冬の星座   




ほ座(帆座)
学名:Vela
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:アル・スハイル・アル・ムーリフ(ガンマ星)/マルカブ(カッパ星)/アル・スハイル・アル・ワズン(ラムダ星)
  • 神話の主な登場人物:アイソン/イアソン/ペリアド/セイレーン/オルフェウス
  • 日本で観測できる時期:2月〜5月の約4カ月間
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は4月中旬)

      アルゴ船をかたどった巨大な「アルゴ座」の、帆にあたる星座です。りゅうこつ座同様、南天で一番天の川が濃く広く流れる場所にあります。全体には6角形をしており大きな星座ですが、形は分かりにくいでしょう。本州では真冬に、南の水平線上になんとか形が見えます。良く見るためには南の土地へ行く必要があります。

    見つけ方のポイント
     日本からは南の水平線上に星の並びがかろうじて見えます。しかし南の土地へ行くと、りゅうこつ座の東隣、南十字星の北側に、大きな6角形が見つかります。ほ座も決まった形を見つけにくい星座ですが、南天の天の川の一番美しい場所にあるので、だいたいこの辺りと、見当をつけておけば良いでしょう。

    神話の内容について
     イオルコスの王アイソンの息子イアソンは、叔父ペリアドの悪だくみで国を乗っ取られてしまいます。成長したイアソンは、国を返すよう求めますが、逆に叔父ペリアドに、黒海の奥のコルキス王国の王が持つ、金色の羊の皮を持ってくるよう要求されます。イアソンは巨船アルゴ号を建設し、50人の勇者を乗せて船出します。航海は苦難の連続で、海の魔女セイレーンの歌を聞いた船員が海に引き込まれますが、詩人オルフェウスが琴を弾いてそれを防ぎました。また黒海の入り口では、2つの大岩がぶつかり合い、通ろうとする船を砕いてしまう難所に出会いますが、最初に鳩を飛ばして岩の間を通らせ、鳩と同じタイミングで船を走らせて間一髪で通り抜けました。コルキス王国へ到着したイアソンは、無事金色の羊の毛皮を持ち帰り、叔父ペリアドを倒して王となりました。ほ座は、このアルゴ船を天に昇らせて星座にした「アルゴ座」の、帆の部分を独立させた星座です。


























りゅうこつ座(竜骨座)
学名:Carina
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:カノープス(アルファ星)/ミアプラキドゥス(ベータ星)/アスピディスケ(イオタ星)/NGC3372(イータカリーナ星雲=散光星雲)/NGC3532(散開星団)/IC2602(散開星団) /NGC3114(散開星団)
  • 神話の主な登場人物:アイソン/イアソン/ペリアド/アイエテス/メディア
  • 日本で観測できる時期:2月〜3月の約2カ月間
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は3月下旬)

      りゅうこつ座は、北の端には全天でシリウスに次いで明るい星カノープスをもち、南は南十字星までつながる大きな星座です。この星座は天の川が南天でも一番美しい場所にあり、光る雲が3つに分かれた美しい散光星雲イータカリーナ星雲をはじめ、いくつもの星団を持っています。また、カノープスは冬季に水平線低く見えるため、天の南極にある星と考えられ、古くから親しまれてきました。

    見つけ方のポイント
     日本からは見えにくい星座ですが、冬の2月から3月頃、南に低く輝く1等星カノープスが目印です。九州までは、ほとんどカノープスしか見えません。しかし南の土地なら、カノープスから南十字星の近くまで延びる、星の並びをたどっていけば見つかるでしょう。 形は分かりづらいですが、船の底をひっくり返したような姿とされています。

    神話の内容について
     イオルコスの王アイソンの息子イアソンは、叔父ペリアドに国を乗っ取られます。成長したイアソンは、国を返すよう求めますが、逆にペリアドに、黒海の奥のコルキス王国の王が持つ、金色の羊の皮を持ってくるよう要求されます。イアソンは巨船アルゴ号を建設し、50人の勇者を乗せて船出をしました。航海は苦難の連続でしたが、無事にコルキス王国へ到着。しかしコルキス王アイエテスは、イアソンらに難題を持ちかけました。イアソンは王女メディアの助言で、難題を解き、金色の羊の毛皮を持ち帰ることに成功しました。その後イアソンは、叔父ペリアドを倒して王となりました。このアルゴ船を星座にした「アルゴ座」の、竜骨(船の背骨にあたる)の部分を独立させたのがりゅうこつ座です。
    また、りゅうこつ座のアルファ星カノープスは、中国では「南極老人星」と呼ばれ、南の果てにあって、人の寿命をつかさどる寿老人の星だとされています。

























いっかくじゅう座(一角獣座)
学名:Monoceros
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M50(NGC2323=散開星団)/NGC2264(散開星団)/NGC2244(散開星団)/NGC2237(ばら星雲=ガス散光星雲)/NGC2261(ハッブルの変光星雲)
  • 神話の主な登場人物:−
  • 日本で観測できる時期:12月〜5月の約6カ月間
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は3月上旬)

      オリオン座のベテルギウスと、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンが作る「冬の大三角」の中にちょうどすっぽり納まっている星座です。暗い星が多くて形を探しにくいですが、観測上は赤いバラのようなガス星雲「バラ星雲」や散開星団がいくつかあるなど、興味深い領域です。バラ星雲は肉眼では見えませんが、時間をかけて写真撮影すると美しい姿を見ることができるでしょう。

