西茂平

8471223

ヒカシマツウラ*キタハタ

シモヒラノ

佐賀県

東松浦郡北波多村

下平野

8919203

オオシマ*チナ

シモヒラカワ

鹿児島県

大島郡知名町

下平川

下広

 

 

 

 

 

3050042

ツクハ

シモヒロオカ

茨城県

つくば市

下広岡

3501322

サヤマ

シモヒロセ

埼玉県

狭山市

下広瀬

3500804

カワコエ

シモヒロヤ

埼玉県

川越市

下広谷

9420274

ナカクヒキ*サンワ

シモヒロタ

新潟県

中頸城郡三和村

下広田

4500006

ナコヤシナカムラ

シモヒロイ

愛知県

名古屋市中村区

下広井町

5201612

タカシマ*イマツ

シモヒロヘ

滋賀県

高島郡今津町

下弘部

6712541

シソウ*ヤマサキ

シモヒロセ

兵庫県

宍粟郡山崎町

下広瀬

下日

 

 

 

 

 

3630025

オケカワ

シモヒテヤ

埼玉県

桶川市

下日出谷

5291403

カンサキ*コカシヨウ

シモヒヨシ

滋賀県

神崎郡五個荘町

下日吉

7160101

カワカミ*ナリワ

シモヒナ

岡山県

川上郡成羽町

下日名

4091211

エンサン

カミハキワラ(4784、カミカネカイタク、シモヒカワカイタク)

山梨県

塩山市

上萩原(4784、神金開拓、下日川開拓)

3220075

カヌマ

シモヒナタ

栃木県

鹿沼市

下日向

3750046

フシオカ

シモヒノ

群馬県

藤岡市

下日野

3691625

チチフ*ミナノ

シモヒノサワ

埼玉県

秩父郡皆野町

下日野沢

下東

 

 

 

 

 

9902232

ヤマカタ

シモヒカシヤマ

山形県

山形市

下東山

4968032

アマ*ハチカイ

シモヒカシカワ

愛知県

海部郡八開村

下東川

5032414

イヒ*イケタ

シモヒカシノ

岐阜県

揖斐郡池田町

下東野

6900822

マツエ

シモヒカシカワツ

島根県

松江市

下東川津町

3710212

セタ*カスカワ

シモヒカシタナホ

群馬県

勢多郡粕川村

下東田面

9202128

イシカワ*ツルキ

シモヒカシ

石川県

石川郡鶴来町

下東町

6240967

マイツル

シモヒカシ

京都府

舞鶴市

下東

6060824

キヨウトシサキヨウ

シモカモヒカシハンキ

京都府

京都市左京区

下鴨東半木町

6060855

キヨウトシサキヨウ

シモカモヒカシツカモト

京都府

京都市左京区

下鴨東塚本町

6060854

キヨウトシサキヨウ

シモカモヒカシキシモト

京都府

京都市左京区

下鴨東岸本町

6060863

キヨウトシサキヨウ

シモカモヒカシホン

京都府

京都市左京区

下鴨東本町

6060852

キヨウトシサキヨウ

シモカモヒカシウメノキ

京都府

京都市左京区

下鴨東梅ノ木町

6060866

キヨウトシサキヨウ

シモカモヒカシモリカマエ

京都府

京都市左京区

下鴨東森ケ前町

6060865

キヨウトシサキヨウ

シモカモヒカシタカキ

京都府

京都市左京区

下鴨東高木町

6038022

キヨウトシキタ

カミカモヒカシコトウ

京都府

京都市北区

上賀茂東後藤町

6038023

キヨウトシキタ

カミカモヒカシウエノタン

京都府

京都市北区

上賀茂東上之段町

6060074

キヨウトシサキヨウ

カミタカノシモヒカシノ

京都府

京都市左京区

上高野下東野町

5700021

モリクチ

ヤクモヒカシ

大阪府

守口市

八雲東町

6728070

ヒメシ

シカマクカモヒカシ

兵庫県

姫路市

飾磨区加茂東

7313164

ヒロシマシアサミナミ

トモヒカシ

広島県

広島市安佐南区

伴東

7591231

アフ*アトウ

イクモヒカシフン

山口県

阿武郡阿東町

生雲東分

下久

 

 

 

 

 

3992602

イイタ

シモヒサカタシモトライワ

長野県

飯田市

下久堅下虎岩

3992607

イイタ

シモヒサカタミナハラ

長野県

飯田市

下久堅南原

3992605

イイタ

シモヒサカタコハヤシ

長野県

飯田市

下久堅小林

3992604

イイタ

シモヒサカタカキノサワ

長野県

飯田市

下久堅柿野沢

3992603

イイタ

シモヒサカタチクタイラ

長野県

飯田市

下久堅知久平

3992606

イイタ

シモヒサカタイナハ

長野県

飯田市

下久堅稲葉

7984212

ミナミウワ*ニシウミ

シモヒサケ

愛媛県

南宇和郡西海町

下久家

下氷

 

 

 

 

 

3812216

ナカノ

シモヒカノ

長野県

長野市

下氷鉋

3812211

ナカノ

イナサトマチシモヒカノ

長野県

長野市

稲里町下氷鉋

6038855

キヨウトシキタ

ニシカモヒムロ

京都府

京都市北区

西賀茂氷室町

下百

 

 

 

 

 

8320822

ヤマト*ミツハシ

シモヒヤク

福岡県

山門郡三橋町

下百町

8930201

ソオ*キホク

カミモヒキ

鹿児島県

曽於郡輝北町

上百引

8930202

ソオ*キホク

シモモヒキ

鹿児島県

曽於郡輝北町

下百引

下比

 

 

 

 

 

5180413

ナハリ

シモヒナチ

三重県

名張市

下比奈知

6712556

シソウ*ヤマサキ

シモヒシ

兵庫県

宍粟郡山崎町

下比地

その他

 

 

 

 

 

820076

カサイ*メムロ

ヒセイ(シンヒセイ、シモヒセイヲノソク)(ホウコク、アメヤマ)

北海道

河西郡芽室町

美生(新美生、下美生を除く)(報国、雨山)

820004

カサイ*メムロ

ヒカシメムロキタ(シモヒセイ)

北海道

河西郡芽室町

東芽室北(下美生)

140602

センホク*ニシキ

シモヒノキナイ

秋田県

仙北郡西木村

下檜木内

150513

ユリ*チヨウカイ

シモヒタネ

秋田県

由利郡鳥海町

下直根

183128

ヤマモト*フタツイ

シモヒエカラ

秋田県

山本郡二ツ井町

下稗柄

3410007

ミサト

シモヒコカワト

埼玉県

三郷市

下彦川戸

3470005

カソ

シモヒヤリカワ

埼玉県

加須市

下樋遣川

3440043

カスカヘ

シモヒルタ

埼玉県

春日部市

下蛭田

3270325

アソ*タヌマ

シモヒコマ

栃木県

安蘇郡田沼町

下彦間

3192512

ナカ*ミワ

シモヒサワ

茨城県

那珂郡美和村

下檜沢

4371434

オカサ*タイトウ

シモヒシカタ

静岡県

小笠郡大東町

下土方

9430633

ヒカシクヒキ*マキ

シモヒリコ

新潟県

東頸城郡牧村

下昆子

9496363

ミナミウオヌマ*シオサワ

シモヒトイチ

新潟県

南魚沼郡塩沢町

下一日市

9190527

サカイ*サカイ

シモヒヨウコ

福井県

坂井郡坂井町

下兵庫

9102146

フクイ

シモヒシヤモン

福井県

福井市

下毘沙門町

5203425

コウカ*コウカ

モヒラ

滋賀県

甲賀郡甲賀町

毛枚

6038803

キヨウトシキタ

ニシカモヒノクチ

京都府

京都市北区

西賀茂樋ノ口町

6038015

キヨウトシキタ

カミカモヒンコテン

京都府

京都市北区

上賀茂備後田町

6038003

キヨウトシキタ

カミカモヒイラキタニ

京都府

京都市北区

上賀茂柊谷町

6018166

キヨウトシミナミ

カミトハトウノモリシモヒラキノウチ

京都府

京都市南区

上鳥羽塔ノ森下開ノ内

6480016

ハシモト

スタチヨウシモヒヨウコ

和歌山県

橋本市

隅田町下兵庫

7240621

カモ*クロセ

ミナミカタ(コクリツリヨウヨウシヨカモヒヨウイン)

広島県

賀茂郡黒瀬町

南方(国立療養所賀茂病院)

8240054

ユクハシ

シモヒエタ

福岡県

行橋市

下稗田

 

「ひら」は「平(たい(ひ)ら)」か「崖」か?

既に何度か引用してきた「日本語とアイヌ語」(片山龍峰1993)中で、アイヌ語の「崖」を意味する「ピラ」が「フィラ」「ヒラ」と音韻変化し、沖縄県の「かびら」や「こんぴら」あるいは、本島の「平良(ひらら)」という地名が「崖」や「坂」を意味する地名として解釈しうることを指摘し、アイヌ語-日本語の類似性を指摘している。

しかし今日の日本語では「ひら」は「崖」や「坂」どころか、「平たい」や「平べったい」、「たいら=たひら」、「平社員」のように、全く反対の意味で使用している。地名としてありふれた「平野(ひらの)」は「平たい野原」、「平田」は「平らな田」であると誰でも解釈するであろう。

このことは、「ひら」には非常に古くから二通りの意味があることになり、この現象が同一言語内で生じたとは思えない。「ひら」が「崖」や「坂」と解釈できることは、アイヌ語-日本語の類似性を示すというより、むしろ、異質性を示唆する現象であるように思われる。

そして異なる2言語起源の「ひら」を含む地名が日本列島に混在している。

「こんぴら」は各地にあり、すべて平坦でない山中にある。また「比良」と表記される「ひら」地名も全国にある。「平」と表記すると意味がそぐわないので「比良」としたのであろうか。そして同時に、「たいら」を意味する「平」地名も日本全土に存在する。

 「ヒラ」の前に「上(かみ)」や「下(しも)」が付くかどうかを無視し、単に「ヒラ」を含む地名の都道府県別出現率を検討したところ、遺跡分布状況や緯度などの変数との相関関係は悩ましい値を示した。すなわち単なる「ヒラ」を含む都道府県別出現率はむしろ中期縄文遺跡分布とは逆に「負」の有意な相関係数が示された(とはいえ因子分析に使用した変数の採用基準0.4には達しない程度の)。すなわち「ヒラ」地名一般について言えば「下に続くヒラ」地名と反対に中期縄文遺跡分布の希薄な西日本に多い。これらの相関値を示す。括弧内は無相関確率である。

 

中期縄文遺跡密度

中期縄文遺跡数

緯度

経度

「ヒラ」を含む地名の出現率

0.3522

0.015186527

.3050

(0.036778235)

0.2405

(0.103442842)

0.2027

(0.171796243)

「しも()」という縄文色の強い単語と組み合わされた「シモ」地名に限り(すなわち「モヒ」地名)中期縄文遺跡分布と「正」の意味ある相関示す。

単に「ヒラ」を含む地名を抽出したところ、北海道から沖縄まで2209件のZIPがあり、広域地名欄に記載される「ヒラ」地名も多数見られる。広域地名だけを見ても、北海道では「札幌市豊平区」「赤平市」「古平郡古平町」「留萌郡小平町」「沙流郡平取町」があり、最も高い出現率を示している。また東北地方には「青森県東津軽郡平内町」「青森県南津軽郡平賀町」「宮城県黒川郡大衡(おおひら)村」「秋田県平鹿郡××村」、「山形県飽海郡平田町」「福島県石川郡平田村」があり、日本列島の北部に偏って見られる。一方、関東から中部・北陸・東海地方では「栃木県下都賀郡大平町」「神奈川県平塚市」「岐阜県海津郡平田町」があるだけである。

西日本では、最南端の沖縄県は最もZIPが少ないにもかかわらず(749ZIP)「平良市」という15ZIPからなる広域地名が、九州では長崎県には「北松浦郡田平町」「平戸市」があり、大阪府には「大阪市平野区」、「平」の漢字は用いられないが「枚方(ひらかた)市」がある。「島根県平田市」「山口県熊毛郡平生町」があり、四国香川県では「琴平山」の「金刀比宮」のある「仲多度郡琴平町」がある。そして北海道や東北地方の「ヒラ」地名の出現率の多さを克服して、緯度や経度、東日本に集中する中期縄文遺跡分布と負の相関値を示現させるほどの多くの「ヒラ」地名が西日本にある。

すなわち関東・中部の中期縄文地域をを中心に、周圏的に、日本全国に単なる「ヒラ」地名が分布していることを示している。このことは、語源的に異なる2種類の「ひら」地名があるのことを示唆している。一つは「崖」を意味する「ひら」、今ひとつは「平(たひら)」の「ひら」である。

 

「海を渡った縄文人」

上記の点から「ヒラ」地名が西日本に広く広まったのはいつの時代であろうか。2つの可能性がある。

まず考えられるのは「ひら」地名が縄文遺跡分布と「負」の相関を示すので、他の非縄文的地名の場合と同様ニ、主として大陸からの人口流入にともなって非縄文的地名が産まれ始めた弥生時代開始前後以降ではないかと考えられる。しかし、「ひら」が大陸起源の語とも思えず、九州本島を差し置いて、ここの時期に、沖縄まで広がったとは到底思えない。まして中緯度地域を跳び越し、北海道や東北地方にこのように高い分布を残すとは思えない。

今一つは現在の日本語が西日本に広く行き渡る以前である。西日本は極めて人口希薄だとはいえ薄く広く縄文期の人々の生活のあとが残っている。弥生時代に入る以前、縄文時代に、少ないけれども、西日本にも縄文時代の地名が存在した。「崖」や「坂」を表す「ヒラ」もその一つであろう。「ヒラ」がアイヌ語で解釈されるとしたら、これらの地名を残した人々は、中期縄文時代に関東地方を中心に濃密な縄文遺跡分布を残した「わ」の人々ではなく、今ひとつの主人公であるアイヌ、すなわち「い」の人々ではなかったか。沖縄にまですでに到達し、最も古い発音と思われる「崖」を意味する「ぴら」地名を残している。勿論このような拡散を可能にしたのは航海術に長けた「ね」の人々の活躍があってこそである。

しかしながら、本論の基礎になる都道府県別中期縄文遺跡分布数や同じく密度の値は、沖縄県ではゼロである。中期縄文遺跡は沖縄にはないのであろうか。

縄文時代の交流と交易の様子を記した「海を渡った縄文人」(橋口尚武編著:1999 小学館)の中で、上村俊雄は九州全土に壊滅的な打撃を与えた鬼界カルデラの大噴火(今から64000年前)以後の縄文前期にあたる時代と思われる沖縄本島の地層から、本土に分布する轟Tや轟U式土器、あるいは曾畑式土器含む遺跡が発見されているとしている。また、ここで取り上げられた中期については、海を隔てた交流はあまり活発ではなかったとし、中期の本土との関わりを示す遺跡は未発見としている。そして再び、後期・晩期になり再び活発化したとしている。

少なくとも今から6000年以前から、海を隔てた本土との交流があったことは確実である。「いすみ」地名は中期縄文遺跡分布と相関することがすでに述べられた。鹿児島県には出水市以外多くの「いずみ」を含む地名があり、最も色濃い分布を示す府県の一つである。沖縄県にも「伊豆味」がある。「<い>が住むところ」という言い方は<い>でない人々が使った地名であろう。そのような<い>の人々は6000年も前から沖縄にいたのであろう。

一方、「ひら」のつく地名は<い>の人々が自らの言葉で表現していた地名であろう。弥生人が大挙して西日本に押し寄せる以前、先駆けて、広く未開の西日本を開拓した人々であろう。

勿論、縄文時代に同じように<ね>の人々とともに西日本を探索した<わ>の人々もいたであろう。しかし彼らの人数は<い>の人々と比較して小数であっただろう。なぜなら「××沢」に住む住人の本体は日本列島の内陸部に分布し、本隊はゆっくりと集団で南下する人々であったからである。

 

「モン」「リン」-「ん」の好きな東北・北海道

「モン」を含むZIP地名出現率の第一因子負荷量は0.4185でかなり高い値を示す。緯度とは0.4681、遺跡密度数とは0.4067、遺跡数とは0.4774、経度では0.3718で、遺跡数や緯度との相関が高く、このことは中期縄文遺跡の集中する、関東、中部地方というより北海道・東北というやや北にシフトした分布状況を示唆している。具体的な地名を挙げると紋別市(郡)、沙流郡門別町という多数のZIPを含む広域地名がある。(しかし、北海道以外には「もんべつ」に似た地名はない。)その他の「モン」を含む多種類の地名があり、「モン」を含む地名は北海道で出現率が最も多い。

「門」は音読みで「もん」であり「大門(だいもん)」「水門(すいもん)」は漢字音読み地名と思われ、東北地方に濃い分布を示している。

「水門」地名を地図で確認すると多くは、河川沿いの田んぼの印がついたところが多く、川から田んぼに水を引き入れる水門がある場所と考えられる。字義通り「水路のゲート」、寺やお城の「大きい門」であろう。

「十文字(じゅうもんじ)」という地名は京都府や長崎県にも見られるが、「モン」地名一覧を見ると東北地方に濃い分布が認められる。「十文字」は山中にあることが多く、道がクロスしたところの地名と解釈するのが妥当であろうhttp://sekai-ai.com/blog/)。漢字の意味というより、「十」という字形に由来している。

「エモ」を含む地名が緯度や経度と0.5以上の相関を示し、「エモ」地名は具体的には人名の「××衛門(××えもん)」のような地名である。人名を付した地名が東日本に多いという特徴を「パートA」で指摘した。これに呼応して、「モン」地名リストには、多数の北日本の「××えもん」地名がリストされている。勿論「×衛門」は漢字が流入した後の固有名詞であろう。

北海道の「もん」地名以外はすべて漢字が日本に入ってくる以前からあった地名とは思えない。中国語の意味として通じる「町」や「京」「荘」などを含む地名はむしろ中期縄文遺跡分布や緯度などと「負」の相関を示す地名である。「大門」「水門」や「十文字」「☓衛門」は、漢字文化の影響の強い西日本の地名であってしかるべきではないか。

この矛盾に満ちた、無視できない強い相関性(「モン」地名と「緯度など」との有意な相関)はどのように説明されるべきか。

東日本特有の発音の特徴がこのような相関を生じさせたのかもしれない。

すでに「ンテ」の含まれる文字列が東日本に多いことが指摘された。具体的には「××新田(しんでん)」であり、「弁天(べんてん)」という地名である。特に「しんでん」という言葉には二回も「ん」が含まれていて、冒頭の第一因子負荷量のリストの上位に「ンテ」も「テン」もランクされている。

これらの地名も「門」地名と同じように音読みの中国語の意味で解釈され、縄文時代の言葉ではない。

また「十文字」は「じゅうもじ」ではなく「じゅうもじ」と読む。当然漢字が入る以前には生じ得ない地名である。

「もんべつ」は「も=静かな+べつ=川」と解釈されているが、「も」のあとに「ん」が入りリエゾンしている。

 

また、「リン」を含む地名も負荷量リストに記載されている。

具体的には「柏林台(はくりんだい)」、「五林(ごりん)」、「明倫」「松林寺」「上林」などであり、これらの殆どは東日本にある。この中で「めいりん」「ごりん」は多様な漢字で表記されており、漢字表記が行われる時点で既に意味が不明であったことを示唆している。

その他「リン」を含む寺院に因んだと思われ地名も、寺院の多い京都府は例外であるが東日本にやや濃い分布を示す。仏教伝来が奈良や京都から始まった思われるにしては多い。

全ての「リン」を含む地名はjomon.lzhに記載されているが、下に、「リン」地名のうち、「りんくう」「臨海」「臨港」「国有林」など、明らかに近代になってから出現したと思われる地名を省き、更に、明らかに寺院名(××寺)に因んだZIP地名と思われる地名を別に纏めた「リン」地名リストを、整理した形で表示する。

0800057

オヒヒロ

ハクリンタイナカ

北海道

帯広市

柏林台中町

0800055

オヒヒロ

ハクリンタイヒカシ

北海道

帯広市

柏林台東町

0800058

オヒヒロ

ハクリンタイニシ

北海道

帯広市

柏林台西町

0800056

オヒヒロ

ハクリンタイミナミ

北海道

帯広市

柏林台南町

0800054

オヒヒロ

ハクリンタイキタ

北海道

帯広市

柏林台北町

0870024

ネムロ

ホウリン

北海道

根室市

宝林町

0430011

ヒヤマ*エサシ

コリンサワ

北海道

檜山郡江差町

五厘沢町

0991122

トコロ*オケト

リンユウ

北海道

常呂郡置戸町

林友

0890567

ナカカワ*マクヘツ

メイリン(78208ハンチ)

北海道

中川郡幕別町

明倫(78、208番地)

0890787

ナカカワ*マクヘツ

メイリン(ソノタ)

北海道

中川郡幕別町

明倫(その他)

0894356

アシヨロ*リクヘツ

リンナイ

北海道

足寄郡陸別町

林内

0383805

ミナミツカル*フシサキ

コリン

青森県

南津軽郡藤崎町

五林

0383621

キタツカル*イタヤナキ

コリンタイ

青森県

北津軽郡板柳町

五林平

0391526

サンノヘ*コノヘ

ソウリンハシ

青森県

三戸郡五戸町

惣林橋

0230094

ミスサワ

コリン

岩手県

水沢市

五輪

0294424

イサワ*コロモカワ

クリントウ

岩手県

胆沢郡衣川村

九輪堂

9830842

センタイシミヤキノ

コリン

宮城県

仙台市宮城野区

五輪

9813115

センタイシイスミ

アイリン

宮城県

仙台市泉区

愛隣町

9896131

フルカワ

カナコリン

宮城県

古川市

金五輪

9812117

イク*マルモリ

シヨウリンヒカシ

宮城県

伊具郡丸森町

上林東

9812117

イク*マルモリ

シヨウリンニシ

宮城県

伊具郡丸森町

上林西

9812117

イク*マルモリ

シヨウリンミナミ

宮城県

伊具郡丸森町

上林南

9872175

クリハラ*タカシミス

コリン

宮城県

栗原郡高清水町

五輪

0160892

ノシロ

ケイリン

秋田県

能代市

景林町

0182633

ヤマモト*ハチモリ

コリンタイシヨウタン

秋田県

山本郡八森町

五輪台上段

0182631

ヤマモト*ハチモリ

コリンタイケタン

秋田県

山本郡八森町

五輪台下段

9920477

ナンヨウ

リンコウ

山形県

南陽市

梨郷

9718122

イワキ

オナハマリンシヨウ

福島県

いわき市

小名浜林城

9600725

タテ*ヤナカワ

アカコリン

福島県

伊達郡梁川町

赤五輪

9693103

ヤマ*イナワシロ

コリンハラ

福島県

耶麻郡猪苗代町

五輪原

3340071

カワクチ

アンキヨウシリン

埼玉県

川口市

安行慈林

2530017

チカサキ

シヨウリン

神奈川県

茅ヶ崎市

松林

9300001

トヤマ

メイリン

富山県

富山市

明輪町

9391822

ヒカシトナミ*シヨウハナ

リントウ

富山県

東礪波郡城端町

林道

9200961

カナサワ

コウリンホウ

石川県

金沢市

香林坊

9290125

ノミ*ネアカリ

トウリン

石川県

能美郡根上町

道林町

9120083

オオノ

メイリン

福井県

大野市

明倫町

5008111

キフ

ハイリン

岐阜県

岐阜市

梅林

5008119

キフ

ハイリンニシ

岐阜県

岐阜市

梅林西町

5008112

キフ

ハイリンミナミ

岐阜県

岐阜市

梅林南町

4610031

ナコヤシヒカシ

メイリン

愛知県

名古屋市東区

明倫町

4880813

オワリアサヒ

ニシタイトウチヨウコリンツカ

愛知県

尾張旭市

西大道町五輪塚

4442508

ヒカシカモ*アスケ

リンマ

愛知県

東加茂郡足助町

林間

4840875

イヌヤマ

リンコツカ

愛知県

犬山市

林吾塚

6011241

キヨウトシサキヨウ

オオハラシヨウリンイン

京都府

京都市左京区

大原勝林院町

6060085

キヨウトシサキヨウ

カミタカノリンコウ

京都府

京都市左京区

上高野隣好町

6048262

キヨウトシナカキヨウ

ソウリン

京都府

京都市中京区

宗林町

6050976

キヨウトシヒカシヤマ

センニユウシトウリン

京都府

京都市東山区

泉涌寺東林町

6050863

キヨウトシヒカシヤマ

ハイリン

京都府

京都市東山区

梅林町

6050062

キヨウトシヒカシヤマ

リンカ

京都府

京都市東山区

林下町

6008341

キヨウトシシモキヨウ

カクリン

京都府

京都市下京区

学林町

6210006

カメオカ

カワラハヤシチヨウシヨウリンシマ

京都府

亀岡市

河原林町勝林島

6148079

ヤワタ

ヤワタトウリン

京都府

八幡市

八幡東林

5691018

タカツキ

カリンエン

大阪府

高槻市

花林苑

5820012

カシワラ

カリントオハタ

大阪府

柏原市

雁多尾畑

6302171

ナラ

セタリン

奈良県

奈良市

誓多林町

6900882

マツエ

タイリン

島根県

松江市

大輪町

7600073

タカマツ

リツリン

香川県

高松市

栗林町

7980068

ウワシマ

メイリン

愛媛県

宇和島市

明倫町

8400034

サカ

ニシヨカマチリンケ

佐賀県

佐賀市

西与賀町厘外

 

 

 

 

 

 

 

 

「寺」のつく「リン」

 

 

 

