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怪しい地名研究パートD
これまでに取り上げられた地名文字列の主成分法による因子分析

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著者:「1

因子分析法

これまで、アイヌ語地名に含まれる文字列「ナイ」「ヘツ」「へ」、都道府県の緯度・経度・札幌からの距離、あるいは縄文遺跡分布状況と相関の見られる地名文字列がどのようなものであるかを郵便番号表から探索、リストを作成し考察を加えてきた。その結果、多数の都道府県に偏在する地名文字列が明らかになった。

ここでは、これら地名文字列の47都道府県別のZIP出現率の相互の順位相関係数を元に多変量解析の一つである因子分析法による分析を行い、整理して、更なる地名分析を進めたい。

因子分析法は測定された特定の対象に対して得られた複数の変量間の相互の関連性から、これらの変量を「最も効率的に記述・或いは説明できる次元は何か」を求めようとする方法である。

例えば特定の集団に対して身長や体重或いは胸囲、指の長さ、等々の測定値を得たとしよう。個々の測定対象は「身長は何センチで体重は何キロ、胸囲は何センチ・・・・・・」というように記述できるが、身長も体重も胸囲も相互に相関しているので(すなわち押しなべて言えば身長の高い人ほど体重も胸囲も大きいといえるので)、「体の大きさ」という言う概念を用いて、「非常に体が大きい」とか「小さい」人とか言うほうが効率的であり、体の成長を支える栄養や性差などの要因と関連付けて考察を進めやすい。この場合「体の大きさ」が第一因子で、更に第一因子で説明できない部分を説明する次元を次々見出してゆく。ここで用いられた因子分析プログラムは「パソコン統計ハンドブックU多変量解析ハンドブック(田中豊など編:共立出版:1984)」のn88BASICによるソースコードをunoカルク用に移植したものである。

リストアップされた文字列は各都道府県の中期縄文遺跡分布の濃淡および緯度経度と相関する文字列群であり、これらの文字列に関する47都道府県出現率を用いて因子分析を行うことは循環論理に陥る可能性がある。すなわち因子分析を行うまでもなく、第一因子は「縄文-非縄文」、または縄文遺跡は東日本に偏るので「東日本―西日本」の次元であろう。

しかしながら、日本列島中緯度より東では南北に大きく折れ曲がり、東西日本の都道府県の経緯度は、西日本あるいは東日本内部の都道府県であまり差異がない。また縄文遺跡分布は東日本というより、関東地方に稠密な分布状況を示している。このようなことから、一度、これまでに得られた文字列の因子分析を行い、整理する必要があるように思う。文字列ごとの算出された次元の影響力(負荷量)や第2因子以降の因子との関係を考慮して地名文字列を考察することによって、新たな視点が見出されるのではないかと期待できる。

 

因子分析結果

各都道府県庁の緯度・経度・札幌からの距離・中期縄文遺跡数・中期縄文遺跡密度と出現率において0.4以上の順位相関値を示す文字列、およびパート@で取り上げた典型的なアイヌ語地名に含まれる「ナイ」「ヘツ」と語尾の「t」のとれた「へ」を含む地名の都道府県別ZIP出現率170変数の主成分法による因子分析結果を下に示す。

上段の図は抽出された第一因子を横軸、第2因子を縦軸にした2次元空間に文字列を図示したものであり、下段の表は第3因子までの各文字列の因子負荷領を示したものである(抽出は3因子まで)。なお表には変数名、各因子の因子負荷量の他、愛知、岐阜、福井県を境とする西日本、東日本における当該の文字列を含むZIP地名の実数と出現率、およびこれら東西日本の出現率の差異が偶然に生じる確率をカイ二乗検定で求めた値を示している。

 

当然の事とはいえ第一因子軸に沿って大きく2つの地名文字列群が認められ、右の象限には中期縄文遺跡ないしは東日本の都道府県に出現率の高い地名文字列がまとまり、反対の位置には遺跡数が極めて少ない西日本に色濃い「タニ」「イケ」「えびす」に含まれる「ヒス」などの地名文字列群が位置している。縄文後期、晩期では東日本の人口は減少し、西日本では晩期から弥生時代にかけて急速に増え、やがて弥生時代に移行していく(小山修三1984、中央公論社)ので、第一因子は中期縄文以前地名 vs 後期・晩期縄文以降地名の因子と考えられる。アイヌ語地名にしばしば含まれる「ナイ」や「ヘツ」または「へ」を含む地名はこの軸の中間的なあたりに位置しているのは興味深い。

縄文地名の色彩の強い地名はすでに指摘したように××沢のような「サワ」地名で、次に「ヌマ(沼)」「カネ(金)」「テ(手)」を含む地名であり、格段に高い縄文地名因子負荷量を示している。図中の「ヌマ」のそばの「カヌ」は鹿沼、赤沼などが具体的な地名であり、「沼」を含む地名である。これらの最も縄文的な地名は第2因子負荷量では0に近い値が示されている。

個々の文字列に対応する具体的な地名のリストは次をクリックするとダウンロードできる。(jomon.lzh, yayoi.lzh

第二因子については正方向に因子負荷量の高い文字列は縄文的地名では「蟹沢」「鬼沢」などの「ニサ」、「米沢」を代表的な地名とする「ヨネ」、「漆」と関係する「ウル」があり、負方向では関東地方太平洋沿岸の「利根」や「箱根」、「横須賀」などの「トネ」「スカ」「コネ」地名の因子負荷量が大きい。また中期縄文以降地名では、正方向で最も高い文字列は「タニ」「ケタ(竹田など)」、負の高い負荷量を示す地名では「本町(ほんちょう)」、「××番町」などの「ンチ」、「五明、小宮、小湊」などの「コミ」などがある。第二因子は具体的な地名の所在地や漢字の意味などから考えると内陸-沿岸、表日本-裏日本などの因子を想定したが、今のところ適切な次元名を思いつかない。

以後パートEでは中期縄文以前-後期・晩期縄文以降次元に沿って、パート@からパートDまでに触なかった地名に関する怪しい地名解釈を続け、できれば第二因の適切な命名に辿り着ければと思う。

 

 

 

 

変数番号

文字列

第一因子負荷量

第二因子負荷量

第三因子負荷量

地名例

東日本出現数

西日本出現数

東日本出現率(%)/68719

西日本出現率(%)/49674

東西日本出現比カイ二乗検定結果(p)

50

サワ

0.8547

0.1185

-0.0586

水沢、米沢、金沢など

4275

264

6.2212

0.3842

0.0000000000

96

ヌマ

0.8133

-0.0640

-0.0503

気仙沼、大沼、魚沼など

2019

43

2.9381

0.0626

0.0000000000

25

カヌ

0.7697

-0.0298

-0.1645

長沼、鹿沼、菅沼など

288

9

0.4191

0.0131

0.0000000000

3

0.6873

-0.1021

-0.0469

×沼、沼津、布引など

2743

424

3.9917

0.6170

0.0000000000

26

カネ

0.6779

0.1393

-0.3424

金沢、高根、兼久など

624

156

0.9081

0.2270

0.0000000000

161

ンテ

0.6755

-0.2755

-0.0031

××新田、弁天、運天

1195

209

1.7390

0.3041

0.0064860380

80

テヤ

0.6637

0.0795

0.3086

館山、立山、岩出山など

294

16

0.4278

0.0233

0.0000000000

2

0.6616

0.0264

0.1686

岩手、伊達、幸手など

6035

2185

8.7824

3.1797

0.0000000000

87

ナサ

0.6411

-0.0056

-0.0811

花咲、金沢、稲沢など

1148

36

1.6706

0.0524

0.0000000000

93

ニツ

0.6252

-0.3164

-0.0181

新田、日光、日進など

221

20

0.3216

0.0291

0.0000000000

29

キサ

0.6182

0.1814

0.0288

象潟、木更津、柿崎など

455

118

0.6621

0.1717

0.0000000000

57

スヌ

0.6056

-0.3038

-0.1902

水沼、蓮沼、清水沼

30

0

0.0437

0.0000

0.0000000000

4

0.6048

0.0008

-0.3050

×根、根室、金×など

3154

1244

4.5898

1.8103

0.0000000390

21

オヌ

0.6048

-0.1471

-0.0791

大沼、魚沼、大貫

647

7

0.9415

0.0102

0.0482743070

82

テン

0.5985

-0.2130

0.3201

新田、屯田、弁天など

1987

721

2.8916

1.0492

0.0000000000

146

テサ

0.5973

0.0317

-0.0641

上(下)手沢、館沢、袖沢など

298

189

0.4337

0.2750

0.1579582000

19

エモ

0.5848

0.0542

0.1364

×衛門(人名地名)、江守、栄森など

64

11

0.0931

0.0160

0.0000016580

65

ソリ

0.5846

0.3297

-0.1010

反町、反田、加曾利など

29

2

0.0422

0.0029

0.0001309260

22

オマ

0.5833

0.1417

-0.1774

大曲、大間、粟生間(あおま)など

211

42

0.3071

0.0611

0.0000000000

38

コア

0.5733

-0.1306

0.0575

小阿仁、小安在、小荒沢、小荒川、小赤松など

39

9

0.0568

0.0131

0.0011175080

64

ソヤ

0.5717

-0.1152

-0.0806

殆どが細谷、他 素山、曽山など

73

7

0.1062

0.0102

0.0000000020

30

キネ

0.5681

0.0320

-0.2184

関根、秋根、滝根など

37

11

0.0538

0.0160

0.0074939390

77

ツミ

0.5514

0.1730

0.1569

堤、渥美、安曇、×積など

332

170

0.4831

0.2474

0.0002302410

155

ワヌ

0.5492

-0.0410

0.0501

岩沼、河沼、上沼(かわぬま)

185

1

0.2692

0.0015

0.0000000000

5

0.5485

0.0154

0.0348

川、沢、岩、庭を含む地名など

20875

10337

30.3782

15.0429

0.0000000000

39

コス

0.5480

-0.1236

0.0579

小杉、横須賀、越川など

574

30

0.8353

0.0437

0.0000000040

8

アラ

0.5469

0.1928

-0.3658

荒、新を含む地名、嵐山など

714

229

1.0390

0.3333

0.0000000000

128

モカ

0.5443

0.2920

0.1177

下川、鴨川、最上など

455

203

0.6621

0.2954

0.0000000070

76

ツテ

0.5419

-0.0789

0.0249

幸手(さって)、仁手(にって)、三ツ寺など

67

8

0.0975

0.0116

0.0000000390

97

ネキ

0.5383

-0.1753

-0.0910

根岸、根木、 祢宜など

58

14

0.0844

0.0204

0.0001076900

86

トリ

0.5376

-0.1465

0.2354

緑、取、鳥を含む地名など

1204

648

1.7521

0.9430

0.0000000010

63

ソテ

0.5299

0.2952

-0.0747

袖ケ浦、袖山、外山(そでやま)など

70

4

0.1019

0.0058

0.0000000000

137

ヤナ

0.5294

0.2151

-0.0785

柳町、柳川、梁川など

615

361

0.8950

0.5253

0.0015732230

84

トサ

0.5281

0.1166

0.1114

戸沢、江戸崎、土佐など

100

279

0.1455

0.4060

0.0000000000

7

アス

0.5259

-0.2157

-0.0223

東(あずま)、明日香、足羽(あすわ)

292

69

0.4249

0.1004

0.0000000000

159

ンス

0.5251

0.1075

-0.1232

分水町、一本杉、天水町など

125

30

0.1819

0.0437

0.0000000120

118

マイ

0.5247

0.1069

0.1121

苫小牧、釜石、今市、米原など

506

327

0.7364

0.4759

0.1124654970

138

ヤモ

0.5206

-0.2076

0.4396

宮本、毘沙門、矢本など

66

49

0.0960

0.0713

0.8878497800

110

ヒナ

0.5167

-0.0654

-0.2743

比内、日向(ひなた)、海老名、朝比奈など

111

44

0.1615

0.0640

0.0006115580

142

ヨツ

0.5142

-0.0868

0.0428

四日市、四ツ屋、四街道など

175

320

0.2547

0.4657

0.0000000000

78

テコ

0.5042

0.1444

0.0140

表郷(おもてごう)、手子林、館古など

38

6

0.0553

0.0087

0.0001402040

91

ナラ

0.5003

0.0449

0.1050

奈良、楢山、習志野など

122

452

0.1775

0.6578

0.0000000000

72

チサ

0.4965

0.1137

-0.0615

土沢、小淵沢、土崎など

76

60

0.1106

0.0873

0.6099352540

120

マヌ

0.4955

-0.3269

-0.0123

天沼、釜沼、島貫など

13

1

0.0189

0.0015

0.0178273000

103

ノサ

0.4952

0.1451

0.0312

×の・ノ・之沢あるいは里、野沢、城崎など

333

275

0.4846

0.4002

0.1013801690

90

ナネ

0.4898

-0.1322

-0.0205

宇奈根、柳根(やなね)、七根、奈根

389

16

0.5661

0.0233

0.0000000000

105

ノワ

0.4893

-0.1510

-0.0348

箕輪、三ノ輪、宮脇(みやのわき)など

82

51

0.1193

0.0742

0.3980673960

157

ワム

0.4845

0.1938

0.2371

川向、沢向、岩室など

77

18

0.1121

0.0262

0.0000054430

81

テラ

0.4834

0.2019

0.4288

寺田、寺泊、首里汀良(しゅりてら)を除き全て寺を含む地名

492

345

0.7160

0.5021

0.6627022120

136

ヤチ

0.4823

0.2660

0.2394

×谷地、八千代、八街(やちまた)など

342

176

0.4977

0.2561

0.0002243580

166

ユク

0.4812

-0.4552

-0.0971

宿、×宿(しゅく)、祝津など

989

148

1.4392

0.2154

0.0001226600

23

カサ

0.4805

-0.1490

-0.0026

高砂、河西、×ケ沢、高崎など

1801

1331

2.6209

1.9369

0.5372741250

153

ロサ

0.4776

0.2213

-0.1927

弘前、黒沢、所沢など

465

43

0.6767

0.0626

0.0000000000

98

ネタ

0.4740

0.0415

0.1120

曽根田、金田、羽田など

86

43

0.1252

0.0626

0.0469746980

60

スワ

0.4725

-0.0604

-0.1581

諏訪を含む地名が殆ど、足羽(あすわ)、須原など

279

43

0.4060

0.0626

0.0000000000

10

イイ

0.4701

-0.0961

-0.1318

飯田、飯豊(いいて)、飯館など

492

267

0.7160

0.3886

0.0001456140

69

タテ

0.4696

0.3173

0.0006

函館、伊達、館山など

1724

175

2.5088

0.2547

0.0000000000

150

リヤ

0.4658

0.1052

0.1874

守谷、郡山、刈谷など

734

322

1.0681

0.4686

0.0000000000

12

イス

0.4654

-0.1319

0.0277

泉を含む地名、夷隅、伊豆など

1198

705

1.7434

1.0259

0.0000119490

48

サマ

0.4651

0.0389

-0.1679

座間、笠間、笠松、様似など

303

77

0.4409

0.1121

0.0000000000

134

モリ

0.4630

0.1508

0.3191

森を含む地名、盛岡、守山など

1515

507

2.2047

0.7378

0.0000000000

58

スマ

0.4627

-0.1287

-0.0229

多くは東(あずま)を含む地名、須磨、太秦など

199

315

0.2896

0.4584

0.0000000000

40

コタ

0.4612

0.0368

-0.0329

函館、児玉、小平など

536

187

0.7800

0.2721

0.0000000000

33

クヌ

0.4602

-0.0199

-0.2377

椚林、樟、椹沢、歴木、柊原(くぬぎ×)