    見つけ方のポイント
     オリオン座の肩にある1等星ベテルギウスと、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンを結ぶと、「冬の大三角」になります。いっかくじゅう座は、この冬の大三角のちょうど真ん中にあります。形は馬のように、胴体から南に前足2本と後ろ足を伸ばし、さらに北西側に首を伸ばした形をしています。ただし、一番明るい星でも4等星ですので形を探すのは難しいでしょう。

    神話の内容について
     一角獣は空想上の生き物です。馬に似ており、ひたいに細長く先の尖った1本の角があります。いっかくじゅう座を作った人は、17世紀のドイツの天文学者バルチウスではないかといわれています。


























インディアン座
学名:indus
南半球
  • 日本で観測できる時期:日本からはほとんど見えません
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は1月中旬)

      つる座とくじゃく座の間にある、人の形をした星座で、17世紀はじめにバイエルによって作られたものです。ちょっと昔までは、日本では訳語から「インドじん座」とされていましたが、本当はこの星座が作られた17世紀ごろに新大陸(アメリカ大陸のこと)で見つけられたインディアンの姿をなぞらえています。一番明るい星は3等星ですので、少し見つけにくいですが、南半球の星座の中では比較的見つかりやすいかもしれません。

    見つけ方のポイント
       くじゃく座とつる座の間にある星座です。沖縄より南に行き、8月から11月頃、南の空でつる座とくじゃく座の間に「人」の字の形をした星の並びを探してみると良いでしょう。3等星以下のさほど明るくない星座ですので、少し見つけにくいかもしれません。

    神話の内容について
       1603年、ヨハン・バイエルによって作られた星座ですが、もともとは15〜16世紀の大航海時代に全世界の海に乗り出した船乗りたちによって作られた星座です。日本では「インド人座」などと言っていましたが、本来はアメリカ大陸(新大陸)発見によって、知られるようになったアメリカ・インディアンの姿をなぞらえています。神話とはまったく関係ありません。当時作られた星座は、この他にもほうおう座やきょしちょう座など、船乗りたちが見つけた珍しい人や動植物の姿を模したものがほとんどです。

























うさぎ座(兎座)
学名:Lepus
南半球

  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M79(NGC1904=球状星団)/アルネブ(アルファ星)/ニハル(ベータ星)
  • 神話の主な登場人物:オリオン
  • 日本で観測できる時期:12月〜4月の約5カ月間
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は2月上旬)

      冬の南の空低くオリオン座の下に、かわいらしい姿を見せている星座です。うずくまるウサギを表し、形がまとまっているので、3等星と4等星ばかりなのに見つけやすいのが特徴です。神話では、オリオンの猟犬(おおいぬ座)に追われるウサギとされています。望遠鏡で観測すると、星座の真ん中あたりに球状星団M79を見つけることができます。

    見つけ方のポイント
     冬の北の空を見ると、オリオン座の南に4個の3等星が四角形を作っているのが見つかります。それがうさぎ座の胴体で、その四角形の右上から、2つの長い耳が出ており、左下から後ろ足が出ています。それほど明るくはありませんが、見つけやすい星座です。
    神話の内容について
     巨人オリオンの足元を逃げ回り、おおいぬ座とこいぬ座の猟犬たちに追われるうさぎをかたどったものだとされています。 起源ははっきりとはしませんが、紀元前3世紀のギリシャの詩人アラトスの星座詩の中に、すでにうたわれています。

























エリダヌス座
学名:Eridanus
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:アケルナー(アルファ星)/クルサ(ベータ星)/ザウラク(ガンマ星)/アザー(エータ星)/アカマル(シータ星)/ベイド(オミクロン1星)/ケイド(オミクロン2星)/アンゲテナール(タウ2星)
  • 神話の主な登場人物:オケアノス/テテウス/パエトーン/ゼウス
  • 日本で観測できる時期:10月〜4月の約7カ月間
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は1月中旬)

      オリオン座の足元、1等星リゲルのそばから南西へ大きくうねりながら伸び、南天の大マゼラン星雲のそばまで達する長い星座です。全天でも6番目に大きい星座ですが、日本で見ると半分が地平線の下へ隠れてしまい、1等星のアケルナーは見ることができません。昔はエリダヌスという名前だけではなく、エジプトではナイル、バビロニアではユーフラテス、イタリアではポー川と、いずれも川にちなんだ名前で呼ばれていました。

    見つけ方のポイント
     冬に南の空を見ると、オリオン座の右下にある1等星リゲルの右脇から、ジグザグ曲がりながら南西へ伸びる、3等星と4等星の連なりが見つかります。あまり明るい星座ではありませんが、連なりが比較的はっきりしているので、見つけやすいでしょう。また、地平線に消えるあたりからは南東へ方向を変え、大マゼラン星雲のあたりまで伸びていきます。