0283182

ヒエヌキ*イシトリヤ

シヨウリンシ

岩手県

稗貫郡石鳥谷町

松林寺

0294208

イサワ*マエサワ

タイリンシシタ

岩手県

胆沢郡前沢町

大林寺下

9895125

クリハラ*カンナリ

タイリンシサワ

宮城県

栗原郡金成町

大林寺沢

9920062

ヨネサワ

リンセンシ

山形県

米沢市

林泉寺

3710042

マエハシ

ニチリンシ

群馬県

前橋市

日輪寺町

3390076

イワツキ

ヘイリンシ

埼玉県

岩槻市

平林寺

2850013

サクラ

カイリンシ

千葉県

佐倉市

海隣寺町

9493414

ナカクヒキ*ヨシカワ

テンリンシ

新潟県

中頸城郡吉川町

天林寺

9320841

オヤヘ

トウリンシ

富山県

小矢部市

道林寺

9391626

ニシトナミ*フクミツ

ホウリンシ

富山県

西礪波郡福光町

法林寺

5095102

トキ

イスミチヨウシヨウリンシ

岐阜県

土岐市

泉町定林寺

5011202

モトス

ホウリンシ

岐阜県

本巣市

法林寺

6038214

キヨウトシキタ

ムラサキノウンリンイン

京都府

京都市北区

紫野雲林院町

6068133

キヨウトシサキヨウ

イチシヨウシカツリンシ

京都府

京都市左京区

一乗寺月輪寺町

6068065

キヨウトシサキヨウ

シユウカクインカツリンシ

京都府

京都市左京区

修学院月輪寺町

6068387

キヨウトシサキヨウ

ホウリンシモンセン

京都府

京都市左京区

法林寺門前町

6078217

キヨウトシヤマシナ

カンシユウシカンリンシ

京都府

京都市山科区

勧修寺閑林寺

5900963

サカイ

シヨウリンシチヨウヒカシ

大阪府

堺市

少林寺町東

5900960

サカイ

シヨウリンシチヨウニシ

大阪府

堺市

少林寺町西

6620004

ニシノミヤ

シユウリンシ

兵庫県

西宮市

鷲林寺

6620003

ニシノミヤ

シユウリンシ

兵庫県

西宮市

鷲林寺町

6620002

ニシノミヤ

シユウリンシミナミ

兵庫県

西宮市

鷲林寺南町

7830041

ナンコク

オコウチヨウシヨウリンシ

高知県

南国市

岡豊町定林寺

8611306

キクチ

タイリンシ

熊本県

菊池市

大琳寺

8920834

カコシマ

ナンリンシ

鹿児島県

鹿児島市

南林寺町

 

 

 

 

 

 

 

「リン」地名出現率の緯度との順位相関係数は0.4416である。しかし東西の分布差を示す経度との相関値、縄文遺跡分布との相関値はすべて0.4以下であり「モン」地名分布と同じように北に行くほど出現が多い。

 

パート@では「さんない」地名が東北に濃く、「さんない」が「下がる川」と解釈でき、アイヌ語関連地名ではないかと述べた。

「ん」がとれた「さない」のZIP分布状況を調べたのが、下の表である。「さんない」も「さない」も、奈良県の「法隆寺山内」の一件を除いて西日本に出現はない。東日本特有の地名であることがわかる。また、秋田県には山内村という広域地名も存在するなど、「ん」のついた「さんない」地名の出現頻度は明らかにより北の東北地方に多い。

 

ただしZIP地名ではないが、国土地理院の検索ページで漢字の「佐内」を入れて検索したところ京都府京丹後市、岡山県高梁市、山口県光市にも「佐内」がある。ただし、京都、岡山県では「そうち」と読む。いずれも山間部で付近に下る川がある。もともと「さない」と呼ばれていたものが、漢字の「内」が充てられた以降、「うち」と読み替えられたのかもしれない。

茨城県稲敷郡河内町、栃木県河内郡、石川県石川郡河内村、大阪府の南河内郡や河内長野市、兵庫県神崎郡大河内町、愛媛県温泉郡川内町、鹿児島県川内市など、東北より南、特に西日本には極めて「河(川)内(かわちと読まれている場合が多い」が多く、しかも多くは広域地名として存在する。これらの「内」がもともとは「ナイ」と発音していたと想像すると、すなわち「カンナイ」などと発音していたとすると、これらの地名を使った東北地方からの西日本への人口流入は夥しいものであったと想像できる。

 

「サンナイ」

 

 

 

 

 

0380031

アオモリ

サンナイ

青森県

青森市

三内

0286222

クノヘ*カルマイ

サンナイ

岩手県

九戸郡軽米町

山内

0100823

アキタ

サンナイ

秋田県

秋田市

山内

0182627

ヤマモト*ハチモリ

サンナイ

秋田県

山本郡八森町

山内

0182625

ヤマモト*ハチモリ

サンナイタイ

秋田県

山本郡八森町

山内台

0181856

ミナミアキタ*コシヨウメ

フツナイシモサンナイ

秋田県

南秋田郡五城目町

富津内下山内

0192742

カワヘ*カワヘ

サンナイ

秋田県

河辺郡河辺町

三内

0191107

ヒラカ*サンナイ

イカタ

秋田県

平鹿郡山内村

筏など9ZIP

3211431

ニツコウ

サンナイ

栃木県

日光市

山内

1900162

アキルノ

サンナイ

東京都

あきる野市

三内

6360115

イコマ*イカルカ

ホウリユウシサンナイ

奈良県

生駒郡斑鳩町

法隆寺山内

「サナイ」

 

 

 

 

 

0280041

クシ

オサナイ

岩手県

久慈市

長内町

0282231

シモヘイ*イワイスミ

アサナイ

岩手県

下閉伊郡岩泉町

浅内

0160179

ノシロ

アサナイ

秋田県

能代市

浅内

9660845

キタカタ

オサナイ

福島県

喜多方市

長内

1620846

シンシユク

イチカヤサナイ

東京都

新宿区

市谷左内町

9420031

シヨウエツ

サナイ

新潟県

上越市

佐内

9420031

シヨウエツ

サナイ

新潟県

上越市

佐内町

9188002

フクイ

サナイ

福井県

福井市

左内町

 

話を戻して、「下がる」の意味の「さん」が南下して「さ」になるとすれば不都合なことが起こる。

すなわち、「トサ」や「サワ」地名の解釈で述べたように、「サ」が「狭い」の意味で使われていたと解釈できるなら(佐野や佐田が狭い野や、狭い田と解釈されている)、「さ」の意味が「狭い」の意味か?「下がるの」意味か?区別がつかなくなる。

このような同音異義語が同一言語内で生じるとは思えない。日本語の成立には互いに異質の言語が複合している証左ではないだろうか。

日本語の、狭い、小さいの「さ」は「さほど」「些細」「指す」「早乙女」などの語と、「さん」変じての「さ」は「さがる」「坂」「去る」などの語と関連するのではないか。

 

また、北日本の「ん」好きの例として、すでに、北海道で「東4条西」のような場合、ことごとく、日本語の「よ」に「ん」をつけた「よじょう」と読むにもかかわらず、京都の「四条」は必ず「じょう」と読むという点を指摘した。

 

「もん」も「りん」も、あるいは「さん」も、具体的な漢字表記された地名リストを眺めると、多くは中国語で解釈可能な地名である。にもかかわらず、中国大陸から遠い東日本の都道府県に濃い分布を示す。縄文中期以前に、北からサハリンを通って中国語が流入した時期があったとでもいうのであろうか。

このような点から、地名の意味から「リン」や「モン」の中期縄文遺跡との相関性を解釈するのは著しく困難である。

ただ、少なくとも、発音の点からは、中期縄文遺跡分布県(むしろやや北にシフトした都道府県)には「ん」を含む語が多かった、ということはありえそうである。

 

「もん」の怪しい語源解釈

北海道には2つの「もんべつ」という広域地名がある。「紋別」と「門別」である。紋別はアイヌ語の「モ(=静かな)」と「ペッ(=川)」すなわち「静かな川」という解釈は(紋別商工会議所HP)、2.5万分の1の地図を検索すると、紋別市にはカタカナの「上モベツ川」もあり、適切な解釈と思われる。そして東北地方には「水門」や「大門」が多い。先に「門」は音読みでも「もん」でありこれら「水門や大門」が、何故中期縄文分布県に濃く分布するのか理解できないと述べた。

しかし中国文化の影響を受けるずっと以前から「もん」は日本語でも「門」の意味で使われていた可能性がある。すなわち「も」はアイヌ語でも日本語でも意味の共通点を含んでいる。すなわち「凹凸のない一定の広がり」である。アイヌ語の「モ」であり、日本語の「喪」であり、「面(も)」である。そして北日本の「ん」好きと合わさって「もん」と発音されることも多かったかもしれない。

そして、門は入り口に立ちはだかる、開閉可能な「平らな面」である。入り口の扉を「もん」といっていたのかもしれない。意味も音も「門」いう漢字にぴたりと一致する。

ところで「入り口」を意味するもう一つの日本語がある可能性を指摘した。しばしば「戸」で表される「と」である。「門」と書いて「と」と読む地名も沢山ある。「入り口」を意味する2種類の日本語があり一つは「戸」であり、今ひとつは「もん」である。{もん}は日本で生まれた言葉である。

東北に「もん」が多いのは、後に流入した中国語のせいではなく、日本語のルーツになった異質な言語の複合の結果と思いたい。 

 

「りん」も日本語として解釈できるかもしれない

上の「リン」地名のリストを眺めると「ごりん」という地名が東北地方に少なからず認められる。多くは「五輪」と表記されるが「五厘沢」や「五林」もある。「輪」は音読みでは「りん」であり、日本語では「わ」である。

「輪」とは「サークル」であるが、「わ」は中期縄文遺跡分布と密接に相関する、「さわ」「いわ」「かわ」の「わ」であり、「和」の国の「わ」でないかということをこれまでに指摘してきた。「輪」は「わ」の人々のコミュニティである。もともとは「わ」と呼ばれていたところを漢字の知識が浸透するにしたがって、「わ」でない人々が、音読みの「りん」と呼ぶようになったのではないか。「わ」自身は自らを「りん」などとは呼ばないであろう。

また「こ」は「密接した」という意味にこれまで解釈してきた。東北地方では発音が濁り「ご」であったかもしれない。すなわち「ごりん」は「わ」に密接したところということになる。

「りん」を元に戻せば「こわ」である。「コワ」文字列も中期縄文遺跡分布と有意に相関する地名文字列である。「こわ」を含む地名は東北にも存在するが、どちらかというと東北以南の縄文地域に強く分布する。以下に「コワ」地名リストを示す。「わ」の部分が多くは「和」で表されている地名が多いのが注意を引く。

360111

ミナミツカル*ヒラカ

コワモリ

青森県

南津軽郡平賀町

小和森

383502

キタツカル*ツルタ

コワマキ

青森県

北津軽郡鶴田町

強巻

391522

サンノヘ*コノヘ

コワタリ

青森県

三戸郡五戸町

小渡

391522

サンノヘ*コノヘ

コワタリカシラ

青森県

三戸郡五戸町

小渡頭

192335

センホク*ニシセンホク

コワクヒ

秋田県

仙北郡西仙北町

強首

9697413

オオヌマ*ミシマ

ヒノハラ(コワセ)

福島県

大沼郡三島町

桧原(小和瀬)

9636144

ヒカシシラカワ*タナクラ

コワナシ

福島県

東白川郡棚倉町

強梨

3004224

ツクハ

コワタ

茨城県

つくば市

小和田

3670011

ホンシヨウ

コワセ

埼玉県

本庄市

小和瀬

2740061

フナハシ

コワカマ

千葉県

船橋市

古和釜町

2891504

サンフ*マツオ

コワ

千葉県

山武郡松尾町

古和

1900151

アキルノ

コワタ

東京都

あきる野市

小和田

2530012

チカサキ

コワタ

神奈川県

茅ヶ崎市

小和田

2500406

アシカラシモ*ハコネ

コワクタニ

神奈川県

足柄下郡箱根町

小涌谷

9470041

オチヤ

コワタ

新潟県

小千谷市

小粟田

9470002

オチヤ

ヨコワタシ

新潟県

小千谷市

横渡

9520613

サト

コワシミス

新潟県

佐渡市

強清水

9523545

サト

ヒカシコワシミス

新潟県

佐渡市

東強清水

9591723

ナカカンハラ*ムラマツ

ヨコワタシ

新潟県

中蒲原郡村松町

横渡

9480218

ナカウオヌマ*カワニシ

コワキ

新潟県

中魚沼郡川西町

小脇

9593211

イワフネ*セキカワ

コワタ

新潟県

岩船郡関川村

小和田

9103146

フクイ

コワタ

福井県

福井市

小幡町

9102212

アスワ*ミヤマ

コワシヨウス

福井県

足羽郡美山町

小和清水

9191313

ミカタ*ミカタ

ヨコワタリ

福井県

三方郡三方町

横渡

9192373

オオイ*タカハマ

コワタ

福井県

大飯郡高浜町

小和田

4010004

オオツキ

ニキオカマチコワセ

山梨県

大月市

賑岡町強瀬

4010211

ミナミツル*アキヤマ

コワタ

山梨県

南都留郡秋山村

小和田

3920024

スワ

コワタ

長野県

諏訪市

小和田

3920023

スワ

コワタミナミ

長野県

諏訪市

小和田南

3850013

サク

ヨコワ

長野県

佐久市

横和

5050108

カニ*ミタケ

コワサワ

岐阜県

可児郡御嵩町

小和沢

4160942

フシ

カミヨコワリ

静岡県

富士市

上横割

4160943

フシ

シモヨコワリ

静岡県

富士市

下横割

4160944

フシ

ヨコワリ

静岡県

富士市

横割

4160923

フシ

ヨコワリホン

静岡県

富士市

横割本町

4370603

シユウチ*ハルノ

コワ

静岡県

周智郡春野町

五和

4550077

ナコヤシミナト

コワリトオリ

愛知県

名古屋市港区

小割通

4838362

コウナン

コウノチヨウコワキ

愛知県

江南市

河野町小脇

4838406

コウナン

コワキチヨウコワキ

愛知県

江南市

小脇町小脇

5161106

イセ

ヨコワ

三重県

伊勢市

横輪町

5193813

オワセ

コワキ

三重県

尾鷲市

小脇町

5161534

ワタライ*ナントウ

コワウラ

三重県

度会郡南島町

古和浦

6060957

キヨウトシサキヨウ

マツカサキコワキ

京都府

京都市左京区

松ケ崎小脇町

5770818

ヒカシオオサカ

コワカエ

大阪府

東大阪市

小若江

6332134

ウタ*オオウタ

コワタ

奈良県

宇陀郡大宇陀町

小和田

6993216

ナカ*ミスミ

カミコワ

島根県

那賀郡三隅町

上古和

6993215

ナカ*ミスミ

シモコワ

島根県

那賀郡三隅町

下古和

なお「リン」地名リストを眺めると、「明倫」「明輪」と表記される「めいりん」地名が散見される。「輪(わ)」が「りん」と読まれたものとすると、元は「めいわ」になる。「メイワ」文字列を含む地名は以下の通りである。

0592425

ニイカツフ*ニイカツフ

メイワ

北海道

新冠郡新冠町

明和

9650833

アイツワカマツ

メイワ

福島県

会津若松市

明和町

3700711

オウラ*メイワ

イリカヤ

群馬県

邑楽郡明和町

入ケ谷など16zip

2840043

ヨツカイトウ

メイワ

千葉県

四街道市

めいわ

9330812

タカオカ

メイワ

富山県

高岡市

明和町

5070072

タシミ

メイワ

岐阜県

多治見市

明和町

4710825

トヨタ

メイワ

愛知県

豊田市

明和町

4790841

トコナメ

メイワ

愛知県

常滑市

明和町

5150317

タキ*メイワ

イケ

三重県

多気郡明和町

池村など31zip

6250077

マイツル

カメイワ

京都府

舞鶴市

亀岩町

6520883

コウヘシヒヨウコ

メイワトオリ

兵庫県

神戸市兵庫区

明和通

6650052

タカラツカ

シンメイワ

兵庫県

宝塚市

新明和町

7830071

ナンコク

カメイワ

高知県

南国市

亀岩

8020017

キタキユウシユウシコクラキタ

メイワ

福岡県

北九州市小倉北区

明和町

8900024

カコシマ

メイワ

鹿児島県

鹿児島市

明和

8980036

マクラサキ

メイワ

鹿児島県

枕崎市

明和町

上記地名の出現率と遺跡分布などとの順位相関係数を計算したところ、緯度や経度とは殆ど零であった。また、遺跡密度とは0.0529、遺跡数とは0.1462のかろうじて正の相関値が示されたにすぎない。この値では「めいわ」の地名は縄文色の強い地名ということはできない。リスト中、群馬県明和町は平成10年町村合併時に一般公募によって、平和な明るい町という意味で名付けられた全く新しく付けられた地名(群馬県明和町HP)、兵庫県宝塚市新明和町は 川西航空機株式会社を前身とする新明和工業の所在地である。社名は「明るく和してゆく」の意味として新しく名づけらたとのことである(会社と商品のイエローページ yurai.jp.

 

「河内(かわち)」は「アイヌ語」の「ナイ」地名か

先に「サンナイ」「サナイ」地名を検索する中で、「佐内」と表記される地名の「内」が「うち」と読まれている例があることを指摘した。

また、これまでに「××宿(しゅく)」や「××新田」などの漢字音読み地名分布が中期縄文遺跡分布と偶然にしては強すぎる相関値が示されるところから、「やど」や「にいだ」あるいは「にった」と呼ばれていたところが、悉く音読み地名に変更されてしまったのではないかと指摘した。

北海道には夥しい川を意味する「××ナイ」地名があるが、本州、特に東北地方より南では急激に出現率が減少する(パート@では北海道以外の「やない」「いんない」「さない」の例を挙げたが)。

これらの現象は、アイヌ語地名の「ナイ」が最初に、漢字の「内(ない)」で表され、今度は逆に「訓読み」の「うち」というように読み替えられてしまったという可能性を想起させる。

「内」を含んだ地名といえば大阪府の「河内の国」という地名をすぐに思いつく。しかし「カワチ」を検索したところ大阪府のみならず全国に分布することがわかった。漢字では「河内」「川内」と表記されている。また「河内」「川内」を含む地名を検索すると「カワチ」以外に「カワウチ」「コウチ」と読まれる場合がほぼ100%であった。そこで、以下の「川内」「河内」を含むZIPをリストアップして分布状況を検討した。

 

 

 

「かわち」と読む「河内・川内」

 

 

3001404

イナシキ*カワチ

カタマキ

茨城県

稲敷郡河内町

片巻など26ZIP

3290521

カワチ*カミノカワ

イシタ

栃木県

河内郡上三川町

石田など26ZIP

3230111

カワチ*ミナミカワチ

イソヘ

栃木県

河内郡南河内町

磯部など22ZIP

3210404

カワチ*カミカワチ

アシヌマ

栃木県

河内郡上河内町

芦沼など14ZIP

3291113

カワチ*カワチ

アイノサワ

栃木県

河内郡河内町

相野沢など15ZIP

9522222

サト

キタカワチ

新潟県

佐渡市

北川内、久知河内、浜河内の3ZIP

9591711

ナカカンハラ*ムラマツ

カワチ

新潟県

中蒲原郡村松町

川内

9201118

カナサワ

ユワクカワチ

石川県

金沢市

湯涌河内町

9202315

イシカワ*カワチ

イタオ

石川県

石川郡河内村

板尾など14ZIP

9290445

カホク*ツハタ

イノカワチ

石川県

河北郡津幡町

井野河内、河内の2ZIP

9292201

カシマ*ナカシマ

カワチ

石川県

鹿島郡中島町

河内

9270045

フケシ*アナミス

カワチ

石川県

鳳至郡穴水町

河内

9272142

フケシ*モンセン

カミカワチ

石川県

鳳至郡門前町

上河内

9280336

フケシ*ヤナキタ

キタカワチ

石川県

鳳至郡柳田村

北河内

4413142

トヨハシ

オオイワチヨウ(ヒカシコウナイ)

愛知県

豊橋市

大岩町(東郷内),大岩町(西郷内)の2ZIP

4850085

コマキ

カワチヤシンテン

愛知県

小牧市

河内屋新田

5151105

マツサカ

オカワチ

三重県

松阪市

大河内町

5220301

イヌカミ*タカ

カワチ

滋賀県

犬上郡多賀町

河内

5210211

サカタ*サントウ

アンサカワチ

滋賀県

坂田郡山東町

梓河内

5290531

イカ*ヨコ

ナカカワチ

滋賀県

伊香郡余呉町

中河内

6220065

フナイ*ソノヘ

オオカワチ

京都府

船井郡園部町

大河内

6291107

フナイ*ワチ

ニシカワウチ

京都府

船井郡和知町

西河内

5860095

カワチナカノ

アカシアタイ

大阪府

河内長野市

あかしあ台など79ZIP

5798044

ヒカシオオサカ

カワチ

大阪府

東大阪市

河内町、森河内東、森河内西の3ZIP

5830991

ミナミカワチ*タイシ

カスカ

大阪府

南河内郡太子町

春日など6ZIP

5850002

ミナミカワチ*カナン

イチスカ

大阪府

南河内郡河南町

一須賀など21ZIP

5850055

ミナミカワチ*チハヤアカサカ

アスマサカ

大阪府

南河内郡千早赤阪村

東阪など10ZIP

5870003

ミナミカワチ*ミハラ

アミ

大阪府

南河内郡美原町

阿弥など24ZIP

6793121

カンサキ*オオカワチ

アケイワ

兵庫県

神崎郡大河内町

上岩など16ZIP

6696334

キノサキ*タケノ

カワチ

兵庫県

城崎郡竹野町

河内

6693404

ヒカミ*カスカ

ウシカワチ

兵庫県

氷上郡春日町

牛河内

6694336

ヒカミ*イチシマ

オトカワチ

兵庫県

氷上郡市島町

乙河内

6370001

コシヨウ

ニシカワチ

奈良県

五條市

西河内町

6400316

ワカヤマ

オオカワチ

和歌山県

和歌山市

大河内

6893135

サイハク*ナカヤマ

トノカワチ

鳥取県

西伯郡中山町

殿河内

6991514

ニタ*ニタ

カワチ

島根県

仁多郡仁多町

河内

7330025

ヒロシマシニシ

オカワチ

広島県

広島市西区

小河内町

7390261

ヒカシヒロシマ

シワチヨウウチ

広島県

東広島市

志和町内

7450651

シユウナン

オオカワチ

山口県

周南市

大河内

7570211

アサ*クスノキ

アシカワチ

山口県

厚狭郡楠町

芦河内

7500433

トヨウラ*トヨタ

オオカワチ

山口県

豊浦郡豊田町

大河内

7794306

ミマ*イチウ

カワチ

徳島県

美馬郡一宇村

河内

7980076

ウワシマ

カワチ(ヤクシタニ)

愛媛県

宇和島市

川内(薬師谷)

7980075

ウワシマ

カワチ(ソノタ)

愛媛県

宇和島市

川内(その他)