29

5

0.0422

0.0073

0.0023118740

131

モヌ

0.4561

-0.2325

-0.1128

下沼、下沼田、下貫、友沼

10

1

0.0146

0.0015

0.0569572540

6

アオ

0.4553

-0.1123

0.0196

青を含む地名、粟生(あおう)、泥障作(あおつくり)など

685

236

0.9968

0.3434

0.0000000000

83

トア

0.4550

-0.0505

0.2804

土合(とあい)、渡合(とあい)、戸赤(とあか)など

36

10

0.0524

0.0146

0.0054425860

114

ヘヒ

0.4507

0.1767

0.2102

多くは蛇を含む地名、×部東、粕壁東

44

6

0.0640

0.0087

0.0000175670

28

カル

0.4477

0.2379

0.0695

遠軽、津軽、軽井沢、軽部など

593

109

0.8630

0.1586

0.0000000000

54

シワ

0.4459

-0.0838

0.2132

多くは柏を含む地名、志波姫、岸和田など

722

442

1.0507

0.6432

0.0055986130

73

ツカ

0.4455

-0.1190

0.2566

塚を含む地名、水街道(みづかいどう)、八束など

2168

1310

3.1550

1.9064

0.0000001890

149

リサ

0.4453

0.3775

-0.4110

栗沢、芹沢、有里、針崎、など

145

42

0.2110

0.0611

0.0000000640

99

ネツ

0.4451

0.0928

-0.2215

訓子府(けんねっぷ)、米塚(よねつか)、羽附(はねつく)など

67

12

0.0975

0.0175

0.0000014130

52

シセ

0.4426

-0.0077

0.0401

石関、石瀬などのほか明治生命ビル、東・西仙北など大量に含む」

122

31

0.1775

0.0451

0.0000000530

152

ルセ

0.4425

-0.1477

-0.0118

丸瀬、鳴瀬、古関など

100

5

0.1455

0.0073

0.0000000000

112

ヒル

0.4417

-0.2485

0.2324

蛭沢、昼根、比留田などのほか××ビルディング地名を大量に含む

810

121

1.1787

0.1761

0.0000000000

127

モオ

0.4406

-0.1986

-0.2319

下大久保のような「下(しも)」+「お」で始まる固有名詞の地名、真岡(もおか)など

197

71

0.2867

0.1033

0.0000002790

106

ハニ

0.4400

-0.0137

0.2683

土生、羽生、羽入(はにう)、埴科(はにしな)など

88

18

0.1281

0.0262

0.0000001850

145

ライ

0.4389

-0.2690

0.1629

荒井、白井、平井、大洗、宝来など

774

473

1.1264

0.6883

0.0037515420

74

ツサ

0.4379

-0.1673

-0.0963

発寒(ほっさむ)、松崎、睦沢(むつざわ)、松坂など

276

246

0.4016

0.3580

0.0165215500

37

ケム

0.4375

-0.0122

-0.1076

煙山、峠向、池向、助宗、竹村、小菅村、大宅向山

8

2

0.0116

0.0029

0.2771098410

117

ホリ

0.4358

-0.2215

0.1555

登別、赤堀、堀之内、

483

246

0.7029

0.3580

0.0000065260

94

ニラ

0.4346

-0.2156

-0.3109

仁良、韮崎、韮山、韮塚、韮の浜、韮川

71

0

0.1033

0.0000

0.0000000000

61

セキ

0.4328

0.1683

-0.0344

一関、関など関を含む地名、堰下、瀬木など

737

507

1.0725

0.7378

0.3868431460

53

シヌ

0.4326

-0.2216

-0.2123

芦沼、菱沼、押沼、牛沼、石貫、東布経(ぬのへ)など

26

7

0.0378

0.0102

0.0157128150

59

スレ

0.4322

0.1111

0.0104

崩、赤崩、砂崩、岩崩など、鈴連(すずれ)、粕礼(かすれい)

13

1

0.0189

0.0015

0.0178273000

95

ニワ

0.4306

0.1997

0.2482

恵庭、丹羽、浪速、真庭、接骨木(にわとこ)など

133

183

0.1935

0.2663

0.0000000090

156

ワフ

0.4300

0.1609

-0.0520

岩舟(船)、岩淵、川房、川渕、和深、土生(わぶ)など

271

15

0.3944

0.0218

0.0000000000

158

ワワ

0.4293

-0.4100

-0.0424

岩脇、川和、河和田、川匂(かわわ)など全て川、河、岩を含む地名

13

2

0.0189

0.0029

0.0471252690

68

タサ

0.4291

-0.0061

-0.2600

北沢、田沢、北里、田崎、大宰府など

240

101

0.3493

0.1470

0.0000037520

144

ヨモ

0.4286

0.3528

0.0467

蓬田、蓬沢など多くは蓬を含む地名、四方山、四方木

28

7

0.0407

0.0102

0.0084636050

115

ホソ

0.4278

0.2230

0.0528

細谷、細入、細見、細川など多くは細を含む地名

140

56

0.2037

0.0815

0.0001438910

51

シス

0.4240

0.0952

0.1149

静内、後静(しりしず)、雫石、酒々井(しずい)、静岡など

744

255

1.0827

0.3711

0.0000000000

41

コヌ

0.4217

-0.3813

0.1589

小沼、横沼、古怒田、五主(ごぬし)

11

2

0.0160

0.0029

0.0967674060

135

モン

0.4185

0.1964

0.2377

紋別、十文字、門前、相川五郎左衛門など

678

284

0.9867

0.4133

0.0000000000

35

クリ

0.4164

-0.3131

0.2638

栗沢、栗原、玉造、九十九里、御厨(みくりや)など

870

294

1.2661

0.4278

0.0000000000

14

イワ

0.4159

0.2124

-0.1672

岩手、岩出、磐井、岩船、岩国など

2546

960

3.7051

1.3970

0.0000000000

143

ヨネ

0.4151

0.4509

-0.2947

米沢、米田、米山、大多数が米を含む地名

240

44

0.3493

0.0640

0.0000000000

147

ラス

0.4139

-0.0508

0.3251

(からす)森、烏川、烏田、烏山、香良洲、無音(よはらす)など

73

48

0.1062

0.0699

0.6094633810

163

ンメ

0.4122

-0.0036

0.2747

神明を含む地名、本梅(ほんめい)、金明など

150

58

0.2183

0.0844

0.0000383640

13

イラ

0.4110

-0.2088

-0.3337

平館(たいらだて)、平(たいら)、×平、姶良など

574

230

0.8353

0.3347

0.0000000000

165

ハシ

0.4101

-0.1808

-0.0188

石橋、前橋、船橋など多数

2271

739

3.3049

1.0754

0.0000242670

164

ンヨ

0.4082

0.1732

0.1790

南陽、山陽、尾肝要(おかんよう)、剣吉(けんよし)、三女子(さんよし)