    神話の内容について
     エリダヌス座は、ギリシャ神話の伝説の川で、太陽神オケアノスを父に、女神テテウスを母に持つとされています。エリダヌス川は、太陽神ヘリオスの子パエトーンが落ちた川として知られます。パエトーンは父親を尊敬していましたが、友人達は誰も、彼の親が太陽神だと信じません。ののしられた彼は父親の宮殿に行き、太陽の馬車に乗って天へ駆け上って行きました。しかし、太陽の馬車は彼のいうことを聞きません。パエトーンは暴れる馬のたずなをついに放してしまい、馬車は天地を焼きながら暴走をはじめます。ゼウスはこれを見て、仕方なく雷を投げ、パエトーンを撃ち落としました。そのときに、パエトーンが落ちた川がエリダヌス川だということです。

























おうし座(牡牛座)
学名Taurus
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:NGC1952、M1(かに星雲)=超新星残骸/NGC1554-5(ハインドの変光星雲、おうし座T星)=ガス星雲/Mel22、M45(プレアデス星団、すばる星)=散開星団/Mel25(ヒアデス星団)=散開星団/アルデバラン(アルファ星)/エルナト(ベータ星)/ヒヤドムプリムス(ガンマ星)/アイン(イプシロン星)/アルキオネ(エータ星)
  • 神話の主な登場人物:ゼウス(ジュピター、ユピテル)/エウロパ(エウローパ、ユーロパ)/ミノタウロス(マイナトー)/ヘラクレス
  • 日本で観測できる時期<:8月下旬〜翌年5月上旬 >
  • 見ごろの季節:冬(東京では1月中旬の午後9時ごろに南中)

      おうし座は、黄道星座の中ではいちばん明るい星座のひとつです。赤みがかった1等星アルデバランのほか、最も有名なふたつの散開星団であるプレアデス、V字型のヒアデスを含んでいます。4等より明るい星は14個あります。アルデバランは非常に小さな範囲(0.78〜0.93等)で変光しており、エルナトという星は以前はぎょしゃ座ガンマ星として、ぎょしゃ座に含まれていました。
     今から4000年余り前には春分点がこの星座にあり、古代ヨーロッパで重要視されていた星座です。


    見つけ方のポイント
     すばる星とも呼ばれるプレアデス星団と、赤い1等星アルデバランを中心とするV字型のヒアデス星団を含む大きな星座で、星座の形も比較的自然に牛の姿を連想させるものです。

    神話の内容について
     ギリシャ神話によると、大神ゼウスは、地中海の東岸にあるフェニキアの王女エウロパが野原に咲き乱れる花を摘んでいるのを、はるか離れたオリンポスから見そめ、牡牛の姿となって王女に近づきました。この牡牛は全身が雪のように白く、柔和な目と美しい角を持っていたので、エウロパはすっかり牡牛になれ、背中に乗りました。すると牡牛はエウロパを乗せたまま走りだし、そのまま地中海を渡って、ギリシャ沖のクレタ島までエウロパを連れ去ってしまいました。王女エウロパはそこでゼウスの子供を生んだといわれています。
     今日の「ヨーロッパ」の呼称は、この王女の名を伝えたものです。この牡牛はこのあともずっとクレタ島にいて、のちにクレタの王妃にミノタウロスという怪獣を生ませたので、ヘラクレスがこの牡牛を生け捕ることを命じられたといいます。

























おおいぬ座(大犬座)
学名:Canis Major
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M41(散開星団)/シリウス(アルファ星)
  • 神話の主な登場人物:オリオン/レラプス/ゼウス/エウロパ/プロクリス/ケファルス
  • 日本で観測できる時期:10月〜3月の約6カ月間
  • 見ごろの季節:冬(2月下旬に20時正中)

      おおいぬ座は、全天1明るい星シリウス(-1.5等星)が主星の華やかな星座で、オリオン座の左下に頭を上に立ったような姿を見せています。シリウスは太陽から6番目に近い恒星であるうえに、太陽の14倍の明るさをもった青白い星で、古代エジプトではナイルの氾濫を教える星だと珍重されました。また、おおいぬ座付近はほどよい明るさの星や星団が散りばめられており、双眼鏡観測なども楽しい領域です。

    見つけ方のポイント
     冬の南の空は明るい星が多く華やかですが、その中でもひときわ明るいのがシリウスです。オリオン座の三つ星ベルトに沿って下方に目を向けると、シリウスを簡単に見つけることができます。オリオン座の肩にある一等星ベテルギウスと、シリウスよりやや東の上方に輝くこいぬ座の主星プロキオンの3つの一等星を結ぶと正三角形になるため、これを「冬の大三角」と呼びます。

    神話の内容について
     ギリシャ神話では、猟師オリオンの猟犬の一匹でうさぎを追っている姿だと言われます。また、別の説では獲物を逃がしたことのない大犬レラプスだと言われています。レラプスはもともと大神ゼウスが寵愛したフェニキア王の娘エウロパに与えた犬でしたが、後にアテネの王女プロクリスのものになりました。プロクリスの死後、夫のケファルスは狐退治のためにレラプスをテーベの国に放ちますが、狡猾な狐との間で勝負がつかず、見かねたゼウスは2匹を石に変え、レラプスだけを星座にしたということです。


























オリオン座
学名:Orion
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M42(NGC1976)オリオン大星雲=散光星雲/M43(NGC1982)=散光星雲/I.434馬頭暗黒星雲=暗黒星雲/M78(NGC2068)=散光星雲/ベテルギウス(アルファ星)/リゲル(ベータ星)/ベラトリクス(ガンマ星)/サイフ(カッパ星)/ミンタカ、アルニラム、アルニタク(三ツ星)
  • 神話の主な登場人物:オリオン/エオス/アポロン/アルテミス
  • 日本で観測できる時期:-
  • 見ごろの季節:冬(2月上旬の午後8時頃に正中)