7970035

ヒカシウワ*ウワ

カワチ

愛媛県

東宇和郡宇和町

河内

7971714

ヒカシウワ*シロカワ

オンカワチ

愛媛県

東宇和郡城川町

男河内

7993752

キタウワ*ヨシタ

カワチ

愛媛県

北宇和郡吉田町

河内

8050045

キタキユウシユウシヤハタヒカシ

カワチ

福岡県

北九州市八幡東区

河内

8280082

フセン

オオカワチ

福岡県

豊前市

大河内、川内、下川内の3ZIP

8350014

ヤマト*セタカ

カワチ

福岡県

山門郡瀬高町

河内

8240814

ミヤコ*カツヤマ

ウラカワチ

福岡県

京都郡勝山町

浦河内

8290314

チクシヨウ*シイタ

ウエノカワチ

福岡県

築上郡椎田町

上ノ河内

8470804

カラツ

ウシロカワチ

佐賀県

唐津市

後川内、重河内、梨川内の3ZIP

8410087

トス

カワチ

佐賀県

鳥栖市

河内町

8480024

イマリ

オオカワチチヨウコウ

佐賀県

伊万里市

大川内町甲、乙、丙の3ZIP

8480131

イマリ

クロカワチヨウハタカワチ

佐賀県

伊万里市

黒川町畑川内、東山代町浦川内、東山代町川内野、東山代町滝川内、山代町福川内の5ZIP

8491315

カシマ

ミカワチ

佐賀県

鹿島市

三河内

8493114

ヒカシマツウラ*キユウラキ

ウラカワチ

佐賀県

東松浦郡厳木町

浦川内

8471415

ヒカシマツウラ*ケンカイ

ソソロカワチ

佐賀県

東松浦郡玄海町

座川内、値賀川内の2ZIP

8440011

ニシマツウラ*アリタ

イワタニカワチ

佐賀県

西松浦郡有田町

岩谷川内

8430304

フシツ*ウレシノ

イワヤカワチ

佐賀県

藤津郡嬉野町

岩屋川内

8593153

サセホ

ミカワチシン

長崎県

佐世保市

三川内×町、浦川内、小川内町など5ZIP

8540037

イサハヤ

カワチ

長崎県

諫早市

川内町

8560041

オオムラ

トクセンカワチ

長崎県

大村市

徳泉川内町

8595122

ヒラト

アケノカワチ

長崎県

平戸市

明の川内町、川内町の2ZIP

8594514

マツウラ

シサチヨウユノキカワチメン

長崎県

松浦市

志佐町柚木川内免、御厨町川内免の2ZIP

8171721

ツシマ

カミツシママチカワチ

長崎県

対馬市

上対馬町河内

8512122

ニシソノキ*ナカヨ

ホンカワチコウ

長崎県

西彼杵郡長与町

本川内郷

8513502

ニシソノキ*サイカイ

カワチコウ

長崎県

西彼杵郡西海町

川内郷

8593805

ヒカシソノキ*ヒカシソノキ

カワチコウ

長崎県

東彼杵郡東彼杵町

川内郷

8593721

ヒカシソノキ*ハサミ

カワチコウ

長崎県

東彼杵郡波佐見町

川内郷

8595805

キタマツウラ*オオシマ

アスチカワチ

長崎県

北松浦郡大島村

的山川内

8596121

キタマツウラ*エムカエ

オクカワチメン

長崎県

北松浦郡江迎町

奥川内免

8596102

キタマツウラ*エムカエ

カミカワチメン

長崎県

北松浦郡江迎町

上川内免、小川内免、奥川内免の3ZIP

8615341

クマモト

カワチマチオオタオ

熊本県

熊本市

河内町大多尾など(河内町××)8ZIP

8695151

ヤツシロ

シキカワチ

熊本県

八代市

敷川内町

8670171

ミナマタ

ホウカワチ

熊本県

水俣市

宝川内

8630006

ホント

ホンマチシモカワチ

熊本県

本渡市

本町下河内

8690521

シモマシキ*マツハセ

ウラカワチ

熊本県

下益城郡松橋町

浦川内

8614425

シモマシキ*チユウオウ

キソカワチ

熊本県

下益城郡中央町

木早川内

8695225

ヤツシロ*サカモト

オカワチ

熊本県

八代郡坂本村

小川内

8695574

アシキタ*アシキタ

オオカワチ

熊本県

葦北郡芦北町

大川内、道川内の2ZIP

8616302

アマクサ*スモト

カワチ

熊本県

天草郡栖本町

河内

8632113

アマクサ*イツワ

アラカワチ

熊本県

天草郡五和町

荒河内、

8631215

アマクサ*カワウラ

シラキカワチ

熊本県

天草郡河浦町

白木河内、宮野河内の2ZIP

8700276

オオイタ

ミヤカワチ

大分県

大分市

宮河内

8700275

オオイタ

ミヤカワチハイラント

大分県

大分市

宮河内ハイランド

8771222

ヒタ

オカワチ

大分県

日田市

小河内町

8760035

サイキ

キシカワチ

大分県

佐伯市

岸河内

8750081

ウスキ

フシカワチ

大分県

臼杵市

藤河内

8793202

ミナミアマヘ*ウメ

カワチ

大分県

南海部郡宇目町

河内

8762403

ミナミアマヘ*カマエ

ノノカワチウラ

大分県

南海部郡蒲江町

野々河内浦

8750352

オオノ*ノツ

カキカワチ

大分県

大野郡野津町

垣河内

8750203

オオノ*ノツ

マエカワチ

大分県

大野郡野津町

前河内

8796111

ナオイリ*オキ

ミナミカワチ

大分県

直入郡荻町

南河内

8794332

クス*クス

ヤマウラ(アキハタ、オキワラ、シモソノ、シモノテラ、スキカワチ、センシユウ、ソウス、ナカノ、ナカ

大分県

玖珠郡玖珠町

山浦(秋畑、荻原、下園、下ノ寺、杉河内、千重、早水、中野、・

8892403

ミナミナカ*キタコウ

キタカワチ

宮崎県

南那珂郡北郷町

北河内、後河内の2ZIP

8890604

ヒカシウスキ*カトカワ

カワチ

宮崎県

東臼杵郡門川町

川内

8820097

ヒカシウスキ*キタカワ

カワチミヨウ(イワイコカワ)

宮崎県

東臼杵郡北川町

川内名(祝子川)、川内名(その他)の2ZIP

8821414

ニシウスキ*タカチホ

カワチ

宮崎県

西臼杵郡高千穂町

河内

 

 

 

 

 

 

 

 

「かわうち」と読む「河内」

 

 

 

294474

イサワ*コロモカワ

カミカワウチ

岩手県

胆沢郡衣川村

上、中、下河内の3ZIP

3130101

クシ*カナサコウ

カミミヤカワウチ

茨城県

久慈郡金砂郷町

上、下宮河内の2ZIP

3110301

クシ*スイフ

ニシカワウチカミ

茨城県

久慈郡水府村

西河内上

9480038

トオカマチ

カワウチ

新潟県

十日町市

河内町

9593417

イワフネ*カミハヤシ

カワウチ

新潟県

岩船郡神林村

河内

6010714

キタクワタ*ミヤマ

カワウチタニ

京都府

北桑田郡美山町

河内谷

6291107

フナイ*ワチ

ニシカワウチ

京都府

船井郡和知町

西河内

6293422

クマノ*クミハマ

カワウチ

京都府

熊野郡久美浜町

河内

6692722

ササヤマ

カワウチタイ

兵庫県

篠山市

河内台

6671322

ミカタ*ムラオカ

テラカワウチ

兵庫県

美方郡村岡町

寺河内

6830355

サイハク*サイハク

トウカワウチ

鳥取県

西伯郡西伯町

道河内

6991201

オオハラ*タイトウ

オカワウチ

島根県

大原郡大東町

小河内

7371323

アキ*クラハシ

カミカワウチ

広島県

安芸郡倉橋町

上河内

7792305

カイフ*ヒワサ

オクカワウチ

徳島県

海部郡日和佐町

奥河内、北河内、西河内、山河内の4ZIP

7960305

ニシウワ*イカタ

カワウチ

愛媛県

西宇和郡伊方町

河内

7817412

アキ*トウヨウ

カワウチ

高知県

安芸郡東洋町

河内

7860514

ハタ*トオワ

カワウチ

高知県

幡多郡十和村

河内

8616104

カミアマクサ

マツシママチウチノカワウチ

熊本県

上天草市

松島町内野河内

8700881

オオイタ

フカカワウチ

大分県

大分市

深河内

8771103

ヒタ

ツルカワウチ

大分県

日田市

鶴河内町

8840104

コユ*キシヨウ

イシカワウチ

宮崎県

児湯郡木城町

石河内

8830402

ヒカシウスキ*シイハ

オオカワウチ(1-1302ハンチ)

宮崎県

東臼杵郡椎葉村

大河内(1〜1302番地)、(その他)の2ZIP

 

 

 

 

 

 

かわうち(川内)

「かわうち」と読む「川内」

 

 

 

395304

シモキタ*カワウチ

カキサキ(ハンエモンサワ)

青森県

下北郡川内町

蠣崎(半右エ門沢)など6ZIP

294205

イサワ*マエサワ

カワウチ

岩手県

胆沢郡前沢町

川内

282513

シモヘイ*カワイ

カワウチ

岩手県

下閉伊郡川井村

川内

9800862

センタイシアオハ

カワウチ

宮城県

仙台市青葉区

川内、川内××など12ZIP

9891104

シロイシ

シラカワウチオヤ

宮城県

白石市

白川内親

9891503

シハタ*カワサキ

カワウチ

宮城県

柴田郡川崎町

川内

9812156

イク*マルモリ

ヒシカワウチ

宮城県

伊具郡丸森町

菱川内

9813514

クロカワ*オオサト

カワウチ

宮城県

黒川郡大郷町

川内

9814402

カミ*カミ

キタカワウチ

宮城県

加美郡加美町

北川内

9880388

モトヨシ*モトヨシ

カミカワウチ

宮城県

本吉郡本吉町

上、中、下、北、西、東川内の5ZIP

9880456

モトヨシ*ウタツ

カワウチ

宮城県

本吉郡歌津町

川内

150504

ユリ*チヨウカイ

カミカワウチ

秋田県

由利郡鳥海町

上、下川内の2ZIP

9691721

タテ*クニミ

カワウチ

福島県

伊達郡国見町

川内

9696106

オオヌマ*アイツホンコウ

クロカワウチ

福島県

大沼郡会津本郷町

黒川内

9791202

フタハ*カワウチ

シモカワウチ

福島県

双葉郡川内村

上、下川内の2ZIP2ZIP

3760041

キリユウ

カワウチ

群馬県

桐生市

川内町

9592667

キタカンハラ*ナカシヨウ

ニシカワウチ

新潟県

北蒲原郡中条町

東、西川内の2ZIP

4750053

ハンタ

オツカワウチヤマ

愛知県

半田市

乙川内山町

6960011

オオチ*カワモト

カワウチ

島根県

邑智郡川本町

川内

7310102

ヒロシマシアサミナミ

カワウチ

広島県

広島市安佐南区

川内

7710101

トクシマ

カワウチチヨウ(アサヒノ)

徳島県

徳島市

川内町(旭野)など、川内町(××)36ZIP(別宮、夷野などを含む)

7711508

イタノ*トナリ

ミヤカワウチ

徳島県

板野郡土成町

宮川内

7711705

アワ*アワ

ウメカワウチ

徳島県

阿波郡阿波町

梅川内、松川内の2ZIP

7910315

オンセン*カワウチ

イウチ

愛媛県

温泉郡川内町

井内など11ZIP 他に内 川を含む地名あり

7850173

スサキ

ウラノウチコンカワウチ

高知県

須崎市

浦ノ内今川内

7811605

アカワ*イケカワ

カワウチタニ

高知県

吾川郡池川町

川内谷、百川内の2ZIP

8341102

ヤメ*シヨウヨウ

キタカワウチ

福岡県

八女郡上陽町

北川内

8510112

ナカサキ

カワウチ

長崎県

長崎市

川内町

8560043

オオムラ

オカワウチ

長崎県

大村市

小川内町

8590416

ニシソノキ*タラミ

ノカワウチコウ

長崎県

西彼杵郡多良見町

野川内郷、山川内郷、西川内名の3ZIP

8590154

キタタカキ*コナカイ

カワウチミヨウ

長崎県

北高来郡小長井町

川内名

8570412

キタマツウラ*コササ

ニシカワウチメン

長崎県

北松浦郡小佐々町

西川内免

8596407

キタマツウラ*セチハル

キタカワウチメン

長崎県

北松浦郡世知原町

北川内免

8800941

ミヤサキ

キタカワウチ

宮崎県

宮崎市

北川内町

8890304

ヒカシウスキ*キタウラ

ミカワウチ

宮崎県

東臼杵郡北浦町

三川内

8831402

ヒカシウスキ*モロツカ

ナナツヤマ(イイホシ、オハライ、カワウチ、タテイワ、ハエノヒラ、ホンムラ)

宮崎県

東臼杵郡諸塚村

七ツ山(飯干、小原井、川内、立岩、八重の平、・

8991603

アクネ

ツルカワウチ

鹿児島県

阿久根市

鶴川内

8990341

イスミ

カミオオカワウチ

鹿児島県

出水市

上大川内、下大川内の2ZIP

8952634

オオクチ

コカワウチ

鹿児島県

大口市

小川内

8994314

コクフ

カワウチ

鹿児島県

国分市

川内

8961412

サツマ*シモコシキ

セセノウラ(1700ハンチ-、ウチカワウチ)

鹿児島県

薩摩郡下甑村

瀬々野浦(1700番地〜、内川内)

8991304

イスミ*ナカシマ

シヨウカワウチ

鹿児島県

出水郡長島町

城川内

8941115

オオシマ*スミヨウ

カワウチ

鹿児島県

大島郡住用村

川内

 

 

 

 

 

 

 

 

「こうち」と読む「川内」

 

 

 

9391426

トナミ

コウチ

富山県

砺波市

川内

9260386

ナナオ

ヤマサキマチ(コウチマチ)

石川県

七尾市

山崎町(小川内町)

8593601

ヒカシソノキ*カワタナ

イノリコウチコウ

長崎県

東彼杵郡川棚町

猪乗川内郷

8720324

ウサ*インナイ

オノコウチ

大分県

宇佐郡院内町

小野川内

 

 

 

 

 

 

 

 

「こうち」と読む「河内」

 

 

 

9792443

ソウマ*カシマ

ウシコウチ

福島県

相馬郡鹿島町

牛河内

3550135

ヒキ*ヨシミ

マエコウチ

埼玉県

比企郡吉見町

前河内

3670253

コタマ*コタマ

コウチ

埼玉県

児玉郡児玉町

河内

1320002

エトカワ

ヤコウチ(1チヨウメ)

東京都

江戸川区

谷河内(1丁目、2丁目)の2ZIP

1980224

ニシタマ*オクタマ

コウチ

東京都

西多摩郡奥多摩町

河内

2540903

ヒラツカ

コウチ

神奈川県

平塚市

河内

2430415

エヒナ

カミコウチ

神奈川県

海老名市

上河内、中河内の2ZIP

9451126

カシワサキ

オオコウチシンテン

新潟県

柏崎市

大河内新田

9103267

フクイ

コウチ

福井県

福井市

河内町、中河内町の2ZIP

9140003

ツルカ

ウソコウチ

福井県

敦賀市

獺河内、池河内の2ZIP

9170238

オハマ

イケノコウチ

福井県

小浜市

池河内

9161235

サハエ

カミコウチ

福井県

鯖江市

上河内町

9102463

アスワ*ミヤマ

コウチ

福井県

足羽郡美山町

河内

9150201

イマタテ*イマタテ

ニシコウチ

福井県

今立郡今立町

西河内

9102523

イマタテ*イケタ

コウチ

福井県

今立郡池田町

河内

9151106

ナンシヨウ*コウノ

コウチ

福井県

南条郡河野村

河内

9191533

オニユウ*カミナカ

コウチ

福井県

遠敷郡上中町

河内

4060043

ヒカシヤツシロ*イサワ

コウチ

山梨県

東八代郡石和町

河内

3960403

カミイナ*ハセ

クロコウチ

長野県

上伊那郡長谷村

黒河内

3991312

シモイナ*ミナミシナノ

ヤエコウチ

長野県

下伊那郡南信濃村

八重河内

4280501

シスオカ

ココウチ

静岡県

静岡市

小河内、清水河内、清水小河内、清水中河内の4ZIP

4100232

ヌマツ

ニシウラコウチ

静岡県

沼津市

西浦河内

4150011

シモタ

コウチ

静岡県

下田市

河内

4280102

ハイハラ*カワネ

ササマシモ(カミコウチ、ナカムラ)

静岡県

榛原郡川根町

笹間下(上河内、中村)

4280303

ハイハラ*ナカカワネ

イツチヨウコウチ

静岡県

榛原郡中川根町

壱町河内

4370611

シユウチ*ハルノ

タコウチ

静岡県

周智郡春野町

田河内

4443167

オカサキ

ヨナコウチ

愛知県

岡崎市

米河内町

4411424

ミナミシタラ*ツクテ

ナカコウチ

愛知県

南設楽郡作手村

中河内

5170044

トハ

コウチ

三重県

鳥羽市

河内町

5142207

アケ*ケイノウ

コウチ

三重県

安芸郡芸濃町

河内

5161421

ワタライ*ナントウ

コウチ

三重県

度会郡南島町

河内

5193402

キタムロ*ミヤマ

コウチ

三重県

北牟婁郡海山町

河内

5195415

ミナミムロ*キワ

オオコウチ

三重県

南牟婁郡紀和町

大河内

6292313

ヨサ*ノタカワ

ミコウチ

京都府

与謝郡野田川町

三河内

6752421

カサイ

コウチ

兵庫県

加西市

河内町

6714141

シソウ*イチノミヤ

ヒカシコウチ

兵庫県

宍粟郡一宮町

東河内

6713232

シソウ*チクサ

コウチ

兵庫県

宍粟郡千種町

河内、西河内の2ZIP

6695373

キノサキ*ヒタカ

ヒカシコウチ

兵庫県

城崎郡日高町

東河内

6680372

イスシ*タントウ

オオコウチ

兵庫県

出石郡但東町

大河内

6562323

ツナ*ヒカシウラ

コウチ

兵庫県

津名郡東浦町

河内

6801425

トツトリ

コウチ

鳥取県

鳥取市

河内

6820846

クラヨシ

カモコウチ

鳥取県

倉吉市

鴨河内

6801253

ヤス*カワハラ

オコウチ

鳥取県

八頭郡河原町

小河内、弓河内の2ZIP

6890412

ケタカ*シカノ

コウチ

鳥取県

気高郡鹿野町

河内

6895136

ヒノ*ヒノ

オコウチ

鳥取県

日野郡日野町

小河内

6970012

ハマタ

コウチ

島根県

浜田市

河内町

6902633

イイシ*ミトヤ

トノコウチ

島根県

飯石郡三刀屋町

殿河内

6992305

ニマ*ニマ

アマコウチ

島根県

邇摩郡仁摩町

天河内町

6993213

ナカ*ミスミ

コウチ

島根県

那賀郡三隅町

河内、西河内の2ZIP西

6995514

カノアシ*ムイカイチ

タチコウチ

島根県

鹿足郡六日市町

立河内

7092123

ミツ*ミツ

コウチ

岡山県

御津郡御津町

河内

7180301

アテツ*テツタ

ミヤコウチ

岡山県

阿哲郡哲多町

宮河内

7193121

マニワ*オチアイ

カミコウチ

岡山県

真庭郡落合町

上、下、中、西河内の4ZIP

7080431

トマタ*オクツ

コウチ

岡山県

苫田郡奥津町

河内

7070131

カツタ*カツタ

コウチ

岡山県

勝田郡勝田町

河内

7094232

アイタ*サクトウ

アシコウチ

岡山県

英田郡作東町

芦河内

7012624

アイタ*アイタ

ナカコウチ

岡山県

英田郡英田町

中河内

7315152

ヒロシマシサエキ

イツカイチチヨウシモコウチ

広島県

広島市佐伯区

五日市町下、上河内、河内南の3ZIP

7280003

ミヨシ

ヒカシコウチ

広島県

三次市

東、西河内町、布野町戸河内の3ZIP

7313622

ヤマカタ*カケ

シモトノコウチ

広島県

山県郡加計町

下殿河内

7313812

ヤマカタ*トコウチ

アソウタニ

広島県

山県郡戸河内町

遊谷など24ZIP

7291106

カモ*コウチ

ウヤマ

広島県

賀茂郡河内町

宇山など8ZIP

7541313

ウヘ

フシコウチ

山口県

宇部市

藤河内

7440061

クタマツ

コウチ

山口県

下松市

河内と24の河内(××)計25ZIP (大河内)を含む

7560872

オノタ

ハマコウチ

山口県

小野田市

浜河内、丸河内の2ZIP

7460032

シユウナン

コウチ

山口県

周南市

河内町

7470611

サハ*トクチ

サハコウチ

山口県

佐波郡徳地町

鯖河内

7541251

ヨシキ*アシス

コウチ

山口県

吉敷郡阿知須町

河内区

7541231

ヨシキ*アシス

テラコウチ

山口県

吉敷郡阿知須町

寺河内区

7580128

アフ*カワカミ

トウコウチ

山口県

阿武郡川上村

堂河内

7714102

ミヨウトウ*サナコウチ

カミ

徳島県

名東郡佐那河内村

上、下の2ZIP

7713202

ミヨウサイ*カミヤマ

アノ(カミコウチ)

徳島県

名西郡神山町

阿野(上河内)

7750001

カイフ*ムキ

コウチ

徳島県

海部郡牟岐町

河内

7680105

ミトヨ*ヤマモト

コウチ

香川県

三豊郡山本町

河内

7920006

ニイハマ

コウチ

愛媛県

新居浜市

河内町

7992467

ホウシヨウ

イソコウチ

愛媛県

北条市

磯河内

8150063

フクオカシミナミ

ヤナコウチ

福岡県

福岡市南区

柳河内

8200334

カホ*カホ

イスミコウチ

福岡県

嘉穂郡嘉穂町

泉河内

8500012

ナカサキ

ホンコウチ

長崎県

長崎市

本河内

8740816

ヘツフ

コウチ

大分県

別府市

河内

8762301

ミナミアマヘ*カマエ

タケノウラコウチ

大分県

南海部郡蒲江町

竹野浦河内

 

「河内」「川内」の分布

上のリストを見て3つの点を指摘できる。

第一は、明らかに西日本に多い。特に北海道、東北、関東で少ない。長野県、山梨県の内陸県では出現がない。また同じく内陸の群馬県では桐生市の「川内(かわうち)町」があるだけである。明らかに縄文遺跡分布との相関値を計算すると「負」の相関を示すであろう。

第二は「川内、河内」を含む地名は単独で現れることは少なく、上河内、中河内、下河内のように一定の広い範囲に密集して現れる。すなわち広域地名欄に記載される地名であったり、詳細地名欄であっても、同一の広域地名内で複数の「×河内」などの地名が認められる。一定の広い範囲を「河内、川内」と呼んだのであろう。

第三は「河内、川内」地名は平野部にはないが、しかし多くは平野から遠くない、平野と山岳地帯の、山からの川の流れが急に緩やかになるあたりにある。また、一部の「川内・河内」では、更に川を辿ってやや山中に入った比較的傾斜の緩やかな土砂の堆積の多い盆地にもある。また、極めて少数であるが、川の最上流の場合もある。しかし多くは海岸線の沖積平野を形成したと思われる平野の周辺部にある。「川」の無いところに「河内・川内」はないと言っても過言ではない。この点についてはGoogleEerth(http://earth.google.co.jp/)で確認した。水系を航空写真に加えて水系をチェックすると河川や池が青色表示され便利である。

 

さて、「河(川)内」の「内」の部分が、もともとは「ない」と読まれていたとすると、「かない」となる。「金井(かない)」という地名は北海道でなくても、いくらでもありそうである。下は「かない」を含むZIP地名を抽出したリストである。

「カナイ」を含む145件の地名リストを見ると、北海道には「稚内(わっかない)」や「幌加内(ほろかない)」の広域地名、青森、秋田には複数の「鹿内(しかない)」「釈迦内(しゃかない)」があるが、「金井」と漢字表記されるZIP地名は福島県南会津郡田島町金井より北には存在しないことがわかる。

また「河内」地名ほどではないが、栃木県の「上金井」「下金井」、群馬県内では多数の「金井」を含む地名が見られるなど、一定の広い範囲にわたって認められる。

更に地図で調べると、海に近い平野部にはなく、川の上流の平野部と山地の中間部、ないしは山中、川筋の流れが緩やかになり堆積物によってできた広い川原にある。

これらの条件は「河内」のつく地名と一致する。

ただし「金井」やその他の「カナイ」の府県別分布を見ると関東地方でも出現率が高く、反対に中国、四国、九州で出現県が少ないなど、「河内・川内」地名の場合とは逆に、中期縄文遺跡分布と「正」の相関を見せている。

 

0970015

ワツカナイ

アサヒ

北海道

稚内市

朝日など53ZIP

0740413

ウリユウ*ホロカナイ

ウエンナイ

北海道

雨竜郡幌加内町

雨煙内など24ZIP

0984107

テシオ*トヨトミ

ワカサカナイ

北海道

天塩郡豊富町

稚咲内

0890786

ナカカワ*マクヘツ

ヌカナイ

北海道

中川郡幕別町

糠内

0894306

アシヨロ*リクヘツ

ヤムワツカナイ

北海道

足寄郡陸別町

止若内

0391562

サンノヘ*コノヘ

シカナイ

青森県

三戸郡五戸町

鹿内

0391562

サンノヘ*コノヘ

シカナイオキ

青森県

三戸郡五戸町

鹿内沖

0391562

サンノヘ*コノヘ

シカナイシモ

青森県

三戸郡五戸町

鹿内下モ

0391562

サンノヘ*コノヘ

シカナイマエ

青森県

三戸郡五戸町

鹿内前

0270056

ミヤコ

チカナイ

岩手県

宮古市

近内

0280153

ワカ*トウワ

ナカナイ

岩手県

和賀郡東和町

中内

0170013

オオタテ

コシヤカナイ

秋田県

大館市

小釈迦内

0170014

オオタテ

コシヤカナイミチウエ

秋田県

大館市

小釈迦内道上

0170015

オオタテ

コシヤカナイミチシタ

秋田県

大館市

小釈迦内道下

0170012

オオタテ

シヤカナイ

秋田県

大館市

釈迦内

0121135

オカチ*ウコ

シカナイ

秋田県

雄勝郡羽後町

鹿内

9900856

ヤマカタ

カナイシタ

山形県

山形市

金石田

9920012

ヨネサワ

カナイケ

山形県

米沢市

金池

9640915

ニホンマツ

カナイロ

福島県

二本松市

金色

9640807

ニホンマツ

カナイロクホ

福島県

二本松市

金色久保

9670024

ミナミアイツ*タシマ

カナイサワ

福島県

南会津郡田島町

金井沢

3130016

ヒタチオオタ

カナイ

茨城県

常陸太田市

金井町

3091615

カサマ

カナイ

茨城県

笠間市

金井

3114614

ヒカシイハラキ*コセンヤマ

カナイ

茨城県

東茨城郡御前山村

金井

3212115

ウツノミヤ

カミカナイ

栃木県

宇都宮市

上金井町

3212114

ウツノミヤ

シモカナイ

栃木県

宇都宮市

下金井町

3270015

サノ

カナイカミ

栃木県

佐野市

金井上町

3220602

カミツカ*ニシカタ

カナイ

栃木県

上都賀郡西方町

金井

3210628

ナス*カラスヤマ

カナイ

栃木県

那須郡烏山町

金井

3700882

タカサキ

カナイフチ

群馬県

高崎市

金井淵町

3730003

オオタ

キタカナイ

群馬県

太田市

北金井町

3730022

オオタ

ヒカシカナイ

群馬県

太田市

東金井町

3770027

シフカワ

カナイ

群馬県

渋川市

金井

3750045

フシオカ

カナイ

群馬県

藤岡市

金井

3702216

カンラ*カンラ

カナイ

群馬県

甘楽郡甘楽町

金井

3770803

アカツマ*アカツマ

カナイ

群馬県

吾妻郡吾妻町

金井

3700341

ニツタ*ニツタ

カナイ

群馬県

新田郡新田町

金井

3700303

ニツタ*ニツタ

コカナイ

群馬県

新田郡新田町

小金井

1730024

イタハシ

オオヤマカナイ

東京都

板橋区

大山金井町

1950072

マチタ

カナイ

東京都

町田市

金井

1950071

マチタ

カナイ

東京都

町田市

金井町

2440845

ヨコハマシサカエ

カナイ

神奈川県

横浜市栄区

金井町

2580028

アシカラカミ*カイセイ

カナイシマ

神奈川県

足柄上郡開成町

金井島

9530144

ニシカンハラ*イワムロ

カナイケ

新潟県

西蒲原郡岩室村

金池

9203134

カナサワ

カナイチ

石川県

金沢市

金市町

9200336

カナサワ

カナイワホン

石川県

金沢市

金石本町

9200335

カナサワ

カナイワヒカ

石川県

金沢市

金石東

9200337

カナサワ

カナイワニ

石川県

金沢市

金石西

9200338

カナサワ

カナイワキタ

石川県

金沢市

金石北

4020041

ツル

カナイ

山梨県

都留市

金井

3830008

ナカノ

カナイ

長野県

中野市

金井

3990721

シオシリ

カナイ

長野県

塩尻市

金井

5016037

ハシマ*カサマツ

ニシカナイケ

岐阜県

羽島郡笠松町

西金池町

5016038

ハシマ*カサマツ

ヒカシカナイケ

岐阜県

羽島郡笠松町

東金池町

4901221

アマ*ミワ

カナイワ

愛知県

海部郡美和町

金岩

5151107

マツサカ

サカナイ

三重県

松阪市

阪内町

5110922

クワナ

ニシカナイ

三重県

桑名市

西金井

5110921

クワナ

ヒカシカナイ

三重県

桑名市

東金井

5110223

イナヘ

イナヘチヨウキタカナイ

三重県

いなべ市

員弁町北金井

5110283

イナヘ

タイアンチヨウミナミカナイ

三重県

いなべ市

大安町南金井

6128226

キヨウトシフシミ

モモヤマチヨウカナイトシマ

京都府

京都市伏見区

桃山町金井戸島

6128225

キヨウトシフシミ

ヨシシマカナイト

京都府

京都市伏見区

葭島金井戸町

6650824

タカラツカ

カナイ

兵庫県

宝塚市

金井町

6496256

ナカ*イワテ

カナイケ

和歌山県

那賀郡岩出町

金池

7080855

ツヤマ

カナイ

岡山県

津山市

金井

7191114

ソウシヤ

カナイト

岡山県

総社市

金井戸

7730007

コマツシマ

カナイソ

徳島県

小松島市

金磯町

8112402

カスヤ*ササクリ

カナイテ

福岡県

糟屋郡篠栗町

金出

8700026

オオイタ

カナイケ

大分県

大分市

金池町

8700839

オオイタ

カナイケミナミ

大分県

大分市

金池南

 