105

66

0.1528

0.0960

0.3724344070

66

タイ

0.4070

0.0058

0.2635

×台、平を含む地名、仙台、大和(だいわ)、大×など

3314

1904

4.8227

2.7708

0.0000000000

116

ホツ

0.4070

0.1828

0.2579

法華、堀田、発知(ほつち)、穂積など

97

29

0.1412

0.0422

0.0000162280

71

タヤ

0.4057

0.2301

0.4678

板柳、北山、田屋、和田山など

310

238

0.4511

0.3463

0.4844103810

121

ミオ

0.3991

-0.2528

0.2014

上(かみ)+「お」ではじまる固有名詞地名、富岡、神岡、泉大津など

557

231

0.8106

0.3362

0.0000000000

75

ツツ

0.3962

-0.3245

0.4354

寿都(すっつ)、堤を含む地名、富津(ふっつ)、摂津、筒を含む地名など

361

208

0.5253

0.3027

0.0088258720

17

ウル

0.3960

0.4128

-0.3380

忠類、漆を含む地名、宇留部、潤島など

70

22

0.1019

0.0320

0.0004497590

119

マス

0.3940

0.3326

-0.1856

増田、益田など増、益を含む地名、叺田(かむすだ)、升沢など

152

164

0.2212

0.2387

0.0003372610

125

モイ

0.3907

0.1200

-0.0194

留萌、百石(ももいし)、下(しも)+「い」で始まる固有名詞地名など

290

116

0.4220

0.1688

0.0000000440

56

スナ

0.3893

0.1770

-0.2168

砂川など砂を含む地名、瑞浪、静内など

307

70

0.4468

0.1019

0.0000000000

122

ミト

0.3886

-0.3178

0.2582

緑を含む地名、水戸、上(かみ)+固有地名、御津(みと)など

1946

874

2.8319

1.2719

0.0000000000

24

カナ

0.3880

0.1396

0.1067

神奈川、金沢、その他、金を含む地名、茜部(あかなべ)など

1218

292

1.7725

0.4249

0.0000000000

45

コワ

0.3811

-0.0828

0.0469

小和田、小渡など小(こ)+固有地名、強梨(こわなし)、横割など

39

9

0.0568

0.0131

0.0011175080

132

モヒ

0.3774

-0.1866

-0.1275

おおくは下(しも)+固有地名、上鴨東、下平、下東など

111

42

0.1615

0.0611

0.0002736810

124

メオ

0.3739

0.2587

0.1623

亀岡、亀尾、雨生沢(あめおざわ)、久米岡など

19

130

0.0276

0.1892

0.0000000000

111

ヒリ

0.3735

-0.1182

0.0960

美里(びり)、牛縊(うしくひり)本郷、蒜生(ひりう)、昆子(ひりこ)など

22

0

0.0320

0.0000

0.0000000000

108

ハリ

0.3704

-0.0970

0.3806

夕張、新治郡(にいばり)、名張、今治、針を含む地名など

451

364

0.6563

0.5297

0.1166924560

151

リン

0.3704

0.2147

0.3021

柏林台(はくりんだい)、五林(ごりん)、五厘沢、臨港など

75

38

0.1091

0.0553

0.0725648490

79

テサ

0.3696

0.4122

0.1233

館沢、両手沢、栗見出在家(くりみでざいけ)、手崎など

22

12

0.0320

0.0175

0.4308517940

139

ヤワ

0.3602

0.3299

0.1024

八幡、谷原(やわら)、和(やわら)、宮脇、八和田など

137

402

0.1994

0.5850

0.0000000000

126

モエ

0.3505

0.0698

0.0174

神恵内(かもえない)、もえぎ、下江、鴨江、巴など

52

14

0.0757

0.0204

0.0006342340

154

ロノ

0.3497

0.3023

0.2076

広野、黒野、室野、城の前、風呂ノ橋など

74

30

0.1077

0.0437

0.0067045720

130

モセ

0.3496

0.4052

0.1795

+「せ」で始まる固有地名、百瀬、妹背牛(モセウシ)、松崎面瀬(おもせ)など

69

8

0.1004

0.0116

0.0000000200

101

ネリ

0.3486

-0.3765

-0.1868

練牛、根利、練馬、舎人など

57

2

0.0829

0.0029

0.0000000040

100

ネヤ

0.3485

0.4422

0.2224

金山、米山、長根山、小船山、峰山、寝屋川など

102

186

0.1484

0.2707

0.0000000000

43

コマ

0.3465

-0.1081

0.1666

苫小牧、駒を含む地名、小松、巨摩など

1015

314

1.4771

0.4569

0.0000000000

162

ンホ

0.3440

0.3682

0.2699

仙北、三本木、千本松、新保、新堀など

585

113

0.8513

0.1644

0.0000000000

133

モヨ

0.3428

0.3142

-0.2747

下(しも)+「よ」ではじまる固有地名:下吉田など、茂寄(もより)、友寄

52

18

0.0757

0.0262

0.0058676180

55

スカ

0.3419

-0.4841

0.4118

春日を含む地名、須賀川、横須賀、明日香など

1037

679

1.5091

0.9881

0.0431789760

104

ノメ

0.3391

0.3841

0.2620

山目(やまのめ)、魚目(うおのめ)、「ノ」「の」「之」+目を含む地名など

142

38

0.2066

0.0553

0.0000000140

27

カヤ

0.3349

-0.2417

0.2333

茅部、若柳、熊谷、中谷、×ケ谷、岡山、和歌山など

1224

1307

1.7812

1.9020

0.0000000000

92

ニサ

0.3242

0.4626

0.0217

仁左平、仁佐瀬、蟹沢、鬼沢、仁沢など

23

109

0.0335

0.1586

0.0000000000

107

ハネ

0.3140

-0.2233

-0.1432

黒羽、赤羽、羽田、羽根、赤埴(あかはね)など

120

29

0.1746

0.0422

0.0000000260

47

サヒ

0.3100

-0.0173

0.1618

旭または朝日を含む地名、佐比内、朝比奈など

1219

268

1.7739

0.3900

0.0000000850

42

コネ

0.3041

-0.4381

0.0223

横根、箱根、小根本、彦根、鉾根、小音琴郷(こねごとごう)など

38

133

0.0553

0.1935

0.0000000000

140

ユサ

0.3032

0.3003

-0.0577

多くは湯沢、遊佐、湯崎、湯坂など

144

9

0.2096

0.0131

0.0000000000

20

オア

0.2902

-0.2667

-0.0648

大麻(おおあさ)、大芦、大洗、大網、大荒、大穴など

107

49

0.1557

0.0713

0.0075436740

85

トネ

0.2771

-0.5032

0.1310

利根、刀根、舎人など、クトネベツなど

176

6

0.2561

0.0087

0.0000000000

167

フシ

0.2747

-0.2329

0.0611

伏古、藤を含む地名、富士を含む地名、伏見など

1223

1014

1.7798

1.4756

0.0011165790

88

ナネ

0.2478

-0.6223

0.0636

柳根、宇奈根、七根町、奈根 東日本6ZIPのみ

6

0

0.0087

0.0000

0.0000000000

168

ナイ

0.0638

0.4106

0.2501

アイヌ語地名の×ナイ、柳井、三内、金井、船井、院内など

831

430

1.2093

0.6258

0.0000000130

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

70

タニ

-0.5863

0.3361

0.3550

多くは谷、渓を含む地名、八幡西(やはたにし)など

579

1398

0.8426

2.0344

0.0000000000

109

ヒス

-0.5041

-0.0194

0.5059

多様な漢字で表記される「えびす」を含む地名、内日角(うちひずみ)など

67

84

0.0975

0.1222

0.0006596080

148

リエ

-0.4860

-0.1459

0.3953

入江、堀江、有家(ありえ)、東江(あがりえ)など

24

62

0.0349

0.0902

0.0000000150

123

ムタ

-0.4804

-0.1401

-0.0879

大牟田、無田、六田、和無田など

1

217

0.0015

0.3158

0.0000000000

1

-0.4521

-0.0524

0.3638

京都、東京、中央、郷・荘などを含む漢字の音読漢語風地名、宇部、鵜飼など

20766

21832

30.2196

31.7709

0.0000000000

11

イケ

-0.4455

-0.1362

0.3690

殆どは池を含む地名、永源寺、在家など

632

678

0.9197

0.9867

0.0000000000

49

サレ

-0.4449

0.0443

0.0653

佐連(され)、小砂(こされ)、佐礼谷(されだに)、相去(あいされ)、佐々礼

0

7

0.0000

0.0102

0.0000000000

15

ウツ

-0.4334

0.2416

0.0370

宇都宮、上月、高津、江津、戸津、美しが丘など

390

264

0.5675

0.3842

0.4077655430

113

フリ

-0.4243

0.0215

0.1790

脊振、中振、角振、名振、アトサヌプリなど

15

30

0.0218

0.0437

0.0007820120

9

アリ

-0.4190

0.0936

-0.1066

有田、有明、有川、有馬、有家など多くは語頭に有を含む地名

96

350

0.1397

0.5093

0.0000000000

102

ノオ

-0.4027

-0.0168

0.0809

箕面、直方(のおかた)、西之表・日ノ岡など助詞「ノ」「の」を含む地名

62

190

0.0902

0.2765

0.0000000000

16

ウノ

-0.3997

-0.1629

0.2852

河野、鴻ノ巣・塔の森・郷ノ浦など「×の×」、宇野、鴻池など

255

342

0.3711

0.4977

0.0000000000

62

ソエ

-0.3990

0.2710

-0.0373

川沿、山添、浦添、川副、細江など

68

138

0.0990

0.2008

0.0000000000

31

クス

-0.3818

-0.2183

-0.0100

菊水、福住、葛・楠を含む地名、玖珠など

270

355

0.3929

0.5166

0.0000000000

34

クマ

-0.3796

0.0369

-0.0987

筑摩、千曲、佐久間、球磨、熊を含む地名、奥間など

423

1004

0.6156

1.4611

0.2202399970

160

ンチ

-0.3652

-0.2725

0.1698

別院町、本町(ほんちょう)、×番町、×軒町、新地、谷茶(たんちゃ)など

366

397

0.5326

0.5777

0.0000000160

36

ケタ

-0.3646

0.3396

0.3876

竹田、武田、池田、明田、気高(けだか)、畑台など

216

421

0.3143

0.6127

0.0000000000

32

クニ

-0.3604

0.2430

-0.0933

上ノ国、小国、三国、岩国、国見、国東、国富、国頭、六合(くに)など

320

483

0.4657

0.7029

0.0000000000

67

タケ

-0.3604

0.1648

-0.0419

武生、御嵩、武部、武雄、竹富、竹田、竹野、武田など

748

771

1.0885

1.1220

0.0000000000

141

ヨウ

-0.3524

0.0459

0.5107

×丁・町・条、京・城・丈・上・庄・陽などを含む地名、八日市など

7949

10658

11.5677

15.510

0.0000000000

46

サタ

-0.3448

0.2213

0.3542

佐田、貞光、佐多、麻田、浅田、友定、長田、国定など

74

184

0.1077

0.2678

0.0000000000

89

ナヘ

-0.3392

-0.0328

-0.0636

員弁(いなべ)、田辺、南部、神辺、川辺、真鍋など

162

696

0.2357

1.0128

0.0000000000

44

コミ

-0.3040

-0.2524

0.0162

五明(ごみょう)、小湊、五味、小宮、小峰、横道など

81

73

0.1179

0.1062

0.1708399900

169

-0.2893

0.0998

0.1395

川辺など×辺、延岡、別所、×部、戸田、平群、神戸、中標津(なかしべつ)など

4046

2976

5.8879

4.3308

0.4610217810

18

エミ

-0.2541

-0.1961

0.1608

江見、×江南(×えみなみ)、笛水など

19

25

0.0276

0.0364

0.0457691470

170

ヘツ

-0.2075

0.1304

0.3037

女満別のような「×別」地名、別府、別所、別院、中標津など

1417

264

2.0621

0.3842

0.2646706780

129

モス

-0.1497

0.0067

0.0194

百舌鳥、雲出(くもす)、下諏訪、下須、甘水(あもす)など

91

33

0.1324

0.0048

0.0005305330

 

「奈良県奈良市」の「ナラ」は縄文的地名である

「やまと」の「奈良」は関西にあり、だれでも「なら」のつく地名は西日本の代表的地名と思うかもしれない。確かに大きな広域地名の奈良市に含まれるZIPは全てカウントされるので、西日本と東日本の出現率ということで比較すると、明らかに西日本が多い。すなわち、574件の「ナラ」を含むZIP地名のうち372件が「奈良市××」によるものである。また奈良市北側に隣接する京都府八幡市には「上奈良××」という30余りの詳細欄に記載される地名が見られる。「倭」国は「やまと」=奈良=弥生と言うイメージがあり「奈良」は西日本を代表するにふさわしい地名のように思われる。

しかしながら、「ナラ」を含む地名の都道府県別分布状況を見ると、全国的に存在し、むしろ縄文遺跡分布県と相関する。すなわち第一因子すなわち縄文地名因子の因子負荷量は0.5003、またパートBの中では中期縄文遺跡密度と「ナラ」を含む地名出現率の間の0.4157の順位相関係数が示されている。もっとも、多くは漢字表記で樹木の「楢原」や「楢山」などに於ける「楢」を含む地名であるが。「奈良」で表される地名も北海道から東海、北陸地方にかけて東日本に広く認められる。「奈良」のつく地名は奈良県奈良市と上述の京都府八幡市上奈良を除くと、西日本で19件に過ぎないが、東日本では36件にも達する。

また、すべての「ナラ」を含む地名リストを見ると、出現がないのは、東日本では富山県のみであるが、西日本では和歌山県、島根県、高知、徳島、香川県、宮崎、佐賀、鹿児島、沖縄県で多数にのぼる。これらの様相は「トサ」地名が四国特有の地名に見えるが、むしろ縄文遺跡分布と相関することと似ている。「トサ」も「ナラ」も縄文時代からあった言葉であり、地名であろう。

「奈良」「楢」以外に「習志野(ならしの)市」と言う広域地名がある。これは明治天皇が命名するところの新しい地名であるようだ。しかし千葉県は「習志野」以外にも「奈良林」「北凪原(きたならはら)」など多様な表記をもつ「なら」ZIP地名が存する。

また福岡県には「奈良」でも「楢」でもない鞍手郡小竹町「南良津」があり「奈良」という大都市名の影響なしに、漢字が充てられたと思われる地名がある。また北海道に標津郡中標津町並美ケ丘、京都府に京都市右京区御室双岡町(ともに「ならびがおか」)がある。しかし郵便番号地名リストでは、大多数は「楢」または「奈良」で表記されている。地名リストでは「楢」はやや東日本に多いようである。

 

「奈良」は「楢」か?

植物図鑑に「ナラ」のイラストは載っていない。載っているのは「ミズナラ」と「コナラ」であり、ブナ科コナラ属のうち落葉性の樹木を一般に「ナラ」と呼ぶそうであるが、コナラ属全体をさすこともあり、その範囲はあまり明確でないようである。また「ナラ」に対応する「oak」の意味するところにも混乱が見られる。植物学を離れて定義すれば「楢」は「どんぐり」の「成る」木と定義したほうが手っ取り早いかもしれない。

「どんぐり」のなる「ナラ」は北海道から九州にいたるまでいたるところに生えている。そして「どんぐり」は縄文時代人の主要とまではいかないが、命を支えた重要な食料であったことが多くの歴史書に示されており、縄文人にとって「慣れ」親しんだ食料であっただろう。

中期縄文時代の人口は愛知・岐阜県までの東日本に偏在していたとはいえ、ゆっくりと内陸部を西に移動する人々の一部はすでには奈良県あたりまで達していただろう。「奈良」が「楢」と漢字で表記されていたら「奈良」地名解釈に頭を悩ますこともなかっただろう。「奈良」は東日本にいくらでもある「楢原」や「楢山」の「楢」に因んだ地名ということで納得していたかもしれない。「平城(なら)山」は「楢山」である。

漢字で地名が表記されなければいけない時代にもなると、食料のどんぐりはもう見向きもされなくなっていただろう。人口の多い立派な近代的な都である「なら」が、山に生える田舎くさい、忘れられた「楢」に因んだ地名だ等とだれも思いつかない時代になる。

日本地名ルーツ辞典では日本書紀の「草木踏み平(なら)すので、那羅山という」という記述を引いて、なだらかに続く平坦な緩急地を形容した地名であろうとしている。また「均(なら)す」や「並ぶ」という語を含む地名が奈良県に存在することも指摘している。さらに、古文献に記される「楢山」などは誤写、誤記された例としている。

「奈良が樹木の楢と関係があるのか」という議論は置くとして、この説明の中で、「均す」「並ぶ」「平(な)らす」などが同一の意味を含んでいるという指摘は興味深い。そうすると「慣れる」「習う」「倣う」も突拍子もない行動や反応が周囲の行動と並び目立たなくなる過程を示す言葉なので、語源を一にする家族語かもしれない。

さて、樹木の「楢」もこのような家族語から派生した言葉かもかもしれない。「楢」は日本国中どこにでも(均一に)生えている、縄文人なら昔から慣れ親しみ、調理法も完成した、いわば「熟れた(こなれた)」どんぐりが「成る」木であった。樹木名の「楢」と言う語ができて「成る」という語が生まれたのかもしれない。時間を経て、内部で十分こなれる過程を経て物事は「成る」あるいは「為る」。そして木の実が「成る」。

「奈良」はそんな難しい事とは関係なく「楢」が生えていたから「楢山」とか「楢坂」とか呼んだのであろう。そして漢字で地名を表記する必要が生じた時代、奈良時代に、当時の地名学者たちは「なら」の語義の本質にまで遡って「奈良」という地名表記を完成させたかもしれない。

住居や、墓や、道は人が踏み固め、土を均して出来上がる。土を踏み固める時には、音が「鳴る」。以上、綱渡りのような怪しい解釈である。

思い込みから、筆者は「湾」のように入り組んだ海岸線ではなく、なだらかに長く単調に続く海岸線を遠州灘とか熊野灘のように「灘」と呼ぶと誤解していた。しかし辞典をひくと、流れが強く航海が困難な海が正しい。(結果的には長い海岸線に面した海といえないことはないが)。幼児が「からだ」を「かだら」や「かだだ」というようにラ行はやや発音が難しい。「なら」が「なだ」と発音された時代や地域があったかもしれない、と思い「ナダ」と読む「灘」を含むZIP地名を抽出したところ、明らかに「ナラ」地名と対照的に、西日本に多く、206件中、東日本では石川県河北郡内灘町××という15ZIPのみであった。またZIP地名ではなく国土地理院2.5万分の1の地図検索ページで「灘」を入れて検索すると451件のうち茨城県鹿嶋市の鹿島灘以北の出現は全くない。中期縄文遺跡の希薄な四国や中国地方に多い。中期縄文遺跡分布と反対に極する「なだらか」や「灘(なだ)」や「雪崩(なだれ)」という語も、あながち「なら」とは無関係ではないように思う。