      中心に三ツ星をおき、1等星2個と2等星2個の4角形からなる星座です。明るく形のまとまりも良く、全天中最も華麗な星座で、有史以前から知られていました。オリオン大星雲や馬頭暗黒星雲をはじめ、散開星団も多く含み、観測にも面白い星座です。

    見つけ方のポイント
     おおいぬ座の主星シリウスとおうし座の主星アルデバランの中間にある、明るい三ツ星が目印です。

    神話の内容について
     ボイオティアの巨人オリオンは、暁の女神エオスに恋をしたため、神々の嫉妬にあい、アルテミスの矢によって射殺されました。また、アポロンが送ったさそりを避け、海へ逃げたオリオンを恋人のアルテミスが知らずに射殺したともいわれます。

























がか座
学名:pictor
南半球
  • 日本で観測できる時期:日本からはほとんど見えません
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は1月中旬)

      18世紀にフランスの天文学者ラカーユによって創設された星座です。南半球にある星座なので本州などからは見えませんが、南へ行けば、全天で2番目に明るい星、りゅうこつ座のカノープスのすぐ隣に、逆A型の星座の形を見つけることができるでしょう。絵を描くときに絵を立てかけておく、イーゼル(画架)をかたどったものだとされています。この星座も、多くの南半球の星座と同じく見た目はぱっとしません。しかし、最近この星座のベータ星(2番目に明るい星で、地球から約78光年の距離にある)に地球と同じような惑星があることが予測されており、天文学者たちの注目を集めています。

    見つけ方のポイント
       がか座は、りゅうこつ座とかじき座にはさまれた星座です。りゅうこつ座の1等星で全天で2番目に明るい星、カノープスのすぐ西どなりにあるので、それを目印にすれば良いでしょう。南中する頃には、3等星以下の星がカノープスの隣で、逆Aの形に並んでいるのが見つかります。

    神話の内容について
       がか座は、18世紀のフランスの天文学者N・L・ラカーユ(1713〜62年)が、1750年代に作った星座です。彼の発表した南天星図の中に書かれたもので、画家がキャンバスを架けておくイーゼル(画架)をかたどったものです。最初は、ラテン語でEquuleusPictoris(エクウレウス・ピクトーリス)、「画架の馬」と名付けられました。「画架の馬」とは、画家の前に立つ馬、すなわちイーゼルを指します。神話とはまったく関係ありません。ラカーユは、アフリカ大陸の南端、現在の南アフリカ共和国のケープタウンに住み、南天の星の研究を行いました。

























かじき座(旗魚座)
学名:Dorado
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:大マゼラン雲(銀河)/NGC2070(タランチュラ星雲・散光星雲)/NGC1566(スパニッシュダンサー・渦巻き星雲)
  • 神話の主な登場人物:-
  • 日本で観測できる時期:日本からはほとんど見えない
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は1月下旬)

      口の先がとがった海の魚、かじきを星座にしたものです。星座自体はさほど目立ちませんが、かじき座の中には「大マゼラン雲」があるので有名です。大マゼラン雲は我らが銀河系のお隣の星雲で、約20万光年離れた場所にあり、目で見ても、うすぼんやりした雲のように見えます。また、大マゼラン雲と重なって、全天でも一番美しいといわれるタランチュラ星雲(蜘蛛に似ています)があるなど、見物の多い星座です。

    見つけ方のポイント
     南半球の夏(日本の冬)に、南の空に現われる星座で、細長いひし形の先に1本の線をつないだような形をしています。ひし形がかじきの体で、1本の線がとがった口先です。大マゼラン雲のすぐそばを見ると、ひし形が見つかるでしょう。そこからレチクル座の方向へ口の先が伸びています。ただし、星座自体は3等星や4等星ばかりなので、あまり明るいとはいえません。

    神話の内容について
     海にすむ、口の先がとがった魚、かじきを星座になぞらえたもので、神話とは関係ありません。1603年にドイツの天文学者ヨハン・バイエルによって発表された星図「ウラノメトリア」に載せられたのが最初だといわれます。

























カメレオン座
学名:Chamaeleon
南半球
  • 日本で観測できる時期:日本からは見ることができません
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は1月中旬)

      熱帯のジャングルに住むトカゲの一種、カメレオンをかたどって16世紀に作られた星座です。4等星や5等星からなる、細長いひし形をした星座で、天の南極に近いところにあるので日本からはまったく見えません。しかし、日本の反対側にあるオーストラリアなどでは、1年中南の空で見ることができる周極星となっています。暗い星ばかりなので、あまり見栄えがするとはいえませんが、形がまとまっているので比較的見つけやすい星座です。

    見つけ方のポイント
       南十字星の長いほうの軸を南へ伸ばしていくと、はえ座をはさんで、天の南極近くに細長いひし形を見つけることができます。それがカメレオン座です。一番明るい星でも4等星なので、暗く見栄えはしませんが、形がまとまっているので、南半球の星座の中では比較的見つけやすいといえるでしょう。

