中国が月探査衛星衛星打ち上げ

 中国初の月探査衛星「嫦娥(じょうが)(月に住む仙女)1号」が24日午後6時(日本時間同7時)ごろ、四川省の西昌衛星発射センターから打ち上げられた。有人宇宙船「神舟6号」に続き、中国が威信をかけ野心を象徴する国家プロジェクトだ。「宇宙大国」としての地位固めと、月の資源獲得、軍事分野への応用を狙う。「部品含めすべて自主開発」ともアピールしており、愛国主義や国威の発揚も図りたいようだ。

 「嫦娥1号」は、運搬ロケット「長征3号A」を使い打ち上げられた。発射の瞬間は、約2000人の観光客に初めて公開された。

 同衛星は地球を周回後、31日に月へ向かい、11月5日に月の周回軌道に乗る予定。同月下旬には最初の月面画像が中国へ送信されるという。同衛星は電荷結合素子(CCD)カメラ、X線やガンマ線の分光計などを搭載し、月面から高度約200キロの軌道を1年間周回する。

 「嫦娥計画」は、月探査計画の「第1段階」として2004年に本格的に始まった。中国メディアで宣伝されているのは、同衛星の「4大目的」だ。

 それは(1)月表面の3次元画像作成。将来的に計画する月面着陸時に向けたデータ収集で「世界ではまだ完全な画像はなく初」(2)月面の化学物質の分析と分布調査。米国は5種類の物質を探査したが「中国はさらに9種類増やす」(3)温度分布などを調べ、未来のエネルギー源として(米露も注目する)同位元素ヘリウム3などエネルギー源の将来性を探るもので、「世界初」(4)宇宙空間の調査-だ。

 月探査計画の首席科学者の欧陽自遠氏は「月には豊富な資源があり、地球の資源備蓄庫になる可能性がある」とし、ウラン、リンなどのほか、地球にはない物質を含め100種類以上の鉱物がある可能性に言及している。資源獲得競争で有利な地位を獲得する狙いがうかがえる。

 中国は今後、「第2段階」として15年ごろに月面着陸用の無人探査機を打ち上げ、月面の立体映像の撮影や月面上の元素分析などを行う。17年ごろには月表面の岩などのサンプルを採取し、持ち帰ることを計画している。「第3段階」は有人宇宙船の月面着陸。20年ごろを目標にしている。

 拡張を続ける軍事分野への応用も指摘される。

 同衛星は地上3カ所の測位基地と、観測船「遠望」などによって制御、観測されるという。

 軍事専門家は、改良型の移動式大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「東風31A」や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨浪(JL)2号」など、「長射程でしかも残存性の高い核戦力」の配備計画が進行中だと指摘。そのうえで「これら弾道ミサイルの射程実験の観測や将来的な対衛星攻撃の技術開発などに、嫦娥の制御技術を応用する可能性がある」としている。

 中国には、「総合国力」の向上を図り「科学技術立国」を国際社会にアピールする効果も念頭にある。米国に対抗し、国際宇宙ステーション計画でも中国は基本的に独自路線を歩んでもいる。「米国との宇宙競争を通じ、『米中2大国』を国際社会に認知させ影響力を高める」(専門家)ための試みが続く。