 

「アラ」は「ナラ」の反対語

「荒」「新」などで表記される「アラ」を含む地名文字列の第一因子負荷量は0.5469であり、これも縄文単語といえる。なお「新」「荒」以外の漢字で表記される「アラ」地名は極めて少ない。

下に「アラ」地名の都道府県別出現率の分布図を示す。また同時に「アラ」地名をのうち「新」「荒」表記の地名を別々にしてカウントした分布図も示す。

 

「アラ」地名は太平洋側では中期縄文遺跡密度の濃い関東地方から山岳部を通り日本列島を横断して日本海沿岸に抜け、裏日本の秋田、新潟県から福井県に至る沿岸県に濃い分布を示している。西日本では分布が薄く、特に「新」で表される「アラ」地名は西日本では徳島・福岡・沖縄県にしか存在しない。このような分布状況はパートAで示された「ネ」地名の分布と類似している。注目すべきことは「新」を含む地名が東日本から最も遠く離れた沖縄県で異常に高い出現率を示すことである。すなわち宜野湾市新城、石垣市新川、糸満市新垣、中頭郡中城村新垣、島尻郡具志頭村新城(あらぐすく)、島尻郡南風原町新川、宮古郡城辺町新城、宮古郡上野村新里、八重山郡竹富町新城である。東日本では「荒川」はありふれた地名であるが沖縄県でも2ケ所ある。「新城」は「あらぐすく」と読むが「新城」と漢字表記するZIP地名は本土では、70ZIPを含む愛知県新城(しんしろ)市を筆頭に合計111ZIPがある(多くはシンジョウと読む)。兼城、仲宗根、与那嶺などの「ネ(根?)」を含む縄文地名が西日本を跳び越して沖縄県に強く分布していることとよく似ている。中期縄文時代までには、本土から船によって縄文人が沖縄に達しており、何らかの生活を営んでいた痕跡だろう。

反対に「アラ」を含むZIP地名は先の奈良県、隣接の三重県、和歌山県では極めて出現が少ない。(「なら」も少ないが)

新酒は「荒々しい」が寝かすと「こなれて」角が取れる。「荒」と「新」は意味が異なるように見えるが、共通部分もかなり含まれているように思う。すなわち「新しい」ものは「荒々しい」。

時がたつと「新しい物、荒々しいものは、なれて、こなれて、尖りがなくなる、なだらかになる」つまり「凹凸が取れて均れる」。前項で考えた「なら(奈良、楢)」は、「notあら」、「否(いな)あら」ではないのか。ただし「notなら」の意味は、単に「古い」の意味ではない。そのような「あら」-「なら」の1セットが中期縄文時代にはあったのであろうか。「not吾(あ)」は、すなわち「汝(な)」であろうか?

新た、改める、洗う、表す、現れる、露わ、顕わ、は「あら」の「新」という側面から、荒い、粗い、争う、嵐、荒らすは「荒」の側面から生まれた言葉だろうか。「有る、在る」も新たに出現するところから存在が始まるので家族語であろうか。ただし「あたらしい」は「あらた」と似ているが最も重要な部分に「t」が含まれるので別家族かもしれない。あるいは「なら」のところで指摘したように、ラ行が変化して「なら」が「なだ」になったように、「あら」が「あだ」になる過程をへて「あたらし」が生じたのかもしれない。

 

「いずみ」も縄文的地名

1903件の「イス」を含むZIP地名がある。「イス」地名のうち1293件が「イスミ」を含むZIP地名であり、千葉県夷隅郡や鹿児島県出水(市および郡)などで表記される広域地名も存在するが、1041件が漢字表記欄に「泉」を含むZIPであった(たとえば泉、和泉、大泉、小泉)。「イズミ」以外の「イズ」地名では、伊豆、出雲、出石(いずし)などをすぐに思いつくであろう。しかし、ここでは最も出現の多い「いずみ」または「いすみ」と発音される3文字地名に限定して話を進めたい。

古都「奈良」の場合と同じように、大阪府南部沿岸地方を古くから「泉州」と呼び、この地域の地名には、しばしば「泉××」「和泉××」という形容詞がつくため、関西の住人であれば「泉」または「和泉」は西日本の典型的地名ぐらいに思っているかもしれない。しかし「イス」の第一因子、非中期縄文-中期縄文次元の因子負荷量は0.4654であり、新たに計算しなおした「イスミ」3文字列の都道府県別出現率と中期縄文遺跡分布密度の順位相関係数は0.4922で、「イスミ」は中期縄文(あるいはそれ以前の)地名といえる。下に「イスミ」の都道府県別出現率の分布状況を示す。(具体的な地名リストは最初の方に示したjomon.lzhをダウンロードして解凍して「イス.txt」を参照していただきたい)

大阪府以外、鹿児島・徳島・千葉県で高い出現率が示されているのは、前述のように出水、夷隅という広域地名のためである。なお夷隅は現在町村合併のため、ひらがなの「いすみ市」になっている。いずれも縄文海進を考慮すれば沿岸にあるといって良いだろう。鹿児島県には出水郡、出水市以外に、大口市平出水、枕崎市泉町、鹿児島市泉町があり。千葉県には夷隅郡の外に30余りの泉、和泉、小泉、今泉などがある。なお漢字で「夷」(どのような読みにかかわらず)を含むZIP地名は千葉県にしかなく「夷隅」の他に、同じ県に、安房郡千倉町 北朝夷(きたあさい)、南朝夷のみである。

また徳島県の「イズミ」は「あいずみ(藍住)町」という広域地名があるためだが、これは「藍園村」と「住吉村」の合成地名である。徳島県では、その他、小泉、大泉、泉谷の3件の「イスミ」地名がある。東京都には「泉ガーデンタワー」という各階に振り当てられたZIP46あるため、やや濃い色付けがなされている。これを除くと「和泉」や「泉」、「大泉」など20件で、出現率は0.6%強になる。石川県や山梨県と同程度である。

また沖縄県にも9000021那覇市泉崎、9050221国頭郡本部町伊豆味があるのが注目される。

東日本では「イスミ」地名の出現しない都道府県はないが、西日本では和歌山・島根・香川県で出現がない。また「アラ」が東日本の日本海側に濃い分布を示したのに対して、「イスミ」は岩手・福島県の色が濃いなど、太平洋側に多いように思われる。

 

「いずみ」の怪しい地名解釈

「いすみ」は千葉県「夷隅」の漢字が表す様に「夷(えびす)」の住んでいたところではないだろうか。

「住む」が「住み」と表現されるのも、これまでの「怪しい地名研究」の「とり(取り)」「ふり(振り)」などの項で指摘したように縄文的である。「澄む」や「清む」、「住む」「棲む」「隅」も家族語だと思う。これらには「静止した動きの乏しい状態」を含んでいる。昼間の活動が終わり、じっとして長い休息をとる場所、あるいは獲物を待ち受けてじっとしている事や場所が「巣」である。活動の場の「隅」に巣が在ることが多い。水の動きが止まると濁りが沈殿して水は「澄む」。しかし元々は、透明な状態が「澄む」ではなかったと思う。淀んで動きのない不透明な大気を「霞(かすみ)」というではないか。「霞」は澄んではない。「済んで」しまえば動きは止まる。これらは同音異義語ではない。漢字が入ってから分化が進んだ言葉と思われる。

それでは語頭の「い」とは何であろうか?「威丈高」「居丈高」という言葉が在る。「い」の丈の高さから、たとえば指図する。国語辞典で「威」は「他を恐れ敬わせる勢い」とでている、「居」一字の、わざわざの記述はないが、「在る」「居る」の「居」であろう。「存在感を示す丈からの指図」で意味が通る。また、接頭語として「斎=忌み清めた神聖なる意味」、そして「夷隅郡」の「夷」は「東方の未開人。蛮人。えびす」などが出ている。

「夷」の説明が正しいとすれば、夷隅郡が「夷」を嫌って「いすみ市」になったという心理があるかもしれない。しかし、もともとはそのような悪い意味で「夷隅」という漢字表記がなされたのかは疑問に思う。「夷」は「えびす」と読み「えびす」の付いた地名は縄文地名でないことがパートCで明らかになっている。また、多様な「えびす」の漢字表記があることが触れられた。「恵比寿」「戎」「蛭子」「胡」などの多様性は、漢字の正しい意味が広まるに従い、このような「未開の人々」という意味を避けるために随時選ばれた漢字表記かもしれない。

国語辞書の記述をすべて合体させると「い」は存在感のある、迫力の在る、野蛮な異邦人となる。慣れ親しんだ「奈良」や「京都」の人々とはやや違っている。

「神(かみ)」はアイヌ語の「カムイ」から生じたという説がある(片山龍峰:1995)。「カム(被る)+イ(居)」=神(かみ)。神・上が住むところが「いずみ」であったかもしれない。筆者は幼稚園、小学校低学年のころ、「高」、「赤」、「少な」などは「高が居る」「赤が居る」「すくが居る」のような意味と信じていたような、遠記憶がある。

大阪平野沿岸の泉州から東を見ると金剛生駒山系の山々が見え、東のほうに二上山(にじょうさん・ふたがみやま)という2峰性のランドマークにふさわしい山に視線がひきつけられる。日はその方角から上る。近いと思って自転車で目指した経験がある(途中であきらめたが)。二上山を越えた所が「奈良」である。沿岸と、山向こう、「和泉」と「奈良」は、近いといえば近いし、遠いといえば遠い。二上山をもっと北に辿ると「生駒山」がある(生駒のふもとは和泉ではなく当時の河内湾・河内潟の最も奥まった所http://agua.jpn.org/pre/pm.html)の「河内」であるが)。駒は「間(境界線)に接した(或いは含む)スペース」というように解したので、「い・こま」は「イ」の「緩衝地帯、国境線と」なる。生駒を越すと、奈良市がある。生駒を越して奈良に向かう道路は現在でも少ない。近いと言えば近いが、遠いと言えば遠い。二上山を南に山脈を辿れば「岩木山」ならぬ「岩湧山わわきさん)」がある。岩湧山に上れば、大阪平野を泉州・大阪湾を含めて一望できる。

「えびす」地名は下の表のように、ほぼ西日本に限られている。既に述べたように、東京都には「恵比寿ガーデンプレイス(×階)」という高層ビルがあり、さらにこの「恵比寿」は「エビスビール」の工場があったことによるもので、これは無視すべきである。奈良県から少し離れた京都府、大阪府、兵庫県、徳島県で多い。「えびす」や「えみし」は京都発の「新造語」ではないかと「ヒス」地名の中で考えた。すなわち、古語「漬ず(ひず)」と関係在るのではないかと考え、「漬ず」の名詞化したものが「ひし(菱)」であり、接頭語「え」がついたものと解釈した(パートC)。以後、「えひし」→「えみし」→最後に「えびす」という言葉ができたのではないかと怪しげな理屈を述べた。

また岐阜県は愛知県からすると野蛮なので岐阜県に「えびす」の地名が多いのであろうか。(表中%は頻度/全国「エヒス」綴りを含むZIP数)

 

「えびす」を含むZIP地名の都道府県別頻度

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  データ種類        頻度  パーセント(* =2.5%)

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[三重県    ]         1         .70%       

[京都府    ]        34       23.78%        ++++++++++

[兵庫県    ]         5        3.50%        +

[北海道    ]         1         .70%       

[和歌山県  ]         2        1.40%        +

[大分県    ]         3        2.10%        +

[大阪府    ]         8        5.59%        ++

[奈良県    ]         1         .70%       

[宮崎県    ]         1         .70%       

[富山県    ]         2        1.40%        +

[山口県    ]         6        4.20%        ++

[岐阜県    ]         5        3.50%        +

[島根県    ]         1         .70%       

[広島県    ]         3        2.10%        +

[徳島県    ]         6        4.20%        ++

[愛媛県    ]         3        2.10%        +

[愛知県    ]         2        1.40%        +

[新潟県    ]         4        2.80%        +

[東京都    ]        43       30.07%        ++++++++++++

[神奈川県  ]         1         .70%       

[福井県    ]         1         .70%       

[福岡県    ]         2        1.40%        +

[福島県    ]         1         .70%       

[長崎県    ]         2        1.40%        +

[静岡県    ]         1         .70%       

[香川県    ]         1         .70%       

[高知県    ]         1         .70%       

[鳥取県    ]         1         .70%       

[鹿児島県  ]         1         .70%       

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またアイヌ語地名にしばしば現れる「ナイ」「ベツ」を含む「柳井、院内、別府」があるところの山口、大分県でも「えびす」町が多いことが示されている。

中期縄文期では、やや毛色の変わった東国起源の人々が住むところが「いずみ」であり、それ以降、平安時代「えびす」という言葉が流行った時に、これらの人々が住む「えびす町」ができたのではないか。東日本では「えびす」は、とりわけ、毛色の変わった人々ではなく、見かけは普通の人々であり、「えびす」などと呼ぶ必要はない。

しかし、「イスミ」ほど多くはないが、「アスミ」「アツミ」(スとツとは濁れば区別が付かない)という地名が、ほぼ東日本にかぎって存在する。「イスミ」-「アスミ」。「ア」=「吾」とすると「吾住」-「夷(威)住」と対になるのではないか。「我(あ)」と「夷(い)」の間に「あいだ」がある。「田」は縄文時代からあった言葉ではないかと指摘した。「間(あいだ)」は「合(あい)田」である、といえば笑われるかもしれないが……田は山と海の間の沖積平野から始まった。当時は湿地帯が広がっていた。