    神話の内容について
       17世紀のドイツの天文学者バイエルによって名付けられた星座で、1603年に刊行した彼の星図「ウラノメトリア」に掲載したのが最初です。16世紀のオランダの航海者テオドルスの観測を元に設定したものだと言われます。神話とは関係ありません。カメレオンは、熱帯のジャングルに住むトカゲの一種で、長い舌をぴゅっと素早く伸ばして、ハエなどを捕まえて食 べます。そのため、北にあるはえ座と対になるように作られたものではないか、という説もあります。カメレオンはゆかいな生き物で、いる場所に合わせて体の色をさまざまに変えることができます。日本でも動物園などで見ることができます。

























ぎょしゃ座(御者座)
学名:Auriga
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M36(NGC1960)=散開星団/M37(NGC2099)=散開星団/M38(NGC1912)=散開星団/カペラ(アルファ星)/メンカリナン(ベータ星)/サダトーニ(ゼータ星)
  • 神話の主な登場人物:エリクトニウス/ヘーパイナス/アフロディテ/ヒュッポリトス
  • 日本で観測できる時期:-
  • 見ごろの季節:冬(2月中旬の午後8時に正中)

      主星カペラを中心にした5角形と、カペラの脇の小さな3角形で作られる星座です。1匹の雌山羊と2匹の小山羊を抱く御者になぞらえられます。小さな3角形は、「小山羊(The Kids)」とされ、古代からよく知られていました。

    見つけ方のポイント
     ペルセウス座とふたご座の間で、天の川に沿う星座です。冬の夜、天頂付近に黄色く輝くカペラが目印です。
    神話の内容について
     諸説あり、メソポタミア神話では、鍛冶屋の神で醜男のヘーパイナスと美の神アフロディテの子エリクトニウスといわれます。足が不自由でしたが、成長してアテナイの主となり、馬車を駆って活躍しました。ギリシャ神話では、馬車の名手で純潔の象徴ヒュッポリトスとされています。

























きりん座(麒麟座)
学名:Camelopardalis
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:NGC2403(渦巻き銀河)
  • 神話の主な登場人物:−
  • 日本で観測できる時期:一年中
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は2月中旬)

      北極星のすぐそばにある星座で、一年中北の空を巡っている周極星のひとつです。星図を見ると、首の長いきりんの姿を想像することができますが、一番明るい星でも4等星なので、実際には形を探すのが難しいでしょう。17世紀にできた新しい星座で、もともとはらくだ座と名づけられましたが、本で紹介されたときに間違ってきりんになったという、変わった星座です。

    見つけ方のポイント
     北極星の近辺を一年中めぐる周極星で、こぐま座の北極星とぎょしゃ座の中間あたりにあります。北極星からおおぐま座の方向へ少し目を移すと、4等星が一列に並んでいるのが見えます。それがきりん座の首です。そこからぎょしゃ座の方向を見ると、三角形が見つかります。それがきりん座の胴体で、そこから足が2本出ています。しかし、暗い星ばかりですので、実際には形を探すのが難しいでしょう。

    神話の内容について
     神話とは関係がない星座で、アフリカに住む首の長いきりんを表しています。中国の神話に出てくる麒麟とは関係がありません。
    きりん座は、17世紀初頭に、プランシウスによって作られたものといわれています。その後やはり17世紀に、ヤコブ・バルチウスによって一般に広まりました。ただし、最初は「Camelus」つまり「らくだ座」と呼ばれていました。しかし、バルチウスの死後に出版された星図に誤りがあり、きりん座になったということです。

























こいぬ座(小犬座)
学名:Canis Minor
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:プロキオン(アルファ星)
  • 神話の主な登場人物:オリオン
  • 日本で観測できる時期:10月〜5月の約8カ月間
  • 見ごろの季節:冬(3月中旬に20時正中)

      こいぬ座はおおいぬ座の左上にあり、ともにオリオンの猟犬と考えられた星座で、華やかな冬の南天に彩りを添える星座です。シリウスの弟のような青白い一等星プロキオンと3等星一つを結んだだけの星座ですが、紀元前1200年頃にはすでに「海の犬座」として知られていました。主星プロキオンはシリウスと似ており、双方ともに伴星を持っています。

    見つけ方のポイント
     オリオン座のベテルギウスから北東へ目線を伸ばすと一等星プロキオンを簡単に見つけることができます。オリオン座の三つ星ベルトに沿って下方にあるシリウスの3つの一等星を結ぶと正三角形になるため、これを「冬の大三角」と呼びます。

    神話の内容について
     紀元前1200年頃にはすでに、「海の犬座」という名前で知られていました。紀元前300年頃のエジプトあたりでは、現在のおおいぬ座を「犬座」と呼ぶようになったため、犬座の前に昇る一等星プロキオンは「犬の前」という名前で呼ばれるようになりました。ギリシャ神話では、猟師オリオンの猟犬の一匹で、うさぎを追っている姿だと言われます。

























ちょうこくぐ座
学名:caelum
南半球
  • 日本で観測できる時期:日本からはほとんど見えません
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は1月中旬)

      18世紀のフランスの天文学者ラカーユによって作られた、南北に長い星座です。最初は「金属彫刻用のみ座」(フランス語でLe Burins、ラテン語でCaelum Sculptoris)と名付けられていましたが、現在はcaelumとなっており、「彫刻用ののみ」や「たがね」などを意味しています。一番明るい星が1個だけある4等星ですので、とても暗く形を見つけるのは難しいといえるでしょう。