大阪・関東・濃尾平野の「河内・金井」地名

一万年前、東京、大阪、名古屋の大都市はなかった。氷河期以後の温暖化にともなう海面上昇により、海中にあったと思われる。しかし温暖化にともなう降雨量増加の影響もあり、周囲の山々から流れ下る土砂が海を埋めていく。河口が湾入しているところであれば、海底地形の形状なども考慮すると土砂の堆積は速くなる。現在の海岸線になったのは極めて最近のことである。なお、陸地で谷に土砂堆積が起こってできた平野を盆地と呼ぶそうである。

これらの沖積平野においては、徐々に面積を増すと同時に、肥沃な土壌、豊富な水源を利用した農耕が始まるのは自然な成り行きである。次第に人口が増えていく

大阪府はほぼ全域がこのような沖積平野上にある。県境は生駒や金剛、葛城山を結ぶ山脈である。生駒山の更に北に山脈を分断する形で、平野を形成した土砂を運んだ淀川が大阪湾に注いでいる。「河内の国」とは北は寝屋川市や守口市から大東、八尾、柏原、松原市を経、河内長野市あたりまでを指す広い範囲である。ZIP地名では広域地名の河内長野市、南河内郡があり、東大阪市には複数の「×河内」がある。河内より西の大阪湾に向かって開けた平野部は河内ではない。平野部には「河内」地名はない。大阪平野を取り囲むように河内がある。

最後に埋まったのは大阪市と真東に十数キロ入った生駒山のふもとの八尾、大東市、東大阪市あたりまでの河内湾(最終段階では河内湖)である。地図を見ると大阪平野には、今でも湿地帯の痕跡を残す多くのため池が認められる。

 

一方、関東平野の規模は更に大きく、東京都以外、関東地方全域にまたがっている。すなわち東より、千葉、茨城、栃木、群馬、埼玉、東京、神奈川の都県で、これらの都県を結ぶ線の内側が関東平野である。最も温暖化が進み、陸地の氷が溶け、水浸しになった6000年前前後ではこの範囲は海中に没していたが、千葉や茨城県の高い部分は海の上にあった。

前述のGoogleEarthで関東平野を見ると、沖積平野を取囲むこれら都県の山岳部からの大量の土砂が山崩れのように関東平野を覆いつくしているように見える。

 

上の図はGoogleEarthで表示された関東平野の上に、「かわち」「かわうち」「こうち」と読む「河内・川内」地名、と「金井」で表される「かない」地名のZIP所在地に目印をつけたものである。「かない」は赤、「かわち」は黄色、「かわうち」は水色、「こうち」は緑で示している。

図を見てわかるように、全て平野を取囲む山々の山すそにある。特に北部では「金井(かない)」地名が切れ目無く、線状につながり、更に「河内・川内」地名が間隙を埋めている。また「こうち」の地名も西側で「金井」地名と連携して平野部との境を区切っている。大阪平野の「河内」の分布と同様である。このような「金井(かない)」分布の様相は「かわち、かわうち、こうち」がもともとは「かない」と呼ばれていたのではないかということを強く示唆するものと考える。「川」に対するこだわり、しかも意味が忘れられた時点で「ない」と呼ばれている現状にかんがみ、漢字表記で「川内」とされたのであろう。「川・河」の部分が「か」や「かわ」や「こ」と読まれ、安定していないのも、そのためかもしれない。

「金井(かない)」は金気のある井戸ではない。「河内」の「内」はアイヌ語地名によく使われる「ナイ」地名の訓読みしたものである、と、確信に近いものを感じている。

 

濃尾平野は、深く湾入した伊勢湾の最深部から始まる。名古屋市のすぐ西に並んで河口を持つ木曽川、長良川、揖斐川などの河川の運ぶ土砂によって形成された平野であり、北端は岐阜県美濃市付近である。平野の形成は前2平野と比較して遅く、「5千年前から堆積が始まった」と木曽川河川事務所のHPに載っている。下流部は今でも海抜0m地帯が広がっている。

下に濃尾平野を取囲む(愛知、岐阜、三重県)「金井」「河内」の分布を示す。「かわうち」とよむ地名はなく。2件は「かわち」と読み、残りは「こうち」よむ。

大阪、関東平野に比べて「金井」「河内」地名の平野周辺部の連続性はあまり明確ではなく、愛知県に4件のZIPが認められるだけである。しかしこれらは前2平野と同様に、平野部より少し高い平野周辺に位置している。むしろ注目すべきことは、三重県沿岸の伊勢湾の東縁を通って紀伊半島東側に連続する「河内(こうち)」地名である。平野とはとてもいえない狭小な海岸の上流にある。広大な、船で行くには困難な、湿地帯の最深部への到達をあきらめ、渥美半島のすぐ対岸の伊勢志摩を目指し、そのまま紀伊半島沿岸を南下し「河内」すなわち「ナイ」地名を残した人々の存在を想像させる。

「ナイ」がアイヌ語起源の「川」であるとしたら、「かない」「かわち」の「か」は何であろうか。すでに「か」は「かみ」の「か」の意味であるとの見解を紹介した。とすると「かない」は「上のほうの川」ということになる。「かみかわ」あるいは「かもがわ」(先に「かみ」は元々「かも」といっていたのではないかと考察した)ならどこにでもありそうである。平野部に住む住人にとって正にこれまで挙げた「河内」「金井」は上流になる。「河内・川内」を「うち」と読むよみ方がある。元は「こ」であったとすると、これまでに「こ」は「密接した」という意味ではないかと解釈してきたので、「川に密接した場所」「川のある場所」ということになる。「こかわ」も日本全国にありそうな地名である。事実、255件の「コカワ」を含むZIPがあり、596件の「カミカワ」、125件の「カモカワ」字列を含むZIPがある。この中で「上川」「神川」と表記される地名は明らかに「かわち」地名と対照的に東日本に多い。また「コカワ」は「小川」「横川」「粉川」などが多いが、「か」も「こ」も含んだ「加古川(かこがわ)」も兵庫県の広域地名であり、該当する。

ところで、北海道の「ナイ」地名の場合多様な形容句が前に付されるのに反して、北海道以外では、すべて「河内・金井」であり著しくバリエーションを欠く。これは一般名詞として「コナイ」や「カナイ」とよんでいたのが固有名詞化したためではないか。

なお、「コナイ」を含む地名は単独では無く、北海道の上磯郡木古(キコナイ)内町、青森市孫内(マゴナイ)、岩手県小子内(オコナイ)、秋田県の田床内(タドコナイ)と田子内(タゴナイ)のみである。

また、高知県の「こうち」も「河内」地名と関係するかもしれない。あるいは同じく四国香川県の「かがわ」も「かわち」と同義語かもしれない。「神奈川」も「金沢」も「河内」と似たような意味かもしれない。

リストをみると「金井」が関東に集中し、反対に「川内」「河内」の分布は西日本に多い。東西日本における漢字文化の影響力の差異の反映かもしれない。

「河(川)内」や「金井」の多くが、現在の海岸線ではなく、海岸線(平野がある場合は元海岸線)より少し山側にあるところから、これらの地名が、沖積平野が形成される初期段階から存在した地名であることが示唆される。しかも、この時代では極めて人口希薄な西日本にも広く存在する。西日本の人口が増加する以前に、少なくとも弥生時代に入る以前に、「ナイ」地名を残した人々が西日本にいたことになる。最北端の、縄文遺跡も多い北海道に夥しく存在する「ナイ」地名文字列などのアイヌ語色の強い文字列が中期縄文遺跡分布や緯度・経度と相関しない一因であると思われる。

 

「シス」

「リン」を含む地名の解釈から大きく話は逸れてしまったが、元に戻して縄文遺跡分布と相関の高い文字列を含む地名の検討を続けたい。下の表は「シス」を含むZIP地名一覧である。東住吉(ひがしすみよし)、心斎橋筋(しんさいばしすじ)のように、原簿(jomon.lzh)の「シス.txt」から、「シ」と「ス」が明らかに別単語の語尾と語頭が連続した「しす」地名を排除し、整理したたリストである。「シス」文字列は関東地方に中心を持つ「遺跡密度」より北海道で最も高い値を示す「遺跡数」指標と高い相関を示す。

都道府県別「遺跡数」とは0.4529(p<0.0014)の値を示すがその他の指標とでは0.4に達していない。なお下記リストに基づく「シス」地名出現率と遺跡との順位相関係数は、更に上昇して0.5069p<0.000276)で、極めて高い値を示す。

北海道では34ZIPを含むやや大きい広域地名の静内町があり、そのほか治水(しすい)町、吉住(よしずみ)、後静(あとしず)など、他府県には見られないほどの多様な「しず」を含む地名が見られる。今ひとつ、誰でも直ぐに思いつくのは「静岡県」である。県庁所在地の静岡市は、なんと552ZIPを含む広域地名になっている。静岡県には、ほかに、静、静波、静海、巣(わしす)がある。

また関東平野での分布は「金井・河(川)内」地名の分布とよく似ている。すなわち氷河期後の海面上昇後の、沖積平野が形作られる前の海岸線上と思われる場所に「河内・金井」地名と並んで存在する。このような古い海岸線上に分布する傾向は、新潟県、富山県、熊本県などの平野部において普通に認められる。北海道を含め海岸線近辺にある。「シス」地名の近辺には今でも漁港などの港の構造物が認められる。

また、「河内」地名とは異なり、内陸の長野、山梨県でも認められ、更に関東以北では、ほぼ本州の中央部にまで分布が認められる(たとえば岩手県雫石や。福島県猪苗代湖畔の湊町静潟)。

 

850055

クシロ

シスイ

北海道

釧路市

治水町

591363

トマコマイ

シスカワ

北海道

苫小牧市

静川

950183

シヘツ

オンネヘツチヨウキタシスカワ

北海道

士別市

温根別町北静川

741163

フカカワ

オトエチヨウ(ヨシスミ)

北海道

深川市

音江町(吉住)

491644

マツマエ*マツマエ

シスウラ

北海道

松前郡松前町

静浦

493518

ヤマコシ*オシヤマンヘ

シスカリ(3-1ハンチ)

北海道

山越郡長万部町

静狩(3−1番地)

495141

ヤマコシ*オシヤマンヘ

シスカリ(ソノタ)

北海道

山越郡長万部町

静狩(その他)

731101

カハト*シントツカワ

シスン

北海道

樺戸郡新十津川町

士寸

560019

シスナイ*シスナイ

アオヤキ

北海道

静内郡静内町

青柳町など34ZIP

895635

トカチ*ウラホロ

シスナイ

北海道

十勝郡浦幌町

静内

881126

アツケシ*アツケシ

モンシス

北海道

厚岸郡厚岸町

門静

881402

アツケシ*ハマナカ

シリシスムラ(シリシス)

北海道

厚岸郡浜中町

後静村(後静)など11ZIP

200502

イワテ*シスクイシ

イタハシ

岩手県

岩手郡雫石町

板橋など58ZIP

9870283

トオタ*ワクヤ

ヨシスミ

宮城県

遠田郡涌谷町

吉住

9860706

モトヨシ*シツカワ

シスハマ

宮城県

本吉郡志津川町

清水浜

9880471

モトヨシ*ウタツ

イシスミ

宮城県

本吉郡歌津町

石泉

130075

ヨコテ

シスカ

秋田県

横手市

静町

182636

ヤマモト*ハチモリ

カミカシスケタイ

秋田県

山本郡八森町

上嘉治助台

182635

ヤマモト*ハチモリ

シモカシスケタイ

秋田県

山本郡八森町

下嘉治助台

9650203

アイツワカマツ

ミナトマチシスカタ

福島県

会津若松市

湊町静潟

9630203

コオリヤマ

シスカ

福島県

郡山市

静町

9740243

イワキ

タヒトマチイシスミ

福島県

いわき市

田人町石住

9670025

ミナミアイツ*タシマ

シスカワ

福島県

南会津郡田島町

静川

3060001

コカ

シスカ

茨城県

古河市

静町

3192106

ナカ*ウリツラ

シス

茨城県

那珂郡瓜連町

3000744

イナシキ*アスマ

オシスナ

茨城県

稲敷郡東町

押砂

3150076

ニイハリ*チヨタ

カミシスク

茨城県

新治郡千代田町

上志筑

3150074

ニイハリ*チヨタ

シモシスク

茨城県

新治郡千代田町

下志筑

3150075

ニイハリ*チヨタ

ナカシスク

茨城県

新治郡千代田町

中志筑

3002411

ツクハ*ヤワラ

オシスナ

茨城県

筑波郡谷和原村

押砂

3294307

シモツカ*イワフネ

シスカ

栃木県

下都賀郡岩舟町

3294305

シモツカ*イワフネ

シスコ

栃木県

下都賀郡岩舟町

静戸

3294304

シモツカ*イワフネ

シスワ

栃木県

下都賀郡岩舟町

静和

3780077

ヌマタ

イシスミ

群馬県

沼田市

石墨町

2850912

インハ*シスイ

イイスミ

千葉県

印旛郡酒々井町

飯積など19ZIP

9518055

ニイカタ

イシスエチヨウトオリ

新潟県

新潟市

礎町通

9518054

ニイカタ

イシスエチヨウトオリカミイチノ

新潟県

新潟市

礎町通上一ノ町

9520321

サト

シスタイラ

新潟県

佐渡市

静平

9498731

キタウオヌマ*カワクチ

ウシカシマ(ワシス)

新潟県

北魚沼郡川口町

牛ケ島(鷲巣)

9580235

イワフネ*アサヒ

イシスミ

新潟県

岩船郡朝日村

石住

9391116

タカオカ

トイテヨシスミ

富山県

高岡市

戸出吉住

9391115

タカオカ

トイテヨシスミシン

富山県

高岡市

戸出吉住新

9392632

ネイ*フチユウ

ヨシスミ

富山県

婦負郡婦中町

吉住

9250576

ハクイ*トキ

シシス

石川県

羽咋郡富来町

鹿頭

9192223

オオイ*タカハマ

シスイカオカ

福井県

大飯郡高浜町

紫水ケ丘

4060015

ヒカシヤマナシ*カスカイ

シスメ

山梨県

東山梨郡春日居町

鎮目

3940087

オカヤ

オサチシスメ

長野県

岡谷市

長地鎮

3892255

イイヤマ

シスマ

長野県

飯山市

静間

5013153

キフ

シスカオカ

岐阜県

岐阜市

静が丘町

5030983

オオカキ

シスサト

岐阜県

大垣市

静里町

5010452

モトス*キタカタ

タカヤイシスエ

岐阜県

本巣郡北方町

高屋石末

5097823

エナ*クシハラ

シスラセ

岐阜県

恵那郡串原村

閑羅瀬

4200838

シスオカ

アイオイ

静岡県

静岡市

相生町など552ZIP

4140042

イトウ

シスミ

静岡県

伊東市

静海町

4370017

フクロイ

ワシス

静岡県

袋井市

鷲巣

4210404

ハイハラ*ハイハラ

シスタニ

静岡県

榛原郡榛原町

静谷

4210422

ハイハラ*ハイハラ

シスナミ

静岡県

榛原郡榛原町

静波

4840095

イヌヤマ

トウノシスキ

愛知県

犬山市

塔野地杉

4442841

ヒカシカモ*アサヒ

シスラセ

愛知県

東加茂郡旭町

閑羅瀬

5202272

オオツ

イシスエ

滋賀県

大津市

石居

5230886

オウミハチマン

ニシスエ

滋賀県

近江八幡市

西末町

6011123

キヨウトシサキヨウ

シスイチイチハラ

京都府

京都市左京区

静市市原町

6011121

キヨウトシサキヨウ

シスイチシスハラ

京都府

京都市左京区

静市静原町

6011122

キヨウトシサキヨウ

シスイチノナカ

京都府

京都市左京区

静市野中町

6008833

キヨウトシシモキヨウ

ニシスヤ

京都府

京都市下京区

西酢屋町

6010755

キタクワタ*ミヤマ

シスハラ

京都府

北桑田郡美山町

静原

6220315

フナイ*ミスホ

シスシ

京都府

船井郡瑞穂町

質志

6692811

ササヤマ

イシスミ

兵庫県

篠山市

石住

6471714

ヒカシムロ*ホンクウ

シスカワ

和歌山県

東牟婁郡本宮町

静川

6940031

オオタ

シスマ

島根県

大田市

静間町

7050036

ヒセン

シスタニ

岡山県

備前市

閑谷

7541256

ヨシキ*アシス

アオハタク

山口県

吉敷郡阿知須町

青畑区など50ZIP

7710134

トクシマ

カワウチチヨウ(ヒライシスミヨシ)

徳島県

徳島市

川内町(平石住吉)

7870315

トサシミス

アシスリミサキ

高知県

土佐清水市

足摺岬

8030188

キタキユウシユウシコクラミナミ

モハラ(シスイタンチ)

福岡県

北九州市小倉南区

母原(紫水団地)

8614215

シモマシキ*シヨウナン

シスメ

熊本県

下益城郡城南町

沈目

8611211

キクチ*シスイ

カメオ

熊本県

菊池郡泗水町

亀尾など9ZIP

 

「しす」とは何か?

北海道の静内は「新ひだか町の歴史・アイヌ関連」では、アイヌ伝説に基づく「シフチ・ナイ」すなわち「曾祖母の川」の意味ではないかとしている。多分これが一般に受け入れられている説だと思うが、ここでは例によって怪しげな説を展開したい。

先に「いすみ」は、「い」の人々すなわちアイヌ系のが住んでいたところではないか。すなわち「夷住」みではないかと述べた。「住み」の元になったのは「巣」ではないかとも愚考した。「す」は「巣」である。ほかに「あすみ」や「かすみ」などという地名も思い出すかもしれない。特に「あす」を含む地名は既に述べたように「しす」地名とは比較にならないくらい高い中期縄文遺跡密度との相関値0.6292p<0.000002)を示し、第一因子(中期縄文語因子)負荷量は0.5259であった。

また、「かみ・しも」の解釈の中では、「しも」の「し」は下面を支える重要な「物・者」、あるいは、上面を支えるところの構造物である面、ではないかとものべた。すなわち「夷巣(いず)」に対する重要な人々の巣、すなわち「し巣(しず)」ではないか。

山に住む人、里に住む人々、海に住む人々が縄文時代から存在したことは、多数の縄文遺跡分布と相関する地名が海・山を問わず見出されたので、間違いのないことであろう。互いに接する三者の交易が行われるようになる。人口増や気候変動が起こると移動もはじまる。これらの交易や人口移動を下から支えたのが最も下流の海に住む、航海に慣れた人々であったと思う。東日本に「××根」という地名を残した人々であろう、ということから、本地名研究では「ね」の人々という表現をしてきたが、「し」の人々とは、「ね(根)」の人々ではないか。「しす」とは「海洋民の巣」ではないか。

伊豆(いず)半島の駿河湾をはさんでの対岸には静(しず)岡市がある。例外はあるが「しず」は縄文時代の海岸線に並んでおり、背後に山が迫っている小さな海岸平野では今でも港の防波堤がある。

北海道には「河内」はないが、「しずない」がある。

南部の海岸線に他の「しす」を含む地名が下の図のように連続して並んでいる。また途中の苫小牧市静川から北に現在の石狩平野を飛び越し石狩平野の北の端に石狩川の水系に沿って「四寸(しすん)」があり、更に音江町(吉住:よしずみ)があり、最後に温根別町北静川という配置が認められる。当時石狩平野は縄文海進のため、日本海側から深く太平洋側の苫小牧近くまで入りこんだ石狩湾であったとすれば(空と人の空間から大地を眺めるHP、日本海側の沿岸を北上して石狩湾に入り、石狩川を北に辿ったのであろうか。これも「河内」のあるところが、時として山中上流にあることとよく似ている。

「いず」が「いずみ」になったのなら「しずみ」がないかとリストを眺めると、「しずみ」はないが「いしずみ」「よしずみ」が複数ある。海に暮らす人々にとって「沈み」とは縁起でもなかったのかもしれない。「し」と行動をともにした「い」の人々の「い」をつけて「いしずみ」という地名が生じたのかもしれない。

「しずない」の「ない」はアイヌ語かもしれないが「しず」は非アイヌ語である。

「沈む」「静か」という語は「しす」地名の家族単語かもしれない。「下のほうに住む」ということは「沈む」ことであり、「静か」な状態であるので、これらの言葉は源を一にする家族単語かもしれない。

 

「ラス」−「カラス」のついた地名

冒頭の縄文語因子負荷量のリストでは「ラス」を含む地名の第一因子負荷量は0.4139であり「シス」地名の場合よりやや低いが、似た値を示す。ただし北海道には「ラス」地名は見られず、経度とのみ0.4263の値を示し、緯度や遺跡分布密度とは0.4に達しない。すなわち、東日本に偏る。特に中国地方では広島県の鴉ケ岡を除いて出現がない。

「ラス」を含む地名121件のうち89件は「カラス」の3文字列を含む地名で、実質「カラス」地名が第一因子負荷量を支えているように見える。しかし「カラス」地名のみの出現率と遺跡分布等の順位相関値を算出したところ、緯度・経度とは共に0.217、遺跡密度や遺跡数とは0.22200.2178で到底有意な相関とはいえない値に低下する。

ところで、本因子分析に用いられた都道府県の緯度や遺跡分布密度などと相関する文字列リストを見ると、「ラス」以外に「ライ」「アラ」「イラ」「ナラ」「ラサ」「ニラ」「テラ」など多数の「ラ」を含む文字列が含まれている。なお、「カラス」地名以外の31件には「シラス」や「シラスナ」「ヒラス」などが含まれるが、これらの文字列中の「ラ」一字の東西日本や縄文遺跡分布における偏在と合わさって、「ラス」文字列の「中期縄文遺跡」因子における高い負荷量が維持されているように見える。「からす」の「ら」の意味も解釈として重要になってくる。

また、「カラス」以外の「ラス」地名で、「白州」や「白砂」のような「白」が含まれる地名が多いのが目立つ。

下に「カラス」を含むZIP地名を示す

 