中期縄文時代にも、やはり2種類の区別すべき人々が東日本で混在していたのかもしれない

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「アスミ」

北海道    常呂郡置戸町          安住

北海道    勇払郡穂別町          安住

千葉県    千葉市緑区            あすみが丘

新潟県    岩船郡関川村          安角

富山県    富山市                安住町

富山県    上新川郡大山町        明日美野

山梨県    富士吉田市            大明見

山梨県    富士吉田市            小明見

岡山県    小田郡矢掛町          浅海

以下は「アツミ」

山形県  西田川郡温海町    広域地名

長野県、 南安曇郡安曇村    広域地名

愛知県  渥美郡渥美町     広域地名

石川県    羽咋郡志賀町          安津見

兵庫県    宍粟郡一宮町          安積

兵庫県    宍粟郡一宮町          西安積

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東国の「夷(い)」といえば真っ先に思い浮かべるのは「アイヌ」であり、「いずみ」の「い」は「アイヌ」の「イ」でアイヌ系の人々ではなかったのか。漢字が入ってくる前から「い」と呼ばれる人々がおり、意味も音も似ている、ということで「い」に漢字の「夷」が充てられたのではあるまいか。奈良から山を越えた大阪平野は「蛮人」の「い」の人々の地域であった。東日本に多い「イワテ(濁音のデも含む)」を含む地名の南限として泉州に接する和歌山県の「岩出(いわで)」、高槻市に「5691102安満磐手(あまいわて)町」、があり大阪府より西には「いわて」がないことも注意を引く。

これまでの登場人物をまとめると、「わ」の人々、「ね」の人々、それから今、「い」の人々が西日本に登場する。

 

泉州の或るアイヌ関連地名

和泉の国は和泉市を中心に堺市あたりから南の和歌山県境あたりまでの沿岸地域である。泉大津市、泉佐野市の広域地名だけでなく、「泉(和泉)××」が多数あり、大阪府の「イスミ」を含む地名の出現率をトップに押し上げている。筆者はこの地域に住んでおり、他とバランスを欠くが、やや冗舌にこの地域の地名を考えて見たい。

ひそかに、以前から、アイヌと関係すると思っていた、いくつかの地名が在る。

まず、「夷(い)」は「えびす」とも読むが、「えびす」町が泉州沿岸部に並んでいる。岸和田市と泉大津市に「戎町」がある。堺市には「戎島町」「戎之町東・西」がある。8箇所の「えびす」地名のうち5個が泉州にある。残りは「住吉大社」駅をはさんで、堺を北に超えた、延長線上、大阪市南部に「恵美須東・西」「戎本町」があり、「えびっさん」で有名な「今宮戎」という電車駅名もある。大阪府を超えた和歌山県和歌山市内に「北新戎ノ丁」があり、沿岸部とはいえないが和歌山市を流れる紀ノ川沿いに伊都郡かつらぎ町蛭子がある。

泉佐野海岸あたり(関西国際空港がある)から真北を見ると、兵庫県西宮や神戸が、大阪湾をはさんで対岸のようにはっきり見える。縄文時代には現代の大阪市内は河内湾であり生駒のふもとの道を迂回して、神戸に行くより船で行くほうが判りやすく手っ取り早い。今は大阪城のある上町台地を遠くに見ながら北上すると尼崎や西宮に着く。兵庫県西宮市には荒戎町、近くに西宮えびす神社がある。神戸市には須磨区戎町がある。徳島県も六箇所もの「えびす」地名があり、出現率は多いほうである。大阪湾沿岸は「えびす」が取囲んでいた。「えびす」とは「いずみ」の語頭が示す「い」の人々でなかろうか。

次に、「春木(はるき)」という地名が岸和田市北部の海岸沿いに在る。「春木競輪」のあるところであり、春木八幡山遺跡(山といっても砂丘のような高さ)という縄文から中世に至る複合遺跡が在る。「春木××」という複数のZIPを含む、やや大きい地域である。春木川という、綺麗な水とは言いがたい川が大阪湾に注いでいる。春木川の河口から見て、すぐ左が「春木××」と呼ばれている。そして右は「下野(しもの)町×丁目」である。アイヌ語で「左」は「はらき」、「右」は「しもん」というそうである。山田秀三(1986「アイヌ語地名を歩く:北海道新聞社」)は河口から見て岡志別川の左からの合流する川を「ハルキオカシベツ」右側から流れ入る川を「シモンオカシベツ」とよび、川の左右は、河口から見て区別するとしている。

ただし春木川に沿う下野町の山手側に共同墓地を挟んで「上野町」がある。「はらき」-「しもん」からの「下野町」ではなく、「上野町」に対応する町名ではないかとも思われ、行って見た。「上野町」は「下野町」や「春木×町」に比べて対称的ではない。狭く、古い民家の密集度が低く、最近建ったようなマンションが主で、元は空き地であったように見える。「上野町」は「下野町」に合わせて、後に生まれた地名のように思う。

春木八幡山遺跡に隣接して弥栄(やえい)神社が(「えい」部は語中の二(三?)重母音であり、なんと読むかわからなかった、「やえ・い」と区切るのか?。「年中行事をみると、当然1月に恵比須祭りがある。岸和田市戎町は弥栄神社のすぐ北側にあり。神社の浜側には春木大国町がある。春木の中にも「いずみ」がある。すなわち春木川に沿って「春木泉町」がある。

アイヌ語を思わせる地名が春木近辺にもう一つある。「磯上(いそのかみ)」である。競輪場の前の旧26号線の向かい、大阪市方面寄りにある町名である。

「いそ」はアイヌ語で「豊」の意味で、「いそ あん(在る)」は「豊である」と萱野茂のアイヌ語辞典にでている。単に海岸にある「磯」の上(かみ)とも理解できるが、北海道は下の表のように、最も「磯」地名の出現頻度、率の高い都道府県である。「磯」という言葉自身、アイヌ語から生じた言葉かも知れない。磯は沢山の食物を確保できる、豊の場所である。

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北海道    稚内市                宗谷村(富磯)

北海道    根室市                有磯町

北海道    恵庭市                戸磯

北海道    松前郡松前町          大磯

北海道    上磯郡上磯町          市ノ渡など57ZIP

北海道    爾志郡乙部町          花磯

北海道    久遠郡大成町          富磯

北海道    久遠郡大成町          長磯

北海道    島牧郡島牧村          栄磯

北海道    寿都郡寿都町          磯谷町

北海道    寿都郡寿都町          大磯町

北海道    磯谷郡蘭越町          相生など34ZIP

北海道    苫前郡羽幌町          天売(富磯)

北海道    虻田郡虻田町          大磯町

北海道    広尾郡広尾町          タニイソ

北海道    川上郡標茶町          磯分内××など12ZIP

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また、春木川を北に超えた、岸和田市の中核部には(旧26号線山側)には、アイヌ語の「ベツ(pet)」地名とどれほどの関係が有るかわからないが「別所町」、第一因子負荷量が0.8を超える超縄文的綴り文字「ヌマ」のみの地名「沼町(ぬまちょう)」がある。また「フシ」も地名研究パートBで縄文的であると論議されたが「フシ+イ」の「藤井町」もこのあたりにある。

「磯上町」の東に隣接して「吉井(よし・)町」があり、その隣は「中井(なか・)町」である。「い」は今議論している「い」である。「加守(かもり)町」がある。「モリ」を含む地名の中期縄文遺跡負量は0.4630で、立派な中期縄文地名である。さらに「荒木町」がある。「ナラ」「アラ」のところで指摘したように「アラ」地名の負荷量は0.5469で縄文地名である。「なら」に対立すると思われる文字列である。これらの地名がすべて隣接している。

ただ、春木八幡山遺跡からは晩期の縄文土器のかけらしか出ていないとのこと。残念である。岸和田市のすぐ南は貝塚市である。由来は縄文遺跡の貝塚ではないかといわれているが、その貝塚はどこに在るかは不明とのこと。古い町屋の下に中期縄文遺跡が眠っているかもしれない。

 

「曽根」の怪しい地名解釈。曽根もアイヌと関係があるかもしれない。

中期縄文遺跡分布と相関の高い地名に「根」を含む地名がある(第一因子の負荷量は0.64)。泉佐野市に「日根野」があり、春木の北泉大津市には「曽根」がある。

「そね」は全国にあり「根」地名の典型のように思われるが「ソネ」の都道府県別出現率の中期縄文遺跡密度との順位相関係数は0.2931で「ネ」全体の相関値に比べてかなり低い値が計算される。これは沖縄や、福岡、あるいは大阪府などといった関東・中部・北陸地方並みの出現県が存在するからである。したがって「そね」は典型的な「根」地名とはいいがたい。「そね」とはなんであろうか?

「ソリ」を含む地の第一因子負荷量は.5846で、すでに、「反り」の意味と解釈しうるということを指摘した。「反り」は平面から離反することである。日本語辞典の中には「そ」で始まる基本的な単語が他にもいくつも在る。「そむく」は説明の要はない。「戸から離れたところ」が「そと(外)」「そで」は「手から離れた所」であり、「そ」は「本体から離反している」事を表しているように思える。「染(そ)む」も本来の色から離反させることである。「熊襲」は「隈(周辺部)」にいる「背を向けた人」という説明もすんなり納得できる。「沿う」や「添う」も「近くに在る」という点では意味が共通するが、寄り添うのニュアンスが強いので、少し遠いような気がする。とはいえ、「山添村」などの「ソエ」地名はむしろ非縄文的地名であるところから(第一因子負荷量は-0.399)、中期縄文期以降、意味の変化が生じたもので、語源は同じとも思われる。

中期縄文時代以後、人口が極端に希薄な西日本への拡散は、「根」の人々の、巧みな、精力的な航海に負うころが多い。「根」のボートに同乗していた人々が途中下車した、すなわち、「根から離反した、背を向けた(単に「根」でないというのも含めて)」人々が住んだところが「そね」、すなわち「背(そ)根」ではないか。「そね」の人々は「根」の人々から離れ、再び民族的なアイデンティティーを取り戻す。「いずみ」は沖積平野に降り立った「イ」の人々ではなかったか。かれらが新しい作物「イ(夷、威、居=神)・ネ(根)=(稲)」を作り始める。「イ」とはもちろん「アイヌ」である。稲の苗は、広汎なネットワークを持つ「ね」の人々から手に入れたものであろう。

「根船団」は既に縄文時代には沖縄まで行っている。沖縄の「ネ」地名は、「仲宗根」の他に「与那嶺、赤嶺、稲嶺」など「嶺」の形をとる。「根」は山のふもとだが「嶺」は山の頂である。「ミ」は気高いことを意味する。単なる「ネ」と言わず「ミネ」と言う。「<ネ>とは違うよ」というような意思を感じてしまう。「イ」の誇りがそうさせたのかもしれない。沖縄にも泉崎、伊豆見という「イスミ」地名が在る。

それから「せ」と「そ」は違う。「せ」は「背」そのものであるが「そ(背)」は背を向けるので意味は相当違う。「伊勢(いせ)」は神の背中で「磯(いそ)」は神から背を向けられた「獲物」かもしれない。

なお「ソネ」地名の最も出現の多い都道府県は頻度では新潟県(30件、0.58%)である(しかし、縄県の郵便番号数自体少なく沖縄県の出現数は5であるが出現率で言うと0.67%で沖縄県が一位になる)。新潟県は日本一「イネ」が育てられている県である。

弥生時代に入ると、その他の「えびす」が大阪平野に続々と到来し、「藤井(ふじ)」や「新居浜(にはま)」や「桜井(さくら)」や「安威(あ)」など、地名にのみ、夥しい、意味の通り難い「い」を残して「アイヌ」の痕跡はかき消されていく。

 

「スワ」「アスワ」「ニワ」「アワ」「アヲ?」

「スワ」を含む地名出現率の縄文地名因子(第一因子)負荷量は.4725で、これも色濃い縄文的地名である。「スワ」は殆どが「諏訪」で表されるが、福井県には「足羽(あすわ)」というユニークな広域地名もある。「スワ」を含むZIPは全国に322件、三重県、滋賀県より西の西日本には43件のみであり、出現のない府県も7県に上る(東日本では石川県のみ出現がない)。最も多いのは、言うまでもなく長野県で「諏訪市」および「諏訪郡」という広域地名(計115件)のためである。勿論、長野県には他に、長野市や上田市などにも「諏訪」を含む地名が6ZIP在る。また東日本に入れた福井県の足羽(あすわ)郡は54ZIPからなる。この2県が飛びぬけて多く、下にこの2県(緑で塗っている)を除いた都道府県分布状況を示す。

先に触れた泉州地区南海沿線にも「諏訪ノ森」という駅名があり、長野県のみならず全国的な地名であるが、地名以外の「すわ」で思い当たる言葉はなく、「諏訪」地名の手がかりは霧の彼方にある。

しかし、「いずみ」の「すみ」が「住み」と解釈できるなら「すわ」の「す」は「巣」ではないだろうか。前項で、「巣」も「住み」も「活動の休止した状態」の意味を含んでいるという点で同語源ではないかと述べた。川の流れが淀んだところにできるのが「洲」である。現代では普通、動物の住むところを「巣」と呼ぶことが多いが、「す」は「住み」という言葉の土台になった言葉ではないか。

膨大な数の「わ」一文字を含むZIPがあり、「わ」を包含するZIP出現率は強く中期縄文遺跡分布と相関する。具体的には「沢(さ)」「川(か)」「河(か)」「岩(いわ)」で表記される地名であり、「わ」は中期縄文期以前は「コミュニティ」を表す言葉で、海外から「倭国」と呼ばれた所以ではないかとパートCで述べた。