    見つけ方のポイント
       はと座とエリダヌス座の間、がか座の南にある星座です。1個だけある4等星が1番明るく、残りは5等星以下という暗い星座ですので、だいたいの位置は分かっても、はっきり見つけるのはかなり難しいでしょう。見つける場合は、りゅうこつ座の1等星カノープスから北へ目を移し、小さな平たい3角形を見つけるようにすると良いでしょう。

    神話の内容について
       18世紀のフランスの天文学者N・L・ラカーユ(1713〜62年)が、1750年代に作った星座です。彼の発表した南天星図の中に書かれたもので、最初はフランス語でLeBurins(ル・ビュラン)、ラテン語でCaelum Sculptoris(カエルム・スクルプトーリス)と名付けられ、「金属彫刻用のみ座」とされていました。現在はcaelumとなっており、「彫刻用ののみ」や「たがね」などの意味です。神話とはまったく関係ありません。ラカーユは、アフリカ大陸の南端、現在の南アフリカ共和国のケープタウンに住み、南天の星の研究を行いました。

























とけい座
学名:horologium
南半球
  • 日本で観測できる時期:日本からはほとんど見えません
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は1月中旬)

      エリダヌス座の1等星アケルナーのそばにある星座で、18世紀にフランスの天文学者ラカーユによって作られました。最初は「振り子時計座(HorologiumOscillatorium)」とされ、天体図にも振り子時計の絵が描かれています。小さな3角形と長く伸びた2本の足(時計の振り子)からなる星座ですが、なにぶん暗い星ばかりのため、肉眼でその姿を確認するのは非常に難しいといえるでしょう。南半球の 星座ですので、石垣島や宮古島などの南の島へ行かなければ、全体を見ることはできません。

    見つけ方のポイント
       エリダヌス座の1等星アケルナーと、ひし形をしたレチクル座の中間にある星座です。12月頃にその中間を眺めて見ると、小さな3角形と、その頂点から伸びた長い2本の線が見つかります。それがとけい座で、3角形が振り子時計の本体、2本の線が振り子を表しています。ただし、暗い星ばかりですので、見分けるのは非常に難しいでしょう。

    神話の内容について
       18世紀のフランスの天文学者N・L・ラカーユ(1713〜62年)が、1750年代に作った星座です。彼の発表した南天星図の中に書かれたもので、振り子時計をかたどって作られたものだと言われています。神話とはまったく関係ありません。ラカーユは、アフリカ大陸の南端、現在の南アフリカ共和国のケープタウンに住み、南天の星の研究を行いました。

























とびうお座(飛魚座)
学名:Volans
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:大マゼラン雲(銀河)/NGC2070(タランチュラ星雲・散光星雲)/NGC1566(スパニッシュダンサー・渦巻き星雲)
  • 神話の主な登場人物:-
  • 日本で観測できる時期:日本からは見えない
  • 見ごろの季節:春(20時正中は3月中旬)

      りゅうこつ座の一部に突き刺さるような姿の星座で、平たい3角形の一角から、3本の線がひれのように出た形をしています。星座は、長いひれを羽根のように使って海の上を滑空する魚、とびうおの姿を表しています。ただし、構成する星は全部4等星なので星座の形を見つけるのは難しいかもしれません。17世紀のはじめに、ドイツの天文学者バイエルによって設けられました。

    見つけ方のポイント
     南半球の秋(日本の春)に南の空に昇る星座です。見つけるにはりゅうこつ座の1等星カノープスから、南十字星の方へ目を移していくと、りゅうこつ座に一部ひっかかるようにして、平たい3角形が見つかります。それがとびうお座の胴体で、さらに3角形の一角から3本の線がのび、長い胸びれと尾びれを表しています。

    神話の内容について
     羽根のように長いひれで海の上を飛ぶように滑空する魚、とびうおを星座になぞらえたものです。神話とは関係ありません。 この星座を作ったのは、ドイツの天文学者ヨハン・バイエルだといわれます。1603年に発表した彼の星図「ウラノメトリア」の中ではじめて描かれました。最初は「Piscis Volans(飛ぶ魚)」だったのですが、後にPiscis(魚)が省略されてVolans(飛ぶ)だけが学名になりました。

























とも座(艫座)
学名:Puppis
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:ナオス(ゼータ星)/アスミディスケ(クシー星)/M46(NGC2437=散開星団)/M47(NGC2422=散開星団)/M93(NGC2447=散開星団)
  • 神話の主な登場人物:アイソン/イアソン/ペリアド/アイエテス/ヘレン/ヘルクレス/オルフェウス/アスクレピオス/ポルックス/カストル/メディア
  • 日本で観測できる時期:1月〜4月の約4カ月間
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は3月中旬)

      とも座は、元はアルゴ座という大きな船の形をした星座の一部で、近世になって大きすぎるという理由で4つに分割されたうちのひとつです。船の後ろにある「とも」の形をしているとされますが、実際には分かりにくいと思います。しかし、天の川の中に位置しており、美しい散開星団M46とM47が並んでいるなど、観測上は見ものが多い星座です。