0370032

コシヨカワラ

カラスモリ

青森県

五所川原市

烏森

9890524

カツタ*シチカシユク

カミカラスカワ

宮城県

刈田郡七ケ宿町

上烏川

9890527

カツタ*シチカシユク

カラスカワタケ

宮城県

刈田郡七ケ宿町

烏川岳

9870145

トオタ*ワクヤ

ウカラス

宮城県

遠田郡涌谷町

烏鴉

9870423

トメ*ミナミカタ

カラスタ

宮城県

登米郡南方町

烏田

0150085

ホンシヨウ

カラスカワ

秋田県

本荘市

烏川

9600668

タテ*ホハラ

カラスウチ

福島県

伊達郡保原町

烏内

9792323

ソウマ*カシマ

カラスサキ

福島県

相馬郡鹿島町

烏崎

3000836

ツチウラ

カラスヤマ

茨城県

土浦市

烏山

3111207

ヒタチナカ

カラスカタイ

茨城県

ひたちなか市

烏ケ台

3150114

ニイハリ*ヤサト

カラスリ

茨城県

新治郡八郷町

嘉良寿理

3293131

クロイソ

カラスキ

栃木県

黒磯市

唐杉

3290411

シモツカ*コクフンシ

カラスカモリ

栃木県

下都賀郡国分寺町

烏ケ森

3210624

ナス*カラスヤマ

アサヒ

栃木県

那須郡烏山町

旭など28ZIP

2920813

キサラツ

カミカラスタ

千葉県

木更津市

上烏田

2920816

キサラツ

シモカラスタ

千葉県

木更津市

下烏田

2920817

キサラツ

ナカカラスタ

千葉県

木更津市

中烏田

1570061

セタカヤ

キタカラスヤマ

東京都

世田谷区

北烏山

1570062

セタカヤ

ミナミカラスヤマ

東京都

世田谷区

南烏山

9400201

トチオ

カラスカシマ

新潟県

栃尾市

鴉ケ島

9170101

オハマ

タカラス

福井県

小浜市

田烏

3998211

ミナミアツミ*ホリカネ

カラスカワ

長野県

南安曇郡堀金村

烏川

5020046

キフ

ナカラスキノ

岐阜県

岐阜市

長良杉乃町

5031315

ヨウロウ*ヨウロウ

カラスエ

岐阜県

養老郡養老町

烏江

4750932

ハンタ

カラスネ

愛知県

半田市

鴉根町

4840851

イヌヤマ

カラスモリ

愛知県

犬山市

烏杜

4838417

コウナン

ヒカシノチヨウカラスモリ

愛知県

江南市

東野町烏森

5141109

ヒサイ

カラスキ

三重県

久居市

烏木町

5140311

イチシ*カラス

イナハ

三重県

一志郡香良洲町

稲葉など10ZIP

5210227

サカタ*サントウ

カラスワキ

滋賀県

坂田郡山東町

烏脇

6028332

キヨウトシカミキヨウ

カラスマ

京都府

京都市上京区

烏丸町

6020861

キヨウトシカミキヨウ

シンカラスマカシラ

京都府

京都市上京区

新烏丸頭町

6028002

キヨウトシカミキヨウ

タカツカサチヨウ(シモチヨウシヤマチトオリカラスニシイル)

京都府

京都市上京区

鷹司町(下長者町通鳥丸西入)

6020913

キヨウトシカミキヨウ

ヒカシマチ(ナカタチウリトオリカラスマニシイル、ナカタチウリトオリムロマチヒカシイル)

京都府

京都市上京区

東町(中立売通烏丸西入、中立売通室町東入)

6068047

キヨウトシサキヨウ

シユウカクインカラスマル

京都府

京都市左京区

修学院烏丸町

6048186

キヨウトシナカキヨウ

ウメヤチヨウ(オイケトオリカラスマヒカシイル、オイケトオリヒカシノトウインニシイル)

京都府

京都市中京区

梅屋町(御池通烏丸東入、御池通東洞院西入)

6008175

キヨウトシシモキヨウ

カラスマ(2チヨウメ)

京都府

京都市下京区

烏丸(2丁目)

6008418

キヨウトシシモキヨウ

コシヨウカラスマ

京都府

京都市下京区

五条烏丸町

6018016

キヨウトシミナミ

ヒカシクシヨウカラスマ

京都府

京都市南区

東九条烏丸町

6018017

キヨウトシミナミ

ヒカシクシヨウキタカラスマ

京都府

京都市南区

東九条北烏丸町

6018041

キヨウトシミナミ

ヒカシクシヨウミナミカラスマ

京都府

京都市南区

東九条南烏丸町

6011315

キヨウトシフシミ

タイコカラスハシ

京都府

京都市伏見区

醍醐烏橋町

6078191

キヨウトシヤマシナ

オオヤケカラスタ

京都府

京都市山科区

大宅烏田町

5430042

オオサカシテンノウシ

カラスカツシ

大阪府

大阪市天王寺区

烏ケ辻

6520001

コウヘシヒヨウコ

カラスハラ

兵庫県

神戸市兵庫区

烏原町

6310061

ナラ

ミツカラス

奈良県

奈良市

三碓

6310061

ナラ

ミツカラス

奈良県

奈良市

三碓町

7380281

サエキ*オオノ

カラスカオカ

広島県

佐伯郡大野町

鴉ケ岡

7983336

キタウワ*ツシマ

マカラス

愛媛県

北宇和郡津島町

曲烏

7850413

タカオカ*ヒカシツノ

カラステカワ

高知県

高岡郡東津野村

烏出川

7860326

ハタ*タイシヨウ

カラステ

高知県

幡多郡大正町

烏手

8100026

フクオカシチユウオウ

フルコカラス

福岡県

福岡市中央区

古小烏町

8171245

ツシマ

トヨタママチカラス

長崎県

対馬市

豊玉町唐洲

 

「からす」の怪しい地名解釈

「カラス」ZIP地名を確かめると「シス」や「河内」地名の場合とは違った点を指摘できる。

すなわち、いくつかの例外はあるが、「カラス」を含む地名は背後に険しい山のある「岡」にあることが多いといってよい。海岸線上には無く、海岸線近辺にあっても、平野がなく、海に突き出た高い場所にある。また本州のかなり内陸部にも分布している。国土地理院の検索ページで{烏}を入れて検索すると上記リスト中の「からす」地名を含めてリストが出てくるが、その中には人の住んでいない山岳地帯に、多数の「烏川」や「烏岳」「烏森」といった地名が出てくる。

静岡(しずおか)の「しす」は、海の人々、すなわち「し」の「す(巣)」としたが、「からす」は山の人々、「から」と呼ばれた人々の「巣」ではないか。「か」は「かみ(上)」「かむる(被る)」の「か」であり「上のほう(も人々)」となる。「かす」ではなく「からす」であるが「ら」とは何か?

「ら」は「そこ等」「僕等」「はらから(同胞)」の「ら」であると思う。複数を表す「ら」である。「はらから」の「はら」は同腹の兄弟姉妹であり、「から」は彼らの上の世代の血縁達ではないか。「唐天竺」という言葉がある。「唐」「インド」であるが、「から」は中国だけでなく、韓国を指す場合がある。中期縄文時代には「唐」はまだない。「韓国」とはどこに有るか、正確な認識はなかったであろう。とてつもなく遠い場所、すなわち、とてつもなく「上」の方(複数形)を「から」と呼んだのかもしれない。更にその上は「天竺」の「天」である。

筆者の住む泉州あたりで話される言葉において、許容できないような「等(ら)」の使い方をすることがある。すなわち「泉州らへん(辺)では」「わがら(われわれ)が行く」「あそこらに在る」「そこらには花らがいっぱいある」「手ぇらがいっぱいでてきた」などと思わず赤面する。

仏教が入る以前から「寺泊」などの「てら」という言葉があったという可能性を指摘した。「寺」とは「助ける手(複数)」がある場所ではなかったか。

「ら」とは「等」ではないかと思う。

やがて、上のほうの山岳地帯にすむ人々を「からす」と呼んだのではないか。

生き物の表面すなわち、内臓や筋肉を覆うものは「上の組織」、沢山の「皮」が集まり「かだ」がある。果実を絞れば「かす」が残る。すなわち「表面組織の州」が残る。

 

「ライ」地名の「ラ」も「等」か

中期縄文遺跡因子負荷量の高い地名文字列には「ラス」以外に多くの「ラ」を含む文字列がある。すでに「ナラ」地名のところで「アラ」を、上記項目では「ラス」を取り上げたが、「ライ」も「ラ」を含む文字列である。第一因子負荷量は0.4389でこの値は上記「ラス」文字列より高い。また遺跡密度とは0.4730、遺跡数とは0.4193の相関値を示している。

1247件の「ライ」を含む地名リストを見ると「あらい」「ほうらい」「ひらい」「さくらい」「しらい」、漢字表記でいうと「荒井・新井・×洗」「宝来・蓬莱」「平井」「平出」「平泉」「桜井」「白井」「白岩」「白石」等が多数認められる。また「村井」も少数であるが複数含まれる。「×井」は「×居」で表されることもある。これらのZIPが約2/3程度で、残りは出現頻度が少ない、多様な「ライ」を含む地名である。この中で三重県の「度会(わたらい)」については頻度も多いがこれは「度会郡」という広域地名によるものであり。他府県では「わたらい」を含むZIPはまったく無い。

どのような「ライ」地名が中期縄文遺跡分布との相関を支えているのかを検討するために、上記の、具体的な地名の出現率と遺跡分布などとの相関値を再計算した。

「みなとみらいクイーンズタワー」や「御蔵島村一円」「下奈良今里」のような明らかに最近できた地名と思われるものや、明らかに「ライ」が別単語の最後と先頭であると考えられる地名を削除した上で再計算が行われた。

下に順位相関値計算結果を示す。

 

 

中期縄文遺跡密度

遺跡数

緯度

経度

宝来・蓬莱

0.0128

0.0070

0.0037

0.1145

桜井・櫻井

0.0973

0.1267

0.0345

0.0710

荒井・荒居

0.4640

0.4707

0.4702

0.4675

新井・新居

0.6940

0.6429

0.3676

0.4743

×洗

0.0929

0.0870

0.0579

0.0575

荒井(居)・新井(居)合計

0.7265

0.6806

0.5138

0.5755

全「あらい」合計

0.6783

0.6588

0.5134

0.5240

 

 

 

 

 

白石

0.3145

0.2978

0.2071

0.2006

白岩

0.1748

0.2367

0.2767

0.2187

白井

0.2429

0.2400

0.0083

0.1451

白石・岩・井合計

0.0710

0.0483

0.0476

0.0264

 

 

 

 

 

平井

0.2075

0.1803

0.0371

0.1443

平出

0.2805

0.3087

0.2597

0.1730

平石

0.1507

0.1255

0.0091

0.0327

平泉

0.1464

0.3582

0.2291

0.3113

平井・出・石・泉合計・

0.2543

0.3143

0.1652

0.2863

その他の「ライ」

0.1642

0.2295

0.2192

0.2644

 

p<0.00000001

p<0.000001277

p0.001141399

p<0.00025

p<0.001141

p<0.040484

 

おどろくべき高い相関値が計算された。「アライ(荒井(居)、新井(居))」を含む地名の都道府県別出現率と、同じく中期縄文遺跡密度の間の相関値は0.7265であった。この値は、もしも偶然によるものとすれば100万分の1ぐらいの確率でしか生じない。「身長と体重」の相関値程度であろうか。また遺跡数や緯度などとも偶然で起こりえないような相関値を示している。 

これは、「サワ」や「ヌマ」に迫る高い値であり、「×沢」「×沼」地名と同程度に、東日本特有の地名といってよい。

リストを見ると愛知県より東には「荒井や新井」の地名は、兵庫県高砂市荒井町××を除いて一件のZIPもない。この点では「沢」「沼」地名より明快である。

また「ヒライ」を含む地名出現率における相関値も無視できない程度の低い「正」の相関値を示している。

一方「ヒライ」や「シライ」包含地名のの中で「平石」「白石」のような「石」を含む地名は、低い「負」の相関を示していることにも留意すべきことのように思われる。「岩手」などの「イワ」文字列を含む地名は東日本に濃いにもかかわらず、意味の点でよく似た「石」を含む「白石」の遺跡密度との相関値は−0.3145(p<0.05)であった。

さて、「あらい」はどのような場所に在るのだろうか。

GoogleEarthや国土地理院の検索ページで検索したところ、「あらい」は最後の氷河期以降堆積した平野や盆地上には存在しない。ただしこれらの平地を取囲む古い海岸線上、あるいは内陸部においては、川が流れており、元は広い湿地帯だったろうと思われる盆地を取囲む、やや高い場所にある。すなわち当時の湿地帯の「ほとり」にある。そして地図を見ると、「あらい」の下には、今では、しばしば「たんぼ」の記号が記されている。

河口があっても沖積平野がない場合は海岸線上にある。「河内」や「金井」あるいは、静岡や静内の「シス」の付く地名と同じような立地条件であり、沖積平野が形成される以前からあった古い地名であることが窺われる。この点、宝来や蓬莱などの「ホウライ」地名とは大きく異なる。「ほうらい」の多くは沖積平野にある。

また「新井」と書いて「にい」とよむ地名や、「新井田」と書いて「にいだ」と読む地名が存在し、いずれも川筋にあり「田」の記号が目立つ地域である。

「あらい」は沖積平野形成初期の農耕開始時期にまでさかのぼる地名であるように思う。

なお「新」を使った「あらい」すなわち「新井、新居」は福島県以北では出現がない。東北地方ではもっぱら「荒井」と表記される。

多くの人々は、地名にしばしば現れる語頭の「あ」を「吾」と解釈している。これらの人々の言を待つまでもなく「吾川」や「吾妻」と言う地名は沢山あり「吾」が使われている。その他、千葉県飯能市「吾野(あがの)」や佐渡市「吾潟(あがた)」、島根県邑智郡邑智町「吾郷(あごう)」、徳島県三好郡西祖谷山村「吾橋(あばし)」、高知県須崎市「吾井郷」、宮崎県日南市「吾田(あがた)」、鹿児島県肝属郡「吾平(あいら)町」というZIP地名があり、漢字表記が行われた時点で「あ」は「われ」との認識は一般的であっただろう。

一方、われわれの日常生活における一人称は「わたくし」「わたし」「われ」「わし」「われわれ」である。「あ」が「わたし」になったとも思えず、2系統の一人称があることになる。なお「萱野茂のアイヌ語辞典」には<「a=」@私、私たち・・・・・>と出ている。

本稿の最初のほうで<「奈良」地名が縄文語的であり「慣れる」「熟(な)れる」という言葉と関係が有るのではないか、また、「なら」に対立する地名に「新」や「荒」の漢字を使って表される「あら」地名があるのではないか>と述べた。奈良に住む人々と異なる「あら」と呼ばれる場所や人々が居たのを暗示する。「あら」のつく場所に住む人々にとっては、自分自身のことを「新しい」とか「荒い」などという筈もなく、自分のことを「あ」とよび、複数すなわち「我等」を表すため、「ら」をつけ「あら」と言っていたのかもしれない。更に「居るところ」という意味の「い」を付け、「我々の居るところ」を「あらい」と呼んだのかもしれない。やがて「なら」の人々も、その場所を「あらい」と呼ぶようになる。「なら」の人たちは、「あらい」の「あら」は「新た」の「あら」か、「荒い」の「あら」か、と類推して「新井」「荒井」の漢字表記地名が成立する。「あらい」の「ら」も名詞のあとに付き、複数を表す「ら」と解釈できる。

なお、「あらい」ではないが、「あら」を含む地名(本稿前半の「荒、新」分布図参照)は東日本に強く分布するとはいえ、九州のはるか南方海上、沖縄県にもやや強く分布する。以下のとおりであり、分布は沖縄本島だけではない。また、熊本県や鹿児島県も「あら」地名出現率の高い県である。

 

沖縄県    宜野湾市              新城

沖縄県    石垣市                新川

沖縄県    糸満市                新垣

沖縄県    中頭郡中城村          新垣

沖縄県    島尻郡具志頭村        新城

沖縄県    島尻郡南風原町        新川

沖縄県    宮古郡城辺町          新城

沖縄県    宮古郡上野村          新里

沖縄県    八重山郡竹富町        新城

 

この事は、「いずみ」「そね」「かね」「みね」「ひら」地名等と同じように、中期縄文時代以前、少なくない人数の本土からの渡航があったことを示唆している。

 

「い」の二通りの意味

ところで、「いす(ず)み」地名のところで極めて人口希薄な縄文時代におけるアイヌ系の人々の西日本への拡散の可能性を指摘した。「いずみ」の「い」はアイヌ系の人々でなかったという思いから「い」の人々、という表現をした。「あらい」の「あら」は「い」の人々ではなかったか。一方「あらい」の語尾の「い」は「居る」の「い」であると述べた。「い」の意味説明に関して二枚舌の説明になってしまう。

都合のよい解釈かもしれないが二通りの説明が可能のように思われる。@ひとつは異なる2言語の複合がすでに行われており「同音異義語」としての「い」が既に存在していた。A今ひとつは「アイヌ」の「イ」と「居(い)る」の「い」は、かつて、よく似ているが異なる音であった という可能性である。可能性を指摘するのにとどめたい。

 

「ひらい」について

「ひらい」の地名は、その分布が四国や中国地方にまで及んでいる(その分「あらい」と比べて縄文遺跡分布などとの相関値が低い)という点を除いて「あらい」の立地条件とよく似ている。すなわち沖積平野や盆地が形成される以前の湿地帯周辺部と思われるあたりにあることが多い。しかしよくみると「あらい」はしばしば周辺部とはいえ等高線幅の広い広大な農作地帯の端にあるが、「ひらい」は、「平井」とは名ばかりで、更に高いやや等高線の狭い場所にあることが多いように思われる。狭い平地にはしばしば小さな集落がある。田んぼの印が付いている。

また、縄文時代に人口希薄な西日本に分布する「ひらい」は更に高い山中(海南町平井、美馬郡一宇村平井、古座川町平井)に存在することもある。

先の各種「ヒライ」の相関表を見ると、「ヒライ」を含む地名の都道府県別出現率と中期縄文遺跡分布との相関は「平泉(ひらいずみ)」「平出(ひらいで)」に負うところが多く、単独の「ひらい(平井、平居)」地名は正相関とはいえ、有意な値には達していない。「ひらい」を含む地名の中期縄文遺跡分布との弱い相関は、「ひらい×」の「ひらい」の部分ではなく「×」の部分、すなわち、「ずみ」や「」の部分によるものと解釈できる。

「いわ」「らどまり」「たやま」など「て」地名が緯度や縄文遺跡分布と密接に相関したり(パートA)、「いすみ」や「あすみ」が縄文遺跡分布などと相関することが既に述べられている。

しかし、後ろに、なにも付かない「ひらい」地名が中期縄文遺跡分布と有意な相関を示さなかったとはいえ、中期縄文時代にはなかった地名とは言えない点もある。すなわち「あらい」と同じように沖積平野周辺にある点。中期縄文時代に既に東日本から、かなりの人々が船を利用して西日本に拡散し、縄文地名を残していた可能性という点である。「あらい」がZIP地名で見る限り、東日本に限局しているのに対して、「ひらい」は四国、九州にまで分布が認められる(そのため「ひらい」地名の東西分布が不明瞭になる)。

また地名には、「あらい」のほか「藤井」や「中井」など、おびただしく末尾に「い」の付く地名が認められるが、これらの「い」が先に述べたように中期縄文時代にまでさかのぼることのできるところの「居る」の意味の「い」であるとすると、「ひらい」もまた縄文色の強い地名と言うことができるように思う。

更に、「ひら」の頭に「下」のつく「下平」の地名出現率は、「モヒ」地名の項で示したように、中期縄文遺跡密度と0.391(p<0.0065)の偶然に生じたとは思えない相関値が算出されている。

「ひらい」も「あらい」と同じように中期縄文時代に使われていた地名であるように思われる。ただ「あらい」は東日本にとどまり、「ひらい」は西日本にも分布を広げている傾向があるので、「ひらい」は、より新しい世代によって、西日本に、もたらされた地名のように思われる。

国土地理院の検索ページで「平井」「平居」を入れて検索すると、郵便番号地名に含まれない「ひらい」地名もたくさん出てくる。その中には郵便配達にはふさわしくないような山間の険しい場所に記された「ひらい」地名も数多く認められる。この点「ひらい」の「ひら」は「崖」や「坂」を意味するアイヌ語解釈がふさわしいように思われる。すなわち「崖や坂のあるところの居住地」である。

しかし別の解釈(怪しげな)も可能なように思う。

「ひらい」は「ひら(崖、坂)」+「い」ではなく「ひ」+「ら」+「い」から成り立っている

すなわち、「あらい」の解釈と同じく「ら」は「等」で、「い」は「居」である。「ひ」とは何であろうか。

孫(まご)は「間」をおいての子であるとすると、曾孫(ひまご)は更に下の(低い)世代の子である。「姫(ひめ)」は身分ある人の娘、すなわち下の世代の女子である。「××彦(ひこ)」という男子の名前が、古文のみならず現代でもよく見かける。筆者の勝手な思いかも知れないが、なにか「彦」は「Jr.(.junior)」という語とダブってしまう。「ひ」は次の世代、すなわち、より「低い世代」をあらわす接頭語ではないだろうか。

次世代というよりも「経年変化した」という意味かもしれない。すなわち「ひねた」「ひねくれる」という言葉がある。「ね沢庵」という言葉もある。泡盛の宣伝コピーには「ね麹を使った泡盛」と出ていた。「ひね」は「経年変化した根、古い根」であると思う。「新しい世代」という点では正反対の意味を含むが、「時を経た」という意味では同じである。「古いものは新しい」である。

一組の夫婦から複数の次世代が産まれる。多少の年齢、特性の差はあっても第一世代から見ると似たり寄ったりの子供たちである。「ひら」とは「次世代のひとびと」であり、凹凸のない「平たい」集合体である。

「あらい」は内陸部盆地が形成され始める初期に、湿地帯周辺に農業を開始し始めた「第一世代」であり、主として東日本にとどまった農民であるのに対して、「ひらい」は、更に、山手方向に狭小な「田」を広げる試みを為し、あるいは、海洋民とともに西日本、すなわち鄙(ひな)びた日本へ拡散していった人々の居るところ(「ひ(次世代の)」+「ら(人々の)」+「い(居るところ)」)である。

「ひくい(低い)」「ひらた(平田)」「ひらたい(平たい)」も語頭に「ひ」を含んでいる。「ひな(雛、鄙)」「あさひな(地名の)」も家族かもしれない。「干潟(がた)」は時が経過した後にできる潟である。

「ひ」一字が上記の意味だとすると、同じく「ひ」一字の単語「日」や「火」とぶつかってしまう。「日」も「火」も基本的な、重要な単語であり、極めて古い時代からあった言葉であろう。日本語には3種類の「ひ」があることになってしまう。日本語成立時の複数言語の複合によるものと思いたい。

 

「マイ」

苫小牧市、舞鶴市、釜石市、米原町(本研究は旧郵便番号リストを使用している。現在は米原市)は誰でも知る広域地名欄に記載される地名であり、いずれも「まい」文字列を含んでいる。「マイ」を含む地名の都道府県別出現率の中期縄文地名因子(第一因子)における負荷量は0.5247と高い。

北海道には「苫小牧」のみならず「簾舞(みすまい)」「歯舞(はぼまい)」「鳧舞(けりまい)」「様舞(さままい)」「笛舞(ふえまい)」「鴻之舞(こうのまい)」「古舞(ふるまい)」「人舞(ひとまい)」「軽舞(かるまい)」「珸瑤瑁(ごようまい)」という振り仮名がなければ読めない「まい」地名がある。漢字の「舞」で表される地名は北海道に集中しているが、先の舞鶴市のみならず、愛知県に「舞子」「舞木」、隣接の静岡県「舞舞木(まいまいき)」、神戸市垂水区に「舞子」などがあり、北海道以外にも「舞」を含む地名が所々にある。

「今井(いまい)」「今泉」「今市」「今池」「天池」も見過ごしてしまうかもしれないが「まい」を含んでおり「今+井、泉、市」を含む地名は「マイ」リスト中に、「いまい」は63件、「いまいずみ」は66件、「いまいち」は32件にものぼる。筆者にとっては違和感もなく、地名らしい地名である。

神奈川県内には「三枚町」のほか「井田三舞町」「蒔田(まいた)町」がある。

そのほか「生池(なまいけ)」「玉井」などがある。苫小牧は北海道の苫小牧市(92ZIP)のみであるが、39ZIPからなる釜石市の「釜石」は宮城県に本吉郡唐桑町「釜石下」があり、茨城県には稲敷郡東町「釜井」という「釜」を使った地名がある。

833件ものZIPがあり、jomon.lzhに示される様々の漢字で表記された「マイ」地名リストを、漢字の意味を考えつつ、一つ一つ眺めると、それぞれの地の固有な地名起源を想像させ、楽しめる。神奈川県の三枚町は「田が三枚」、三舞は「三種の舞い」が行われ、蒔田は「種を蒔く田」・・・ 舞鶴は乱舞する鶴の地、米原は「米の原」、釜石は「石の釜」と関係あろうかなどと...