とすると「すわ」は「住むところがある集落」という意味になる。「足羽(あすわ)」は「吾・諏訪」ではないか。

諏訪は長野・山梨・福島・埼玉県といった中緯度の山岳部に多いように見える。諏訪は「ね」や「い」の人々ではなく「わ」の人々の「巣」であろう。

なお話は前後するが、前項「イス」地名では、「イスミ」地名に限って考察を進め、静岡県の「伊豆(いず)」という広域地名に触れなかった。「伊豆」は「住み」という言葉ができる以前の「いすみ」かもしれない。

後ろに「わ」が付く言葉は「さわ」や「すわ」のみではない。四国の「阿波(あわ)」がすぐに思いつく。「わ」が村の意味だとすると「吾わ」=「私の村」と単純明快な解釈が可能である。しかし「阿波、粟、安房」などで表される「あわ」の都道府県別出現率は中期縄文遺跡分布とは相関しない。

ただ、青森などの「アオ」地名は中期縄文遺跡分布次元の因子負荷量は0.4553で「アオ」は中期縄文文字列である。青森の地名はごく新しい時代に命名された地名だとほぼ認められるが、青森県はその他の「あお」を含む地名も多く存在する。「青」は旧仮名遣いでは「アヲ」である。「ワ行」である。「阿波」地名解釈に少し近づくような気がする。

「ニワ」地名出現率の第一因子負荷量は0.4306で、これは縄文遺跡分布と偶然以上の相関性を示し、縄文文字列である。「に」は「土」であるなら「庭」は「土器を作る村」であろうか。埴輪(はにわ)とは土人形のコミュニティであろうか。

日本を「和・倭」と呼ぶ所以はこの辺りにあるのではないか。

 

「上(かみ)」と「下(しも)」

第一因子負荷量が正方向に高い地名文字列すなわち縄文地名文字列を見ると「モカ」「モヌ」「モオ」「モヒ」「モエ」「モヨ」の「モ×」文字列が多数見られる。該当する具体的な地名表示を見ると「下川(しもかわ)」「下大久保(しもおおくぼ)」などが圧倒的に多く、「下××」地名の出現率が中期縄文遺跡分布と相関するのではないかと予測させる。また同じように、「ミオ」「ミト」も第一因子次元の右側にあり、これは「下」の反対語の「かみ」の「み」+「おおくぼ」のようなケースによるものが多い。

そこで特定の地名に形容詞の「上」または「下」が付いた地名と思われる地名を抽出しなおし、県別分布を検討しなおした結果を示す。「シモ」「カミ」は2文字列であり既に相関係数は計算している。しかしながら「シモ」「カミ」の都道府県別出現率は遺跡数などとは意味の在る相関値を示してはいない。そこで次のような「シモ」「カミ」リストの再編集を行った。

まず「シモ」を含むZIP(5968件)を抽出して、そこから、更に仮名漢字表記欄に「下」という漢字を含むZIPを抽出した。これらの「下」を「しも」と読むリストを用いて都道府県別頻度集計を行った。「上」を含むリストの作成も同様の手続きを経て作成した。「下」地名については5368件、「上」地名に関しては9828件のうち7641件のZIPが抽出された。全て視察してチェックしたわけではないが、ほぼ100%に近い「上」を「カミ」、「下」を「シモ」と読む地名リストが得られた。

削除された「下」を含まない「シモ」地名では、橋本、串本、恵那郡加子母(かしも)、西門前(にしもんぜん)などであり、「上」含まない地名では「神」を含む地名、「加美」、「香美」「鏡」「相模原」「国頭」など広域地名含む地名であった。また「中宮(なかみや)」も該当する。しかし「神」を含む地名が最も多かった。

下に「下」「上」を含む都道府県別分布図と中期縄文遺跡関連の出現率の順位相関係数を示す。なお比較のため「上」「下」と同様の処理をして得られた「東(ヒカシ)」「西(ニシ)」地名出現率についての相関係数も示す。「ひがし」-「にし」も「かみ」-「しも」も、同名地域の位置関係を区別されるのに使われる。

 

 

 

 

都道府県別「上(かみ)」「下(しも)」+固有地名出現率と中期縄文遺跡数等の順位相関係数。()は無相関確率

 

遺跡密度

遺跡数

緯度

経度

「上(かみ)」

0.2032(0.17071)

0.3232(0.02669)

0.3898(0.00676)

0.3129(0.03224)

「下(しも)」

0.2556(0.08291)

0.2614(0.07592)

0.2448(0.09723)

0.2080(0.16062)

「東(ひがし)」

0.0426(0.77617)

0.0489(0.74411)

-0.0475(0.75120)

0.0084(0.95531)

「西(にし)」

0.0756(0.61352)

0.0844(0.57272)

-0.1178(0.93736)

-0.0368(0.80601)

 

パートCの中で「<東・西(ひがし・にし)>は紀伊半島から瀬戸内海東西方向への航海が活発化する中で生じた比較的新しい言葉ではないか」と述べた。これに呼応するように「ひがし」「にし」の都道府県別出現率は中期縄文遺跡分布と全くまったく無意味な相関値しか示していない。

これに対して所在地の位置関係を示す「かみ」「しも」出現率は、「上・下」以外の意味の紛らわしい「カミ・シモ」地名をリストから排除することによって、遺跡分布や、東西日本区分に関わる変数との有意な(有意な水準に近い)相関関係を示すに至っている。このことは「かみ・しも」は中期縄文時代以前から用いられていた言葉であることを強く示唆する。

 

「しもかわ」「かみかわ」

「しも」と「かみ」という語は相当古くからあった言葉と考えられる。「モカ」文字列の中期縄文因子負荷量の高さは、同じく東日本に偏在する「川」や「河」を含む文字列が連結することによって維持されていると考えられる。すなわち「し(下)・かわ(川、河)」である。「モカ」地名658件のうち110件が「シモカワ」によるもので、その他「モカミ(最上)」「シモカタ(下方)」「コロモカワ(衣川)」「カモカワ(加茂川、鴨川)」なども見られるが「シモカワ」が最も多い。

そこで「シモカワ」を含む地名を抽出し、都道府県別出現率を計算しなおして遺跡分布などとの順位相関係数を計算した。併せて「下」の反対語を含む「カミカワ」についても同様に相関係数を算出した。110件の「シモカワ」の大多数は、2件の「下瓦」を除いて、「下川」「下河」で表記される地名である(場合によっては「下川原」などもある)。また596件の「カミカワ」の殆どは「上川」「神川」であり「上瓦(かみがわら)」が3件「鏡川(カカミカワ)」が2件含まれる。

 

都道府県別「カミカワ」「シモカワ」地名出現率と中期縄文遺跡数等の順位相関係数。()は無相関確率

 

遺跡密度

遺跡数

緯度

経度

カミカワ

0.2472(0.09389)

0.3967(0.00577)

0.3801(0.00840)

0.3172(0.02982)

シモカワ

0.3401(0.01933)

0.4340(0.00231)

0.4263(0.00281)

0.4767(0.00071)

 

予測どおり、「上」または「下」の漢字1文字を抽出条件にした場合に比して、「しもかわ」や「かみかわ」を含む地名出現率の中期縄文遺跡分布に関わる格段に明瞭な順位相関係数が算出された。そして「シモカワ」の方が強い相関値を示している。

中期縄文時代には川筋にコミュニティ「かわ(輪?)」が存在し、「しもかわ」とか「かみかわ」と言って区別していたのだろう。

同じように「モヌ」地名(全国で11件にすぎないが)の高い第一因子負荷量は、「下」と中期縄文遺跡分布と強く相関する「沼」地名の連結によるものである。すなわち「下沼」によるところが大きい。

 

「かみ」と「しも」の怪しい語源解釈。「しも」の反対語は「かも」?!!

まず「しも」から。橋や箸は単に端にあるという意味のみならず、「端(は)にある一定の役割を果たす構造物(し)ではないか」と、東日本に多い「橋」を含む地名解釈のところで述べた。すなわち「し」とは「一定の役割を果たすもの」である。「足・脚(あし)」は「吾を支える重要な構造物である」

「も」は何であろうか?「喪」「藻」「模」など漢字変換キーをたたくと様々な「も」が出てくる。「も」一字も立派な日本語単語である。

「も」一字を入力してリストされない「も」があるのに気づいた(少なくとも私のパソコンでは)。「川面」の「面」である。「も」の原意は「面」ではないのか。すなわち一定の広がりを持つ平かな領域である。

たくさんの「も」を含む単語の意味の共通部を挙げることができる。「藻」は水中の植物で蓮や葦のように水面に飛び出す植物ではない。水上から見ると一面に広がっている。「喪」の期間は静かにしている。凹凸が大きいほど「面」とは言いがたい。短くない「喪」中は歌舞音曲、争いごとは避けて、平かに過ごさねばならぬ。「雲(くも)」は空という上面に広がっている、「友・供」の「と」は「戸」とすると、「とも」は同じような「ドア」が並んだ集落の広がりがイメージできる。集落には「友」や「供」が住んでいる。「巴江(ともえ)」という地名はすぐ後にのべるように、縄文遺跡分布と相関する、古くからそのような集落が存在したことを心強く思う。

「おもて」という言葉も「広い(お)面(も)の方(手)」という意味で理解できることは後の項で触れる。

「しも」は「し」があるところの「も(面)」であろうか。「籠に乗る人、担ぐ人、そのまたわらじを作る人という言葉がある」ということを元首相秘書が語っていた。この場合「人」が「し」で「も」は選挙区である。パソコンシステムは「し」のみならず「も」によって稼動している。

CPUはマザーボード上の「メモリ」や「チップセット」といった「電」のみならず、筐体の外の、キーボードやモニタ、モデムによってやっと役割を果たしている。これらは「し(子)」である。これらの機器類を置く場所も必要である。電子基板、机、机を置く床面が必要である。これらは「面(も)」である。ノートパソコンなら小さい「も」ですむが「し」を増やすと、もっと大きい「も(面)」が必要になってくる。この「面」は多くの場合、下にある。

なお「電子素子」の「子」も音読みで「し」であり中国語と音も意味も一致しているので「し」は中国語であるが、「はし」は中国語とはとても思えない。偶然の一致と思いたい。

 

多くの人たちは「傘」「笠」「噛む」「髪」「被る」「神」などの言葉を挙げて、これら語頭の「か」が「上部」「上方(じょうほう)」という意味ではないかと指摘している。この指摘は正しいように思う。それなら「しも」が下面とすると、上面は「かも」ではないかと思うが、日常生活では「かも」とは言わない。しかし地名には多くの「かも」地名がある。

「かも」といえば水鳥の「鴨」しか思い浮かばないが「しもかわ」に対立するところの、少なくない「かもがわ」が見られる。われわれが直ぐに連想するところの、「鴨」が沢山いる「鴨川」以外に「鴨」という字を憚って漢字が充てられたと思える「加茂川」も見られる。また「川」が取れた「かも」地名は「賀茂」「加茂」「蒲生(がもう)」などが、全国いたるところに認められる。「かも」が使われなくなり、本来の意味が忘れられたためか、多様な漢字表記が見られる。ただ「カモカワ」の遺跡分布との相関値は殆どゼロに近い、しかも僅かではあるが「負」の値を示している(遺跡密度と-0.1126、遺跡数とは-0.1155)。

また、鳥の「鴨」は「藻」のように上の方に一面に飛ぶので「かも」といわれたのかもしれない。また海原の空に遠くから見ると目のような鳥山を作るので「カモメ(鴎)」かもしれない。

全国の「かもがわ」地名

680133

ソラチ*クリサワ

カモカワ

北海道

空知郡栗沢町

加茂川

3630024

オケカワ

カモカワ

埼玉県

桶川市

鴨川

2992864

カモカワ

アマツラ

千葉県

鴨川市

天面など71ZIP

9370861

ウオツ

カモカワ

富山県

魚津市

鴨川町

9280308

フケシ*ヤナキタ

カモカワ

石川県

鳳至郡柳田村

鴨川

9188057

フクイ

カモカワラ

福井県

福井市

加茂河原

9188054

フクイ

カモカワラ

福井県

福井市

加茂河原町

5050044

ミノカモ

カモカワ

岐阜県

美濃加茂市

加茂川町

4110034

ミシマ

カモカワ

静岡県

三島市

加茂川町

4380086

イワタ

カモカワ

静岡県

磐田市

加茂川町

4442213

トヨタ

カモカワ

愛知県

豊田市

加茂川町

5201133

タカシマ*タカシマ

カモカワタイラ

滋賀県

高島郡高島町

鴨川平

6038817

キヨウトシキタ

ニシカモカワカミ

京都府

京都市北区

西賀茂川上町

6008133

キヨウトシシモキヨウ

イナリチヨウ(シチシヨウトオリカモカワスシニシイル、シチシヨウトオリキヤマチヒカシイル

)                                    京都府

京都市下京区

稲荷町(七条通加茂川筋西入、七条通木屋町東入)

6128484

キヨウトシフシミ

ハツカシカモカワ

京都府

京都市伏見区

羽束師鴨川町

6731401

カトウ*ヤシロ

カミカモカワ

兵庫県

加東郡社町

上鴨川

6731403

カトウ*ヤシロ

シモカモカワ

兵庫県

加東郡社町

下鴨川

6820923

クラヨシ

カモカワ

鳥取県

倉吉市

鴨川町

7092672

ミツ*カモカワ

アワイタニ

岡山県

御津郡加茂川町

粟井谷など31ZIP

7918004

マツヤマ

カモカワ

愛媛県

松山市

鴨川

7871101

ナカムラ

オクカモカワ

高知県

中村市

奥鴨川

7871102

ナカムラ

クチカモカワ

高知県

中村市

口鴨川

8570313

キタマツウラ*ササ

カモカワメン

長崎県

北松浦郡佐々町

鴨川免

8730023

キツキ

カモカワ

大分県

杵築市

鴨川

 