    見つけ方のポイント
     冬の南の空、おおいぬ座のすぐ東に、大きな台形が見つかります。それがとも座です。全体には、長細い5角形を逆さにしたような形をしています(正確にはもっと複雑な形です)。アルゴ座の仲間のなかでは比較的北にあるので、南の土地へ行けば楽に全体像を見ることができるでしょう。

    神話の内容について
     イオルコスの王アイソンの息子イアソンは、叔父ペリアドの悪だくみで国を乗っ取られてしまいます。やがて立派な若者に成長したイアソンは、叔父の元へ行き、国を返すよう求めました。しかし叔父ペリアドは、イアソンに黒海の奥にあるコルキス王国のアイエテス王が持つという、金色の羊の皮を持ってくるよう要求します。イアソンは女神ヘレンの助力のもと、巨船アルゴ号を建設し、ヘルクレスや琴の名手オルフェウス、医者のアスクレピオス、双子のポルックスとカストルなど50人の勇者を乗せて船出します。アルゴ号は、航海の途中、黒海入り口のぶつかり合う2つの大岩の間を通るときに船尾の部分をちぎられたりしますが、無事コルキス王国へ到着。王女メディアの助けもあって、金色の羊の毛皮を持ち帰り、叔父ペリアドを倒して王となりました。とも座は、このアルゴ船を天に昇らせて星座にした「アルゴ座」の、ともの部分を独立させた星座です。

























はと座(鳩座)
学名:Columba
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:NGC1851(球状星団)/ファクト(アルファ星)/ウェズン(ベータ星)
  • 神話の主な登場人物:ノア
  • 日本で観測できる時期:12月〜3月の約4カ月間
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は2月上旬)

      冬の南の空に見える星座で、オリーブの葉をくわえた鳩の姿を表しています。3等星が多く、しかも見える位置が南の地平線近くなので、見つけるのは難しいでしょう。望遠鏡による観測では、右下のあたりに球状星団NGC1851を見ることができます。17世紀のはじめ、バイエルによって作られた星座ですが、後にロワーエによって採用されてから一般に広まりました。

    見つけ方のポイント
     冬の南の空、オリオン座の下(南)にあるうさぎ座の、さらに下を見ていくとアルファベットのYの字が横倒しになったような星の並びが見えます。それがはと座です。南の空低くに見え、しかも3等星が多いので、日本では見つかりにくいかもしれません。一般に、空の低い位置に見える星座は、大気の層が邪魔をして光が弱くなり、見つけにくくなります。

    神話の内容について
     旧約聖書の中の、ノアの箱船の話に出てくる鳩を表したものだといわれています。 神はあるとき、人間が悪いことばかりしているのに怒り、地上に大洪水を起こしてすべての生き物を葬り去ろうとします。ただし、心正しいノアの一族だけは助けることにしました。神はノアに命じて、大きな箱船を作らせ、すべての生き物を雌雄2匹づつ乗り込ませます。やがて大雨が40日間も降って洪水が起こり、ノアたちを除いてすべての生き物は死に絶えてしまいました。 洪水は長い間続きましたが、ある日、ノアは様子を見るために鳥を放してみます。最初はカラスを放しますが、カラスは地上を見つけることができませんでした。次にノアは鳩を放しました。やがて鳩はオリーブをくわえて戻ってきました。それでノアは洪水がおさまったことを知ったのでした。

























ふたご座(双子座)
学名Gemini
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:NGC2392=惑星状星雲/NGC2129=散開星団/NGC2168、M35=散開星団/カストル(アルファ星)/ポルックス(ベータ星)/アルヘナ(ガンマ星)/ワサト(デルタ星)/メブスタ(イプシロン星)/メクブダ(ゼータ星)/プロプス(エータ星)
  • 神話の主な登場人物:ゼウス(ジュピター、ユピテル)/レダ/ヘレン/カストル/ポリュデウケス(ポルックス)
  • 日本で観測できる時期:10月〜翌年6月
  • 見ごろの季節:冬(東京では2月中旬の午後9時ごろに南中)

      ふたご座は黄道星座のひとつです。カストルとポルックスというふたつの1等星を含み、2列に並んだ星の列が双子が抱き合っているように見えるので、ふたご座と呼ばれています。現在ではポルックスの方が明るく見えますが、古代にはカストルの方が明るかったいう記録もあり、晩期型、多重星のポルックスの明るさが変化した可能性が高いといわれています。
     バビロニアの時代から大きな双子と呼ばれ、フェニキア、エジプトなどの地域の人たちも、この星座を双子の形として認識していました。ラテン語で、英語のツインズに当たるジェミニと呼ばれています。

    見つけ方のポイント
     オリオン座の源氏星と平家星を結んで、その線を上の方に伸ばすと、ふたつの明るい星が並んでいるのが見えます。

    神話の内容について
     ギリシャ神話によると、大神ゼウスが白鳥(はくちょう座)となって、美女レダを愛し産ませた子供が、双子の兄弟カストルとポリュデウケス(ポルックス)です。トロイア戦争のもとになった『トロイのヘレン』は、ふたりの姉に当たります。ポルックスは不死身でしたが、カストルは違いました。カストルが殺されたとき、ポルックスは神々の慈悲を乞い、カストルにも不死身の体を与えてもらいました。こうしてカストルの命は冥界から呼び戻され、ふたりは「1年の半分を天上に星座として上げてもらい、半分は地下で共に過ごすようにしてもらった」といわれています。
     この話は、中緯度地方では、ふたご座が周極星ではなく、ある1日を見れば、ほぼ半日ずつ地平線上と地平線下に出没し、また1年を通して毎夜同じ時間に星座を観察すると、半年は双子座が見えるのに、もう半年は地平線下に隠れて見えないことの説明にもなっています。また、この双子はかつては航海の守護者として地中海沿岸であがめられていました。そのため、カストルとポルックスの船首像を付けた船が多かったといいます。

