しかし本当に、多様な漢字で表記される「マイ」包含地名は、漢字で書き分けられるほど異なる起源を持っているのだろうか。中期縄文時代には漢字はなかった。

 

「今井」「舞」「米」などと書き分けられる「マイ」地名の縄文遺跡分布との相関関係

下の相関表は様々の漢字で表記される「まい」を含む地名の遺跡分布や緯度・径度との相関関係を示している。

表を見ると「今泉(いまいずみ)」が遺跡分布との相関や東西日本の「マイ」地名の偏在を強く支えていることがわかる。また出現は少ないが「生井(なまい)」という、漢字の字面から見ると奇妙としか思えないような地名が山形、栃木、茨城県に7ZIP存在し、東西日本の「まい」地名の偏在に寄与している。「今井」「今市」「今池」という、どこにでもありそうな地名は、どのような指標ともほとんど相関関係を示していない。

「橋」を含む地名が「川」や「沢」の付く地名と同じく中期縄文遺跡分布と相関することを「怪しい地名研究パートB」の後半で既に指摘したが「二枚橋」や「三枚橋」が岩手県から静岡県に認めらる。「はし」の部分ではなく、「はし」の前につく「まい(枚)」の部分も遺跡分布や緯度などと有意な相関関係を示しているといえよう。

また「枚」を使った地名は、ほかに宮城県「一枚田(いちまいた)」福島県「六枚長(ろくまいちょう)」新潟県「三枚潟」、同じく「上・下八枚」静岡県「千枚原」がある。いずれも数字の部分は中国語の読み方である。「枚」で表される「まい」地名が生じたのが中期縄文以前とすれば、「まい」の意味が忘れられた後世に、もっともらしく意味をあわせるために付け加えられたのかもしれない。元は「まいた」「まいはし」「まいかた」「まいはら」「まいちょう」であったかもしれない。

「前」のつく地名はたくさんあるが(たとえば松前、御前崎)「まえ」も「まい」の音韻変化したものとすると「まい」地名は更に地名は増加する。

 

 

遺跡密度

遺跡数

緯度

経度

 

「マイ」全体(833ZIP)

0.4285

0.4455

0.5060

0.5103

 

「今泉」を含む地名(66ZIP)

0.4772

0.3931

0.4057

0.3789

 

「今井」を含む地名(63ZIP)

-0.1021

-0.0045

-0.0140

-0.0171

 

「今市」を含む地名(32ZIP)

-0.1917

-0.2610

-0.0685

-0.1900

 

{今池」を含む地名(7ZIP)

0.1333

0.0956

0.0691

0.0564

 

上記「今」地名計(168ZIP)

0.3081

0.1683

0.2387

0.1862

 

アマイケ(天池、尼・雨池)(21ZIP)

0.2684

0.2718

0.3598

0.2001

 

生井(7ZIP)

0.3123

0.2992

0.2603

0.3162

 

「舞」を含む地名(270ZIP)

0.1134

0.1562

0.1438

0.2031

 

「米」を含む地名(47ZIP)

0.1787

0.2817

0.3849

0.4181

 

「枚」を含む地名(18ZIP)

0.3542

0.3733

0.4407

0.4590

 

「駒井、駒板」を含む地名(7ZIP)

0.2517

0.2167

0.0594

0.1659

 

「熊井、熊石、熊出、熊居」を含む地名(21ZIP)

-0.0491

0.1093

0.0530

0.0712

 

上記「熊」+「駒」地名計(28ZIP)

0.1812

0.2720

0.1432

0.2351

 

上記以外の「マイ」地名(203ZIP)

0.2443

0.2983

0.3119

0.3835

p<0.05

p<0.01

p<0.005

p<0.001

 

 

中期縄文遺跡のもっとも多い北海道において「鴻之舞」のような「舞」のつく地名が多く、かつ多様であり、遺跡数や緯度との相関を期待したが「舞鶴」や「舞子」など西日本にも多く、有意な相関関係を示していない。

「米原」のような「まい」の部分に「米」が充てられた地名の都道府県別出現率は、緯度や経度との間に信頼に足る相関値が示されている。ただし遺跡数との相関値は5%水準にわずかに達していない。「稲作は西日本から始まり徐々に北に広がっていった」という常識にもかかわらず、東(北)日本に「まい」を「米」で表す地名が多いのは興味深い。「新田」地名や「田(た)」「畑」地名がむしろ東日本に多いという事実(怪しい地名研究パートC)と符合している。

「駒井」など「駒(こま)」地名出現率の遺跡密度との相関値は0.2517で無相関確率(p)は0.0878で、この値は10回に1回程度ぐらいの確率で生じる値であり、明確に無相関とも言い切れない。

「怪しい地名研究パートC」の中で「くま」を含む地名は西に行くほど多く、反対に「こま」は東日本に行くほど多いことを指摘して、「こま」が、時代を経て「くま」になった可能性を指摘した。また、「こま」「くま」は「連続する間」とした。すなわち「こまい」は「こま・い」であり別単語の「こま」という単語と、「い」という単語がたまたま連続した地名であると考えることも出来、他の「まい」地名と区別されるべき地名かもしれない。(ただし筆者は「こま」「いま」も、更に「い」ないし「こ」+「ま」に分割でき「ま」は「まい」の「ま」と意味は同じと考えている。「いま」の「ま」は時間的な「間」ととらえ「<い>の人々の時代、すなわち<今>」ではないか)

同じような可能性は「いま・いずみ(今泉)」についてもある。「いすみ」は本稿で縄文色の強い単語である事をすで指摘した。とすると「いまいずみ」は「いま・いずみ」と区切られ、純粋の「まい」地名とは区別されるべきかもしれない。ただし「いずみ」も中期縄文遺跡分布と強く相関するので「今泉」は上記の相関表において遺跡密度などの指標と高い有意水準の相関値を示している。「今井・今市・今池」も同じである。「市(いち)」や「池(いけ)」は新しい言葉であろう。「池」の付く地名は西日本に多く縄文遺跡分布とは有意な逆相関を示す(パートC)。

これら以外、様々の漢字で表記された多様な「まい」地名がある。むしろ、これらの「まい」地名が第一因子負荷量の多さを支えている。多くは漢字からの意味の推定を阻んでいる。

上の相関表をみてもう一つ気づくことは、中緯度の関東地方から長野・山梨県でもっとも高い値を示す遺跡密度との相関より、北海道でもっとも高い値を示す遺跡数や、経度・緯度の指標との相関関係が強いことである。

「まい」とは何か。

 

「まい」の怪しい地名解釈

パートAでは「大間(おおま)」「大曲(おおまがり)」などの「オマ」地名が東日本に偏在することを指摘し、「ま」は漢字通り「スペース」の意味と考えた。「×沼」地名出現率も遺跡分布や緯度・経度と極めて高い相関を示す。「沼(ぬま)」の「ま」も「湿地帯=ぬ」の「スペース=ま」の意味でないかと述べた。また「駒(こま)」地名の「ま」の部分は同じく他集団との境をなす「スペース」の意味ととらえた。

一方「新井(居)」「平井(居)」等、数多くの地名に見られる「×井(居)」も漢字の意味の通り「居る」の「い」ではないかと述べた。

とすると、あまりにも単純ではあるが「まい」は「間隙の居住地」となる。集落間の人口希薄な場所に人家がある、そこが「まい」である。「×い」の間に「×まい」がある。「×い」村に至るには「×まい」がある。

片山(1993:「日本語とアイヌ語」)は「つらなる(連なる)」「伝う」「つな(綱)」「つる(蔓)」などは「アイヌ語」「日本語」の共通の源を持つ家族単語ではないかとしている。「鶴舞」や「舞鶴」は「鶴が舞う」のではなく、「間居蔓」「蔓間居」ではないか。「まい」が点々と蔓のように連なる地域ではないか。

アイヌと和人の接点の地になった「松前郡松前町」の「松前(まつまえ)」は「まとうまい」からきているという説が有力だということである。「まい」が「まえ」に変化するとしたら全国に「まい」地名以上に「まえ」の付く地名はある。「マエ」を含む地名の出現率は遺跡分布や遺跡などと0.4以上の相関を示さず「マエ」を含む地名リストを示していないのでmae.lzh」を示す(この青色表示部をクリックするとダウンロードできる)

「マエ」を含む地名は1616件にのぼる。リストを見ると1535件は「マエ」の部分は「前」を使って漢字表記が行われている。また全国には多数の「×駅前」や寺院の名前を表す「×寺前」の地名が含まれている。鉄道駅も仏教伝来も中期縄文時代よりずっと後のことである。そこで「マエ」リストのうち、「前」で表記する地名、「×駅前、または×寺前」を削除したリストを用意して「まえ」地名の都道府県別出現率と遺跡分布などとの相関係数を算出したのが下の表である。

各種指標間の相関関係は「マイ」地名の場合とよく似ている。すなわち「マエ」地名出現率は遺跡密度より遺跡数との相関が高く、緯度とより経度との相関が高い。すなわち中緯度の縄文遺跡密集都道府県より北の東北・北海道で多く、経度との相関が高いので、西日本にも少なからず分布があり、同時に太平洋側に多いことを示唆する相関関係が示された。またすべての「マイ」リストを用いるより「前」で表記する地名のみに限定した場合の方が遺跡数、密度、緯度、経度との相関値が上昇し、更に、明らかに後世に発生したと断言できる「駅前」や「×寺前」を除いて計算すると、更に相関値は増加する。また、相関値自身はそれほど高くなく、遺跡数や経度と、やっと5%水準の相関関係が検出されたにすぎない。「マエ」リストには「駅前」や「寺前」以外に多くの後世に生じた「マエ」地名が含まれているのであろう。これらの関係は「まい」地名の場合と類似している。ただし、「まい」地名の場合は「今泉」「米(まい)」包含地名、「枚(まい)」包含地名の貢献により、全体では0.4を越す相関関係が実現されている。

 

「マエ」を含む地名の都道府県別出現率と遺跡分布の相関

 

遺跡密度

遺跡数

緯度

経度

マエを含む地名

0.1779

0.2581

0.2065

0.3032

「マエと読む前」を含む地名

0.1901

0.2895

0.2414

0.3558

上記から×駅前、×寺前を除く地名

0.2479

0.3405

0.2701

0.3716

 

「駅前(えきまえ)」とは、駅という立派な場所に至る空間である。駅の周りには最初のころは、空き地があり、ところどころに民家がある。駅にたどり着くには駅前を通り抜けねばならない。「×い」と呼ばれる集落の周辺は人口希薄な場所であり所々に人家がある。これが「まい(間居)」ではないかと述べた。「×居」にたどり着くには「間居」を通過せねばならない。

「まい」の「い」が「え」に変化したのが「まえ」であろうか。

 

「前(まえ)」の怪しい語源解釈・・・・・「前」で表記されない「まえ」地名

「まえ」が「前」で表示されないその他の「マエ」地名は81件で、そう多くない。下にこれらのリストを示す。リストを見ると、明らかに西日本に多い。ZIP数自体少ない沖縄県に5件も出現する。

また「え」の部分は「江」の漢字で表されていることが多い。「×江」は縄文遺跡分布とは「負」の有意な相関関係が計算されるところから、当初、「え(江)」単語の使用開始時期は中期縄文以降ではないかとしていたが、本稿「モエ」項のところで「え」もまた、中期縄文時代から使用されていた語であろうと訂正した。すなわち、「江」の付く地名の西日本における偏在が中期縄文時代の航海を利用した拡散によるものと解釈した。下記リストの「江」地名は文字通り、入り江の「江」と解釈するのは自然な話である。

 

しかし、下記リスト地名に含まれる「え」は「江」ではなく「い(居)」が変化したという可能性も指摘しておきたい。

まず下記「マ」地名リストには「マ」地名にも出てきたような類似地名がいくつも列挙されている。「六枚橋(ろくまえばし)」「生枝(なまえだ)」「今江」「駒江」「駒栄(こまえ)」「隈江」がある。ただし下のリストの「六枚橋」の「枚」は「まえ」と読み、「居」や「井」に代えて「江」を使った「駒江」や「隈江」がある。「生井・居(なまい)」というやや奇妙な地名が山形・栃木・茨城県に6箇所もあるが、下の「マエ」リストには群馬県に「生枝(なまえだ)」がある。このようなことが偶然に起こるとは思えない。

次に、東京都の広域地名である「狛江市」も「こまい」類似地名である。狛江市はわずか11の町からなる小さな市であるがその中に「駒井町」がある。

HPを検索すると「狛江」は明治22年(1889年)に町村制が施行され、和泉村・猪方村・岩戸村・駒井村・覚東村・小足立村の6ヶ村が合併して狛江村ができたとのこと、また「狛江」は日本最古の百科辞典「倭名類聚抄」に記載される現三鷹、調布、武蔵野市の一部をも含む「狛江郷」という記述からとったとしている(市政.H11.9月号狛江タウン、東京都狛江市歴史探訪)。<「狛江」の「狛」は「狛犬」の「狛」で「高麗(こま、こうらい)」を意味し、定かではないが、同地域に古墳などの帰化高麗人の事蹟が多いことに因んだ地名であろう>、としている。

しかし、地図で調べると、確かに沖積平野を作った土砂を運んだ多摩川が流れているが、狛江市周辺は低いところでも標高20メートルぐらいある。旧石器時代の遺跡も見られるぐらいであるから、非常に古い時代から陸地であっただろう。「縄文海進」時ならいざしらず、高麗人が渡来したような時代に「入り江」、「海」と呼ばれる「江」にふさわしい景観があったのかは、更に検討を要するように思われる。むしろ「狛江」は「駒井」から来ているのではないか。

「こま」を考えているうちに新たな疑問が湧いてきた。何故、「高麗」を「こま」と呼ぶのか?「隣国、すなわち間=スペース(とてつもないスペースであるが)を介した(と接した)ところ」の意味ではないか。中期縄文時代以前から朝鮮半島(とはかぎらないが)に行き、帰還した人々がいた。その人々は隣国を「こま」と表現した。正確には、さらに「居る人々、ないしは居住地」を意味する「い」をつける必要がある。そうすると隣国や隣国の外人は「こまい」である。

 

狛江市を構成する詳細地名欄に記述される11ZIPを見ると、駒井町も含め、町名すべてが、縄文中期にまでさかのぼり得る地名であるように見える。「和泉本町」「元和泉」など5箇所もの「いずみ」を含んだ町がある。本稿前半で論議した「いずみ」である。南北の「岩戸」がある。「岩手」の「イワ」文字列は「い」の人々の住む「輪=コミュニィティ」と解釈した。「イワ」地名の第一因子(縄文語因子)負加量は0.4159東日本に偏在する。「戸」の部分は「入り口」で、何度もこれまでに出てきた。「西野川」のように「川」のつく地名は全国にあまりにも多く、見過ごされてしまってしまうが、ZIPをカウントすれば、明らかに東日本で出現率が高いことをパートBの後半で指摘した。「猪方」は「いのかた」とよみ「猪」と書かれているが「い」の人々の「い」ではないか。すべて縄文時代にまでさかのぼれる地名ではないか。「こまい」も例外ではないと思う。「こまえ」も古墳時代どころか、縄文中期にまでさかのぼって考察されるべき地名であるように思われる。

 

「前」で表記されない「まえ」地名

0301271

アオモリ

ロクマエハシ

青森県

青森市

六枚橋

9896152

フルカワ

ニノカマエ

宮城県

古川市

二ノ構

9892321

ワタリ*ワタリ

オオクマエノキフクロ

宮城県

亘理郡亘理町

逢隈榎袋

9896436

タマツクリ*イワテヤマ

ニノカマエ

宮城県

玉造郡岩出山町

二ノ構

3771405

アカツマ*ツマコイ

カマハラ(モロシコ<アサマエン>)

群馬県

吾妻郡嬬恋村

鎌原(モロシコ「浅間園」)

3780122

トネ*シラサワ

ナマエ

群馬県

利根郡白沢村

生枝

2010003

コマエ

イスミホン

東京都

狛江市

和泉本町

2010015

コマエ

イノカタ

東京都

狛江市

猪方

2010005

コマエ

イワトミナミ

東京都

狛江市

岩戸南

2010004

コマエ

イワトキタ

東京都

狛江市

岩戸北

2010016

コマエ

コマイ

東京都

狛江市

駒井町

2010012

コマエ

ナカイスミ

東京都

狛江市

中和泉

2010011

コマエ

ニシイスミ

東京都

狛江市

西和泉

2010001

コマエ

ニシノカワ

東京都

狛江市

西野川

2010014

コマエ

ヒカシイスミ

東京都

狛江市

東和泉

2010002

コマエ

ヒカシノカワ

東京都

狛江市

東野川

2010013

コマエ

モトイスミ

東京都

狛江市

元和泉

9330814

タカオカ

カミフスマエ

富山県

高岡市

上伏間江

9330813

タカオカ

シモフスマエ

富山県

高岡市

下伏間江

9380101

シモニイカワ*ニユウセン

イマエ

富山県

下新川郡入善町

今江

9230964

コマツ

イマエ

石川県

小松市

今江町

9250153

ハクイ*シカ

シミスイマエ

石川県

羽咋郡志賀町

清水今江

4100814

ヌマツ

タマエ

静岡県

沼津市

玉江町

4660025

ナコヤシシヨウワ

シモカマエ

愛知県

名古屋市昭和区

下構町

5150045

マツサカ

マエノヘタ

三重県

松阪市

駅部田町

5111144

クワナ*ナカシマ

コマエ

三重県

桑名郡長島町

駒江

6028297

キヨウトシカミキヨウ

イセトノカマエ

京都府

京都市上京区

伊勢殿構町

6020012

キヨウトシカミキヨウ

ウチカマエ

京都府

京都市上京区

内構町

6028296

キヨウトシカミキヨウ

キタイセトノカマエ

京都府

京都市上京区

北伊勢殿構町

6150912

キヨウトシウキヨウ

ウメツカマエクチ

京都府

京都市右京区

梅津構口町

6150914

キヨウトシウキヨウ

ウメツヒカシカマエクチ

京都府

京都市右京区

梅津東構口町

6011366

キヨウトシフシミ

タイコオオカマエ

京都府

京都市伏見区

醍醐大構町

6011354

キヨウトシフシミ

タイコカマエクチ

京都府

京都市伏見区

醍醐構口町

5900033

サカイ

ナカナカヤマエン

大阪府

堺市

中永山園

5900032

サカイ

ニシナカヤマエン

大阪府

堺市

西永山園

5900034

サカイ

ヒカシナカヤマエン

大阪府

堺市

東永山園

5610826

トヨナカ

シマエ

大阪府

豊中市

島江町

5690835

タカツキ

ミシマエ

大阪府

高槻市

三島江

5720064

ネヤカワ

ツシマエヒカシ

大阪府

寝屋川市

対馬江東町

5720065

ネヤカワ

ツシマエニシ

大阪府

寝屋川市

対馬江西町

6530034

コウヘシナカタ

コマエ

兵庫県

神戸市長田区

駒栄町

6530044

コウヘシナカタ

ミナミコマエ

兵庫県

神戸市長田区

南駒栄町

6728071

ヒメシ

シカマクカマエ

兵庫県

姫路市

飾磨区構

6794204

ヒメシ

ハヤシタチヨウカミカマエ

兵庫県

姫路市

林田町上構

6794203

ヒメシ

ハヤシタチヨウナカカマエ

兵庫県

姫路市

林田町中構

6794202

ヒメシ

ハヤシタチヨウシモカマエ

兵庫県

姫路市

林田町下構

6794007

タツノ

イツサイチヨウカマエ

兵庫県

龍野市

揖西町構

6794154

タツノ

イホチヨウニシカマエ

兵庫県

龍野市

揖保町西構

6790108

カサイ

ヤマエタ

兵庫県

加西市

山枝町

6711545

イホ*タイシ

イワミカマエ

兵庫県

揖保郡太子町

岩見構

6695303

キノサキ*ヒタカ

ヒカシカマエ

兵庫県

城崎郡日高町

東構

6562451

ツナ*ホクタン

ノシマエサキ(1314ハンチ)

兵庫県

津名郡北淡町

野島江崎(13、14番地)

6561725

ツナ*ホクタン

ノシマエサキ(ソノタ)

兵庫県

津名郡北淡町

野島江崎(その他)

7500075

シモノセキ

ヒコシマエノウラ

山口県

下関市

彦島江の浦町

7715206

ナカ*ワシキ

モマエ

徳島県

那賀郡鷲敷町

百合

7715205

ナカ*ワシキ

モマエタニ

徳島県

那賀郡鷲敷町

百合谷

8190006

フクオカシニシ

メイノハマエキミナミ

福岡県

福岡市西区

姪浜駅南

8380004

アマキ

クマエ

福岡県

甘木市

隈江

8180003

チクシノ

ヤマエ

福岡県

筑紫野市

山家

8391223

ウキハ*タヌシマル

イマエ

福岡県

浮羽郡田主丸町

以真恵

8490315

オキ*アシカリ

ハマエタカワ

佐賀県

小城郡芦刈町

浜枝川

8680091

クマ*ヤマエ

マエ

熊本県

球磨郡山江村

万江

8680092

クマ*ヤマエ

ヤマタ

熊本県

球磨郡山江村

山田

8762402

ミナミアマヘ*カマエ

イノクシウラ

大分県

南海部郡蒲江町

猪串浦など12ZIP

8820867

ノヘオカ

カマエクチ

宮崎県

延岡市

構口町

9012215

キノワン

マエハラ

沖縄県

宜野湾市

真栄原

9070002

イシカキ

マエサト

沖縄県

石垣市

真栄里

9010362

イトマン

マエサト

沖縄県

糸満市

真栄里

9010331

イトマン

マエヒラ

沖縄県

糸満市

真栄平

9040417

クニカミ*オンナ

マエタ

沖縄県

国頭郡恩納村

真栄田

注:灰色網がけは明らかに「マエ」が別単語の語尾と語頭による「マエ」地名

 

上に掲げた「まえ」地名リストから、「まえ」は「まい」から変化したという可能性を示唆する点をもうひとつ指摘しておきたい

すなわち沖縄県にも「まえ」の付く地名が出現することである。「まえ」はすべて「真栄」が充てられている。「まえい」ではない。琉球語音声データベースの首里・那覇方言の地名項目で引くと「真栄田」は「メーダ」、「真栄平」は「メーデーラ」と発音されている。ほかに「前田」と表記される地名があり、真栄田と同じ「メーダ」と発音している。「メー」は「まえ」である。「前」を含む地名は遺跡数や経度と弱いが有意な相関が先に示されている。すなわち西日本に少ないはずであるにもかかわらず、最も西南の沖縄県において例外的に飛びぬけて高い出現率を示している。これは縄文色の強い「いずみ」や「あら」「ひら」「かね」「そね」「たん」と読む「谷」地名などの分布とよく似ている。

「前田」「前原」「前平」「前里」ならどこにでもありそうな地名である。どのような原則で琉球地名が漢字で表記されるのか、何時から行われたのかはよく知らない。「栄」は「えい」とよむ。しかし「い」は発音されないで「え」である。「前」の意味の「まえ」は「え」ではなく「え」と「い」の中間あたりの音であった時代があるかもしれない。

「まい」が日本列島を南下するにつれ「まえ」と発音されるようになると同時に、やや意味の拡大が生じて「前」の意味を含むようになる。北海道や東北に多い「×まい」や「とまこまい」の「まい」や「まつまえ」の「まえ」は、琉球方言の「メー」かもしれない。「まいばら(米原)」は「稲作の原」ではなく「前原」や「メーパル」の意味を持つ地名かもしれない。

 

宮城県登米郡南方町の「まえ」地名

石巻市の北、南三陸海岸の西の内陸部に登米郡南方町(合併により現在では登米市南方町)がある。やや北方には長沼や伊豆沼などがあり北上川と合流する迫川(はさまがわ)が付近に流れている。盆地が形成される前は広大な湿地帯であっただろうと思われる。GoogleEarthで見ると水田が広がっており所々の高い部分には集落が見られる。国土地理院の2.5万分の1の地図では沢、泉、沼、館、荒、舞、萌、宿、新などこれまで取り上げられた縄文遺跡分布関連の地名文字列を含む地名が被い尽くしているといっても過言ではない。内陸部のやや高いところにあるところから、先に示した「ラス」地名に該当する「烏田(からすだ)」もある。

おそらくこのあたりが日本ではもっとも「×前」地名の密集している地域だと思う。登米郡南方町は155ZIPから成り立っているが、そのうち32ZIPに「前」が付いていて、約20%にも上る。下にリストを示す。

9870441

トメ*ミナミカタ

アオシママエ

宮城県

登米郡南方町

青島前

9870443

トメ*ミナミカタ

オオサカマエ

宮城県

登米郡南方町

大坂前

9870433

トメ*ミナミカタ

オオタイラマエ

宮城県

登米郡南方町

大平前

9870423

トメ*ミナミカタ

オオタケマエ

宮城県

登米郡南方町

大岳前

9870422

トメ*ミナミカタ

オオハタマエ

宮城県

登米郡南方町

大畠前

9870414

トメ*ミナミカタ

オオムラマエ

宮城県

登米郡南方町

大村前

9870444

トメ*ミナミカタ

オオモリマエ

宮城県

登米郡南方町

大森前

9870443

トメ*ミナミカタ

オモテマエ

宮城県

登米郡南方町

表前

9870425

トメ*ミナミカタ

カシヌマカワマエ

宮城県

登米郡南方町

梶沼川前

9870425

トメ*ミナミカタ

カシヌママエ

宮城県

登米郡南方町

梶沼前

9870422

トメ*ミナミカタ

カワマエ

宮城県

登米郡南方町

川前

9870444

トメ*ミナミカタ

サンタイマエ

宮城県

登米郡南方町

三代前

9870413

トメ*ミナミカタ

シモハラマエ

宮城県

登米郡南方町

下原前

9870422

トメ*ミナミカタ

シンオオハタマエ

宮城県

登米郡南方町

新大畑前

9870423

トメ*ミナミカタ

センカマエ

宮城県

登米郡南方町

ぜん荷前

9870442

トメ*ミナミカタ

チヤウスモリマエ

宮城県

登米郡南方町

茶臼森前

9870444

トメ*ミナミカタ

ツノカケマエ

宮城県

登米郡南方町

角欠前

9870423

トメ*ミナミカタ

トウチマエ

宮城県

登米郡南方町

堂地前

9870401

トメ*ミナミカタ

ニシヤマナリマエ

宮城県

登米郡南方町

西山成前

9870433

トメ*ミナミカタ

ヌマサキマエ

宮城県

登米郡南方町

沼崎前

9870413

トメ*ミナミカタ

ハラマエ

宮城県

登米郡南方町

原前

9870422

トメ*ミナミカタ

ヒカシカワマエ

宮城県

登米郡南方町

東川前

9870424

トメ*ミナミカタ

ホソカワマエ

宮城県

登米郡南方町

細川前

9870444

トメ*ミナミカタ

マウチマエ

宮城県

登米郡南方町

間内前

9870414

トメ*ミナミカタ

マツハマエ

宮城県

登米郡南方町

松葉前

9870421

トメ*ミナミカタ

ミナミオオハタマエ

宮城県

登米郡南方町

南大畑前

9870412

トメ*ミナミカタ

ミネマエ

宮城県

登米郡南方町

峰前

9870444

トメ*ミナミカタ

ヤナキサワマエ

宮城県

登米郡南方町

柳沢前

9870401

トメ*ミナミカタ

ヤマナリマエ

宮城県

登米郡南方町

山成前

9870431

トメ*ミナミカタ

ヨコマエ

宮城県

登米郡南方町

横前

9870425

トメ*ミナミカタ

ヨネフクロマエ

宮城県

登米郡南方町

米袋前

9870426

トメ*ミナミカタ

ワカサマエ

宮城県

登米郡南方町

若狹前

「大平」があり「大平前」がある。「青島待井」があり「青島前」があるように、セットの「前」地名もあるが、単独の「×前」もある。これらの「前」地名がいつごろできたのか分からない。「×駅前」や「×寺前」のように新しい地名である可能性も高いが、縄文時代から、延々と続いていたとしたら、「まい」が「まえ」に変化したのはこの地あたりからだろうか。「×まい」は「×い」とともに使われていた地名をあらわす単語だと思う。