「かみ(上・神)」

しかしながら、日常語では、「しも」の反対語は「かも」ではなく「かみ」である。このあたりの事情はどのようなものであろうか。

上下関係といえば、単なる物理的な上下というより、人が生活を営むかぎり、人の上下関係が有ったほうが何かと便利だと、縄文時代以前から、人々は身にしみて感じていたと思う。複数のグループ(人でもよい)が互いに譲らない場合、最終的には戦争になる。あらかじめ「敬うもの」と「従うものを」決めておけばこのような諍いを回避できる。

縄文時代西日本への人口の移動は「わ」や「い」の人々を乗せた「ね」の人々によってなされていた。海上では「ね」の人が「敬われる人」であろう。航海は恙無く継続される。しかし上陸した場合はこの立場は逆転する。「ね」の人々も十分それをわきまえており、特に上陸地にいる先人には敬意をもって指示にしたがう。関東地方に上陸した人々は瞬く間に日本列島を横断して日本海側にまで濃い縄文遺跡分布を残す。価値観を含む上下関係は、物理的な意味での上下よりも必要なものであり、それを表す言葉が必要になってくる。

アイヌ語には「カムイ」という語があり、日本語には「神」がある。語の形が似ているので、この言葉の歴史を辿れば共通の源にたどり着くかもしれない。どちらも我々の上にあり敬うものである。「神」も「カムイ」もいろんな種類があるということも両者は共通である。時と場合によって、いろんな神・カムイを敬い、とりあえず神に逆らってはいけないと思っている。いろんな「神」を持ってきたというのが知恵。臨機応変に「従うもの」を取り替えられる。

 

日本語の「かみ」は「上部」=「か」と「実・御・身」=「み」が組み合わされたものと感じている。縄文遺跡分布と相関する「みどり(緑)」地名は「木の実」の「実」を取ることと関係在るのではないかと以前に愚考した。「実」は最後に結実し、食料になる貴重な宝物である。魚の「身」を食べるために魚を捕まえる。身分という言葉が在るように、人の実質は「身」である。「根」は麓だが「嶺」は見上げる気高き頂である。すなわち「み」は上のほうに在る尊敬すべき実体ということになる。時と場合によっていろんな「かみ」に従うことは便利なことである。

「かみ(上)」は「神」の観念から流用された言葉と思う。人は誰も尊敬されたいと思う心をもっている。自ら「かみ」を名乗ることもあるかもしれない。

単なる位置関係を指す「かも」と言う言葉より「かみ」を使うほうが、複雑化する社会にとって、守備範囲が広く、役に立つ。

「かみ」という言葉は東日本で生じた流行語的な要素を持つ言葉だったかもしれない。流行り言葉は、強い影響力を持ち、新規に「かみ」の付く地名を生じさせたのみならず、「かも」地名をことごとく「かみ」に変化させてしまうほどの影響力を持ったかもしれない。

先に、漢字で「上」と書く地名分布を得るため、「相模」や「鏡」等とともに、「神」と書いて「かみ」とよむ地名を排除する手続きをとった。しかし「神」が「上」から移行した言葉とすると「神」を「かみ」と読む地名の都道府県別分布も確かめておく必要がある。

下の図は「かみ」と読み「神」と漢字表記される郵便番号地名の都道府県別出現率の分布である。

 

「かみ」と読み「神」と漢字表記される郵便番号地名の都道府県別出現率の分布

 

「神」地名の都道府県出現率と中期縄文遺跡分布との順位相関係数は、遺跡密度とでは0.3006p=0.0400)、遺跡数とでは0.3720(p=0.0010)で「上」地名よりも明瞭な相関関係を示している。「上」も「神」も中期縄文時代には区別なく使われる傾向があったのだろう。

遺跡数分布は遺跡密度より北の都道府県でも濃密な分布状況を示す指標であり「神」の観念は関東・中部地方というより北海道や東北地方起源の可能性を暗示している。「上」の相関係数も同様である。

なお「カムイ」を含む地名は、北海道旭川市に神居町××および神居×条と斜里郡清里町神威のみで、北海道以外には一件の「カムイ」を含む地名はない。

 

「モエ」

「モカ」文字列以外、「モエ」地名も中期縄文語因子において高い因子負荷量を示す。下に「モエ」を含む全てのZIPを示す。表を見ただけで「モエ」地名が東日本に多いことがわかる。そして「モエ」地名を構成する具体的な地名は「モカ」地名の「下川」の場合と同じように、「江」の前に「下」が付いた「下江」が最も多く、次に「ともえ(友江、巴)」が多い。また「鴨江」という地名も静岡県に存在する。「かみ」「しも」が縄文的文字列であることを反映すると同時に、その後に続く「江」も縄文時代より存在した言葉であるように見える。

また、主として、北海道に、現代の我々には、木の芽が「萌える」の意味と受け取ってしまう「萌(もえ)」や「もえぎ」の地名が少なからず認める。

パートCの縄文遺跡分布と反比例する文字列で「リエ」を取り上げ、該当する具体的地名として「堀江」と「入江」が多量に含まれるので、<「リエ」地名の負の相関は西日本の「江」地名の出現に負うところが大きい>というタイトルを付したが、これは撤回する必要がある。その本文で検討したように「堀江」「入江」の分布状況と中期縄文遺跡分布は、方向こそ「負」であるが、意味のある相関値しか算出されていず、「リエ」地名の縄文遺跡分布との「負」相関は西日本の、極めて限られた都府県に出現する「餘江(あまりえ)」「東江(あがりえ)」「橋本尻江」などの「江」地名と「香里園」「千里園」などの雑多な「リエ」を含む地名の総合的な貢献に帰すると思われる。また同じところで「江」を含み「え」と読む地名の分布と遺跡分布の相関も検討し、弱いが有意な負の相関値を見出しているが、これも同じところで指摘したように、縄文分布県ないしは東日本には、海のない都道府県が西日本に比べて多いことを反映したに過ぎないだけかとも思われる。更に中期縄文時代以降の西日本への進出は、主として船に頼ったため、沿岸部に偏って縄文地名が残された結果によるものとも考えられる。

 

全国の「モエ」地名

「しもえ」

 

 

 

 

 

994402

シヤリ*キヨサト

シモエトヒ

北海道

斜里郡清里町

下江鳶

240073

キタカミ

シモエツリコ

岩手県

北上市

下江釣子

9660042

キタカタ

シモエ

福島県

喜多方市

下江

9750044

ハラマチ

シモエネイ

福島県

原町市

下江井

3110126

ナカ*ナカ

シモエト

茨城県

那珂郡那珂町

下江戸

3080851

シモタテ

シモエツレ

茨城県

下館市

下江連

3700333

ニツタ*ニツタ

シモエタ

群馬県

新田郡新田町

下江田

3700703

オウラ*メイワ

シモエクロ

群馬県

邑楽郡明和町

下江黒

2430806

アツキ

シモエチ

神奈川県

厚木市

下依知

9592809

キタカンハラ*クロカワ

シモエハタ

新潟県

北蒲原郡黒川村

下江端

4300825

ハママツ

シモエ

静岡県

浜松市

下江町

4210218

シタ*オオイカワ

シモエトメ

静岡県

志太郡大井川町

下江留

4840965

イヌヤマ

シモエノキシマ

愛知県

犬山市

下榎島

5090203

カニ

シモエト

岐阜県

可児市

下恵土

9188036

フクイ

シンシモエモリ

福井県

福井市

新下江守町

9188037

フクイ

シモエモリ

福井県

福井市

下江守町

9188173

フクイ

シモエシリ

福井県

福井市

下江尻町

5291174

イヌカミ*トヨサト

シモエタ

滋賀県

犬上郡豊郷町

下枝

6894526

ヒノ*ヒノ

シモエノキ

鳥取県

日野郡日野町

下榎

8720481

ウサ*インナイ

シモエラ

大分県

宇佐郡院内町

下恵良

8620943

クマモト

エスマチシモエツ

熊本県

熊本市

画図町下江津

「しもえび」

 

 

 

 

 

9421425

ヒカシクヒキ*マツノヤマ

シモエヒイケ

新潟県

東頸城郡松之山町

下鰕池

5121203

ヨツカイチ

シモエヒ

三重県

四日市市

下海老町

「ともえ」

 

 

 

 

 

683158

ソラチ*クリサワ

マンシトモエ

北海道

空知郡栗沢町

万字巴町

992373

アハシリ*メマンヘツ

トモエサワ

北海道

網走郡女満別町

巴沢

9971123

ツルオカ

トモエ

山形県

鶴岡市

友江町

9971122

ツルオカ

トモエ

山形県

鶴岡市

友江

3260805

アシカカ

トモエ

栃木県

足利市

巴町

3760021

キリユウ

トモエ

群馬県

桐生市

巴町

2530056

チカサキ

トモエ

神奈川県

茅ヶ崎市

共恵

9260021

ナナオ

トモエ

石川県

七尾市

巴町

9120016

オオノ

トモエ

福井県

大野市

友江

5030955

オオカキ

トモエ

岐阜県

大垣市

友江

4200843

シスオカ

トモエ

静岡県

静岡市

巴町

4240829

シスオカ

シミストモエ

静岡県

静岡市

清水巴町

4210126

シスオカ

モチムネトモエ

静岡県

静岡市

用宗巴町

4442224

トヨタ

トモエ

愛知県

豊田市

巴町

6730443

ミキ

ヘツシヨチヨウトモエ

兵庫県

三木市

別所町巴

6048312

キヨウトシナカキヨウ

カミトモエ

京都府

京都市中京区

上巴町

6040863

キヨウトシナカキヨウ

トモエ

京都府

京都市中京区

巴町

8710928

チクシヨウ*タイヘイ

ニシトモエタ

福岡県

築上郡大平村

西友枝

「かもえ」

 

 

 

 

 

450303

フルウ*カモエナイ

サンナイ

北海道

古宇郡神恵内村

珊内村

450301

フルウ*カモエナイ

カモエナイ

北海道

古宇郡神恵内村

神恵内村

450302

フルウ*カモエナイ

アカイシ

北海道

古宇郡神恵内村

赤石村

4328067

ハママツ

ニシカモエ

静岡県

浜松市

西鴨江町

4328023

ハママツ

カモエ

静岡県

浜松市

鴨江

4328024

ハママツ

カモエ

静岡県

浜松市

鴨江町

「こもえ」

 

 

 

 

 

6770021

ニシワキ

コモエ

兵庫県

西脇市

蒲江

「もえ」

 

 

 

 

 

500066

ムロラン

ホロモエ

北海道

室蘭市

幌萌町

861752

メナシ*ラウス

ホロモエチヨウ(ソノタ)

北海道

目梨郡羅臼町

幌萌町(その他)

861844

メナシ*ラウス

ホロモエチヨウ(40-1623ハンチ)

北海道

目梨郡羅臼町

幌萌町(40−1、623番地)

670058

エヘツ

モエキノチユウオウ

北海道

江別市

萌えぎ野中央

670057

エヘツ

モエキノヒカシ

北海道

江別市

萌えぎ野東

670059

エヘツ

モエキノニシ

北海道

江別市

萌えぎ野西

591274

トマコマイ

モエキ

北海道

苫小牧市

もえぎ町

681101

イシカリ*シンシノツ

モエテ

北海道

石狩郡新篠津村

萌出

3001606

キタソウマ*トネ

モエキノタイ

茨城県

北相馬郡利根町

もえぎ野台

2270044

ヨコハマシアオハ

モエキノ

神奈川県

横浜市青葉区

もえぎ野

9500842

ニイカタ

モエキノ

新潟県

新潟市

もえぎ野

5150087

マツサカ

モエキ

三重県

松阪市

萌木町

 

 

 

 

 

 

「その他」

 

 

 

 

 

883225

カワカミ*テシカカ

モエリヘツ

北海道

川上郡弟子屈町

最栄利別

892773

ヒロオ*ヒロオ

モエケシ

北海道

広尾郡広尾町

モエケシ

270111

ミヤコ

オモエ

岩手県

宮古市

重茂

6038073

キヨウトシキタ

カミカモエホシカカキウチ

京都府

京都市北区

上賀茂烏帽子ケ垣内町

7090613

オカヤマ

モモエツキ

岡山県

岡山市

百枝月

8797152

オオノ*ミエ

モモエタ

大分県

大野郡三重町

百枝

 

むしろ、「モエ」分布を見ると「江」は、縄文時代より用いられていた言葉である可能性がある。

「川」の場合と同じように「江」の前に「下(しも)」ないしは「上(かみ)」のついた「下江(しもえ)」「上江(かみえ)」を含む地名をリストアップしたのが下の表である。見てわかるように、西日本では、「上江」も「下江」の出現率はゼロに近い。縄文色の強いと思われる「かみ」{しも」が「江」とセットで使われているので、「江」もまた中期縄文時代以前からあった言葉のように思われる。

 

「かみえ」と読む「上江」地名

 

 

 

 

 