みずへび座(水蛇座)
学名:Hydrus
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:-
  • 神話の主な登場人物:-
  • 日本で観測できる時期:日本からはほとんど見えない
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は12月下旬)

      水の中にすむへび、水蛇をかたどった星座で、「く」の字形にくねった姿をしています。「うみへび座」という星座が別にありますが、この「みずへび座」は17世紀の学者バイエルが、うみへび座に対抗して作ったものだといわれます。南半球にあるので日本からは見えませんが、大マゼラン雲と小マゼラン雲にはさまれた場所にあるので、わりと見つけやすい星座だといえるでしょう。

    見つけ方のポイント
     南半球で、夏(日本の冬)の時期に南の空を見てみましょう。うす曇りのような大マゼラン雲と小マゼラン雲、さらにエリダヌス座の1等星アケルナーを結んだ3角形の中に、大きなL字型をした星の並びが見つかります。それがみずへび座です。

    神話の内容について
     水の中にすむ蛇、水蛇を星座に見立てたものです。神話とは関係ありません。1603年にドイツの天文学者、ヨハン・バイエルが作った星座で、星図「ウラノメトリア」の中に描かれています。バイエルはうみへび座(Hydra)に対して、このみずへび座を作ったといわれています。

























らしんばん座(羅針盤座)
学名:Pyxis
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:−
  • 神話の主な登場人物:アイソン/イアソン/ペリアド/アイエテス/メディア
  • 日本で観測できる時期:2月〜5月の約4カ月間
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は4月上旬)

      古代ギリシャ時代に、船をかたどって作られた「アルゴ座」の一部で、近世に大きすぎるという理由で4つに分割された星座です。しかも最初は「ほばしら座」という名前で、後に「ピュクシス・ナウティカ(航海用の箱)」すなわち、らしんばん座に名前が変わりました。星座自体は暗くて小さく、決まった形を見つけにくいですが、天の川の中にあり、観測上は華やかな場所です。

    見つけ方のポイント
     とも座の東どなり、ほ座の北に、3個の4等星がやや折れ曲がって並んでいる場所があります。そこがらしんばん座です。暗い星ばかりですので、決まった形は見つけにくいでしょう。

    神話の内容について
     イオルコスの王アイソンの息子イアソンは、叔父ペリアドに国を乗っ取られます。成長したイアソンは、叔父に国を返すよう求めますが、逆に、黒海の奥のコルキス王国の王が持つ、金色の羊の皮を持ってくるよう要求されます。イアソンは巨船アルゴ号を建設し、50人の勇者を乗せて船出します。航海の間は次々に苦難に襲われますが、無事にコルキス王国へ到着。しかしコルキス王アイエテスは、草原にいる3頭の火を吐く雄牛に荒れ地を耕させ、竜の歯をまいて、そこから生えてくる沢山の兵士達を全員槍で突き殺せ、と難題を持ちかけました。イアソンは王女メディアの助言で、兵士たちに同士討ちをさせ、金色の羊の毛皮を持ち帰ることに成功し、叔父ペリアドを倒して王となりました。らしんばん座は、このアルゴ船を星座にした「アルゴ座」の、羅針盤の部分を独立させた星座です。元は「ほばしら座」といい、アルゴ船の帆柱をかたどったものとされていました。

























レチクル座
学名:Reticlum
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:-
  • 神話の主な登場人物:-
  • 日本で観測できる時期:日本からはほとんど見えない
  • 見ごろの季節:冬(20時正中は1月中旬)

      5つの星が、細長いひし形を作る星座です。日本からは見えませんが、小さいけれどよくまとまっているので、南半球ではおなじみの星座です。「レチクル」とは聞きなれない名前ですが、望遠鏡の目標を定めるファインダーなどに張られている「十字線」のことです。昔はこれがひし形をしていたので、この名前が付きました。レチクル座のすぐ南東には有名な「大マゼラン雲」を見ることができます

    見つけ方のポイント
     南半球では夏(日本では冬)に天の南極近くに輝く星座です。見つけるときはエリダヌス座の1等星、アケルナーから南東の方角、大マゼラン雲の方へ目を移してみましょう。ほぼ南北向き(縦方向)に細長いひし形が見つかります。それがレチクル座です。一番明るい星でも3等星ですが、まとまっているので見つかりやすいでしょう。

    神話の内容について
     レチクル座は18世紀にフランスのラカーユによって作られた星座です。 レチクルとは、望遠鏡などのファインダーのレンズによく張られている、ひし形の網目(もしくは十字線)のことです。ファインダーとは望遠鏡の目標を定めるために使う小さな望遠鏡です。だから神話とは関係がありません。 もともとレチクルには「網」の意味があったので、日本では「小網座」などと訳されていましたが、網とは関係がないので注意しましょう。




















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