 

「トネ」

「トネ」を含む地名は、「サワ」や「ヌマ」に比較してそれほど高い第一因子負荷量を示さない。関東地方において、もっとも中期縄文遺跡密度が高いが、「トネ」を含む地名も関東平野を取り巻く茨城・群馬・埼玉・千葉県で最も多い。いうまでもなく、これらの県を流れる利根川流域の「利根」のつく広域地名によるものである。

北海道・東北では2ZIPのみであり、反対に西日本でも、滋賀・大阪・和歌山・長崎県に出現があり、中期縄文遺跡密度と有意な相関値を示すのに反して、緯度や経度とは有意な相関を示さない。「トネ」包含地名出現率は関東地方を中心とする中期縄文遺跡分布とのみ0.4以上の相関値を示している。

下に「トネ」を含む地名リストを示す。

川の名前と兼用して地名を表す「とねがわ」が((明らかに<×川>という地名は<×沢>という地名とともに東日本に多いことがすでに触れられた)先にあったため、「利根川流域」に多数の「利根郡」があり、「利根」包含地名があるのかも知れない。反対に、先に「とね」村があり、そこを流れる川を「とねがわ」と呼んでいたのが有名になり、利根川流域を利根郡などと呼ぶようになったのかもしれない。もしも後者であるとすれば、「とね」村と呼ばれていた可能性のある場所は、群馬県北相馬郡利根町××か、同じく群馬県利根郡利根村××(現在沼田市利根町)であろう。

なお、北海道には、抜海村(クトネベツ)以外に ZIP地名ではないが、国土地理院検索ページで検索すると、岩見沢市に「利根別川(とねべつがわ)」という川が存在する。また九州では、下記表中の戸根原郷に「根川」が流れている。

 

0970036

ワツカナイ

ハツカイムラ(クトネヘツ)

北海道

稚内市

抜海村(クトネベツ)

9870402

トメ*ミナミカタ

トネヤシキ

宮城県

登米郡南方町

戸根屋敷

3191712

キタイハラキ

セキナミチヨウサトネカワ

茨城県

北茨城市

関南町里根川

3001413

イナシキ*シントネ

イサキ

茨城県

稲敷郡新利根町

伊崎など16ZIP

3060213

サシマ*ソウワ

キタトネ

茨城県

猿島郡総和町

北利根

3001603

キタソウマ*トネ

オクヤマ

茨城県

北相馬郡利根町

奥山など23ZIP

3710825

マエハシ

オオトネ

群馬県

前橋市

大利根町

3780123

トネ*シラサワ

イワムロ

群馬県

利根郡白沢村

岩室など6ZIP

3780314

トネ*トネ

アオキ

群馬県

利根郡利根村

青木など20ZIP

3780415

トネ*カタシナ

カマタ

群馬県

利根郡片品村

鎌田など14ZIP

3780104

トネ*カワハ

オオタカワ

群馬県

利根郡川場村

太田川など10ZIP

3791311

トネ*ツキヨノ

イシクラ

群馬県

利根郡月夜野町

石倉など13ZIP

3791618

トネ*ミナカミ

アノウカワ

群馬県

利根郡水上町

阿能川など18ZIP

3791404

トネ*ニイハル

アイマタ

群馬県

利根郡新治村

相俣など12ZIP

3791207

トネ*シヨウワ

アカキハラ

群馬県

利根郡昭和村

赤城原など7ZIP

3630005

オケカワ

トネリシンテン

埼玉県

桶川市

舎人新田

3491144

キタサイタマ*オオトネ

アサマ

埼玉県

北埼玉郡大利根町

阿佐間など21ZIP

2770811

カシワ

カミトネ

千葉県

柏市

上利根

2920521

キミツ

トネ

千葉県

君津市

利根

2921152

キミツ

ニツトネ

千葉県

君津市

日渡根

2891708

ソウサ*ヒカリ

ササモトネキリ

千葉県

匝瑳郡光町

篠本根切

1210831

アタチ

トネリ

東京都

足立区

舎人

1210837

アタチ

トネリコウエン

東京都

足立区

舎人公園

1210835

アタチ

トネリ

東京都

足立区

舎人町

9140313

ツルカ

トネ

福井県

敦賀市

刀根

4730915

トヨタ

ワカハヤシヒカシマチナカソトネ

愛知県

豊田市

若林東町中外根

5220022

ヒコネ

サトネ

滋賀県

彦根市

里根町

5600045

トヨナカ

トネヤマ

大阪府

豊中市

刀根山

5600044

トヨナカ

トネヤマモト

大阪府

豊中市

刀根山元町

6493168

ニシムロ*スサミ

サモトネクラ

和歌山県

西牟婁郡すさみ町

佐本根倉

8513103

ニシソノキ*キンカイ

トネコウ

長崎県

西彼杵郡琴海町

戸根郷

8513211

ニシソノキ*キンカイ

トネハラコウ

長崎県

西彼杵郡琴海町

戸根原郷

 

「とね」の怪しい地名解釈

これまで「と」は「入り口」であろうと解釈してきた。中期縄文遺跡分布と「×根」地名が強く関連するところから「ね」は「ね」の人々、または「ね」の人々が住む集落と解釈してきた。すなわち「とね」は「入り口のところにある<根>集落」の意味ではないか。「根」の人々は太平洋を渡ってきた、主として関東地方に上陸した人々ではないかとも考えた。「入り口」は上陸した入り口である。今、検討している中期縄文時代は4-5000年前である。そして更に1000年遡る6000年前は、もっとも海進が進んだ時代であり、かつ内陸部の盆地や河口部での土砂の堆積はいまだ不十分であり、現在、盆地や平野があるところは広い範囲、水中にあった。水上には島々が散在している。もっと近づくと、大きなゲート状の崖が左右に存在する。そこを入っていくと上陸にふさわしい場所がある。多分沖積が始まったばかりの湿地帯であろう。乾いたところもある。根の人々はまずそこに根をはり、やがて、川筋をたどり内陸部を探索する。先住民の「い」の人々や「わ」の人々とも出会うだろう。

 

「舎人(とねり)」とは・・・ 怪しい珍説

上のリストを眺めると東京都足立区に「舎人(とねり)」、埼玉県に「舎人新田」がある。「舎人」とはなにか?歴史を楽しむ「歴史楽」 の中で舎人の意味が解説されている..。貴族の身近にいて雑事に携わった人や、護衛、牛車の牛飼などとの意味が記述されているとともに、なぜ「とねり」と読むかは不明としている。

「とねり」の「り」は「人」の漢字が充てられていると同時に、人数を数えるとき「ひと」「ふた」と数え、漢字で書くと「一人」「二人」なので、「舎人」の「り」は「人」の意味であろう。ただし3人よりあとの「人」は「にん」と読むのが不思議(4人は「よったり」ということもあるが)。

そうすると「とねり」は。「入り口の根に住む人、ないしは人々」、すなわち「門番」、「門のあたりの門番小屋に住む人」と理解すれば「舎人」の意味に少しは近づく。

なお、「とねり」の「とね」ではなく「ねり」を含む地名も東京都で出現が多く、関東地方に集中している。関東以外は極めて少ない。これも「とね」の分布と近似している。

足立区の「舎人」以外、「練馬(ねりま)区」があり、46ZIPを含む。「ねりま」などと言う、考えてみればこのような珍奇な名前は他にない。千代田区神田神田練塀町(これは無関係かもしれない)がある。群馬県利根郡利根村には「根利(ねり)」がある。上記解釈に従えば「ねり」は「根の人々」となる。「練馬」は「根の人々がいる間、すなわちスペース」となる。

なお足立区の「舎人」は標高4m強、桶川市の「舎人新田」は背後に標高20m位の岡が迫っているとはいえ3-4mぐらいである。一方、「と」が付かない「練馬(ねりま)区」は30-40mの高台にあり、6000年前の海進時でも確実に海上にあったといえる。また利根村の「根利(ねり)」はいうまでもない。

なお足立区「舎人」の北東1kmあたりに、「遊馬」と書いて「あすま」と読むところの苦しげに漢字表記された、草加市遊馬町がある。「練馬」の表記に影響を受けた結果だろうか。

 

「とね」「ねり」が主として縄文遺跡密集地帯の関東地方に集中して、緯度や経度とはあまり相関しないという特徴は留意しておくべきであろうと思う。ほかに「こね」(箱根、彦根、横根など)「すか」「みと」も同じである。これらの文字列の第2因子の負荷量は、ともに「負」の値を示し、第2因子としてはかなり高い値を示す。なお第2因子において反対に「正」の負荷量を示す地名文字列は米沢、米田などの「よね」、漆沢などの「うる」、館沢、両手沢などの「てさ」などである。詳しくは冒頭の因子分析結果の表を参照するとよい。

 

「とね」は「入り口の集落」か

「とね」が「入り口の根集落」と解釈するのが妥当か?各地の「とね」地名を地図で確認してみよう。

下の表は全国の「トネ」を含む地名をまとめたものである。数箇所の広域地名が関東平野にあり、同時に詳細地名欄にも、他地域に見られないほど多種類の「トネ」文字列を含む地名がある。現状では関東平野利根川沿いの広い範囲が「利根」と呼ばれている。

表を見ると「トネ」地名はほぼ関東に集中しているといってもよい。しかし北海道にも「クトネベツ」や岩見沢市を流れる「利根別川」があり、一方、九州長崎県「戸根郷」には「利根」ではない「戸根川」がある。

 

「トネ」を含む地名の標高(水色は広域地名。紫色は関東)

北海道

稚内市

抜海村(クトネベツ)

1020

現海岸線より2.5K

北海道

 

利根別川

1050

石狩平野。岩見沢市。ZIP地名ではない

宮城県

登米郡南方町

戸根屋敷

8

 

茨城県

北茨城市

関南町里根川

820

 

茨城県

稲敷郡新利根町

伊崎など16ZIP

 

 

茨城県

猿島郡総和町

北利根

1015

関東平野北端

茨城県

北相馬郡利根町

奥山など23ZIP

45

20m位の島状の高まりあり

群馬県

前橋市

大利根町

7080

関東平野北端

群馬県

利根郡利根村(現沼田市利根町)

青木など20ZIP

4501000

根利川沿い。背景に1000m位の山岳部含む

埼玉県

桶川市

舎人新田

310

 

埼玉県

北埼玉郡大利根町

阿佐間など21ZIP

1213

広い水田

千葉県

柏市

上利根

7m

対岸に元島

千葉県

君津市

利根

15

房総半島

千葉県

君津市

日渡根

3040

房総半島上の西側

東京都

足立区

舎人

3

 

福井県

敦賀市

刀根

160

険しい山中川の合流部狭小

愛知県

豊田市

若林東町中外根

2030

濃尾平野東端

滋賀県

彦根市

里根町

90100

琵琶湖東岸。琵琶湖岸は81

大阪府

豊中市

刀根山

5030

上野坂から千里山が対?

長崎県

西彼杵郡琴海町

戸根郷

020

琴海戸根町 南側 戸根川あり

長崎県

西彼杵郡琴海町

戸根原郷

020

琴海戸根原町 北側

 

下の図は関東地方の「トネ」文字列を含む地名の所在地に目印を付けたものである。

最後の氷河期後、氷河、氷床の溶解にともなう海面上昇がピークに達したのは6000年前とされ、縄文海進といわれている。まだ沖積作用も十分でないこともあり、栃木県辺りまで東京湾は入り込んでいた。この時期の関東平野の地形が水子貝塚を紹介したHPに図示されているhttp://www.asahi-net.or.jp/~XN9H-HYSK/mizuko/kaisin.htm)。下の「トネ」地名分布図を重ねてみると関東地方の「トネ」地名は2箇所(利根郡利根村、前橋市大利根町)を除いて、すべて縄文海進時の海岸線付近と重なる。そして付近には貝塚遺跡の集中地があるところもある。現在の標高はそれほど高くない。これらの「とね」地名は現在では戸根川沿いにあるといえるが、海進時では深く入り込んだ入り江であった。そして最も奥まったあたりに各種の「利根」や「舎人」地名が集中する。海から上陸するにはこのような「とね」地帯を通過しなければならない。

「利根(とね)」という地名は、海進時代から存在した利根川最上流部にあった「とね」という集落(たとえば利根郡利根村や前橋市大利根町)のそばを流れる「とねがわ」に因んだ名称ではないかと解釈できるかもしれない。そしてその下流域のいたるところに利根川に因んだ「×利根」地名が出来たのかもしれない。

逆に、海進時代に水浸しになった関東平野に浮かぶ島々に、普通名詞として「ドア・扉(戸)になる集落(根)すなわち<とね>」が存在したため、干上がった部分を利根川と呼ぶようになったのではないか。最上流部の「利根村」はむしろ「利根川」に因んで後から出来た名前ではないかとも考えられる。

地図で検討したところ、北海道や宮城県、あるいは滋賀、大阪、長崎県の「とね」地名所在地は「海上からの入り口にある集落」という解釈に無理のない場所にあるように思われる

北海道のカタカナで表記された「クトネベツ」すら然りである。北海道の「利根別川」沿いの「岩見沢市」は「<い>の人々の集落(=わ)を見る沢(=小さい輪)」と解釈でき、「わ」系の人々の集落でああったのだろうか。利根別川を少し下流に行くと「幌向川」と合流し、以後は「利根別川」という名称はなくなる。合流点あたりは標高10m程度で平野が続いており、海進時は水面下にあったと思われる。

滋賀県の「里根」の標高は90-100mと高いが、琵琶湖岸に位置し、湖面の標高は80m程度であり差は10m程度である。

大阪府の「刀根山」は当時の大阪湾を見下ろす高台にある。付近の千里丘陵や箕面市には縄文遺跡がある。

ただし福井県敦賀市「刀根」は山中にあり「海からの入り口の集落」にはふさわしくないように思われる。

 

関東地方の「トネ」地名分布

 

「と」と読む「戸」を含む地名も「とね」地名分布と似ている

関東平野に見られる「とね」の「と」は「とびら」の「戸」意味であるとの解釈を支援する材料を今一つ提示したい。

それは「と」と読む「戸」を含む都道府県別ZIP地名出現率の分布が下の図のように「とね」地名の分布によく似ている点である。

「と」と読む「戸」を含む地名の件数は2481件あり、「とね」地名に比して格段に多い。「とね」地名は、ほぼ関東地方に限って13都道府県で出現が見られるに過ぎないが、「戸」を「と」と読むZIP地名はありふれた地名であり、「瀬戸」「平戸」「室戸」「水戸」など、多くの広域地名欄に記載される地名をも含む。

関東地方の「とね」地名は「戸」ではなく「利」で表される「利根」であるにもかかわらず、「と」と読む「戸」を含む地名もまた千葉、茨城、埼玉県に集中が見られる。また、関東地方から遠く離れた長崎県には「戸根川」があり「戸根郷」「戸根原郷」があり「とね」地名出現県になっているが、「大瀬戸」「平戸」など、「戸」を「と」と読むZIP地名出現率もまた極めて高い県になっている。「戸」を「と」と読むZIP地名の都道府県別出現率と遺跡密度間の相関係数は0.3193(p<0.02869)、遺跡数とでは0.3115(p<0.033058)であり、有意ではあるがそれほど高い相関値ではない。また緯度や経度とは有意な相関を示さない。この点もまた「とね」地名分布と似ている。

「戸」を「と」と読むZIP地名の都道府県別出現率分布図を下に示す。

以上の点から、関東平野を流れる「利根川」を漢字で表すとすれば「戸根川」にすべきであったと思う。

分布図を見ると、西日本では「戸(と)」地名の分布は何か太平洋側に連なっているように見える。また九州では「戸根川」のある長崎県のみならず、鹿児島県での出現が多い。奄美大島(瀬戸内町、大朝戸など)にも、沖縄県にも(国頭郡国頭村辺)「戸(と)」地名が見られる。

「辺戸(へど)岬」は沖縄本島最北端にある。「へこむ」「へたる」「へつらう」「へさき」の「へ」の意味は、上面が押し込まれる、上半身をかろうじて上方に立てながらうずくまる、すなわち垂れる、上のものに連らう、という意味であり、「上方」の意味であろう。「減る」や助詞の「へ」すらも家族単語かもしれない。沖縄では「国頭(くにがみ)」と言うぐらいであるから、北が「上(かみ)」である。九州から南下した丸木船を最初に迎える「ゲート」が最北端「辺戸岬」であろう。なお熊本県上天草市に辺串(へどくし)という地名がある。、姫港の最も奥にある。「串」はパート4で指摘したように西日本で多く、「統括する」のような意味であろう。

「と」の分布は太平洋を渡って関東地方に到着し、更に西日本に人口が埋まる弥生時代に先んじて、沖縄にまで丸木舟を操り探索、入植した人々の痕跡のように見える。「戸」は丸木舟を迎える「ゲート」であり、個々に「入り口」を持つ「戸(家)」があった。2.5万分の1の地図で「戸」地名所在地を見ているとしばしば鳥居マークが目に付いた。長い航海を終え、迎える島々の狭い水路を通過する人々にとって、この光景は厳かな感銘を与えるものであっただろう。神社の鳥居は「戸」地名命名の心理と重なっているように思えてならない。

 

 

門と書いて「と」と読む地名は東日本には殆ど存在しない

「と」をストレートに「門」と漢字で表記する地名も少なからずある。淡路島と四国の海峡は「鳴門」であり「鳴門市」は「鳴門海峡」に因んだ地名だとすると、68ZIPを含む広域地名にまで成長しているといえる。また、福岡県「山門郡」は63ZIPを含む広域地名であり、「山門郡」の中には「大和町(やまとまち)」という地名があるのが注目される。また福岡市内にも上・下山門がある。その他、島根、愛媛、熊本県に「門」を「と」と読む地名があり、千葉県佐倉市の「神門」を除き、いずれも関西の更に西の中国・四国・九州である。下にリストを示す。なお「門」という文字を使い、その部分を「かど」と読む地名や、「長門(ながと)」のように「な・かと」「なか・と」と区切られていた可能性もあるので「門」を含むが、かなで書くと「かと」を含む地名も下のリストに含めなかった。

 

「門」を「と」と読むZIP地名の分布(ただし「かど」と読む地名を除く)

2850803

サクラ

コウト

千葉県

佐倉市

神門

6638244

ニシノミヤ

ツトイナリ

兵庫県

西宮市

津門×町11ZIP

6930034

イスモ

カント

島根県

出雲市

神門町

7790303

ナルト

オオアサチヨウイケノタニ

徳島県

鳴門市

鳴門町×、大麻町×、瀬戸町×など68ZIP

7911114

マツヤマ

イト

愛媛県

松山市

井門町

7911105

マツヤマ

キタイト

愛媛県

松山市

北井門町

8190054

フクオカシニシ

カミヤマト

福岡県

福岡市西区

上山門

8190052

フクオカシニシ

シモヤマト

福岡県

福岡市西区

下山門

8190051

フクオカシニシ

シモヤマトタンチ

福岡県

福岡市西区

下山門団地

8350022

ヤマト*セタカ

アヤヒロ

福岡県

山門郡瀬高町

文広など21ZIP

8390251

ヤマト*ヤマト

アケノ

福岡県

山門郡大和町

明野など12ZIP

8320805

ヤマト*ミツハシ

イソトリ

福岡県

山門郡三橋町

磯鳥など21ZIP

8350102

ヤマト*ヤマカワ

オノ

福岡県

山門郡山川町

尾野など9ZIP

8650116

タマナ*キクスイ

カマト

熊本県

玉名郡菊水町

竈門

 

また同様に、下に国土地理院地図閲覧サービス検索画面より「門」を含む地名を検索し、「と」と読む地名を選び出した地名の一覧を示す。

一覧を見ると、北海道にも「鳴門橋」がある。ただし地図で見たところ田んぼの中を走る真っ直ぐに敷かれた人工的な道路にかかる小さな橋であり、新しくできた橋の名前のように見える。また「神門」と書いて「ごうど」とよむ地名が、極めて出現率の低い東日本にあって、「利根」地帯である千葉県に2箇所もあるのは偶然には思えない。一方、同じ漢字表記の神門谷(ごうどだに)、神門町(かんどちょう)が西日本の島根県にもあることもわかる。「かんど」は「門」を「かど」と読む読み方と関係あるかもしれない。国土地理院地図でも、東日本にも「と」と読む「門」地名があることがわかるが、やはり極めて少数である。

いずれにしろ、「門」と表記する地名は西日本に多いので「と=門」地名は緯度などと「負」相関関係を示すのではないかと思い計算したところ、縄文遺跡の多い千葉県にもあることから、都道府県別出現率と遺跡分布などとの相関係数は5%水準にわずかに達しない「負」の値を示した。個々の値は下記「門」地名リストの後に示す。

地名に漢字が充てられたのは中期縄文時代よりずっと後のことである。「門」という漢字が「ゲートやドア」すなわち「門」の意味と明確に認識されていたからこそ「と」に「門」という漢字が充てられたのであろう。それは中国大陸に近い非縄文地帯の西日本から始まった。関東利根地域の溺れ谷はそのころには埋まってしまい、海上から進入する「ゲート」の意味とは思えない様相を示す時代になっていた。以上、西日本に「と」を「門」であらわす地名が多い理由である。もちろん「怪しい」解釈ではあるが・・・・

なお、先に、東北地方をでは「面」を表す「も」と、「ん」という発音好きから、「もん」という言葉が、「門」という漢字が入る以前、即ち中期縄文時代以前からすでに「門」の意味で存在し、東日本では、「人の住む家」の意味と同時に「門」の意味をも含む「と(戸)」という言葉が並存していたのではないかと述べた。西日本で「と」に「門」という漢字が充てられた理由はもっと複雑かもしれない。

 

国土地理院地図閲覧サービス検索画面より「門」を含み「と」と読む地名一覧(ただし「かど」と読む地名を除く)

東日本

●鳴門橋  (なるとばし)  /  "北海道上川郡鷹栖町

●酒門町  (さかどちょう)  /  "茨城県水戸市

●神門  (ごうど)  /  "千葉県佐倉市

●神門  (ごうど)  /  "千葉県君津市

西日本

津門稲荷町  (つといなりちょう)  /  "兵庫県西宮市"

津門呉羽町  (つとくれはちょう)  /  "兵庫県西宮市"

津門住江町  (つとすみえちょう)  /  "兵庫県西宮市"

津門仁辺町  (つとにべちょう)  /  "兵庫県西宮市"

津門西口町  (つとにしぐちちょう)  /  "兵庫県西宮市"

津門川町  (つとかわちょう)  /  "兵庫県西宮市"

津門大箇町  (つとおおごちょう)  /  "兵庫県西宮市"

津門大塚町  (つとおおつかちょう)  /  "兵庫県西宮市"

津門飯田町  (つといいでんちょう)  /  "兵庫県西宮市"

津門宝津町  (つとほうづちょう)  /  "兵庫県西宮市"

津門川  (つとがわ)  /  "兵庫県西宮市

鳴門海峡  (なるとかいきょう)  /  "兵庫県南あわじ市"

門崎  (とざき)  /  "兵庫県南あわじ市"

神戸淡路鳴門自動車道  (こうべあわじなるとじどうしゃどう)  /  "兵庫県南あわじ市"

大鳴門橋  (おおなるときょう)  /  "兵庫県南あわじ市"

大鳴門橋記念館  (おおなるときょうきねんかん)  /  "兵庫県南あわじ市"

神戸淡路鳴門自動車道  (こうべあわじなるとじどうしゃどう)  /  "兵庫県淡路市"

神門谷  (ごうどだに)  /  "島根県出雲市"

神門町  (かんどちょう)  /  "島根県出雲市"

繁門  (はんど)  /  "島根県出雲市"

天石門別神社  (あめのいわとわけじんじゃ)  /  "岡山県美作市"

鳴門市  (なるとし)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門西PA  (なるとにしPA)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門市  (なるとし)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門線  (なるとせん)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門市  (なるとし)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門市  (なるとし)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門ゴルフ場  (なるとごるふじょう)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門IC  (なるとIC)  /  "徳島県鳴門市"

小鳴門新橋  (こなるとしんばし)  /  "徳島県鳴門市"

小鳴門大橋  (こなるとおおはし)  /  "徳島県鳴門市"

小鳴門海峡  (こなるとかいきょう)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門ウチノ海総合公園  (なるとうちのうみそうごうこうえん)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門線  (なるとせん)  /  "徳島県鳴門市"

神戸淡路鳴門自動車道  (こうべあわじなるとじどうしゃどう)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門スカイライン  (なるとすかいらいん)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門教育大学  (なるときょういくだいがく)  /  "徳島県鳴門市"