0670064

エヘツ

カミエヘツ

北海道

江別市

上江別

0670061

エヘツ

カミエヘツヒカシ

北海道

江別市

上江別東町

0670063

エヘツ

カミエヘツニシ

北海道

江別市

上江別西町

0670062

エヘツ

カミエヘツミナミ

北海道

江別市

上江別南町

0240071

キタカミ

カミエツリコ

岩手県

北上市

上江釣子

9660043

キタカタ

カミエ

福島県

喜多方市

上江

3214536

ハカ*ニノミヤ

カミエツラ

栃木県

芳賀郡二宮町

上江連

3700342

ニツタ*ニツタ

カミエタ

群馬県

新田郡新田町

上江田

3700702

オウラ*メイワ

カミエクロ

群馬県

邑楽郡明和町

上江黒

3600234

オオサト*メヌマ

カミエフクロ

埼玉県

大里郡妻沼町

上江袋

9592081

キタカンハラ*スイハラ

カミエハタ

新潟県

北蒲原郡水原町

上江端

9188174

フクイ

カミエシリ

福井県

福井市

上江尻町

「しもえ」と読む「下江」地名

 

 

 

 

 

6038147

キヨウトシキタ

カミコリヨウカミエ

京都府

京都市北区

上御霊上江町

0240073

キタカミ

シモエツリコ

岩手県

北上市

下江釣子

9750044

ハラマチ

シモエネイ

福島県

原町市

下江井

9660042

キタカタ

シモエ

福島県

喜多方市

下江

3080851

シモタテ

シモエツレ

茨城県

下館市

下江連

3110126

ナカ*ナカ

シモエト

茨城県

那珂郡那珂町

下江戸

3700333

ニツタ*ニツタ

シモエタ

群馬県

新田郡新田町

下江田

3700703

オウラ*メイワ

シモエクロ

群馬県

邑楽郡明和町

下江黒

9592809

キタカンハラ*クロカワ

シモエハタ

新潟県

北蒲原郡黒川村

下江端

9188173

フクイ

シモエシリ

福井県

福井市

下江尻町

9188037

フクイ

シモエモリ

福井県

福井市

下江守町

9188036

フクイ

シンシモエモリ

福井県

福井市

新下江守町

4300825

ハママツ

シモエ

静岡県

浜松市

下江町

4210218

シタ*オオイカワ

シモエトメ

静岡県

志太郡大井川町

下江留

8620943

クマモト

エスマチシモエツ

熊本県

熊本市

画図町下江津

 

「巴」は「友江」

江は海のみならず湖の入り組んだところを指すと同時に川そのものを指す言葉である。このようなところには古くから集落ができたのであろう。「入江」地名の解釈の中で「江」は「家」につながるのではないかと怪しい解釈を述べた。上記の「江」に示される地名は地図で確認すると殆どは海岸線近くに在ることが判る(海進や堆積についての考慮を含めて)。

「ともえ」地名を構成する「巴」を含む地名の多くは、海岸にはないが、殆ど全て川沿いの、しかも他の川との合流点付近にある。「巴」を辞書で引くと、四方八方から水が流入して渦巻いている様子と説明している。地名の「巴」は漢字の意味と少なからず合致する。河川が合流するか否かは別にして、川沿いの広い湿地帯の端のやや高いところにあった集落が「ともえ」であったのではないか。「江」が海の「入り江」の意味という解釈があり、このイメージを避けるため「巴」が使用されたのではないか。元来、「友江」も「巴」も意味は同じでなかったか。

さて「とも・え」の「とも」とは何であろうか。「とさ」の「と」も、「やまと」の「と」も、「さと」の「と」も「やど」の「と」も「入り口」ではないかと既に考えた。「と」は「door」である。そして「も」は「しも」のところで述べた「面」(も)」である。「とも」とは、一定の範囲(も)、家々の入り口が立ち並ぶ集落ではなかったか。集落の人々は「友」であり「共」「伴」「朋」である。「鞆(とも)」という意味のわかりがたい漢字を含んだ地名もかなりある。西日本に多く、漢字が使われる時代には「とも」の原意は忘れられていたのだろう。「鞆」は弓を引くときに左手首につけた丸い皮製の道具とgooの辞書に載っていた。弓術の友であろうか。

 

「萌え」

「モエ」を含む地名の中に「萌」、または漢字で書けば「萌」と書くのが適当と思われる、ひらがなの「もえ」を含むZIP地名が、北海道を中心に全部で12ZIP認められる。三重県を除いて「モエ」地名はすべて東日本で、「萌」地名は中期縄文遺跡分布の相関に寄与している。

しかし、北海道室蘭市幌萌町、同じく北海道目梨郡羅臼町の幌萌町以外は、地図で見ると、道路区画が整然としており、新しく住宅地が開発されたところと思われ、新しく作られた地名のように見える。

とはいえ、まったく無闇に新興地名がつけられたかというとそうでもない可能性がある。読み方は問わないとして検索すると、全国に85件の「萌」を含むZIPがある。北海道以外は、青森県に上北郡東北町萌出道ノ上(下)、前述の三重県、大分県に各1件あるのみである。

このうち、78件は「萌」を「もい」と読む、「留萌市」と郡部の「留萌郡」という広域域地名に含まれるZIPである。なお、「モエ」地名リストに示した「幌萌町」「もえぎ野」などは「留萌」内には無い。

北海道以外に見られない「留萌」という広域地名があり、その他にも「萌」地名が沢山あるので、「萌」または、漢字で表すとすると「萌」になると思われる「もえ」を含む地名は、北海道特有の地名のように見える。

「留萌」はアイヌ語地名として解釈されている。るもいねっとの中で<アイヌ語の「ルル・モ・オッ・ぺツ」(潮が静かに流れ来る川)または「ルル・パ・モイ」(海の上手の湾)から。一般的には「ルル・モ・オッ・ぺツ(ルルモッペ)」が定説。古くは「つるをつへ」「留萠(るるもえ)」と呼ばれていた>と載っている。他を調べても、多分これが定説だろうと思う。「ル」は「流域」「溶ける」、「ルル」は汁、流域、海の潮などとアイヌ語辞典に載っており、「も」は「静かな」、で「オッ」は辞書で引いても判らなかった(アイヌ語の知識が乏しいので引き方がわからなかったことや、どこを見てよいか判らなかったためと思うが)。あるいは「モイ」は「水の渦巻き」と出ていたが、これが「湾」を意味するのかわからない。前半分の「るるも」が「るもい」の「るも」に対応するのはわかるが、何故「オツベツ」や「パ・モイ」が「い」になるのか納得できない。

ただし「日本地名ルーツ辞典(高嶋弘志)」で引くと、<明治2松浦武四郎は、郡名選定で「留萌(るもえ)」「留持(るもつ)」の二案を挙げて「留萌」の表記が決定した>となっているので、元は「るもい」は「るもえ」といっていたようである。東北地方の人々が「え」を「い」としか発音できないので「るもい」になったとしている。

とすると、「留萌」も「もえ」を含む地名となる。

「留萌市」は「留萌川」の河口の入り江にあり、室蘭市の幌萌町や、目梨郡羅臼町幌萌町は、深い入り江といえないが堆積が進む前は正に「江」と呼ばれるにふさわしい場所に在る。苫小牧市「もえぎ町」も海岸のごく近くにある。

江別市の「萌えぎ野」は石狩湾から石狩川に沿って30kmほど内陸に入ったところにあり、地図で見たところ新興地名のように思える。しかし、石狩川、夕張川、千歳川の合流点にあり、石狩川河畔にある。本州の「巴」と名づけられる地形に良く似た環境である。以上のように、北海道の「萌」地名が、ことごとく「下江」などの「江」の付く土地と類似している。

アイヌ語の「る」は水に関係あり、日本語も「汁」や「うる」地名のところでのべたように「漆」「潤う」など、「る」は何か水分と関係有りそうであり、「留萌」は日本語で解釈できるかもしれない。

 

「百(もも)」は「面々(もも)」

「モエ」地名リストを見てみると岡山県に「百枝月(ももえづき)」、大分県に「百枝(ももえだ)」がある。「も(面)」は「点が集まった広い領域」であるとすると「面(も)」がさらに「面(も)」のように集まった領域が「面々(もも)」ということになり、「百」を「もも」と言うのは理にかなっている。

 

「モヨ」

「下(しも)」に特定の固有名詞がきて、縄文遺跡分布と相関関係を示す地名には、他に「下米沢」や「下吉田」といった「モヨ」を含む地名がある。

下に、「しも」続く部分を元に整理した「モヨ」地名リストを示す。

全国の下+「ヨ×」地名

下米×

 

 

 

 

 

200003

モリオカ

シモヨナイ

岩手県

盛岡市

下米内

9696185

キタアイツ*キタアイツ

シモヨネツカ

福島県

北会津郡北会津村

下米塚

9420153

ナカクヒキ*クヒキ

シモヨネオカシンテン

新潟県

中頸城郡頸城村

下米岡新田

9440144

ナカクヒキ*イタクラ

シモヨネサワ

新潟県

中頸城郡板倉町

下米沢

5050015

ミノカモ

シモヨネタチヨウイマ

岐阜県

美濃加茂市

下米田町今

5050017

ミノカモ

シモヨネタチヨウコヤマ

岐阜県

美濃加茂市

下米田町小山

5050019

ミノカモ

シモヨネタチヨウタメオカ

岐阜県

美濃加茂市

下米田町為岡

5050018

ミノカモ

シモヨネタチヨウニシワキ

岐阜県

美濃加茂市

下米田町西脇

5050013

ミノカモ

シモヨネタチヨウノフトモ

岐阜県

美濃加茂市

下米田町信友

5050014

ミノカモ

シモヨネタチヨウノリミツ

岐阜県

美濃加茂市

下米田町則光

5050011

ミノカモ

シモヨネタチヨウヒカシトチイ

岐阜県

美濃加茂市

下米田町東栃井

5050012

ミノカモ

シモヨネタチヨウヤマモト

岐阜県

美濃加茂市

下米田町山本

6820601

クラヨシ

シモヨナツミ

鳥取県

倉吉市

下米積

下横×

 

 

 

 

 

3050075

ツクハ

シモヨコハ

茨城県

つくば市

下横場

3212113

ウツノミヤ

シモヨコクラ

栃木県

宇都宮市

下横倉町

3210124

ウツノミヤ

シモヨコタ

栃木県

宇都宮市

下横田町

3220054

カヌマ

シモヨコ

栃木県

鹿沼市

下横町

3700837

タカサキ

シモヨコ

群馬県

高崎市

下横町

3550313

ヒキ*オカワ

シモヨコタ

埼玉県

比企郡小川町

下横田

2891314

サンフ*ナルトウ

シモヨコシ

千葉県

山武郡成東町

下横地

9520025

サト

シモヨコヤマ

新潟県

佐渡市

下横山

4160943

フシ

シモヨコワリ

静岡県

富士市

下横割

4440522

ハス*キラ

シモヨコスカ

愛知県

幡豆郡吉良町

下横須賀

6028373

キヨウトシカミキヨウ

シモヨコ

京都府

京都市上京区

下横町

6120007

キヨウトシフシミ

フカクサシモヨコナワ

京都府

京都市伏見区

深草下横縄町

6930046

イスモ

シモヨコ

島根県

出雲市

下横町

6991822

ニタ*ヨコタ

シモヨコタ

島根県

仁多郡横田町

下横田

7080807

ツヤマ

シモヨコノ

岡山県

津山市

下横野

8341104

ヤメ*シヨウヨウ

シモヨコヤマ

福岡県

八女郡上陽町

下横山

8614621

カミマシキ*コウサ

シモヨコタ

熊本県

上益城郡甲佐町

下横田

下吉×

 

 

 

 

 

392312

カミキタ*ロクノヘ

シモヨシタ

青森県

上北郡六戸町

下吉田

130107

ヒラカ*ヒラカ

シモヨシタ

秋田県

平鹿郡平鹿町

下吉田

130403

ヒラカ*タイユウ

シモヨシタ

秋田県

平鹿郡大雄村

下吉田

9660405

ヤマ*キタシオハラ

シモヨシ

福島県

耶麻郡北塩原村

下吉

3230106

カワチ*ミナミカワチ

シモヨシタ

栃木県

河内郡南河内町

下吉田

3691503

チチフ*ヨシタ

シモヨシタ

埼玉県

秩父郡吉田町

下吉田

3400126

サツテ

シモヨシハ

埼玉県

幸手市

下吉羽

3113406

ヒカシイハラキ*オカワ

シモヨシカケ

茨城県

東茨城郡小川町

下吉影

4030004

フシヨシタ

シモヨシタ

山梨県

富士吉田市

下吉田

9420231

シヨウエツ

シモヨシノ

新潟県

上越市

下吉野

9420146

ナカクヒキ*クヒキ

シモヨシシンテン

新潟県

中頸城郡頸城村

下吉新田

9392611

ネイ*フチユウ

シモヨシカワ

富山県

婦負郡婦中町

下吉川

9391543

ヒカシトナミ*フクノ

シモヨシエ

富山県

東礪波郡福野町

下吉江

9202342

イシカワ*トリコエ

シモヨシタニ

石川県

石川郡鳥越村

下吉谷

9102207

アスワ*ミヤマ

シモヨシヤマ

福井県

足羽郡美山町

下吉山

9191528

オニユウ*カミナカ

シモヨシタ

福井県

遠敷郡上中町

下吉田

5090311

カモ*カワヘ

シモヨシタ

岐阜県

加茂郡川辺町

下吉田

4411621

ミナミシタラ*ホウライ

シモヨシタ

愛知県

南設楽郡鳳来町

下吉田

6010744

キタクワタ*ミヤマ

シモヨシタ

京都府

北桑田郡美山町

下吉田

6920044

ヤスキ

シモヨシタ

島根県

安来市

下吉田町

7650021

センツウシ

シモヨシタ

香川県

善通寺市

下吉田町

8000203

キタキユウシユウシコクラミナミ

シモヨシタ

福岡県

北九州市小倉南区

下吉田

8610526

ヤマカ

シモヨシタ

熊本県

山鹿市

下吉田