小鳴門橋  (こなるとばし)  /  "徳島県鳴門市"

第二鳴門トンネル  (だい2なるととんねる)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門町  (なるとちょう)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門総合運動公園  (なるとそうごううんどうこうえん)  /  "徳島県鳴門市"

第一鳴門トンネル  (だい1なるととんねる)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門スカイライン  (なるとすかいらいん)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門北IC  (なるときたIC)  /  "徳島県鳴門市"

神戸淡路鳴門自動車道  (こうべあわじなるとじどうしゃどう)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門市  (なるとし)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門町  (なるとちょう)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門徳島自転車道  (なるととくしまじてんしゃどう)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門公園  (なるとこうえん)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門  (なると)  /  "徳島県鳴門市"

鳴門藍住大橋  (なるとあいずみおおはし)  /  "徳島県板野郡藍住町"

井門町  (いどまち)  /  "愛媛県松山市"

北井門町  (きたいどまち)  /  "愛媛県松山市"

竈門神社  (かまどじんじゃ)  /  "福岡県太宰府市"

瀬高町山門  (せたかまちやまと)  /  "福岡県みやま市"

芥屋の大門  (けやのおおと)  /  "福岡県糸島郡志摩町"

竃門  (かまど)  /  "熊本県玉名郡和水町"

竃門大橋  (かまどおおはし)  /  "熊本県玉名郡和水町

御竈門山  (おかまどやま)  /  "熊本県阿蘇郡南阿蘇村"

 

「門」を「と」と読む都道府県別ZIP出現率との順位相関係数

 

順位相関係数

無相関確率(p)

縄文遺跡数

0.2270

0.124922255

縄文遺跡密度

0.2307

0.118726973

緯度

0.2668

0.069854507

経度

0.2731

0.063262134

 

「にら(韮)」

「ニラ」文字列を含むZIP地名は、宮城県、栃木県、群馬県、千葉県、山梨県、静岡県にあり、関東平野および更にそれらを取り囲む地域に限られる。北海道や宮城県を除く以北の東北や北海道、西日本に見られない(国土地理院2.5万分の1の地図では島根県益田市に「韮草山=にらくさやま」。愛媛県西予市には「韮ケ峠」、長崎県対馬市韮崎および北松浦郡佐々町「韮岳」があるが、それでも検索リストを見る限り、関東地方を中心とする地域で件数が圧倒している)。この点、先の「トネ」地名の分布とよく似ている。また因子分析第一、二因子の負荷量もよく似ている。すなわちともに第一因子では特に高いわけではないが共に「正」の値を示し、第二因子では「負」を示す。ただし第一因子付加量は0.4346(「トネ」は0.2771)で先の「トネ」地名より高い。反対に第二因子付負荷量は-0.2156(「トネ」は-0.5032)であり、「トネ」より低い。

下にリストを示すが「ニラ」地名のうち、甲府盆地の周辺部にある韮崎市、伊豆半島付け根付近の「韮山」町は広域地名欄に記載される地名である。

全国の「ニラ」を含む地名

9880465

モトヨシ*ウタツ

ニラノハマ

宮城県

本吉郡歌津町

韮の浜

3270802

サノ

ニラカワ

栃木県

佐野市

韮川町

3290432

カワチ*ミナミカワチ

ニラカワ

栃木県

河内郡南河内町

仁良川

3720813

イセサキ

ニラツカ

群馬県

伊勢崎市

韮塚町

3730029

オオタ

ニラカワ

群馬県

太田市

韮川町

2890407

カトリ*ヤマタ

ニラ

千葉県

香取郡山田町

仁良

4070045

ニラサキ

アサヒマチカミシヨウナカワリ

山梨県

韮崎市

旭町上條中割など47ZIP

4102112

タカタ*ニラヤマ

ウチナカ

静岡県

田方郡韮山町

内中など18ZIP

 

「韮(にら)」の「野蒜(ノビル)」説

丹羽(1992)は「韮山」の付近に「蛭(ひる)ケ小島」という地名があることをも指摘して「韮の自生した山」に由来する」としている(日本地名ルーツ辞典)。ねぎ、にんにく、にらの類は「蒜」と書くが「蛭」も「ヒル」と読む。

【コラム】新説・韮山の語源では<「韮」が地名に残るほど自生したとも思えず、同じく近辺の「蛭が小島」の存在を指摘し、韮山の韮は「野蒜(ノビル)」のことであり、ノビルが自生した山>という 野田説を提唱している。

日本書紀に「韮」の記述があるとのことではあるが、縄文時代より「にら」が移入され、自生していたとも思えず、一方、少し郊外にでて歩くと今でもいたるところに野蒜を見かけるところから、「韮」=「野蒜」説は頷ける。山梨県の「韮崎」も野蒜の群生する湿地帯に突き出た岬であったのだろう。縄文海進時の甲府盆地は多分湿地帯が広がっていただろう。その北西部に高く突き出た岬が「韮崎」であったのだろう。上の「ニラ」地名リストに載るその他の「韮」や「仁良」地名もすべて海進時代でも海面上にあったと断言できる場所にある。海岸にある「韮の浜」ですら一段高くなった狭小な平地があり、当時はこの部分が「浜」であり、野蒜が群生していたのだろう。

今、われわれが食べている「韮(にら)」がまだ日本にない時代には、「のびる」のことを「にら」と呼んでいたのだろう。これは仏教伝来の前に地名の「てら」を含む地名があり、金属が日本にもたらされる以前から「かね」のつく地名があったと思われるのと似ている。そして「にら」が日本に移入された時点で「のびる」と似ているので、その植物に「にら」という言葉が充てられた。庭に生えている「のびる」を見ると確かに「にら」とよく似ている。

 

 

「にら」および「ひる」および「ねぎ」のあやしい語源解釈

ところで、「にら」や「のびる」あるいは「にんにく」「ねぎ」「たまねぎ」「らっきょ」「あさつき」「ぎょうじゃにんにく(アイヌねぎ)」などの総称として「蒜(ひる)」や「葱(ねぎ)」という言葉が用いられている。

一方、「韮崎(にらさき)」の「ニラ」文字列を含む地名が中期縄文遺跡分布と相関したのであるが、「ヒル」や「ネキ」文字列を含む地名の都道府県別地名もまた中期縄文遺跡分布などと相関するのである。すなわち常識的には凡そ地名として採用されるとは思われない「へび」や「ひる」地名が東日本に偏在することをすでにパートAにおいて、指摘した。また「ネキ」を含む地名も圧倒的に東日本で出現が多い(jomon.lzhのネキ.txt」を参照)。そして「にら」地名も関東平野を取り囲んでいる。このようなことが偶然に起こるとは思えない。各種「蒜(ひる)」類は縄文時代から地名に残るほどまでに注目されていたと考えるのが穏当なように思われる。

ただし、「ヒル」地名の場合多くは「蛭」や、意味不明の「昼」「肥留」その他が充てられることが多く、「ネキ」地名の場合でも「葱」という字で表記される地名はまったくない。意味の異なる「根岸」や「祢宜」「根木」などが使われている。

 

まず「にら」の語源解釈からはじめよう。稲作が常識的には西日本から始まったと考えられているのに反して、東日本、あるいは中期縄文遺跡分布密度の高い都道府県に「×新田(しんでん)」の出現率が高いことをこれまでに指摘し、「しんでん」という中国語読みの言葉は「にった」や「にいだ」と呼ばれていた場所ががことごとく漢字音読み地名に読み替えられた結果であり、水田(様)農業はむしろ東日本から始まったのではないかと突飛な考えを述べた。すなわち、パートA<新田という地名(ンテ、テン、エモ。地名)」>の項ではその分布状況を、またパートC後半部<「サタ」地名は「狭田」><「田」を含む地名「池田」「竹田」>では、<「田」を含む地名が中期縄文遺跡分布都道府県に多いにもかかわらず、「池田」や「竹田」あるいは「さだ」地名は西日本に多い>とのべ、続く<「田」「畑」の怪しい語源解釈>で「新田(しんでん)」地名の元は、湿地をあらわす「にっ」に「た」のついた「にった」ではないか>とした。

北海道の「日進(にっしん)」「日東(にっとう)」のような一見すると会社名に因んだ地名のように思える「にっ」地名が湿地を意味する「にっ」に由来し、「日光」も「二荒山」の音読みという定説を排して、関東平野という広大な湿地帯の果てにある「にたむこう」ではないかという怪しげな説も述べた。わが国名「にっぽん」や「にほん」の「に」も、「ほ」の部分はまだ考察していないが、北日本地名の「ん」好きと合わさって出来た国名かもしれないとすら思っている。「にほ」という地名なら思い当たる。

また本稿冒頭の因子分析結果を示す表を見ると、「ニラ」「ニツ」文字列のほかに、「ニサ」「ハニ」「ニウ」の「ニ」を含む文字列の第一因子負荷量の高い地名文字列であることが示されている。

大陸氷床が溶け、水浸し状態が始まるころから始まる縄文時代にあって、「に」ないしは「にっ」は縄文時代を解くキーワードかもしれない。

また本パートDでは「あらい」や「ひらい」地名の「ら」は「われら(我等)」「そこら(そこ等)」の「ら」ではないかと述べた。

「韮(にら)」は「に=湿った場所」に「群生する植物=ら」ではないか。たしかに、まだ水の入っていない田んぼに野蒜がたくさん生えている。あるいは「みずみずしい=に」+「ら=植物」の意味かも。新鮮な韮の切り口から水分が滴り落ちる様子をニラ栽培農家紹介ビデオで見たことがある。野蒜も似た様なものだろう。

あるいは「のびる」に限らず、みずみずしい野草全般を、当時は「にら」と呼んだのかもしれない。または、まだ人の手の入らない湿地(にっ)辺り(等)に生える植物全般を「にら」と呼んだのかもしれない。

韮山は山菜取りの山である・

なおアイヌ語辞書では「にたっ」は「湿地、谷地」とある。

複数の文献、HP上「にら」の古語は「かびら」「みら」とでている。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』では<古事記では加美良(かびら)、万葉集では久々美良(くくみら)として記載がある>となっている。「に」が「み」に変わっている。

しかしながら、非縄文地域である九州の「むた(大牟田など)」は「にた」が「ぬた」に変化、最後に九州に渡り「むた」変化したという説(瑪瑙の古代語探求http://kyoto.cool.ne.jp/kanta727/menou2.htm)を、パートCで紹介した。「にら」の「に」が西に行き、時代を経て「みら」と発音されるようになったと考えることは許容範囲内である。あるいは新しく大陸から入ってきて栽培されるようになった「韮」を区別して「に」の代わりに「み(美)」に取替え「みら」といったのかもしれない。一般の人々はそんな経緯はお構いなく、「にら」を使い続けた。中期縄文遺跡分布と相関する「韮崎」や「仁良」地名の発音どおり「にら」こそ古い。

 

次に「ねぎ」とは何かについて考えたい。ネギもニラも、伝来は、少なくとも弥生時代以降であろう。しかし「ネキ」地名の出現は中期縄文遺跡分布と重なり、ネギが伝わる前から「ねぎ」という言葉はあったのだろう。

ところで植物一般は、「根」と「葉」と「茎」に分けることができる。「ね」は「根」で「は」は「葉」であり。根は東日本に濃く残るおびただしい「根」地名の存在や、金属が使用される以前から「かね」という語があり、「かね」の「ね」は硬い「根」の意味ではないかと解釈した。また「は」は植物の末端が「葉」であるが、「歯」や「端(は)」、更に「一定の機能を果たす役割を持つ者・物」という意味の「し」を付加して「橋」「端(はし)」「箸」などという言葉が出来たのではないかと述べてきた。

残りは「茎」である。元来「くき」は、根や葉と同じ1音節の「き」であったと思う。丸太舟にもなる立派な「き」は今では接頭語として残る美称「み」が付加され「みき」となったのであろう。「くき」の「く」は「統括する」のような意味であろう。「国(くに)」という言葉は弥生時代開始前後に沖縄を含む南九州から生じたのではないか。本土で「こ+ね=隣接(密接)する+根」と発音されていた語が沖縄で訛り「くに」となり、再上陸し、北上東進するうちに「国」なる言葉と観念が整っていったのではないかとパートCでのべた。「くに」の「く」は「根を統括したもの」である。

「き」、すなわち、現在では「茎(くき)」と呼ばれる部分は、まさに「葉」「根」を結びつけ統合する部分であり、わざわざこのことを明確化するため「く」が付されたのではないか。材木でない草花の茎も「き」であった。「ねぎ」とは「根に連なる木」すなわち「みき」ではないか。

「ネキ」地名の「根木(ねぎ)」は「集落の中心部」、「根岸(ねぎし)」は語尾に一定の機能を果たす者や物の意味の「し」が付いているから、集落(根)の中心部(き)の職能集団(し)、たとえば大工さんの村のようなイメージがわく。

「祢宜」は神職のうち諸行事を執り行う神主に次ぐ職責と出ている。神社組織の幹になる人であり。実質的に氏子(根)を束ねる職責を担っている。

はじめて「葱」を見た人は、どこが「根」でどこが「茎」かわからない形状をしているので「ねぎ」としたのかもしれない。すなわちは草も樹木もひっくるめて海洋民たちは「き」といっていたので、「根」のような「き」と言ったかもしれない。

 

ついでに、「牙(きば)」も関係ある語かもしれない。木のように立派に目立つ「歯」が原意かもしれない。「田」の付く地名は中期縄文遺跡分布と相関する地名文字列である。中期縄文時代にはすでに田があったと思われる。太平洋沿岸に立つと「北」はどこでも立派な「た」のある陸地であり、「美しい・立派な+波」が押し寄せる方向を「南」としたのかもしれない。なお「なみ」は「鳴る水」かもしれない。

安本(1993:安本美典、日本語誕生記T、PHP研究所)は日本語の成立の中で、「今から2000年ほど前にベトナムやビルマ、江南の言葉の流入があったのではないか」と指摘している。すなわちこれらの諸言語の「芽」や「歯」「穂」「手」など、一音節で、身体、植物関係の基礎的な単語の類似性を指摘している。ただ、時代がずれている。中期縄文時代は5-4000年前である。

 

最後に「ひる」について考察する。

インターネット上の国語辞典「goo辞書」で「ひる」を引くと、<(動ラ五[四])〔「嚔る」と同源〕体の外に出す。排泄(はいせつ)する。産む。「屁を―・る」「しらみが卵を―・る」>のほか、<くしゃみをする(嚔る)><乾く(干る、乾る)>。名詞では「昼」「蛭」「蒜」が出てくる。

動詞「ひる」の意味は、いろいろの漢字が使われているが共通点は「内部に隠れていたものを顕在化させることであり、顕在化する」ことである。

沼や湖が「ひる」ということは、「干上がって」隠れていた底が見えてくることであろう。くしゃみをすることだけでなく、「干(乾)る」も同源ではないか。むしろ「ひる」の元々の意味ではなかったか。

とすると名詞の「昼」も、意味がよく理解できる、「日(ひ)」がのぼり暗闇に包まれていた世界が明らかに見えてくる。「闇が干上がった」のが「昼」。世界が顕在化する時間経過が「ひる(ひる)」である。「ひる」になるためには「ひ(日)」が必要であり、「干る」ためにも「日」が必要である。「ひる」は「ひ(日)」から派生した言葉かもしれない。先に「ひらい」の「ひら」はアイヌ語の「崖」の意味とは別に「次世代の人々」という2種類の意味があるのではないかとした。「ひ」は「日」であり「日を重ねる」という意味も含んでいたのではないか。先に、「まつま(松前)」が「まとうま」、「るも(留萌)」が「るも」と呼ばれていた例に触れた。「い」と「え」が混同しやすいなら、「ひる」が「へる」に変わる可能性もある。「経(へ)る」も無関係な単語ではないかもしれない。そうすると、更に「時を経ると、ものはだんだん減(へ)るので」「減る」も家族語かもしれない。

「ヒル」を含む地名の第一因子付加量は0.4417と高く、パートAでは、およそ地名としてふさわしいとは思えないような「へび」や「ひる」地名が東日本に偏在して多数認められることを指摘した。パートAで示される「ヒル」包含地名リストを見ると多くは「蛭池」など「蛭」の漢字が使用されている。また少数であるがに「蒜」の字を使った地名もある。「昼濃」「昼間」など奇異にも思える漢字使いの地名も(「昼」は「干る」と無関係でないとしたらあながち奇妙とはいえないが)、北海道から九州まで、散見される。

「蛭」を使った地名が圧倒的に多いため、「ヒル」地名が、「蛭」と何か関係あるとかと悩んだが、辞書で「干る」という言葉を見た瞬間解消した。「蛭池」は「干上がった池」「蛭田」は「湿地帯を干拓して出来た田」と考えれば全国の「ひる」地名の多くを解釈できる。縄文海進(6000年前)以後は再び水が引き始め、沖積平野や盆地があらわれ始める。湿地帯は干からび始める。私用で筆者は岐阜県「ひるがの(蛭ケ野)高原」に行くことが多い。日本海側へは「庄川」、太平洋側へは「長良川」の分水嶺があるところである。今でも水芭蕉の茂る湿地帯が156号線沿いにある。「蛭の多い野原」はやや理解しがたいが、「元湿地帯で干上がった野原」なら違和感なく受け入れられる。地名に漢字を充てる時代には、湿地帯は十分「干り(ひり)」上がっていた。このような経過を知らず、誤解から安易に「蛭」の字が使われたのであろう。

なお動詞「住み」「取り」のように、語尾に「い」を付けるのが縄文流であることをこれまでに指摘した。「hir」に「i」をつけた「ヒリ」地名出現率も因子分析に用いられた変数である。下記に示されるように、漢字からは(意味においても、またしばしば音においても)まったく理解できない奇妙とも思われる地名群であるが、これらを「干り」と理解すれば、少しは奇妙な感じは軽減する。

また「蛭川」も全国にところどころに認められるが、これは「干る川」でなく「る川」、すなわち「氾濫を繰り返す川」かもしれない。

「ひる」地名の中には、「屁をひる」などとの連想が働き、「ひりた」などと呼ばれていたものが「ひるた」に変わったところもあるかもしれない。「ひる」の吸血機能は、うっ血や化膿した膿を吸い出すために、つい最近まで利用されていたと聞く。古代人は「ひる」に対して、もっと良いイメージを抱き、重要視していたのかもしれない。

 

全国の「ヒリ」地名

494151

セタナ*イマカネ

ヒリカ

北海道

瀬棚郡今金町

美利河

893662

ナカカワ*ホンヘツ

オクセンヒリ

北海道

中川郡本別町

奥仙美里

893666

ナカカワ*ホンヘツ

カミセンヒリ

北海道

中川郡本別町

上仙美里

893674

ナカカワ*ホンヘツ

シモセンヒリ

北海道

中川郡本別町

下仙美里

893663

ナカカワ*ホンヘツ

センヒリ

北海道

中川郡本別町

仙美里

893664

ナカカワ*ホンヘツ

センヒリモト

北海道

中川郡本別町

仙美里元町

893675

ナカカワ*ホンヘツ

ニシセンヒリ(3-37-5-240-1ハンチ)

北海道

中川郡本別町

西仙美里(3−3、7−5〜240−1番地)

893751

ナカカワ*ホンヘツ

ニシセンヒリ(258-2-333-13ハンチ)

北海道

中川郡本別町

西仙美里(258−2〜333−13番地)

893443

ナカカワ*ホンヘツ

ニシヒリヘツ(113-791ハンチ、ニシカツコミ、ニシカミ、ニシナカ)

北海道

中川郡本別町

西美里別(113〜791番地、西活込、西上、西中)

893325

ナカカワ*ホンヘツ

ニシヒリヘツ(ソノタ)

北海道

中川郡本別町

西美里別(その他)

893673

ナカカワ*ホンヘツ

ヒカシセンヒリ

北海道

中川郡本別町

東仙美里

893326

ナカカワ*ホンヘツ

ヒリヘツ(タカヒカシ)

北海道

中川郡本別町

美里別(高東)

893323

ナカカワ*ホンヘツ

ヒリヘツ(ヒカシシタ)

北海道

中川郡本別町

美里別(東下)

893677

ナカカワ*ホンヘツ

ヒリヘツ(246-7ハンチ)

北海道

中川郡本別町

美里別(246−7番地)

893442

ナカカワ*ホンヘツ

ヒリヘツ(タクノウ、ヒカシカツコミ、ヒカシカミ、ヒカシナカ)

北海道

中川郡本別町

美里別(拓農、東活込、東上、東中)

9630834

コオリヤマ

ナカタマチウシクヒリホンコウ

福島県

郡山市

中田町牛縊本郷

9636314

イシカワ*タマカワ

ヒリウ

福島県

石川郡玉川村

蒜生

2701123

アヒコ

ヒヒリ

千葉県

我孫子市

日秀

2701124

アヒコ

ヒヒリシンテン

千葉県

我孫子市

日秀新田

2390828

ヨコスカ

クヒリ

神奈川県

横須賀市

久比里

9430632

ヒカシクヒキ*マキ

カミヒリコ

新潟県

東頸城郡牧村

上昆子

9430633

ヒカシクヒキ*マキ

シモヒリコ

新潟県

東頸城郡牧村

下昆子

 

ところで本題の「蛭」「蒜」の解釈であるが、ともに大地から嚔(ひ)り出てくるという意味かもしれない。春になれば、種をまかなくても自然に野蒜は田んぼやその他の湿地に生えてくる。山や田んぼを歩いていると、知らぬまに「蛭」に血を吸われている。蛭の口からは、咬まれても痛みの生じない物質が分泌されるそうである。「蛭」は大地から嚔り出たものと思われていたからかもしれない。自信があるという説でもない。

 

日本全国の「ヒル」「ネキ」「ニラ」を含む全ZIP地名をGoogleEarth上にプロットした図をhiru1.GIFhiru2.GIFに示す。

なお「ヒル」包含地名においては大都市に特有な高層ビルに付された「××ビル」地名が大量に含まれる。これら高層ビルでは各階にZIPが割り当てられており、明らかに一般ZIPと異なる性質を持つ反面、「ヒル」地名の都道府県別出現率に強い影響を与えている(分析では濁音はすべて清音に直されたテキストを使っている)。宮城、埼玉、東京、大阪にこのような「ビル」地名が存在し、西日本では大阪のみである。一方、東日本では中期縄文遺跡分布のもっとも濃密な東京都が「××ビル」以外の「ヒル」地名の出現は皆無であるにもかかわらず数個の高層ビルがあるためトップの「ヒル」地名出現県(都)になってしまう。

上の図ではこれらの高層ビル地名は除いて表示している。また新たに「××ビル」地名を除いて遺跡分布などとの相関を求めた結果を下に示す。その際、同時に北海道、岐阜県にある「スエーデンヒル」「グリーンヒル」「コモンヒル」も省いて計算が行われた。

「××ビル」」地名を除いた「ヒル」地名と都道府県別遺跡分布との相関値(n=47都道府県)

 

中期縄文遺跡密度

中期縄文遺跡数

経度

緯度

順位相関値

(無相関確率)

0.2574

(0.0807)

0.2982

(0.0417)

0.3632

(0.0121)

0.3795

(0.0085)

東日本で高い出現率を示す「××ビル」地名排除のため、元の相関値に比して、関東地方で高い値を示す遺跡密度との相関値は低下し(含めた場合は0.4378)、緯度や経度、北海道で高い値を示す遺跡数との指標でのみ、明確な相関性を示している。

 

「日本語は3種混合言語である」

「ひる」「ねき」「にら」分布図を見ると中国・四国の空白部が認められる。「にら」は関東平野を取り囲む都道府県に限定されるが、「ひる」「ねぎ」は分布が希薄な中国・四国を跳び越して九州地方の対馬、沖永良部島にまで分布が及んでいる。また北日本では東北のみならず「ひる」「ひり」は北海道にも存在する。

「ねぎ」「ひる」とも広範囲に分布するが、それでも「ねぎ」地名は偏りが認められ、東京都、埼玉・千葉県に濃密に分布しているといえよう。また、西日本では両者とも出現は少ないが、「ねぎ」地名のほうがやや多い。

このような分布状況から察するに、北海道から順次南下し「ひる」地名を残した人々が一方にあり、もう一方に、千葉や東京から関東平野形成期に日本に侵入して東西に「ねぎ」地名を残した別グループが既に居たのではないかと思う。

ただし、当時は「ねぎ」も「ひる」も元来、植物をあらわす言葉ではなかった。一方、沖積平野がまだ完成していない関東地方の陸地のほうには、湿地に生える野蒜を「にら」と呼ぶ人々がいた。野菜の名前で意味が限定されているので、地名としてはあまり広がらなかった。

関東地方から流入した人々の拡散力は強く、上陸してからも、川筋を辿り、当時の沿岸に住む人々や、更に、より高地に住む「ひる」地名を残した人々と接触する。山や里に住む人々も彼らの文化や技術を受け入れる。行動を共にする人々もいただろう。こうして「ねぎ」地名を残した人々は日本列島を横断して裏日本にまで達する。

「ね」の人々は船を操るので、中期縄文時代とはいえ、西日本のみならず、北海道、沖縄にまでも達することができたであろう。

「ひる」はサハリンから北海道を通って南下し、「××沢」や「××川」地名を残した「わ」、「ねぎ」は関東地方に海から進入し、「×根」、「かね」、「みね」地名を残した「ね」、「にら」は新田(しんでん)と発音される以前の「にった」や「にいだ」、「あらい」、「いず(す)み」地名を遺した「い」の人々が使っていた言葉かもしれないと思っている。同音異義語ならぬ異音同義語が存在する所以である。

 

怪しい地名研究パートD(続き) 「つづく」